パピとママ映画のblog

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忍びの国★★★・5

2017年07月06日 | アクション映画ーサ行
「のぼうの城」「村上海賊の娘」などの作家・和田竜の小説を実写化したアクション時代劇。伊賀忍者最強とされる男・無門が、織田信長の息子・信雄の軍勢と伊賀の国との戦いに身を投じる姿を追う。メガホンを取るのは、『ジェネラル・ルージュの凱旋』『予告犯』などの中村義洋。中村監督作『映画 怪物くん』などの大野智が、怠け者ながら腕は確かな主人公の忍者を演じる。大野の体を張ったアクションや、武力だけに頼らず知略を駆使した戦いの行方に目を奪われる。ナレーションを山崎努が務める。共演は石原さとみ、鈴木亮平、知念侑李、伊勢谷友介。監督は「予告犯」「殿、利息でござる!」の中村義洋。

あらすじ:戦国時代、忍びの国として名高い伊賀。超人的な戦闘能力を誇り、虎狼の族と呼ばれる伊賀忍者の中でも特に腕の立つという無門(大野智)は、怠惰な日々を過ごしては妻・お国に稼ぎのなさを叱責されていた。ある日、織田信長の次男・信雄が父ですら手出しするのを恐れていた伊賀への侵攻を、独断で開始する。無門に弟を殺されて伊賀への復讐(ふくしゅう)を果たそうとする下山平兵衛、伊賀の重鎮・百地三太夫や下山甲斐をはじめとする忍者たちの思惑や野望も入り乱れる戦いに、いつしか無門ものみ込まれていくが……。

<感想>物語は史実をベースにしている。歴史好きな、特に戦国時代マニアには有名な「天正伊賀の乱」で起こり得た出来事であります。血湧き肉躍る戦記としてだけではなく、滑稽な忍者集団の上層部に、金でいいように使われる下忍者たちの悲哀とシステムの矛盾を炙り出す作劇に、現代社会に似た構造を読み取ることもできます。

無門は忍びとしての生き方に疑問を抱いて侍になろうとした、下山平兵衛との戦いを通じて変わっていくのだが、最初の忍び同士の殺し合いは、本当に意味があるのかどうか。人を殺すことに作り手が悩むと、根源的な疑問が起きてしまうのだ。
忍者と侍、強いのはどっちだ!・・・この「忍びの国」を見ていたら絶対に迷うことなく前者だろう。それほどに主人公の無門は凄まじいまでに強いからだ。しかも殺気や威圧感を放つのではなく、拍子抜けするくらい飄々と、時には「面倒くせえ」とぼやきながら、相手を仕留めてしまう。

でも人を殺して何の感情も生まれないわけがない、平兵衛も弟の次郎兵衛を無門に殺されて、このシステムはおかしいと感情的になるし、無門も守るべき存在を失って、忍びとして生き方の矛盾に気づいたんじゃないかなと。守る者だったり、大切な人たちを殺されない限り、何とも感じないのは人間の愚かさかもしれない。

だから、“虎狼の族”の象徴のような無門も変わっていくわけなんですね。ですから、どんな時代であっても死を目の当たりにして何の感情も抱かない人はいないんじゃないかと思うのです。
主人公が恐妻家でも、やる気が有るのかないのか、演じているのでなく、無気力にしか見えないのは問題だが、原作の残虐描写を外して大野智くんが演じるのに相応しい、愛すべきキャラにすると忍者ごっこにしか見えないのが残念。「怪物くん」のコンビらしく「忍者ハットリくん」の実写リプートで良かったのではと思った。

それでも、大野くんは軽やかな身のこなし、跳躍はもちろんのこと、太刀筋を読んでかわしていく動きは、ステージで踊っているかのようにも映るのだ。
ドライな銭ゲバ忍者という設定はいいのに、主従関係よりは金で動くコマとした点が面白かった。これは原作の功だろう。
国を奪ったり譲ったり、という戦国時代の話なのだが、要するに織田信長の息子の独断専行をどう解釈するべきか、観終わって納得できずに悩むのだ。Hey!Say!JUMPの知念侑李が織田信雄の役を演じており、セリフも多いし立派に若殿を演じていたのに感心しました。

家臣の日置大膳には伊勢谷友介が見事にハマっていて、出番は少ないが北畠具教の國村隼も立派でしたし、下山甲斐 にはでんでんが、その息子の下山平兵衛に鈴木亮平が、織田の敵に寝返り味方の伊賀の忍びと戦うシーンなどが見ものですから。

その他にも、音羽の半六にはきたろうが、百地三太夫には立川談春が出演しているのも良かった。それに、忍者の頭目たちの頭脳戦もある。
それでもVFXとワイヤーアクションを組み合わせた合戦や、築城シーンは見応えもあるし、双焦点レンズ撮影も数か所で決めてくれて大満足でした。ですが、物語の核が弱いのだ。

何処にでも入り込める主人公「無門」が、妻のお国(石原さとみ)に閉め出されて自分の家にだけは入れない、というのは良かった。やっぱり、石原さとみさん綺麗でしたね。一番の見どころは、無門と下山平兵衛の鈴木亮平との戦いに尽きます。どちらかが倒れるまでの殺し合いといっていいくらいに、凄まじかったです。

最後に伊賀を滅ぼした後、「伊賀の国はなくなったが、伊賀忍者は滅びたわけではない。彼らの血は天下に散って、われらの子や孫にまで入って来るに違いない」と、日置大膳が言うのです。本当にいいこと言っているわ。
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