パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

永遠の0 ★★★★★

2013年12月22日 | アクション映画ーア行
零戦搭乗員の悲劇を描いた百田尚樹のベストセラーを、『ALWAYS』シリーズなどの監督・山崎貴が映画化した戦争ドラマ。祖父の歴史を調べる孫の視点から、“海軍一の臆病者”と呼ばれたパイロットの真実の姿を、現代と過去を交錯させながらつづっていく。主人公の特攻隊員役に、『天地明察』『図書館戦争』などの岡田准一。現代に生きる孫に三浦春馬がふんするほか、井上真央や夏八木勲など若手からベテランまで多彩な俳優が共演する。生と死を描く奥深い物語はもちろん、サザンオールスターズによる心にしみる主題歌にも注目。
あらすじ:祖母の葬儀の席で会ったことのない実の祖父・宮部久蔵(岡田准一)の存在を聞いた佐伯健太郎(三浦春馬)。進路に迷っていた健太郎は、太平洋戦争の終戦間際に特攻隊員として出撃した零戦パイロットだったという祖父のことが気に掛かり、かつての戦友たちを訪ねる。そして、天才的な技術を持ちながら“海軍一の臆病者”と呼ばれ、生還することにこだわった祖父の思いも寄らない真実を健太郎は知ることとなり……。
<感想>原作は読んでませんが、これから読みたいと思ってます。冒頭で祖母の葬儀の席で号泣する祖父役の故・夏八木勲さんの顔を拝見して、幾つか亡くなる前に撮られた作品希望の国にも出演していましたが、この映画の中の夏八木勲さんは最高の顔をして演じていました。そして、現代のパートを重厚に彩る田中泯、山本学、橋爪功の名優たちの存在にも感服です。

それから孫の三浦春馬くんと吹石一恵さんとが、祖父から実の祖父が居ることを話して聞かされ、もう一人の祖父宮部久蔵を調べていくうち、「海軍一の臆病者」と呼ばれた零戦パイロットの祖父の真相を訪ねて歩く過程を描いています。
家族のもとへ帰ることに執着し、零戦乗りのパイロットがなぜ特攻出撃したのか、宮部の血を引く現代の若者が、かつての戦友たちを訪ねてゆく。そこで明かされる宮部の人柄と、臆病者、卑怯者とののしる人たちや、立派な人だったと答える人たちもいることに考え深い印象を受けました。

確かに海軍時代には、臆病者と言われていたわけですけど、高い技術を持ったパイロットだったわけで、闘うこと自体に恐れを抱いていたわけではない。ただ、“戦う哀しさ”を知っていた男として、自分が死んでしまったら、妻と子供の生活はどうなるのかということを一番恐れていたのでは。
それに、自分は死にたくないと言いましたが、周りの人間にも死んでほしくないと思っていたわけで、この時代は赤紙が来たら有無を言わずに戦地へ行き、お国の為に死を覚悟することは当たり前のこと。しかし、やっぱり生きて帰りたいという、心の中では信じていることで、それを口に出して言うのは確かに「臆病者」だと呼ばれても仕方がないこと。

たった26年間という短さ宮部久蔵の生涯。1041年の12月の日米開戦=真珠湾奇襲攻撃から実戦に参加している彼は、妻子のために必ず戦場から生きて帰ることを誓うのだが、そこまでは理解できるし、またその種の展開は日本の戦争映画の定番でもあるんですね。宮部久蔵を演じた岡田准一さんの光輝くオーロラが、最後に特攻としての役目を果たす場面に、涙がこらえきれずに無念の気持ちを汲み取りました。
もっとも戦場から生きて帰るためには、戦いを避けて通ることは出来なかったという苦渋の事実も訴えられており、そこに戦争の悲劇を見出して欲しいという作り手側の思いも込められているのではないかと考えられます。
宮部は卓越した操縦技術をもって、一見その苦渋から逃れることに腐れきった男のようにもとれますが、それを成し遂げられるようにズルをして地上に戻ったらどうなるのだろう?・・・。“卑怯者”の烙印を押されるくらいですまされない、現実には同胞たちから袋叩きに遭い、下手すればリンチで殺されてもおかしくないでしょう。そこまでいかなくても、上官に報告されて、それなりに処罰を受けるのが相応であろうに。

それが、歴戦の凄腕であればあるほど尚更で、戦わないだけならまだしも、仲間が見殺しになるような光景をも、遠くから眺めていたのだろうか、そういう時には戦っていたのか定かではなく、こういった部分が省略されているのが不満である。戦争のパートには、妻役の井上真央、海軍の濱田岳、染谷将太らが熱演。
やはり、あり得ないと思う。こんな男が戦時中にいたとは、信じがたい。自ら特攻を志願するまで生き延びていたとは思えない。戦時中に国家に対してここまで堂々とものを言える男が軍隊にいるはずがないと。でも、その一方では、こういう男が一人くらいいて欲しいという願望の現れだったとしたなら、それはそれで英雄賛歌のファンタジーであると思う。

戦後65年を過ぎ、戦争を知らない世代が国内の大半を占め、しかもあろうことか、近隣諸国との緊張関係が再燃し始めている。特に若い世代に戦争の悲惨な災いを知らしめるには、それが事実であろうとなかろうと、生きるために戦う戦士を描くよりも、生きるために戦いを放棄した戦士を描いた方が得策ではあるのだろうと認識しました。
CGと実寸模型で再現したリアルな零戦と空母。海軍の赤城の下半分と甲板の一部はオープンセットを建造。これにCGを合成して全長260m超の巨大空母を作り上げたというのだ。
まだ上映している映画館もある宮崎駿監督作「風立ちぬ」が大ヒットしているが、戦争を忌まわしいと言いつつ、戦闘機が大好きで大空を飛ぶ零戦闘機を画面に大きく出して、好きという矛盾を暴露した。しかし、自己矛盾は何も彼だけではないのだ。桑田さんの「蛍」がまたいいですね、エンドロールでも誰も席を立たずに余韻に浸ってました。
2013年劇場鑑賞作品・・・349 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング