安倍首相が,「今国会で国民投票法を成立させる」と宣言したことから,にわかに活気だってきました。そして,憲法改正賛成派,反対派との間のバトルもだんだん激しいものになってきました。
国民投票法、与党修正案を衆院に提出(朝日新聞) - goo ニュース
一方で,「そもそもこの法律って何?」「どんな内容なの?」「中身が報じられないから善し悪しが分からない」等という疑問などをお持ちの方も多いかと思います。
そこで,今回は,国民投票法案について,かいつまんで説明したいと思います。
ただし,自民党案,民主党案及びそれぞれの修正案が提出されており,ここ数日でいろいろな動きがあることから,ここでは自民党案を基準に説明しますが,一部修正案や民主党案との違いの部分については,その都度適時していきたいと思います。
なお,正式な法案などについては,「憲法調査会」のHPを参照してください。
また,憲法改正の流れなどについては,私の過去の記事「よく分かる(?)シリーズ憲法改正」を参照してください。
1 そもそもこの法律は何か
憲法を改正するためには,衆参それぞれの議会において総議員の3分の2以上の賛成により発議します。そして,それに基づいて,国民投票によりその過半数が賛成すれば,初めて憲法改正が可能であると憲法上定められてします(96条)。
ところが,今までは,その国民投票のための法律が存在しなかったため,事実上憲法改正ができない状態にありました。
そこで,この法律により,国民投票のための手続を定めることとなったのです。これにより,憲法改正の手続が行えるようになります。
2 この法律の内容は何か
簡単に言ってしまえば,「誰が投票できるか」「どのように投票するか」「過半数の判断など投票が有効か無効かは誰がどのように決めるのか」「どのような形で改正案を周知するのか」「投票に向けての運動は誰がどこまででき,また何が禁止されているのか」「投票が間違っていた場合の救済策はどうするのか」などが規定されています。
以下,具体的に見ていきます。
3 誰が投票できるか
当初は20歳以上(選挙と同じ)となっていましたが,民主党案を踏まえて,18歳以上とすることになりそうです。
ただし,公職選挙法や民法と絡むことから,この辺について更なる調整作業が発生する見込みです。
ちなみに,反対意見としては,「国民投票は有権者としての究極の意見表明の場なので,選挙権の年齢と別になるのはおかしい」というものがあります。
4 どのように投票するか
基本的には選挙と同じです。ただし,次の点が選挙とは違いがあります。
(1) 投票は改正案をまとめて「賛成」「反対」を答える
(2) 投票では,まるばつ(与党案),まるか白紙(民主党案),賛成反対のいずれかに丸をつける(修正案)となる見込みです。
いずれにしても,二者択一となります。
ちなみに,反対意見としては,「一括してイエス,ノーを聞くことは,ある項目には賛成だが,ある項目には反対という者の意見が反映されず,憲法違反だ」「国民の意見を問う以上,国民からの自由意見の記載も認めるべきだ」などがあります。
5 過半数の判断など投票が有効か無効かは誰がどのように決めるのか
選挙と同じく,開票結果を踏まえて選挙管理委員会が発表します。そこで,賛成票が過半数となれば,憲法改正案は承認されたとなります。
そこで,過半数の定義が問題となっています。
現在の案では,「有効投票数の内,賛成に投じた票が過半数」とされています。一方,民主党案は,当初「投票総数の内,賛成に投じた票が過半数」としていました。すなわち,民主党案の方が過半数のハードルが高かったと言うことになります。ただし,民主党も,与党案で妥協する見込みです。
さらに,今回の法案では,「最低投票率制度」は採用しませんでした。すなわち,投票率が極端に少なかった場合でも,有効となるとしています。
ちなみに,これらの反対意見として,「過半数は有権者全員を基準にしてその過半数とするべきである」や「最低投票率制度を導入しなければ,低い投票率でも憲法改正が可能となり,国民の総意によるとは言えないのではないか」などがあります。
6 どのような形で改正案を周知するのか
国民投票に向けての周知は,憲法改正広報協議会が行います。これは,国会議員により構成されるもので,委員会同様,取得議席数に応じて割り振られます。
