パピとママ映画のblog

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ローマでアモーレ ★★★★

2013年06月09日 | ら行の映画
巨匠ウディ・アレン監督が、古都ローマを舞台にさまざまな男女が繰り広げる人間模様を軽妙なタッチで描くロマンチック・コメディー。『タロットカード殺人事件』以来となるウディが自身の監督作に登場するほか、ベテランのアレック・ボールドウィン、『それでも恋するバルセロナ』のペネロペ・クルス、若手実力派ジェシー・アイゼンバーグ、エレン・ペイジら豪華キャストが勢ぞろい。コロッセオやスペイン階段などの名所をはじめ、普通の観光では訪れることがあまりない路地裏の光景など、次々と映し出される街の魅力に酔いしれる。

あらすじ:娘がイタリア人と婚約した音楽プロデューサーのジェリー(ウディ・アレン)は、ローマを訪れる。婚約者の家に招待されたジェリーは、浴室で歌う婚約者の父がオペラ歌手のような美声であることに驚く。一方、恋人と同居中の建築学生ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)の家に、恋人の親友モニカ(エレン・ペイジ)が身を寄せてくる。かわいらしい外見とは裏腹に恋愛に対しては積極的な彼女を、ジャックは少しずつ気になり始めていて……。

<感想>役者ウディ・アレンの復帰作であり、もちろん脚本、監督も。アレンが描いたローマへの、そしてイタリア映画とイタリア音楽へのラブレターの如き、愛すべき作品に仕上がっている。アレンが演じているのは、引退した音楽プロデューサー。愛娘の婚約者と両親に会いに、妻と共にローマにやってくる。飛行機が怖いのか、揺れる度に妻の腕にしがみつく。相変わらずの口達者で、観ていて痛快である。
婚約者の父親ジャンカルロは、現役のオペラ歌手ファビオ・アルミリアートが演じているのだが、シャワーの中で歌う声があまりにも見事なので、彼を売出して自分もカムバックを果たそうと画策するが、問題が一つあった。それは、ジャンカルロはシャワーを浴びながらでないと見事には歌えないのだ。ここから奇想天外な物語が展開する。
アレンはさすがに老けたが、身体の細かい動きよりも、微妙な表情はまったく衰え知らずで、細かい台詞のボケで大いに笑わせてくれる。「あなたは引退と死を同じもだと考えているのね」という妻のセリフには、手掛ける作品の多くに、死への恐怖が徹底して流れているアレンが、ひたすら映画を作り続けている理由が伺えて興味深い。

そして、ロベルト・ベニーニ演じる平凡な中年男レオポルドが、ある日突然全く何の理由もなくセレブに祭り上げられる。メディアが彼の日常をあれこれと報道し、街を歩けばパパラッチが群がり、美女はよりどりみどりとなるのだが、・・・映画の試写会に妻を同伴で行くも、奥さんの来ているワンピースやバック、靴下が伝線していることなど平気でレポートするパパラッチには腹が立つも、奥さんも夫が有名になったことで嬉しいらしく気にしてない。あまりにもちやほやされてる自分に酔いしれ、相手にされなくなって普通の自分に戻った時のギャップたるや。

有名建築家のアレック・ボールドウィンは休暇の最後に、かつて留学生活を送っていたローマを訪れ、若き日のジャック=自分、ジェシー・アイゼンバーグに出会う。エレン・ペイジは友人を頼ってアメリカからローマにやってきた女優志望の若い女性モニカ役を、ジェシー・アイゼンバーグは恋人の親友と知りつつも彼女に心惹かれて翻弄されてしまうジャック役を演じています。
ペイジは小悪魔的な女優さんと言う役柄。セクシーでありながらもありきたりのセクシーとは違う色気を表現できる女優さん。つまりマリリン・モンロー的にセクシーな女優ではダメなんですね。いわゆる静粛なるセクシーが演じられる女優さんで、空港のシーンで最初にモニカを観たとき、彼女はセクシーでもなければ美しくもないと思う。けれども彼女を知れば知るほど、興味がどんどん湧いてくる。だから、ジャックは彼女に夢中になってしまったわけ。
アレック・ボールドウィン扮するジョンは、ローマ市街で偶然出会ったジャックの前に幾度も現れ、モニカに誘惑されるなと警告します。ジョンが記憶の回廊を歩いて心の中で若き日の自分自身と出会い、その時何が起きて、どのように感じ、どんな過ちを犯してどれほど必死だったかを思い出している。昔の自分が、魔性の女に翻弄されているのを観て、苛正しさをおぼえ介入しようとするが、過去に起こってしまったことは取り返しがつかないのだ。
つまり、若き日の自分=ジャックとは違う、別の形で登場する若かりしのジャックの姿なんですね。この恋は、モニカと結婚まで決意したジャックなのに、彼女がNYで女優としての仕事が入り結局ダメになりフラレてしまう。サリーという同棲相手の恋人がいたのに、男って魔性の女に目移りするのはいけませんね。

ペネロペ・クルスは、ひょんなことから、田舎からローマに出てきた新婚カップルの妻ミリーとして行動する羽目になるコールガールで、アンナを演じている。今回はイタリア人と言う設定で、とびっきりの美女でもてもてのコールガールの役どころ。彼女のスマイルで、新婚の夫もあれよあれよと言う間に彼女の手練手管に参ってしまう。
新妻の方は、美容院へ行こうとホテルの外へ出て、迷子になり往年のイタリア人俳優、デブのハゲのサルタのファンだったこともあり誘惑されて、そのままホテルへと付いて行ってしまう。そのホテルで、強盗に出会い、中年俳優の妻まで現れてドタバタ騒ぎを起こし、最後はその強盗とベットインする新妻ってなんなの、乱れてるわよね。ペネロペとお寝んねする旦那も旦那だけどね。
展開される4つの物語に共通しているのは、どれも“セレブ”がなんらかの形でテーマとなっているということだ。アレン監督はすばり「セレブリティ」(98)という作品でおなじテーマを扱っているが、この作品はイタリアの巨匠フェリーニの「甘い生活」(パパラッチという言葉を生んだ映画)を強く意識した作品です。「セレブリティ」がダークな形のセレブ論だとしたら「ローマでアモーレ」は明るく楽しい、でもほろ苦さもあり、少しだけ毒も入っているセレブ論である。
最近はもっぱらヨーロッパ主要都市で映画を撮っているようだが、やはり絶賛するべきところは脚本でしょうか。映画ならではの手法を駆使せずに、言葉と描写と語りをメインにおく。でも、その街の表情や季節の移ろいとともに、その時の、その場所でしか起き得ない人間模様に、素晴らしい音楽のアンサンブルを着せて描いているのが好きなんです。
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