あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

ウルトラマンでさえ地球のことを考えているのに

2005年05月31日 23時56分28秒 | 裁判・犯罪
ウルトラマンシリーズ,私は子供の頃から大好きでした。今でもスカパーで再放送(今は「帰ってきたウルトラマン」をやってます。)をたまに見ますが,なんとなくわくわくするものです。
ところで,最近のウルトラマンはずいぶんおしゃれになってきていますね。昔のウルトラマンとの違いがかなりあります。主なところは次の点でしょうか。

1 怪獣をむやみやたらに殺さない
  帰ってきたウルトラマンの主題歌中にも「怪獣退治に使命をかけて」とあるように,昔のウルトラマンは怪獣や宇宙人が出たら,一部の例外を除いて「問答無用」で怪獣を殺していました。
  ところが,ウルトラマンコスモスは,怪獣を殺すのではなく,怪獣を保護センターに運んでそこで管理するという「生かす」手法を採用しています。
  大げさに言うと,怪獣に対する告知聴聞の機会を与えているといえるでしょう
2 怪獣退治の手段を考えている
  昔のウルトラマンは,怪獣を倒すために手段を選びませんでした。怪獣退治の過程でビルや家をどんどん壊していきました。大げさに言うと,「怪獣を退治してやるから文句を言うんじゃねえ」という態度で倒しています(ただ,厳密に言うと,ウルトラマンの身長は44メートルなので,今東京にウルトラマンが来たら,きっとビルの上からウルトラマンの戦いを見守ることになるでしょう。不思議な光景ですね。)。
  ところが,ウルトラマンネクサスは,町を壊さないように異次元空間を作り,そこで怪獣との戦いをします。つまり,地球に優しいファイトをするわけです

こんなわけで,ウルトラマンでさえ,ここ数十年の間に,時代の流れに対応し,闇雲に怪獣倒しに没頭するのではなく,怪獣を倒す理由を考えるとともに,地球環境などに配慮した戦いを行うよう努力しているわけです。
数十年前に計画に固執するような「もんじゅ」だって,当然計画を見直してしかりでしょう。エネルギー政策はここ数十年で大きく変わっており,高速増殖炉がなくとも原発は動かせる程度のウランがあることも分かっているわけですから。
また,地域住民が安心して生活できるようにするべきでしょう。最高裁だって,もんじゅが100%安全とまでは断言していません。問題点は改め,場合によってはやはり撤退することも視野において検討する必要があると思います。
昔のウルトラマンのように「問答無用」型ですすめることにはもはや限界があるのではないでしょうか。

国も少しはウルトラマンを見習いましょう!

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交通違反取締り方法について

2005年05月29日 22時14分33秒 | 裁判・犯罪
昨日車を運転していたら,高速道路入口でシートベルト取締りをやっていました。
私は普段から必ず装着しているため全く問題ないのですが,ただ気になることがありました。

なんで木陰に隠れて取締りをするの?

交通取締の究極の目的は,交通事故撲滅にあるはずです。とすれば,隠れて取締りをやるよりも,むしろ姿をだして「取締りをやってますよ」と行った方が,シートベルト装着率も増えるのではないでしょうか。

同じようなことは,他の取締りでもいえます。特に,速度取締りは,「ネズミ取り」と揶揄されるほど非常に評判が悪い方法です。また,覆面パトカーによる取締りも,実はつい数年前までは本来は違法な取締り方法でした(でも,これで捕まった人の違反は無効にならず,結局有罪になるという判例があります。)。
速度超過や信号無視は非常に危険なので取締りを強化する必要はあると思います。しかし,これらについても,隠れてやるのではなく,むしろ事故が多いとされる地点で,姿を隠さず堂々と取締りをやれば,必然的にその場所で速度超過をするドライバーは減り,結果的に事故が減少すると思われます。
今の取締りは,どちらかといえば,「取締りがやりやすい場所」での取締りであり,事故防止という観点からは,果たして妥当な場所なのか疑問に感じる場合が多いです。
さらに,覆面パトカーによる取締りも,むしろ赤色灯をつけて巡回する方式にするべきでしょう(つまり,普通のパトカーでいい,ということです。)。これにより,パトカーを追い越すような無謀運転をする人はまずいないでしょうから,必然的に法定速度を遵守することになります。
この方式の利点は,「取締りが困難な無謀運転を抑制できる」という点もあります。
実は,昨日の高速道路運転中にも無理な割り込みをしてきたベンツが1台ありました。本当にぶつかるかと思い,ひやりとしたものです。このベンツ,その後も次々と無理な追い越しと割り込みを繰り返していました。
ところが,このような車を取り締まることは難しいです。一方で,こんな奴が事故を起こす原因となることは言うまでもありません。
パトカー巡回方式であれば,このような無理な追い越しなどもしないでしょうし,仮にしていた場合,現認が容易となり,取り締まりが強化されると思います