また,この協議会が,説明会や広報原稿を作成しますが,この説明会や原稿には,賛成意見及び反対意見を中立公正に扱うこととなります。
ちなみに,これらの反対意見として,「取得議席数比率による協議会では,実質3分の2以上が賛成者により占められることになり,果たして本当に中立公正な広報活動が行えるのか疑問である」などがあります。
7 投票に向けての運動は誰がどこまででき,また何が禁止されているのか
(1) 国民投票の運動は,誰でも自由にできます。ただし,次の者はできません。
ア 投票管理者や選挙管理委員会関係者
イ 裁判官,検察官,警察官(ただし,民主党案では運動可能としており,現在調整中)
ウ 公務員,教員(ただし,民主党案では除外していたが,どうやら修正案では原則禁止としつつ,罰則は設けないという形になりそうである)
(2) 政党は,議席数の比率に応じた時間,無料でNHKで宣伝活動を行うことができます。
(3) 次の事項は禁止,違反となります。
ア 国民投票7日前からテレビなどを用いての宣伝活動
イ 組織ぐるみでの買収活動(民主党案は組合つぶしと主張してこの行為を違反としない)
ウ 公務員による投票妨害
エ その他の投票妨害活動
(4) ちなみに,これらの反対意見は次のとおりです。
ア 公務員は憲法改正の利害関係が大きいだけに,国民投票活動の制限はおかしいのではないか。
イ 政党の無料放送が議席に応じて時間が異なるとなれば,実質的には3分の2以上が賛成である以上,反対意見の放送が全体の3分の1以下となってしまい,公平性に欠けるのではないか。
ウ 誰でもお金を出せばテレビなどメディアを使っての宣伝活動ができるとなると,資金のあるものは手広く意見広告をまくことが可能となり,結果として「お金のある者の意見」が勝つという結果にならないか。
エ 組織活動(労働組合など)による国民投票運動を萎縮させることにならないか。
8 投票が間違っていた場合の救済策はどうするのか
国民投票の手続に違反があった場合,公務員の投票活動運動や投票妨害活動により多数の人が自由な意思による投票を妨げられた場合,賛成又は反対の投票数について誤りがあってそれが結果に重大な影響を及ぼす場合は,高裁に対し投票無効の訴えを提起することができます。
ただし,濫訴による事務遅滞の防止を図るため,この訴えを提起しても,憲法改正の手続は判決が確定するまでは止まりません。
そして,訴訟の結果,無効と判断された場合は,改めて再投票又は更正決定をすることができます。
ちなみに,これらの反対意見として,「単純な数え間違えが発覚した場合でも,現在の選挙のような再集計の申立や投票用紙の確認を認めないで一律訴訟とするのは,負担が大きすぎるのではないか」というものがあります。
以上です。これらの制度及び反対意見を踏まえて,今後の議論を真剣に見守り,検討していくことが大事です。
ちなみに,4月5日に国会において公聴会が開かれます。興味のある方は,3月30日までに意見申出もできるようなので,検討してみてはいかがでしょうか(詳細はこちらをご覧ください)。
よろしければ1クリックお願いしますm(__)m→人気blogランキングへ
TB先一覧
http://kurumachan.seesaa.net/article/37021688.html
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/b2609e550815485bdb5e16349d257122
http://dr-stonefly.at.webry.info/200703/article_17.html
http://blog.goo.ne.jp/zzzmain/e/054e041aa3adc1ac2cc847700df61e38
http://kurumachan.seesaa.net/article/37830782.html
http://kurumachan.seesaa.net/article/38453167.html
http://blog.goo.ne.jp/zzzmain/e/c529c884dd07a0ec8169772a17a15380
国民投票法、与党修正案を衆院に提出(朝日新聞) - goo ニュース
一方で,「そもそもこの法律って何?」「どんな内容なの?」「中身が報じられないから善し悪しが分からない」等という疑問などをお持ちの方も多いかと思います。
