パピとママ映画のblog

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プラチナデータ  ★★★

2013年03月15日 | アクション映画ーハ行
全国民のDNAを元にした犯罪捜査システムが構築された近未来を舞台に、身に覚えのない殺人容疑で追われることとなった天才科学者を主人公にしたミステリー。出演は「GANTZ:PERFECT ANSWER」の二宮和也、「一枚のハガキ」の豊川悦司。監督は「るろうに剣心」の大友啓史。原作は東野圭吾の同名小説。

あらすじ:それは明日かもしれない、近い将来の日本。国策として、極秘裏に収集した全国民のDNAデータ“プラチナデータ”を利用した高度なDNA捜査が導入され、検挙率100%、冤罪率0%の社会が完成していた。皮肉屋で自信家の天才科学者、神楽龍平(二宮和也)は、警察庁に新設された特殊捜査機関“特殊解析研究所”、通称“特解研”に所属する犯罪捜査の専門家。所長・志賀孝志(生瀬勝久)指揮の下で数々の難事件を解決してきた彼は、DNA 捜査が通用しない連続猟奇殺人事件“NF13(Not Found13)”を担当することになる。だが、同一犯人と思われる手口によって、DNA捜査システムを開発した天才数学者の蓼科早樹(水原希子)とその兄・耕作も殺されてしまう。
遺伝子学教授の水上江利子(鈴木保奈美)が勤める新世紀大学病院から一歩も外に出なかった早樹。密室ともいえる状態で、犯行はどのように行われたのか?現場に残されていたわずかな皮膚片からDNA データの抽出に成功した神楽は分析を開始するが、適合率99.99%で容疑者として特定されたのは自分自身だった。一切身に覚えのない神楽は逃亡を決意。“追う者”だった神楽は、自ら手がけたDNA捜査によって“追われる者”となる。この事件の捜査担当となった警視庁捜査一課の浅間玲司(豊川悦司)は、現場叩き上げで豊富な経験を持つ敏腕刑事。DNA 捜査システムを掻い潜って逃走する神楽を追い詰めた浅間は、神楽の中に、もう1つの人格“リュウ”が存在していることに気付く。多重人格者であることを自覚していない神楽龍平とリュウ。永遠に出会うことのない2人にどんな秘密が隠されているのか?特解研の同僚、白鳥理沙(杏)のサポートを得て逃走を続ける神楽は、事件の裏に何かが存在していることを知る。神楽は白か黒か?真相は何なのか?全ての鍵を握るのは“プラチナデータ”。信じられるのは科学か、自分自身か……?

<感想>久しぶりに試写会に当選して13日に鑑賞。東野圭吾の小説は殆ど読んでいるので、この作品も1月に読みました。物語がDNAデータが国家に管理され、犯罪捜査のために使われている近い将来の日本を舞台となってましたが、さすがに「近未来」を映像にするのは難しい。
街の風景や小道具のデザイン、服装といった細部に至るまで、今とは異なる進化の有様を描きつつもやりすぎてはいけない。今とは確実に異質な世界ありつつも、今と地続きのディテールも保っていなければリアリティは生まれないからだ。惜しいですね、現代の東京ですよねこれは。
近い将来の日本、最先端のDNA捜査によって100%の検挙率が可能になりつつある世界を描いた本作もまた、“プラチナデータ”と呼ばれるそのDNA情報をめぐる科学者たちや、警察の組織の葛藤と悲劇をサスペンスフルに描いている。
ちなみに原作者の東野圭吾は映像化を前提に本作を発案したという。しかし、そのアイディアは暗礁に乗り上げ、映像化うんぬんを一旦白紙に戻して書き上げた結果、大ベストセラーになった。そんな本作を改めて映像化するにあたり、大友啓史監督は、大胆な脚色を試みているのだ。
それは、ここで描かれた未来が、いずれは過去になろうとも、根源のテーマは色あせずに残るだろうという仕組みにしたそうです。監督の作品には、常に時代性に揺るがされない一本の幹が存在するからだというのだ。そんな難しい近未来の映像化に挑戦した作品である。

自ら作り上げたDNA捜査システムによって身に覚えのない殺人事件の容疑者にされてしまう主人公の天才科学者、神楽龍平に二宮和也くんと、その神楽を追う敏腕刑事の浅間に豊川悦司が熱演しています。それにニノ君は今回二重人格者という設定で、別のリュウという人格はあらわれ、その演技も見どころの一つなんですが、二重人格の天才という演技力を問われる役なのに、わざとらしい飄々としたいつもの演技に見えるリスクもある。
ファンなもんで贔屓目に見てよく頑張っていると思います。でももう少しリュウの性格描写を上手に演じて欲しかったですね。だからなのか、さすがに刑事の豊川さんがいつもの実力を発揮して、ニノ君の演技が霞んで見えた。仕方ないか。

