パピとママ映画のblog

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人生の特等席 ★★★.5

2012年11月25日 | さ行の映画
監督・主演作『グラン・トリノ』で事実上の俳優引退宣言をしていたクリント・イーストウッドが、4年ぶりに主演を務めたハートウォーミング・ドラマ。『マディソン郡の橋』以来17年にわたりイーストウッドから映画製作を学び、生涯でただ一人の弟子と認められそのDNAを継承するロバート・ロレンツがメガホンをとった。イーストウッドが演じるのは大リーグの伝説的なスカウトマン。その手腕に陰りが見えはじめ苦しい立場に立たされた彼に、長年離れて暮らしていたひとり娘が手を差し伸べる。疎遠だった父娘が仕事を通して絆を取り戻していく様子に、心の底から幸せになれる感動ドラマだ。

あらすじ:長年大リーグの名スカウトとして腕を振るってきたガス・ロベル。伝説のスカウトマンとして知られる存在の彼だったが、年齢のせいで視力が弱ってきていた。それでも引退する素振りを微塵も見せない彼に、球団フロントは疑問を抱き始める。
そんな苦しい立場のガスに救いの手を差し伸べたのは、父との間にわだかまりを感じ続けてきたひとり娘のミッキーだった。ガスはスカウトマンの誇りをかけ、父娘二人で最後のスカウトの旅に出る。 (作品資料より)

<感想>2012年5月で82歳になったクリント・イーストウッドの主演作である。「ミステック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」「グラン・トリノ」と10年の間の彼の仕事ぶりをみても、高齢になってますます磨きがかかって向かうところ敵なしといった風情が感じられる。
ただし、今回の監督は長年の制作パートナーであるロバート・ロレンツに任せて主演のみだ。たまたま読んだオリジナル脚本の「メジャーリーグのスカウトマン」という役どころに心を動かされて出演を決めたという。昨年はブラピの「マネーボール」で見たコンピューターによるスカウトマンの映画で、それとはまったくもって対照的な作品になっている。

見てみると、パソコンには頼らず、常に現場に立つという老スカウトマンのこだわり、さすがはイーストウッドだと唸らせられる演技。ぴたりと役にハマってさすがの貫録を見せつけ、最後まで飽きさせない。長身に野球帽はもとより、弱弱しいしわがれた声は、球団のお荷物と化した引退間近の老スカウトマンそのものである。
かつてのデーター全盛時代は、目利きで鳴らしたものの、昨今のハイテクの波には付いていけず、心配した弁護士の娘(エーミー・アダムス)が仕事もそこそこに最後のスカウト旅行に同行することに。
この老父と一人娘の旅で描かれるのは、父子のいびつな関係である。娘が幼いころに母親を亡くし、親戚や寄宿舎を転々とした娘と、仕事一筋で娘に寂しい思いをさせた父。互いのわだかまりを解きほぐすように娘は父親に歩み寄り、父も初めて娘の本心を知るといった展開だ。
イーストウッドにとっては、このような役柄は素で演じられるベテラン俳優であり、監督でもあるのだ。その大先輩の役どころを的確につかみ、なお且つ自らの役の複雑な内面を表現する娘役のエーミー・アダムスもさすがだと感心した。この女優さん、かねてから注目していたのだが、特に「ダウト/あるカトリック学校で」を見てからちょっと目が離せない存在になってきている。

幼いころから父親の仕事を見てきた娘が、父を喜ばせたくて弁護士になったのだが、実は自分にもスカウトマンとしての目利きが備わっていたことを気付かされる。だがいいことばかりではない。幼いころに一緒に仕事に付いてきた娘が、ある時納屋に連れられ男に乱暴される寸前を助け、その男をボコボコに殴り警察に捕まったことで、娘を親戚の家や寄宿舎のある学校へ入れたことを、男親としての気遣いからなのだが。それがやっと娘に話すことができ、そのことを映し出されるシーンでは、まさか娘が結婚しないのはそれがトラウマなのかと先走りしてしまった。
旅先で知り合った、元野球選手だったジャスティン・バレークのスカウトマンとの恋愛は、あまり重要ではないが、娘が最後に彼とうまくいくシーンで父親として安心したような、一抹の寂しさを見せるイーストウッドの演技が巧い。ここでも御大イーストウッドと並んでエーミーが劣らない演技を見せていると思う。
最後まで見てふと思ったのだが、イーストウッド監督ならどのように撮ったのだろう?・・・それも観たかったような気がして残念でならない。
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