ベルニーニからスタートすることにしたもののどの作品からと、またまた悩ましい。
そこで再び 「ボルゲーゼ美術館展」のホームページに目を移すと、“ シピオーネ枢機卿はベルニーニに 「アポロとダプネ」などの彫刻を依頼した ” と紹介している。
となればやはり、この作品からというのが妥当ということ?
扉を入って直ぐに大広間、右手への順路を進むとカノーヴァの 「バオリーナ・ボルゲーゼの肖像」。
そして、次の間から 「ダビデ」、次の間に 「アポロとダプネ」、その次の間には 「プロセルビーナの略奪」と、ベルニーニの傑作が続く。
その 「アポロとダプネ」(左)、愛と美の女神アフロディティの息子クピド(キューピッド)が悪戯に、恋をかき立てる黄金の矢でアポロ、恋を冷ます鉛の矢でダプネを射る。
生来?女性にだらしないアポロ、さらに恋に狂いダプネを追う。
捕らえられたダプネは嫌がり、河神の父ペーネイオスの助けで月桂樹に変身するというギリシャ神話がモチーフ。
アポロに捕まったダプネの指の先や脚の先から月桂樹に変わっていく瞬間が、これが大理石から刻まれた、紡ぎ出されたとの表現が妥当か。とは到底信じられないほど繊細に刻まれている。
彼自身 「大理石を純白の密蝋のように扱うことができる」と高言、鼻持ちならぬ生意気野郎だが、その大理石の像はまさに白蝋のごとく柔らかく絹のように滑らかだ。
イタリア・アカデミア美術館に立つルネッサンスの巨人ミケランジェロの 「<ダビデ>」とベルニーニの同作品 「ダビデ」(右)を比べれば、力強さには及ばないもののその柔らかさと繊細さは優れている。
指先、髪の先にまでその表現は行き届き、そして、何よりも運動性において巨人を凌ぐ存在なのだ。
ローマに行かれたら、ベルニーニの 「トリトーネの噴水」があるバルベリーニ広場からヴェネト通りの坂道を登り、広大なボルゲーゼ公園の一角、ボルゲーゼ美術館を訪ね、是非ご御一見あれ。
ベルニーニ、「プロセルビーナの略奪」も素晴らしかったのを思い出します。