パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

コン・ティキ ★★★.5

2014年05月01日 | DVD作品ーか行
ノルウェーの人類学者で海洋生物学者、トール・ヘイエルダールの実話を基に、太平洋の航海をダイナミックに描いた海洋アドベンチャー。南太平洋に浮かぶポリネシア諸島の人々の起源が南米にあることを立証すべく、ヘイエルダールが敢行したいかだ「コン・ティキ号」による8,000キロにも及ぶ旅を活写する。監督は、『ナチスが最も恐れた男』でコンビを組んだエスペン・サンドベリとヨアヒム・ローニング。危険を伴う壮大な冒険に挑む男たちの姿に圧倒される。
あらすじ:ノルウェーの学者、トール・ヘイエルダールは、第二次世界大戦後、現地への長期滞在をはじめ10年に及ぶ研究の結果、「ポリネシア人の祖先は南米大陸から海を渡ってきた」と推論。だが、無名の男が唱えた新設を誰も信じなかったため、やむなく自ら実証航海を決意する。
ヘイエルダールはインカ帝国を征服したスペイン人の図面を参考にし、古代インカでも簡単に手に入る材料を使用し、コン・ティキ号という名前のいかだを作る。そして1947年、ついにペルーからポリネシアまで約8,000キロに及ぶ航海に出発する。

<感想>「ラストエンペラー」「戦場のメリークリスマス」などを手掛けた名プロデューサー、ジェレミー・トーマスが16年越しの企画を実らせた、驚くべき実話に基づく海洋冒険映画。第24回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞に輝いている。ただし、北欧俳優の英語の巧さに感心する。

南太平洋のポリネシアの民族研究に取り憑かれた男が、自説のためにすべてを懸けた101日間の航海に挑む様を、端正にかつ爽快な演出で描いている。現代の造船技術や鋼材も使わない、1500年前とまったく同じ丸太と麻縄のイカダで、海流と風だけを頼りに8000Kmも太平洋を横断(漂流)するという野放図な試みは、いかにして成し遂げられたか?・・・「証明したいのは、海はバリア(障壁)ではなく道だということだ」とは、原作者の弁です。観終わった後、あなたは歴史の目撃者となるだろう。

記録1:無謀な航海に挑んだ6人の男たち。トールの幼馴染であるエリック、仲の悪い無線士トルスティン&クヌート、元冷蔵庫セールスマンで技術者のヘルマン、学者で写真家のベングトと、多様なジャンルから選び出したクルーも印象的です。そして、6人の男たちを乗せた柔らかいバルサ材のイカダの周囲には、獲物を狙って群れる狂暴なホオジロザメが、まるで「ジョーズ」ばりの迫力で旋回している。特に波間の小魚をついばもうとした愛鳥のオウムが一瞬で襲われ喰われてしまう場面は衝撃的です。

記録2:荒れ狂う嵐に仲間内でのトラブルも、エンジンはなく、操舵も出来ず、誰かが海に落ちれば救出はまさに奇跡。トールの滑落、神経をすり減らしたクヌートの狂気じみた行動、材木の浸水腐食めぐる争いなど、大自然の脅威のみならず人的な葛藤も見どころの一つです。
それでも、厳しいだけじゃない、美しい海の映像にウットリしますから。06年にトールの孫が」旅を再体験したイカダを借りて海上ロケを敢行し、そこに繊細なCGを追加して、トビウオの群れや足元をくぐる巨大なジンベイザメなど、息をのむ場面の連続に目を奪われます。
記録3:立ち塞がる最大最悪の難所に遭遇。艱難辛苦を経て南静起動海流に乗り、ポリネシアへ到達したクルーに迫る「ラロイア環礁」が目の前に現れる。あえて錨を沈め、連続する高潮の最大波に乗じて環礁を一気に乗り越える。その計画は、寸前に頼みのロープが切れる緊急事態に、・・・。
たいていの人が知っているに違いないコン・ティキ号の南太平洋横断の、事実再現物語である。16年前、トール・ヘイエルダールの生前から始まった企画として、その意思も反映しているようだ。
見渡す限りの海の中に浮かぶ小さな船。波の音しかしない夢の時間には、海を知る人、命がけの人しか同行させられないと。でも、コン・ティキ号の6名は知識なんてないのだ。プリミティブな好奇心でただ進み、成功するのである。

ですが、男の野望を遂げるためとはいえ、待っている奥さんと子供たちは、彼が生きて帰って来るのかさえ不安でならない。そして、成功の知らせを受けるも、妻とは離婚することになるとは、皮肉なものです。
意表をつくファーストショットから幕切れまで、陸上シーンも含めて撮影が圧倒的に素晴らしい。静寂の支配する場面が続く部分を、あわてず腰を据えて演出しているのも好ましく、ヘイエルダールの性格的欠点もきっちり描かれ、迫力のあるクライマックスのあと、爽快感のなかに、一抹のペーソスが残る味わい深さがある。

それでも難を言えば、出港の時には全員スーツ姿でビシッと決めポーズですから、それに、よくタバコを吸う場面が多い。ドキュメンタリーのように事実を追いながら、ドラマ的な見せ場やサスペンスで盛り上げようとしているため、作品としての仕上がりは、虚構でもなく再現記録でもない、どっちつかずのものになっている。
極めてユニークな企画であり、題材であるだけに、まことにとても誠実に作られた偉大な事柄の再現フィクションであることは確かなのだが、それがとても残念に思われる。
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