そんなわけで,交通事故撲滅のためにも,是非とも取締り方法を「原則公開方式」に変更してほしいと思います。こうすることで,違反者からの言われなき誹謗中傷も減るでしょうし,交通取締に対する国民の理解も高まり,結果的に警察に対する信頼の回復にもつながると考えます。そして,なによりも交通事故が激減するのではないでしょうか。

ただし,警察の名誉のために,私たちドライバーに対しても一言。
交通違反とて道路交通法違反という立派な犯罪です。極端に言えば,殺人や窃盗と同じです。」ということを認識しておくべきでしょう。たかが飲酒,たかがスピード違反,たかが信号無視ではないということはわきまえるべきでしょう。


よろしければ続きを読む前に1クリックお願いしますm(__)m人気blogランキングへ ただ,おそらく一番ネックとなるのは,「ノルマ方式」でしょう。
交通警察には,違反者の摘発数がノルマになっているというのは,今や公然の秘密状態になっています。したがって,公開方式にしたら,確実にノルマは少なくなります。
この点については,ノルマ自体を見直せばよいのです。つまり,「摘発者数」ではなく,「無事故日数」等をノルマとし,事故がない日に交通課に勤務していた警官に対してプラス1点にするなどの制度にすればよいのです。そうすれば,躍起になって,交通事故防止のために公開取締りなどを行うでしょう。もちろん,事故もみ消しなどの不祥事もでるかもしれないというリスクはありますが・・。
また,公開取締りについては,「その場所でしか安全運転をしない」という警察からの反論もあると思います。この場合は,公開取締りと隠れ取締りを併用するなどもありでしょう。公開取締りをすることにより十二分に注意を促しているわけですから,その場だけ取り繕うような運転手は「事故予備軍」といえるため,隠れ取締りによる事故抑止効果は十分認められるからです。

他にもいろいろな手法が考えられます。
いずれにしても,改めて言いたいことは,「取締りの目的は交通事故撲滅にあること。そのために無謀運転を一層するべく取締りを行ってほしい。」ということです。
飲酒運転の検問なんかは,逃げ道がないくらいすべての道路でやってもいいと思います。

「大阪のおばちゃん」のススメ

2005年05月28日 23時29分05秒 | 徒然日記
朝起きたら,体中筋肉痛です。昨日はしゃぎすぎたのが原因です(自業自得といいます(^_^;))。
さて,今日(28日)文化放送の「しのすけラジオ土曜がいい」の中で,雑誌ダカーポに掲載された「大阪のおばちゃん学」についての話がありました。
概要として大阪のおばちゃんと東京のおばさんの違いをうまく説明していました。
それを聞いて,こう思いました。

日本人は,大阪のおばちゃんを見習うべきだ

誤解のないようにいますと,大阪のおばちゃんに対する軽蔑ではなく,むしろリスペクトです。
ダカーポに掲載されていた大阪のおばちゃん度チェックなるものも見つけました(残念ながらこれが掲載されていたのが5月18日号だったので,その雑誌自体を見つけることはできませんでした。)ので,それを参考までに掲載します。

(参照:「どや! 大阪のおばちゃん学」(草思社))
1 バッグに飴ちゃんを忍ばせる
2 困った人をみかければ、「どうしはったん」と聞きに行く
3 買い物をすれば,とりあえず「まけて」と言ってみる
4 近所の子どもにも「気ぃつけて行きや」などと気軽に声をかける
5 友達の話に,少々大げさに「ウソッ」と返してみる
6 街で配っているティッシュは受け取る
7 柄のファッションを身につけてみる
8 テレビ番組を見て,ツッコミを入れてみる
9 レストランでは自分の食べたいものを堂々と注文する
10 エスカレーターでは歩いてみる


