ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/12/15 十二月文楽①「信州川中島合戦~輝虎配膳」

2007-12-24 00:34:56 | 観劇

観劇の感想がたまる一方なので、次に何を書こうかと思案にくれる。そうだ、大河ドラマ「風林火山」最終回に関連して文楽の「信州川中島合戦~輝虎配膳」を書くことにしよう。よく考えてみると、大河ドラマで直江って西岡徳馬が、宇佐美って緒形拳がやってた人物じゃないか。上杉家の主な家臣も登場するこの作品に親近感が湧いてくる。ただ勘介に妻や母や妹もいるという「風林火山」とは全く違う設定。勘介が実在したかどうかを示す文献が少ないのだから自由にいろいろ書けるわけだ。
一昨年6月の歌舞伎座で「輝虎配膳」は初見。梅玉の輝虎と時蔵のお勝の琴をはさんでの名場面(写真のような場面)が印象に残っている。
さて文楽ではどうだろうか。

【信州川中島合戦】輝虎配膳の段
近松門左衛門=作

人形役割と義太夫は以下の通り。
輝虎=吉田玉女:豊竹新大夫
越路=吉田和生:豊竹松香大夫
お勝=桐竹紋豊:豊竹呂勢大夫
唐衣=吉田勘弥:竹本南都大夫
直江=吉田玉輝:豊竹咲甫大夫
甘粕=吉田清五郎:豊竹靖大夫
柿崎=吉田蓑一郎:豊竹靖大夫
宇佐美=吉田玉佳(宇佐美だけど見せ場なし(^^ゞ)
鶴澤燕三 琴=鶴澤寛太郎
輝虎は城に執権直江山城守や侍大将たちを集め、信玄との初戦に敗れて怒りをぶちまけている。敗因は敵方に軍師として山本勘介がいるせいで、その勘介は直江の妻の兄という縁があることから、直江に勘介を味方につける工作を命じる。直江はそのために既に勘介の母を味方につけて勘介の心を動かそうと、妻の唐衣を通じて母を招いていた。そこに二人が到着。輝虎の居城を直江の城と偽っていた。
この作品は武田側の歴史書を踏まえているので輝虎=謙信の人物像は短慮の殿様になってしまっているとのことだから、Gacktのイメージを重ねてはいけない。
唐衣は兄嫁が吃りのために、筆談用の道具と歌えば言葉が滑らかになるために琴を用意。この作品は近松晩年の作で「吃又」の又平を女性とする趣向で書かれているというが、「吃又」も近松がもっと若い頃に書いた作品と筋書で確認し、自分の作品のアレンジだったと確認。二人が通されると挨拶の交換だがお勝はさらさらと筆を走らせて見事な手跡を見せる。
直江が初めての姑との対面に主君から拝領の小袖を差し出すが、越路は「古着は着たことがない」と付き返す。その上、肘枕をして横になってしまうのが人形の大胆な表現だ。
続いてもてなしの膳を輝虎が自ら運んでくるが、越路は「窮屈な給仕はいらぬ」と断るのに、輝虎は遠回しに勘介の説得を烏帽子を畳につけて頼む。それを毅然と断り膳をひっくり返す越路。直江と短気を起こさないと約束した上での策だったのを堪え切れずに激昂し刀に手をかける輝虎。唐衣は母に詫びるように願うが、越路は覚悟を示し詫びようとしない。そこで写真の場面になる。お勝が必死に琴の調べに乗せて許しを乞う。床では貫太郎が琴を演奏する姿がけなげに思えてしまう。東京での初公演から観ているので情が湧いているのだ。
このお勝の必死の懇願に、輝虎は心を動かされて刀を下ろす。越路とお勝は直江の館に向かうところで幕。

軍師を自分の方に招くためにその母親を歓待するというのは、「三国志」にある故事を踏まえているのだという。近松は中国の文献の素養も深く、元武士だっただけに武家社会のドラマをこんな風に書けたのだとあらためて納得。

燕三の気迫の三味線に新大夫と咲甫大夫の若手ふたりが主従の気迫のやりとりを聞かせてくれる。越路はベテランの松香大夫が老母の気丈さをじっくりと。お勝の必死な訴えを呂勢大夫が切々と語り、大満足の義太夫陣。人形も玉女が短慮の輝虎を大名の大きさを持って見せ、お勝の紋豊も琴をはさんでの訴えの迫力あり。越路の和生の気丈ながらも老女の動きの面白さに目を奪われる。
やはり今回も、同じ作品を歌舞伎と文楽とで観る醍醐味を感じて満足。

写真は筋書より「輝虎配膳」の輝虎とお勝。
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2 コメント

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♪♪♪ (かしまし娘)
2007-12-26 16:31:45
ぴかちゅう様、まいど!
大河は、私のテンションが途中から急降下したので(笑)最終回はさすがに見どころ満載でした。
文楽もストーリーが??なまんまで終わってしまって。
琴の持ち上げることも含めて、動きがダイナミックでビックリしました。
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★かしまし娘さま (ぴかちゅう)
2007-12-27 23:41:35
「風林火山」と関連してやっぱり観てしまいました。輝虎の人物像が全く違うじゃないか~とか、勘介に妻ありか~とか自由にお話はつくれるもんだと感心してました。
歌舞伎で梅玉輝虎で観た時は、あまり話に入っていけなかったんですが、今回の大河ドラマで一気に世界が身近になりました。大河ドラマってエライ!
(注)かしまし娘さんの記事は名前をクリックすると読んでいただけますのでご紹介m(_ _)m
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