パピとママ映画のblog

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清須会議 ★★★★.5

2013年11月11日 | アクション映画ーカ行
数々のヒット作を作り出してきた三谷幸喜が、およそ17年ぶりに書き下ろした小説を自ら映画化した群像喜劇。本能寺の変で織田信長が亡くなった後、織田家後継者と領地配分を決めるために、柴田勝家や羽柴秀吉らが一堂に会した清須会議の全容を描く。役所広司演じる勝家と大泉洋ふんする秀吉の主導権争いを軸に、それぞれに思惑を秘めた登場人物たちが駆け引きを繰り広げていく。そのほか佐藤浩市、妻夫木聡、浅野忠信、西田敏行ら豪華キャストが勢ぞろいする。
あらすじ:本能寺の変によって織田信長が亡くなり、筆頭家老の柴田勝家(役所広司)と羽柴秀吉(大泉洋)が後見に名乗りを上げた。勝家は三男の信孝(坂東巳之助)、秀吉は次男の信雄(妻夫木聡)を信長亡き後の後継者として指名し、勝家は信長の妹・お市(鈴木京香)、秀吉は信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介)を味方にする。そして跡継ぎを決めるための清須会議が開催されることになり、両派の複雑な思惑が交錯していく。

<感想>三谷監督の宿願の時代劇映画、前作の「ステキな金縛り」の公開の際に次回作は時代劇でと公言していたそうで、もっと早くに撮りたかったのだとか。といっても、派手な合戦があるわけでも、迫力のある殺陣が登場するわけでもない。でも、実話なのに、余りにも面白くて、大いに笑わせて頂きました。
なんと取り上げた題材は、信長亡き後に開かれた首脳会議。そう実に演劇的空間を生かした作品になっている。そして、そこで展開するのは、戦国武将たちが合戦ではなく会議で、しかも身内と丁々発止するという歴史上稀に見る珍事を映画にした実に面白い内容です。

会議に参加する4人の重臣役には、役所広司の柴田勝家、羽柴秀吉大泉洋の羽柴秀吉、小日向文世の丹羽長秀、佐藤浩市の池田恒興がキャスティングされた。
忠誠心と野心の衝突は、ともすれば深刻で陰鬱な陰謀劇となるのですが、そこは三谷作品ですから。思わず笑いが込みあげるシーンも多く、吹き出してしまいそうになる会話の妙が絡み、実在の人物もほどよくキャスティングされて、三谷ワールド全開の成熟した笑いの粋があります。

この作品での主人公は丹羽長秀なんでしょうが、戦国武将っぽくない穏やかな顔つきで、小日向さんの演じられた丹羽長秀は、会議の中で沈黙するシーンがあるのですが、良かったですね。

まず、信長が死んで周囲が右往左往している中で、戦いじゃなくて話し合いで歴史が動いたという、これって、勝家と秀吉の話でもあるんですけど、一番ドラマチックなのは、会議の行方を左右する丹羽長秀の言動でもあるのです。

中でも体育会系みたいな柴田勝家が、お市との恋愛沙汰で歴史に残っているなんて、本人にとっては恥ずかしいだろうに。中々いないですよね、純愛で歴史に残っている武将なんて。秀吉が大嫌いなお市の方が、女を武器にして勝家をあっという間に手玉にとってしまう。史実では後に夫婦になる二人だが、やはりこの駆け引きが大きかったのではと思う。でも、お土産に香の物が好きだと聞き、らっきょうを持参してくる無粋な男だから、お市さまの言葉にメロメロになるのは時間の問題でした。

それに対して悪知恵の働く秀吉は、信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介)を抱え込むだけでなく、あっと驚く機転を利かせて会議を有利な方向へと導いていく。始めは信長の次男である妻夫木聡演じる信雄を後継者として推薦するが、どうにも脳天気なうつけもので、海岸で旗取り合戦をした時に、「俺って、足の速さには自信があるんだ」と、旗を取らずにそのまま通りすぎてしまう大馬鹿もの。それを見て秀吉は頭を抱える。これでは勝家に負けてしまう。帰り道で偶然、松姫と三法師を見つけはっと知恵が回るのです。

それは、信長の長男信忠、本来ならば後を継ぐべき存在だったが、父と共に本能寺にて討ち死にする。その遺児である山法師を世継ぎに推すれば、まだ幼いから自分が後継人となるわけ。
大泉洋が演じる秀吉は、おちゃらけな雰囲気と陰気な顔とを見せて、勝家役の役所広司は、体臭と口臭がひどい男に見える演技で2人の相違点を際立たせつつボケとツッコミのようなコメディ仕立てで面白かった。

信長にサルではなくて、ハゲネズミと呼ばれていたそうで、秀吉の一族はオデコと耳を強調してひょうきんな顔になっている。織田一族は鷲鼻で血縁を表現したという。
それに対して、清須会議を取り仕切る、でんでん演じる前田玄以が4人の評決を取るのだが、そこで、佐藤浩市演じる池田恒興が、打算的な性分で自分の意見をはっきりと言わず、分の良い方に頷くという算段。旗取り合戦では、勝家と秀吉のどっちにもいい顔をしたいので、嘘の肉離れ離脱ネタなどで、ある意味すごく現代的かもです。
そして何と言っても舞台のセットと衣装が凄い。豪華な居室のセットは、よーく見ると中庭を挟んで向かい合っている点にご注目あれ。陰謀めいた内輪話もこれでは丸聞こえ。凝った内装もさることながら、馬鹿げた配置をさりげなく施しているあたりは、三谷喜劇のセンスが輝いて見えるのも素晴らしい。
そうそう受けたのが、戦場から清須城へ向かう途中で、会議に急ぐ左近が西田敏行扮する更科六兵衛と出会うシーンがあるんですね。映画「ステキな金縛り」で演じた落ち武者の幽霊です。他の三谷作品との思わぬリンクが楽しいですよね。
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