第30室は、ドガとマネの作品が架かる。
エドガー・ドガ(1834-1917 / フランス・印象派)は、初期には歴史画や肖像画、発展期から円熟期には競馬、舞台、踊り子など都会的なモチーフや日常生活に見られる風俗的主題を数多く描いている。
当時のパリは、都市整備のためにセーヌ川での洗濯が禁止され、代わりに蒸気による洗濯屋が繁盛したものの、その労働条件はかなり過酷であったとされている。
「アイロンをかける女たち」や「アプサントを飲む人」は、そんな時代の女性たちの日常がありありと描かれている。
♪ 「アイロン――」(左)は、彼の辛辣な観察眼が最も良く示された作品として特筆されている
♪ 女たちの姿やワイン瓶が当時の貞操観念の低下を端的に表していると解釈されている
♪ 「アプサント――」(右)は、ドガの友人で女優のエレン・アンドレが、カフェで強い蒸留酒を飲む姿
♪ そして、その傍らに彫刻家で禁酒主義者だったマルスラン・デブータンの姿を描いたとされる
彼が、1860年代後半から数多く手掛けた「踊り子」のひとつ「オペラ座の稽古場」。
熱心な収集家であったバリトン歌手ジャン・バティスト・フォールの依頼により制作されたとされる「ダンス教室‐バレエの教室」も架かる。
♪ オペラ座のバレエ教室での審査風景を描いた「オペラ座の稽古場」(左)踊り子の演習直前の様を
♪ また、周囲で彼女の演技に注目しながらも自分の審査に備え調子を整える緊張感ある様を描いている
♪ 稽古場から舞台に移して稽古する踊り子を描いた「舞台のバレエ稽古」(中)
♪ 「ダンス教室――」(右)手前の踊り子と奥の壁際の踊り子らとの構図的展開が強い印象を与える
連作「踊り子」は、普仏戦争や革命政府誕生などに社会的不安を感じたドガが、1872年10月から約半年間アメリカへ旅行した後に描かれるようになった主題。
渡米以降、秀作が数多く描かれていることから、何らかの影響があったと考えられている。
パステル画の傑作「踊りの花形」などは、作品の保護のため別の展示室に架かっている。
Peter & Catherine’s Travel Tour No.460
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