ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/07/26 歌舞伎座昼の部③「四の切」

2008-08-04 23:56:13 | 観劇

七月の「四の切」競演が話題だったが、国立劇場の音羽屋型での歌昇の狐忠信は観る事ができなかったのはちょっと残念。
さて、海老蔵の「四の切」は今回も澤潟屋型だが、猿之助の指導は受けていないらしい。海老蔵が音羽屋型をしないのは共演することの多い菊之助に「そっちは任せたぜ」という感じなのだろうか(笑)市川家の弟子筋の猿之助がここまで完成させた澤潟屋を宗家の御曹司が継承することの方が話題になる。また、宙乗りなどのケレンが海老蔵の体育会系の身体能力と面白いことをやりたいという志向にマッチしているのだと推測している。
昨年3月歌舞伎座「川連法眼館」の記事はこちら=前回の海老蔵の「四の切」もリンクあり。
今回の配役は以下の通り。
佐藤忠信/源九郎狐=海老蔵
静御前=玉三郎 源義経=門之助
川連法眼=寿猿 妻飛鳥=吉弥 
駿河次郎=薪車 亀井六郎=猿弥

川連法眼の妻飛鳥が黒い髪で出てきたことにまず注目。白で見慣れていたが年の離れた妻の設定にすれば黒でもおかしくないわけだ。吉弥は夜の部も姥の白鬘なので好ましい。寿猿・吉弥で二人の会話がきっぱりしていて次の場面も楽しみになる。生締の鬘で登場する本物の佐藤忠信の海老蔵がまことにカッコいい。相対する門之助も実にいい義経だ。2004年7月の「修善寺物語」の頼家がとてもよかったが、こういう御曹司の役がハマる役者は貴重だ。
そこに忠信を同道した静御前の玉三郎が登場。忠信が先に対面をしたことをなじる台詞「ハテ、まんがちなお人じゃなぁ」も玉三郎の静がしゃべるととてもしっくりするのは、玉三郎にして初めて静御前としての誇り高さを感じることができたからだと思えた。そして同道して感じた腑に落ちないことを思い出す台詞も然り。小袖の違いで同一人物ではないと見破る台詞も赤い旅衣での「吉野山」があると本当に納得がいった。文楽では旅衣の下に赤い衣が覗くので矛盾がないのだ。玉三郎静の台詞は、キビキビとすすんでいくので、緊迫感があるのがさすがだ。

薪車の駿河次郎が猿弥の亀井六郎とともに呼び出されて並ぶのも満足。
初音の鼓を打って登場する忠信は「吉野山」とは違う小袖を着ているが、これはもうご愛嬌(笑)鬘も鬢の毛を両脇に長く垂らしている。登場から思いっきり狐モード。
さて要チェックの狐言葉。高い音遣いが不安定な海老蔵、前回はあまりのオカマ風声にずっこけたが、今回は進歩がハッキリみてとれた。
鼓になった親が「早や帰れ」と言っているから帰るが「お名残惜しかるまいか」と嘆く源九郎狐の親を乞う純な気持ちのいじらしさ。涙を流しての熱演には、特に海老蔵贔屓でない私でも心を動かされた。これは義経が法皇ご下賜の鼓を与えるのも無理がない。

悪法師との立ち回りもなかなか楽しい。床上に玉三郎静と門之介もいて絵面に極まるのが実に贅沢。そして最後のお楽しみの源九郎狐の宙乗り。三階の鳥屋に向かって全身を欣喜雀躍させている。満面の笑みがまた海老蔵ではというはじけ方。思わず宙乗りのすごい笑いの舞台写真を一枚買い足してしまったくらい(^^ゞ

七月歌舞伎の昼夜貫くキーワードは「純心」とみた!!夜の部の記事でその辺も書いていくつもりだ。→書きました!
「玉三郎座頭の七月大歌舞伎を貫いたもの・・・」
写真は、歌舞伎座の「七月大歌舞伎」の垂れ幕。       
7/26昼の部①「鳥居前」
7/26昼の部②竹本のみの「吉野山」
7/31千穐楽夜の部①「夜叉ヶ池」
7/31千穐楽夜の部②「高野聖」魔人の純心