以上です。あなたはいくつ当てはまりましたか?
これらをまとめると,次のように分析できます。

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ア コミュニケーションづくりを大切にする(1,2,4,5)
イ 地域のこと,他人のことに対する気配りをする(2,4,5)
ウ 情に流されないしっかりした経済観念がある(3,6,7,10)
エ 自己主張をするときはしっかりできる(8,9)
オ どんな状況でもユーモアを忘れない(1,5,8)

以上のとおり分析できます。これらは,やはり現代の日本人が忘れている何かではないでしょうか。
改めて言います。「大阪のおばちゃんは本当にすごい」ということを。
私たちも,大阪のおばちゃんの精神を学ぶべきでしょう。大阪のおばちゃんの精神がこれからの日本を大きく変えるといっても過言ではありません。

とはいうものの,隣近所がみんな上沼恵美子さんのようになった場合,それはそれで恐ろしいものがありますが・・。

飲酒運転は重罪です

2005年05月23日 07時59分23秒 | 裁判・犯罪
宮城県多賀城市で,飲酒運転(しかも居眠り)の車が高校生をはね,3人が死亡するという悲しい事故が発生しました。

飲酒運転は犯罪です。

この運転手については,危険運転致死罪が適用される可能性が高いですが,そもそも飲酒運転については,まだまだ日本では認識が甘いように感じます。中には,テレビ等で飲酒運転話を武勇伝のごとく話すタレントもいるくらいです(これは窃盗をクイズにしたタレントと同じレベルの話ですよ,本当に。)。
そこで,飲酒運転について,改めてどんなことが待っているかまとめたいと思います。

1 酒気帯び運転
  刑罰が厳しくなりました。「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」。
  点数も6点または13点なので,2回捕まればかなりの確実で「免許取消」
  同乗者も,そそのかして運転させた場合は刑事罰の対象となる。
  飲ませた方も,車を運転すると知っていればやはり刑事罰の対象となる。
2 酒酔い運転
  完全に酔っぱらっている場合に適用されます。「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」。
  点数は25点なので,一発免許取消。
3 業務上過失致死傷
  交通事故を起こした場合に適用。「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」。
  点数は事故に応じて違う。
4 危険運転致死傷罪
  酒気帯び運転等により交通事故を起こした場合に適用(検察庁も慎重だが,最近はこれによる起訴も増えている。)。
  怪我した場合は「15年以下の懲役」,亡くなった場合は「1年以上の懲役(上限は20年だが,道路交通法違反等が加わるとさらに最長30年まで上限が延びうる。)」

以上が飲酒の罪と罰です。
さらに補足します。「酒気帯び運転くらいなら」と軽く考えている方も多いですが,上記のとおり,仮に事故を起こさないとしても,酒気帯び運転には「懲役刑」があります。酒気帯び=赤切符ですむ,という発想は大間違いです。
現実に裁判所で傍聴すると,刑事裁判(普通の裁判ですね)の罪名に「道路交通法違反」がいかに多いか分かると思います。
さらに,酒気帯び運転で事故を起こしていなくても「実刑」になったケースが,実は結構あります。酒一杯で,刑務所に行きます。

刑務所に行く云々ではなく,酒飲んで車を運転することは,テロリストと同じだ,そういう認識をみんなが持ってほしいと思います。

よろしければ1クリックお願いしますm(__)m人気blogランキングへ (5月24日追記)
飲酒運転は本当に許せませんが,他にも超スピード違反,暴走族等の集団危険行為,無理な割り込み,信号無視なども死亡事故の大きな原因を占めています。
飲酒運転はもちろんのこと,このような無謀運転についても,絶対にやめなければならないでしょう。
そもそも,免許とはその字のとおり,原則禁止行為を特別に認めるという行政行為です。自動車の運転は,特別に認められた行為なのですから,危険なことをしたら,即座に取り消されても文句は言えないでしょう。
免許取消基準をもっと広くしてもよいのではないかと思います。

