ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/07/26 歌舞伎座昼の部②竹本のみの「吉野山」

2008-07-30 23:59:20 | 観劇

通し上演の時は「道行初音旅」となるこの場面、歌舞伎では竹本と清元での上演となるが、今回は竹本のみになると話題になっていた。作品の原点の人形浄瑠璃での演出の精神を大事にする玉三郎ならではの舞台づくり。今回の公演の独自両面チラシの片面の「義経千本桜」は「吉野山」での写真だ。座頭のこだわりがわかるというものだ。
そういえば、今年2月に観た国立劇場文楽第3部の「義経千本桜」がまるまる今回の構成と同じだったことを思い出す。こちらとも比較できるぞ!
昨年3月歌舞伎座「道行初音旅」の記事はこちら
【義経千本桜】「吉野山」
今回のあらすじを公式サイトよりほぼ引用。
「義経主従は西国へ向かうのを断念し、吉野山の川連法眼のもとへ向かった。これを知った静御前(玉三郎)は、忠信と共に吉野山へ向かうが、忠信の姿が見えなくなる。しかし静御前が初音の鼓を打ち鳴らすと、忠信(海老蔵)はいずこともなく姿を現す。
やがて忠信と静御前は、義経から賜った鎧と初音の鼓を取り出し、八島の合戦の様子を物語り、旅の憂さを晴らすと、さらに山中へと分け入って行くのだった。」

満開の吉野山の桜の書割が広がる舞台の右手に5梃5枚の賑やかな竹本連中。そして「妹背山婦女庭訓」の《吉野川》の装置が下手にあり、水車が回っている!そして上手の書割が開くと奥からの山道に静御前の玉三郎が赤い旅衣で立っている。下手の青と上手の赤が桜色に満ちた舞台にくっきりと浮かび上がる。これだ、これこそ玉三郎のこだわりの舞台だと興奮してしまう。
静御前の赤い旅衣へのこだわりは次の「川連法眼館」の静の台詞からも推測できる。目前の忠信は同行していた忠信と着ていた小袖と違うから同一人物ではないというそれである。忠信の衣裳を云々するのに自分はいつ薄い色の衣から赤い衣に着替えたのさと突っ込みを入れていた私にはとても納得のできることだ。
ただし「鳥居前」「川連法眼館」の赤の衣裳とは違う模様。あちこちに格子状になった流線模様に花が散らされているという控えめなデザイン。これがいかにも旅衣という感じがして玉三郎のセンスのよさにまた心を動かされる。

行方不明の忠信が鼓の音にひかれて登場。この場面の海老蔵の狐忠信、本当に惚れ惚れするくらいのいい男!さらに車鬢の頭でいつもの髪型よりも遥かに荒事風。主従ながらも道行らしく男雛女雛で極まるという歌舞伎風の入れ事なし。竹本に乗った戦物語のところが見ごたえ十分。文楽で見ておおーっと思った二人の扇投げ→キャッチも歌舞伎座でも見ることができたのは予想外だった。逸見藤太たちとの立ち回りがなくても充実していてちっとも眠くならない!
竹本での上演は海老蔵の荒事の魅力も活用する効果ありだ。舞台装置から何から玉三郎の座頭としてのこだわりが貫徹しているのを強く感じた。

筋書に入った舞台写真も吉野川が入るようにふたりが極まったところが「義経千本桜」の扉写真になっている。まさに絵面に極まっての幕となったが、大興奮の「吉野山」だった。満足満足~。
            
7/26昼の部①「鳥居前」
7/26昼の部③「四の切」
追記
①狐の人形が静御前の仕度を何気なく手伝うという演出あり。弘太郎が人形遣いを頑張っていた。静は狐の存在は次の場面で気がつくのでこの場面では気づいていない設定。観客だけにアピールしているのだ。こういうのも面白かった。
②当初、竹本を5梃5枚と書いていたが、4梃4枚でした。六条亭さまにご指摘いただき、感謝ですm(_ _)m玉三郎のところを語るのは愛太夫で、次の「川連法眼館」も上手の御簾内も続けて語った。玉三郎の信頼が厚いことがわかるが、聞き取りやすくて私もお気に入り。


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4 コメント

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 (みゆみゆ)
2008-08-01 00:26:05
玉三郎さんのこだわりを感じることができた『吉野山』でした。
まだ新之助だったときの海老蔵と玉三郎さんの『吉野山』を見ているんでその時のことも思い出しながら見てました。

狐のお人形かわいかったです!(^-^)
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同じく大興奮の吉野山でした (六条亭)
2008-08-01 09:51:29
続いてのコメントで失礼します。

初日に比べると玉三郎さんと海老蔵さんの息もよくあうとともに、また二人の踊りが竹本の弦にのって、大興奮でした。

衣裳・装置とも玉三郎さんの美に対するこだわりを感じました。

(追記)竹本は四梃四枚です(浄瑠璃:愛太夫、幹太夫、豊太夫、蔵太夫 三味線:鶴澤正一郎、豊澤淳一郎、豊澤長一郎、鶴澤公彦)。
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Unknown (hitomi)
2008-08-04 22:07:17
今までの演出、装置と違い一段と華やかで楽しかったです。
義経、静の悲劇がいっそう浮かび上がるようです。
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皆様、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2008-08-04 23:37:00
★みゆみゆ様
>狐のお人形かわいかったです!......八重垣姫が「翼が欲しい」というあの場面、時蔵八重垣姫で「本朝廿四孝」の「奥庭狐火」では梅枝くんが遣っていたのを思い出しました。今回の弘太郎くんもよかったです。
★六条亭さま
竹本を5梃5枚と書いてしまっていましたが、ご指摘いただきまして本文も4梃4枚に訂正を入れました。あとで筋書で人数を確認しようと思いながら書いていて忘れてアップしてしまった次第です。ご指摘有難うございますm(_ _)m
六条亭さんは初日と千穐楽をご覧になって、芝居が深まる様子をしっかり確認されているご様子、いいですね。
>衣裳・装置とも玉三郎さんの美に対するこだわりを感じました......座頭にとっては、この「吉野山」をメインにした昼の部の通しだったと思えます。
★hitomiさま
昼夜とも名古屋からの遠征の甲斐があったのではないでしょうか。
>義経、静の悲劇がいっそう浮かび上がるようです......この浄瑠璃の作者も義経を主役にしないことで間接的に義経を浮かび上がらせたのでしょう。今回いろいろな劇評を読んで、やっとそこまで思いが至った次第です。


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