そこで,今回は,国民投票法案について,かいつまんで説明したいと思います。
ただし,自民党案,民主党案及びそれぞれの修正案が提出されており,ここ数日でいろいろな動きがあることから,ここでは自民党案を基準に説明しますが,一部修正案や民主党案との違いの部分については,その都度適時していきたいと思います。
なお,正式な法案などについては,「憲法調査会」のHPを参照してください。
また,憲法改正の流れなどについては,私の過去の記事「よく分かる(?)シリーズ憲法改正」を参照してください。
1 そもそもこの法律は何か
憲法を改正するためには,衆参それぞれの議会において総議員の3分の2以上の賛成により発議します。そして,それに基づいて,国民投票によりその過半数が賛成すれば,初めて憲法改正が可能であると憲法上定められてします(96条)。
ところが,今までは,その国民投票のための法律が存在しなかったため,事実上憲法改正ができない状態にありました。
そこで,この法律により,国民投票のための手続を定めることとなったのです。これにより,憲法改正の手続が行えるようになります。
2 この法律の内容は何か
簡単に言ってしまえば,「誰が投票できるか」「どのように投票するか」「過半数の判断など投票が有効か無効かは誰がどのように決めるのか」「どのような形で改正案を周知するのか」「投票に向けての運動は誰がどこまででき,また何が禁止されているのか」「投票が間違っていた場合の救済策はどうするのか」などが規定されています。
以下,具体的に見ていきます。
3 誰が投票できるか
当初は20歳以上(選挙と同じ)となっていましたが,民主党案を踏まえて,18歳以上とすることになりそうです。
ただし,公職選挙法や民法と絡むことから,この辺について更なる調整作業が発生する見込みです。
ちなみに,反対意見としては,「国民投票は有権者としての究極の意見表明の場なので,選挙権の年齢と別になるのはおかしい」というものがあります。
4 どのように投票するか
基本的には選挙と同じです。ただし,次の点が選挙とは違いがあります。
(1) 投票は改正案をまとめて「賛成」「反対」を答える
(2) 投票では,まるばつ(与党案),まるか白紙(民主党案),賛成反対のいずれかに丸をつける(修正案)となる見込みです。
いずれにしても,二者択一となります。
ちなみに,反対意見としては,「一括してイエス,ノーを聞くことは,ある項目には賛成だが,ある項目には反対という者の意見が反映されず,憲法違反だ」「国民の意見を問う以上,国民からの自由意見の記載も認めるべきだ」などがあります。
5 過半数の判断など投票が有効か無効かは誰がどのように決めるのか
選挙と同じく,開票結果を踏まえて選挙管理委員会が発表します。そこで,賛成票が過半数となれば,憲法改正案は承認されたとなります。
そこで,過半数の定義が問題となっています。
現在の案では,「有効投票数の内,賛成に投じた票が過半数」とされています。一方,民主党案は,当初「投票総数の内,賛成に投じた票が過半数」としていました。すなわち,民主党案の方が過半数のハードルが高かったと言うことになります。ただし,民主党も,与党案で妥協する見込みです。
さらに,今回の法案では,「最低投票率制度」は採用しませんでした。すなわち,投票率が極端に少なかった場合でも,有効となるとしています。
ちなみに,これらの反対意見として,「過半数は有権者全員を基準にしてその過半数とするべきである」や「最低投票率制度を導入しなければ,低い投票率でも憲法改正が可能となり,国民の総意によるとは言えないのではないか」などがあります。
6 どのような形で改正案を周知するのか
国民投票に向けての周知は,憲法改正広報協議会が行います。これは,国会議員により構成されるもので,委員会同様,取得議席数に応じて割り振られます。
また,この協議会が,説明会や広報原稿を作成しますが,この説明会や原稿には,賛成意見及び反対意見を中立公正に扱うこととなります。
ちなみに,これらの反対意見として,「取得議席数比率による協議会では,実質3分の2以上が賛成者により占められることになり,果たして本当に中立公正な広報活動が行えるのか疑問である」などがあります。
7 投票に向けての運動は誰がどこまででき,また何が禁止されているのか