(7月1日追記)
コメントでも指摘がありましたとおり,若干主観と客観が混在していました。
そこで,理論上の話と現実的な話を整理しておきたいと思います。

1 理論上の話
(1) 酒気帯び運転の刑は,1年以下の懲役又は30万円以下の罰金である以上,1年刑務所に入ることがあり得る。
(2) 実際に酒気帯び運転を理由に刑務所に入ったという例がある。
2 現実的な話
(1) 一般には,地域にもよるが,酒気帯び運転だけで検挙された場合,2回程度までは赤切符(罰金)で済む。
(2) 3回目以降は通常裁判になるが,前科がなければ,執行猶予判決になる場合が多い。
(3) さらに執行猶予中にまた酒気帯び運転や無免許運転をした場合,今度は実刑になる場合が多い(まれに保護観察付き執行猶予になることがある。)。
(4) したがって,酒気帯び運転で刑務所に入る場合は,酒気帯び運転の常習者の場合である。
※ ただし,現実的な話はあくまでも一般論です。飲酒運転の状況や過去の前歴などによっては,もちろんこの動きとは異なる場合もあります。また,事故を起こすなどした場合は,例え初めての飲酒運転でも実刑になり得ます。
 だから,やはり飲酒運転は止めてほしいです。
3 危険運転致死傷罪の現実について
  この罪は,酒気帯びで適用されるというよりも,酒気帯び運転または酒酔い運転で死亡事故を起こした場合に適用されることになります。しかも,相当な悪質事案に限られていることから,現実には,酒酔い運転(数件ハシゴして飲んでいるなど)の場合に限定されています。
  もう少し適用要件が緩和されれば,飲酒運転に対する抑止力になると思います。


地域防災計画について考える

2005年05月22日 18時44分33秒 | 地震,雷,火事,親父
ずいぶん前に「東久留米市地域防災計画」を読んだ旨の記事を書きましたが,その中で気になった点についていくつか指摘したいと思います。
なお,東久留米市の名誉のために,最初にお断りしますと,この計画,全体的には問題はないと思いますので,有事の時にはこの計画通り動けば,私たちは安心して行動ができる代物であると思います
また,計画書を熟読したわけではないため,私の指摘点は実は他で記載済みであるとか別の要綱等が作成済みであるという可能性もあります(つまり織り込み済みである可能性がある。)。
さらに,今回指摘したい点は,東久留米市だけの問題ではなく,おそらく多くの市町村で作成された地域防災計画共通の問題点ではないかと思う点を中心に記載したつもりです。したがって,ここでの指摘は,東久留米市だけではなく,全市町村を対象にしているという前提でお読みいただければと思います。

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第1 災害本部の活動について
 1 設置基準が不明確である。

  災害本部は「大きな災害があり,市長が認めるとき」に設置するとあります。
  これは,イメージ的には分かりますが,大きな災害の定義が実は曖昧です。
  したがって,大きな災害について,具体的な基準を設けるべきです。
  例えば,「震度5強以上の地震が発生した場合」等と明記するべきです。
  実際に災害がなければ,本部は解散する条項が盛り込まれているため,実際に被害がなければ,すぐ本部を解散すればよいだけのことです。もちろん,逆に基準以下の災害でも大きな被害が発生した場合は,これまでどおりその時点で本部を設置すればよいわけです。
  これは,住民がいつ避難場所に行くべきか,避難場所に行ったけど,その後誰も来ない等という問題を回避するためにも重要ではないかと思われます。
 2 市長に権限が集中しすぎる
   本部設置後,基本権限はすべて市長にあります。これは,当然なのですが,市長権限の代行は,「市長に事故ある時」に限られています。
   つまり,市長に事故がない限り,市長がすべての最終判断を有することになります。
   ところが,災害の場合,即座に市長と連絡が取れるとは限りません。また,偉い順に市役所に人が集まるとも限りません。一方で,即座に災害に対する対応を取らなければならない場合もあり得ます。その時に,「まだ市長と連絡が取れないので,判断できません。」では通用しません。
   そこで,市長に事故ある時という部分をもっと緩やかにして,本部にいる一番偉い人がその都度判断ができるようにするべきです。もちろん,この偉い順は,何らかの形で決めておく必要があります(実際は,例規上で序列が決まっているので,それに従えばよいと思われます。)。
 3 現場責任者の権限を拡大する
   災害現場では,予想以上の被害や混乱が想定されます。時には,現場での判断が最善策であることも想定されます。
   そこで,現場責任者の権限を拡大します。具体的には,避難用品の他の避難所への分配数量や病人のランク付けなどです。
   もちろん,最高責任者はあくまでも市長なので,事後報告を行うことはいうまでもありませんし,場合によってはその時点で市長が責任者に対して是正命令などを出せばよいわけです。
   ここで注意したいのは,すべての市長は防災対策に対して有能であるとは限らない,ということです。机上の空論(場合によっては無能もありうる)よりも,現場責任者の方が,防災対策について詳しいことは十分あり得ます。   
 4 死傷者情報の把握が不十分である
   尼崎での脱線事故の際も問題になりましたが,死傷者がどこにいるのかを一元的に管理している人がいませんでした。したがって,被害者の家族は,病院を転々として初めて確認できるということになりました。
   災害時は,交通網の寸断などにより,病院を転々とすること自体が困難になると思われます。また,個人情報保護法により,入院患者の氏名をすぐに明らかにしない病院なども出てくる可能性があります。
   そこで,これらの情報を本部が一元的に管理し,本部に来れば死傷者の氏名や入院先が分かるようにします。もちろん,個人情報保護との調和は考える必要があります。