それに原作と違う部分は、水上教授の役が男なのに映画では、鈴木保奈美があのペチャアペチャ声で、「お母さんと呼んで」なんて下手な演技を披露してました。それに天才数学者の蓼科早樹(水原希子)も、リュウの前では“すずらん”という名でリュウの恋人みたいな、つまり彼女も二役をしなければいけなかったはずなのに、そのシーンはカットされていた。

さすがに神楽が犯人としての逃亡生活するところは、街の中では監視カメラがいたるところに張りめぐされて、すぐに神楽の居場所が分かってしまう。ところが、地方に逃げるとさすがに監視カメラは少なく、居場所が特定できずに逃げることができるのである。
この物語の中の天才科学者神楽龍平の境遇、父親が自殺をしてから哀しみのあまり、ある境遇に逃げ込まざるを得なかった繊細な心を持つリュウという人間の存在。父親は陶芸家で、父親の作品がコンピューターとロボットで再現された陶器を、贋作だと見抜けなかった自分に失望し命を絶ったのだ。その死に直面した息子龍平も、所詮人間の心など脆いものだと思い込むようになり、データーこそがすべてだと確信し、父親の作品でさえ結局はデーターの集積にすぎなかったと失望したのだろう。
だが、リュウはそうではなかった、父親の陶器を作る手こそ最大の宝物だと。だから手の絵を描き続けていたのだろう。
それが後で分かることなんですが、私にはそのリュウという絵を描く繊細な心を持つ人物が本当の神楽龍平で、水上の手で暗黙の内に出てきた天才科学者の神楽龍平こそ、心の内にいた人物だったのではないかと思った。しかし、この映画の中では神楽龍平なる天才科学者が表にでて活躍している。
そうこうしている内に白鳥も殺される。その犯人も同じNF13と同じ拳銃で殺しているのだ。そういうわけでまたもや、神楽が白鳥を殺した犯人と疑われるのだ。浅間が機転を利かして、白鳥の車から携帯電話を持ってきたことで、神楽からの電話を受け、新世紀大学病院の5階へと浅間が潜り込む。そしてリュウの描いた絵の中で、蓼科早紀を描いたと思われる女性像の絵の裏から見つけたモーグル。そのモーグルこそ“プラチナデータ”のことで、みんなが血眼になって捜しているデーターなのだ。しかし、そのデーターを解析するにはスーパーコンピューターに設置しなければならないのだ。
だが、よくよく考えてみればDNAによって人間存在のすべてが分かるわけじゃない。殺人犯にしても、DNAデーターで調べれば犯人を特定できるというシステムにも問題があるのじゃないかと思う。この作品で殺人事件が起き、邪魔な人間を犯人に仕立てて捕えさせる。ところが身近な人が犯人と分かって、そのデーターを流出させて金儲けを企む人間。
そして、蓼科早紀が死ぬ前に創ったプログラム=モーグル!これがいったい何処に、誰の手にあるのかが後半の騒動の根源になるモーグル。白鳥が神楽を助けて聞き出そうとしているのもモーグルのことで、水上も、警察も、神楽を犯人に仕立ててそのモーグルを手に入れようとしている。だが、そのモーグルなるものは、つまりDNAシステムが未完成で最後のパーツがモーグルの中にあるということなのか?、・・・それはNF13=未解決の連続婦女暴行殺人事件のこと。その殺人事件で使用されていた拳銃が、蓼科兄妹殺害に使われていた拳銃とNF13の物と同一だというのだ。

NF13の仕業と思われる事件はこれまで3件あり、いずれも若い女性の頭部を銃で撃たれている。さらに暴行の跡があり体内から犯人のものと思われる精液が見つかっているのだ。つまり3件は同一犯ということなのだ。今までDNAシステム捜査で検挙率100%と言っていた警察もこの事件に関しては手掛かりなしのお手上げ状態。それで神楽が共犯ということになる。しかし、真犯人が政治家の息子や官僚たち、大企業の関係者とかになると、彼らは自分の身内のDNA情報をすべてプラチナデータ化させているに違いないのだ。
「プラチナデータ」はシステムの網には引っかからない。いくら犯罪を重ねても。そこに自分の痕跡を残したとしても決して捕まらないのだ。原作では全部の殺人事件の犯人が水上教授だということなのだが、実際女の鈴木保奈美では拳銃で頭を撃ち暴行するなんて、そんな殺人事件なんて犯せない。それがモーグルの中に犯人の手掛かりとなるDNAがあるということなのだ。それにそれを改ざんして神楽を犯人に仕立て上げた真犯人像が明らかになると言うことも。
東野圭吾さんの原作に、ほとんど寄り添った作品に仕上がっていたので、最後まで面白く見る事ができました。
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