(1) 国民投票の運動は,誰でも自由にできます。ただし,次の者はできません。
ア 投票管理者や選挙管理委員会関係者
イ 裁判官,検察官,警察官(ただし,民主党案では運動可能としており,現在調整中)
ウ 公務員,教員(ただし,民主党案では除外していたが,どうやら修正案では原則禁止としつつ,罰則は設けないという形になりそうである)
(2) 政党は,議席数の比率に応じた時間,無料でNHKで宣伝活動を行うことができます。
(3) 次の事項は禁止,違反となります。
ア 国民投票7日前からテレビなどを用いての宣伝活動
イ 組織ぐるみでの買収活動(民主党案は組合つぶしと主張してこの行為を違反としない)
ウ 公務員による投票妨害
エ その他の投票妨害活動
(4) ちなみに,これらの反対意見は次のとおりです。
ア 公務員は憲法改正の利害関係が大きいだけに,国民投票活動の制限はおかしいのではないか。
イ 政党の無料放送が議席に応じて時間が異なるとなれば,実質的には3分の2以上が賛成である以上,反対意見の放送が全体の3分の1以下となってしまい,公平性に欠けるのではないか。
ウ 誰でもお金を出せばテレビなどメディアを使っての宣伝活動ができるとなると,資金のあるものは手広く意見広告をまくことが可能となり,結果として「お金のある者の意見」が勝つという結果にならないか。
エ 組織活動(労働組合など)による国民投票運動を萎縮させることにならないか。
8 投票が間違っていた場合の救済策はどうするのか
国民投票の手続に違反があった場合,公務員の投票活動運動や投票妨害活動により多数の人が自由な意思による投票を妨げられた場合,賛成又は反対の投票数について誤りがあってそれが結果に重大な影響を及ぼす場合は,高裁に対し投票無効の訴えを提起することができます。
ただし,濫訴による事務遅滞の防止を図るため,この訴えを提起しても,憲法改正の手続は判決が確定するまでは止まりません。
そして,訴訟の結果,無効と判断された場合は,改めて再投票又は更正決定をすることができます。
ちなみに,これらの反対意見として,「単純な数え間違えが発覚した場合でも,現在の選挙のような再集計の申立や投票用紙の確認を認めないで一律訴訟とするのは,負担が大きすぎるのではないか」というものがあります。
以上です。これらの制度及び反対意見を踏まえて,今後の議論を真剣に見守り,検討していくことが大事です。
ちなみに,4月5日に国会において公聴会が開かれます。興味のある方は,3月30日までに意見申出もできるようなので,検討してみてはいかがでしょうか(詳細はこちらをご覧ください)。
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おはようございます。
やはり憲法改正に向けた一里塚ということになるんでしょうね。
それから記事違いですが、やるMANファンでしたか。
「おまた、今日もまーたまたおりこうさんになっちゃったものなぁ!」
輝かしかったですね・・・・
憲法改正の是非はともかく,まずその改正を行うための手続法として第一歩を歩んでいるといえます。
ただし,問題なのは,「その手続法の内容の妥当性」なのですが,この点についてなかなか議論が進まないと言うのが実情でしょう。
少なくとも「憲法改正に反対だから,国民投票法に反対」というのは論理が飛躍しているのかなあ,って思います。
とにかく「中身で勝負」これにつきるでしょうね。
憲法記念日も近いことですし,これを機にしっかりと憲法を学んでおくことが大切だと思います。
ただ、早い話が今の内閣は、これを使って「有事法」を作りたいだけのような感じしか見えません。
もしも9条の完全改正(=軍事国家の再建)などを指しているのなら、戦争体験者はもとより、若者だって大反対でしょう。
ハッキリ言わず、そういう点を見え隠れさせている今の内閣に対し、誰が支持しているのかが不思議です。
国民投票法の議論にあわせ,憲法改正の議論が見え隠れしています。憲法改正を論じるのであれば,逆にこっそり出はなく,正々堂々すればよいと思います。
それでこそ,「国民の真意を問う」といえるでしょう。
ちなみに,今の国会は,衆議院が与党3分の2を超えていますが,参議院はまだ3分の2に至っていないため,憲法改正はかなり難しいといえます。そういう意味でも,自民党は夏の参院選は必死なのです。