パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

バケモノの子 ★★★.5

2015年07月13日 | アクション映画ーハ行
『サマーウォーズ』などの細田守が監督を務め、人間界とバケモノ界が存在するパラレルワールドを舞台に孤独な少年とバケモノの交流を描くアニメーション。人間界「渋谷」で一人ぼっちの少年と、バケモノ界「渋天街」で孤独なバケモノ。本来出会うはずのない彼らが繰り広げる修行と冒険を映す。バケモノと少年の声を役所広司と宮崎あおいが担当するほか、染谷将太や広瀬すずら人気俳優が声優として名を連ねる。不幸な少年が身勝手なバケモノとの出会いにより成長し、絆を深めていく感動的な物語に期待。
あらすじ:人間界「渋谷」とバケモノ界「渋天街」は、交わることのない二つの世界。ある日、渋谷にいた少年が渋天街のバケモノ・熊徹に出会う。少年は強くなるために渋天街で熊徹の弟子となり、熊徹は少年を九太と命名。ある日、成長して渋谷へ戻った九太は、高校生の楓から新しい世界や価値観を吸収し、生きるべき世界を模索するように。そんな中、両世界を巻き込む事件が起こり……。

<感想>人間界の「渋谷」と、裏側には「渋天街」というバケモノの世界があるという設定。母親を交通事故で喪った少年、父親とも生き別れた孤独な少年が、渋天街に迷い込み、バケモノに弟子入りするのだ。強くなるために。普遍的な成長物語でもあるし、「父と子」というテーマが描かれること。これは前作の母と子を描いた「おおかみこどもの雨と雪」と、対になるテーマのようにも思えた。
映画は二部構成で紡がれる。前半は、9歳だった少年は、後半では17歳になっている。前半部分の九太の声を宮崎あおいが、後半では17歳ということもあってか、染谷将太が声優をしている。

師匠の熊鉄は粗暴だが、一本気で、少年は無我夢中、見よう見真似で強さを体得していく。しかし、思春期を迎え、見限っていたはずの人間界への想いが、劇中で人間界の渋谷に戻り、女子高生のカエデという女の子が出て来て、図書館で、同年代の九太と一緒に、ハーマン・メルヴィルの「白鯨」を読む。9歳から学校へ行ってない蓮は、難しい「白鯨」の字が読めずに困っていると、カエデが国語の漢字やその他の数学、英語、理化、社会などをその図書館で教えてくれるのだ。ということは、カエデも九太の師匠の一人なんですね。カエデの声は広瀬すずで、始めは違和感があったが、だんだんと慣れてきて最後にはいい感じでした。

とにかくも、ふてぶてしくも魅力的な、熊鉄の声の役所広司さんが上手くて、ついつい引き込まれてしまって、蓮=九太がバケモノの街へ行くところは、宮崎駿さんの「千と千尋の神隠し」のような風景画で、クジラが出てくるところや、一郎彦の風貌はにそっくりなような感じで、真似をしているような感じを見受けました。ですが、細田監督とジブリとは深い関係が築いているようでもあるわけで、ですから、影響を受けているのかもしれませんね。

他にも、宗師に津川雅彦さんが、猿の大泉洋と豚のリリー・フランキーの声優さんが、そして、渋谷の路地で見つけた、小さな白いフワフワな小動物のチコは、もしかして亡くなった母親の転生の姿なのかもしれませんね。だから、きっと九太の心の癒しになっているはずです。
しかし、物語は、バケモノ界の住人たちは、心の“闇”から自由になれない人間を憐れんでいるわけで。そう、バケモノからすれば、人間はとても未成熟で、不出来な生き物なわけ。
本来は共存なんてあり得ないのだが、しかし、師匠の熊鉄はそれを押し通すわけ。人間の子供をバケモノの子供にしようと。

九太が熊鉄の自己流の技を日常生活の動きを真似することでマスターしていく様は、まるで「ベストキッド」さながらの、師弟の間に親子にも似た絆が深まっていく心温まるものがあります。

劇中で熊鉄と猪王山が、次期宗師をめぐって繰り広げる激闘シーンがあります。刀の鞘を抜かないで技と技のハイレベルな攻防戦にはじまり、それぞれが、熊と猪に似た巨獣に化けた姿での究極の力比べなども見せ場ですね。
終盤では、人間の子供である九太と一郎彦の、心の“闇”が暴走することで、映画はとんでもない展開を迎えます。しかし、細田監督は一切断罪と行わないのだ。蓮と対峙する一郎彦も人間の子供で、捨て子だったのを拾って育ててくれたのが、イノシシの猪王山なのだ。

渋谷のスクランブル交差点に出てくる大きなクジラが、まるで「「千と千尋の神隠し」」のバケモノに見えたのだが、それが水のように青く光り飛び跳ねる。そして、人間の心に黒い闇がぐるぐるとどす黒い渦を巻き、まるで悪魔のような人間の心を現しているのだ。
例えば、バケモノが優れている、人間は劣っている。だから人間はバケモノのように生きなければいけない、などとは強調しないのだ。
バケモノたちは、妬み、怒り、恨みや復讐などという心に宿ることはないのだろうか。人間は時として、誰かを妬んだり、恨んだりして復讐しようと同じ人間と殺し合うのだ。それに、この世に生を受けて産まれてきたのに、生きるのに絶望して自分で命を絶つこともある。
そして、人間の蓮と一郎彦の決闘が始まるのだ。何という愚かな行為だろう、取り返しのつかないことがそこでは起きる。しかし、誰の事も決して否定はしない。何かを否定せずに、何かを肯定することはできるのではないか。その可能性を証明するために、あらゆる描写が総動員される。

蓮は、一郎彦の黒い“闇”を自分の心に取り込もうとするも、バケモノの父親熊鉄の力が刃の神様となって、身代わりに一郎彦の心の“闇”の中へと突進していくように思えました。あの熊鉄が、まるで我が子を守るかのように蓮の心の”闇”を炎の刃となって真っ黒な心の”闇”を明るく照らしているようにも見えて、頼もしく感じましたね。
このラストでは、まるで「サマーウォーズ」で感動したような、大きな水色に輝くクジラの尾びれが輝いて見えて、同じように心に響きました。
それに、蓮も元の人間界へ戻る道を見つけて、別れていた父親と再会し、打ち解けあい、カエデの協力もあり大学へ進学するべく勉強に励むのであります。
人間も動物も、子育ては大変なはずです。だから、子供を育てていく過程で育む愛情や、絆も生まれて、子供が成長していく姿に感動するはずです。

時をかける少女
サマーウォーズ

おおかみこどもの雨と雪

2015年劇場鑑賞作品・・・140映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング