パピとママ映画のblog

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ザ・プレイス 運命の交差点★★★

2019年05月08日 | アクション映画ーサ行

アメリカのTVドラマ「The Booth ~欲望を喰う男」を「おとなの事情」のパオロ・ジェノヴェーゼ監督が、ヴァレリオ・マスタンドレア、マルコ・ジャリーニ、アルバ・ロルヴァケルらイタリアを代表するキャスト陣の共演でリメイクした不条理ドラマ。ローマのカフェを舞台に、そこに居座り続ける謎の男が、訪れる相談者たちの不可能と思える願いを聞き入れ、それを叶える条件として途方もない課題を与えるさまと、次第に交差していく相談者それぞれの運命の行方をミステリアスな筆致で描き出す。

あらすじ:ローマにあるカフェ“ザ・プレイス”。そこに分厚い手帳を手にした謎の男が居座り続けていた。男のもとには、入れ代わり立ち代わり9人の訪問者がやって来る。男はどんな願いでも叶えることができるという。ただし、そのためには男が与える課題を遂行しなければならなかった。ところがその課題は、息子を癌の病気から救いたいと願う父親には見ず知らずの少女を殺せ、アルツハイマーの夫を助けたいという老婦人には人が集まる場所に爆弾を仕掛けろ、視力を取り戻したいという盲目の男には女を犯せ、といったあまりにも支離滅裂で非情な無理難題ばかりだったのだが…。

<感想>欲望の代償は、他人の運命。舞台はあるカフェ(ザ・プレイス)の店内のみである。しかも主人公は座席から一歩も動かないのだ。どうしてわざわざ映画でこんな無謀な試みをするのか?・・・TVドラマでもいいだろうに。

しかし、よくよく観れば、この状況って、何かに似ていないか?・・・。それは映画館の座席と観客である。上映中の観客は基本的に限られた空間に留まり、席を立たないからだ。

それぞれの声をセリフにすれば会話劇だって成り立つと思うのだが。問題は主人公の男を演じる居心地の悪さなのだ。正体不明の男の抱く嫌悪感は、無名の傍観者でいることによって、高みからスクリーンを見物している、自分自身へのそれと同じなのだから。

現代演劇の良くできた戯曲かと思ったのだが、米国のテレビドラマが原作ということで驚いてしまった。相談者に課題を与えて、望みを叶えてやる主人公の男は、いったい何者なのか。どうして相談者たちは、カフェに座っているこの男に相談をしに来るのか。

この男の説明がないので、いろいろと余白を想像で埋めることができる。カフェに限定されている空間を描くために、スタジオセットかと思うほど考える限りのアングルやフレームサイズ、人物の動線を駆使していて、映像を演出する側の挑戦が感じられた。

生きている限り、人間は何らかの欲望や願望から逃れられないと思っている。けれども、それが叶えられるとなると、そのために強盗をするだろうか?・・・。

人が集まる場所に爆弾を仕掛けるだろうか。もちろん、謎の主人公が次々とやって来る相談者に課すこれらの課題は、殺人やレイプ、爆弾テロなどの犯罪行為ばかりではなく、すべては伏線である。まるで悪魔の囁きのようにもとれる。

カフェの店員である女、アンジェラは名前の如く天使を象徴しているのだろう。だから、主人公の男が相談者に無茶な課題を与えるのは、実際に言われた通りにすれば地獄へ落ちるということなのか。天使がいつもその男を見守っているので、その課題を与える男は悪魔ではなさそうだ。

ワン・シチュエイションで紡ぐこの会話劇は、人生の哲学書の趣があると思った。誰もが楽しめるとは言えないのが難点なのだが、伏線の読み解きに没頭する至福をたっぷりと堪能できるのであります。

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