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
写真 (hitomi)
2008-08-05 19:14:03
予想以上に楽しい工夫にあふれた舞台でした。

いつも参考にさせてもらっています。

写真がすくなかったのは楽で売り切れ?でしょうか。
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源九郎狐 (みゆみゆ)
2008-08-05 20:58:20
こんにちは。
源九郎狐は進歩があったんですね(^-^)
前回を見ていないので。。。

昼の部しか見ていませんが、堪能できた昼の部でした。
こちらの方にTB送らせていただきました。
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皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2008-08-05 22:52:51
★「猫と薔薇、演劇、旅ファン」のhitomiさま
座頭の玉三郎丈にとっては、竹本のみの「吉野山」をメインにした昼の部の通しだったと思えます。澤潟屋の若手も師匠の型と違う演出にもよくついていっていると思います。海老蔵の源九郎狐は演舞場の公演よりもはるかによくなっていてよかったです。
玉三郎丈の海老蔵への指導もニュース23でのコメントは思わず笑ってしまいましたが、海老蔵の長所短所をよく飲み込んでよく指導してくれているんだなぁと別の意味で感心しておりました。
★みゆみゆ様
海老蔵の源九郎狐は演舞場の公演よりもはるかによくなっていてよかったです。
>題名の義経はあんまり目立たないんですよね......この浄瑠璃の作者は、義経を主役にしないことで間接的に義経を浮かび上がらせたのでしょう。今回いろいろな劇評を読んで、やっとそこまで思いが至った次第です。
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純心ですか? (さちぎく)
2008-08-09 14:45:47
酷暑!2階は連日38度です。PCに向かうのも久しぶりです。
「純心」ときましたか。私は「心を洗われる清々しさ」と感じていましたが、昼夜に共通という意識はなかったですね。考えてみると、知盛でも権太でもない忠信というところに意味があるように思えますね。成る程「純心」「純粋無垢」「情愛」こんな言葉が当てはまりそう!
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昼夜に共通するもの (六条亭)
2008-08-11 22:49:01
魔界の純心さはたしかに共通点ですし、海老蔵さんは昼は狐、夜は純心無垢な僧侶と人間界と魔界を融通無碍に行き来できる稀有な役者であることを今回の公演で証明しましたね。

海老蔵さんは忠信篇とも言うべき三つの狂言を通して忠信を演じたことにより、狐忠信としての性根が一本芯が通ったと思いますね。ですから、やはり今回の狐忠信もさらには本物の忠信もずっとよくなっています。

これはもちろん玉三郎さんとの共演により静御前の存在感がいい意味での刺激と緊張感につながったことも大きいと思います。

TBをうちました。
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続・皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2008-08-11 23:22:12
★さちぎく様
>酷暑!......やはり地球の温暖化のせいだと思ってます。家庭用のエアコンの温度を云々いうより先に日本中にある自動販売機を全廃する政策をとって欲しいです。街中で無駄に冷やしているのを見ると頭にきます。
>知盛でも権太でもない忠信というところに意味がある......雨乞いで贄にされた千古の狐の息子ということもあるというご指摘が「風知草」のおとみ様の記事にあり、それも納得でした。夜の「夜叉ヶ池」に通じます。こうしてブログで刺激しあうといろいろと見えてくるのも楽しいです。
★六条亭さま
>海老蔵さんは昼は狐、夜は純心無垢な僧侶と人間界と魔界を融通無碍に行き来できる稀有な役者......玉三郎丈はそういう資質を見抜いての共演だと私も思います。あとは学術面での研究心が芽生えると鬼に金棒なんですが(^^ゞお父様のそういうところもやがて影響されていくといいなぁ(笑)
昨年の菊五郎丈の「義経千本桜」通し上演を海老蔵丈もそういう自覚を持ってしっかり見ていることと思うので、そういう日がくるのを楽しみにしているところです。

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