第2 避難場所のあり方について
 1 広さと収容人口がアンバランス

   これは,物理的にやむを得ない点があります。駅前には空き地が少なく,郊外には空き地が多いため,当然避難場所も郊外の方が大きくなります。
   しかし,駅前もかなりの避難人口がいるわけですから,可能な限り彼らを収容する方法を検討しなければいけません。
 2 避難用品がアンバランス
   避難用の食料などが豊富にある避難場所と少ない(全くない)避難場所があります。一応,多くある避難場所から他の避難場所にこれらを配布するという想定になっていますが,実際,それが十分機能するかは疑問があります。
   やはり,各避難場所にはそれなりの用品を備えるべきでしょうもちろん,住民一人一人が平素から防災用品を備えておくべきであることはいうまでもありませんが。)。
 3 避難場所担当者が職種別になっている
   実際,避難場所に行く職員が,防災担当職員となっています。しかし,仕事中の災害であればまだしも,休日や夜間の災害の場合,そもそもその職員が避難場所に行ける保証がありません。
   避難場所の担当者は,基本的にはその地域又は近隣に住む職員にするべきでしょう。
   なお,他の市町村に住む職員については,大規模災害時には,一時的にその町の職員と共にそちらの市町村で災害対策の活動をするという協定を結んでおくと,なお良いかと思います。例えば,東久留米市の職員が西東京市に住んでいる場合,災害時には,西東京市で災害対策の活動を行うということにします。もちろん,逆もあります。

第3 想定外災害の対応について
 1 道路が使えない場合の輸送ルートについて

   地震では,道路の陥没などにより,交通網が寸断されることが想定されます。
   そこで,各避難場所への非常食などの運搬ルートについては,複数想定しておく必要があります。
   また,前述の避難所間での融通を円滑にするため,自動車以外での大量運搬方法も検討しておく必要があります。
   例えば,リヤカーなどは,一見馬鹿にしてそうですが,道路の寸断でもある程度対応ができ,それなりに輸送力があるため,有用ではないでしょうか。
 2 避難訓練に「想定外」の内容を加える
   避難訓練は,地域防災計画通り行動できるかを確認する意味で,非常に重要なものといえます。
   しかし,やはり何が起こるか分かりません。
   そこで,どっきり企画というと不謹慎ですが,「想定外災害」を訓練時に加え,適切に行動できるかを確認することが大事でしょう。
   そのためには,この想定外訓練の内容については,ごく一部の担当者以外は,例え市長であっても知らないで行うべきでしょう。

以上になります。とにかく必要なことは,迅速かつ適格に職員が行動できるか,住民一人一人が災害時の行動内容を把握して,混乱なく行動できるかが大切です。そう言う意味では,これは市役所任せではなく,私たちも熟知しなければならないでしょう。
皆様も,災害時の行動について,今一度確認,検討をされてみたらいかがでしょうか。

野党の審議拒否は本当に妥当な戦術か?

2005年05月21日 23時51分33秒 | 郵政民営化
郵政民営化のための特別委員会設置に対して反対するため,民主党など野党が審議拒否という戦術で廃案に持ち込もうという戦術に出たようです(もっとも,特別委員会の設置は議決されたため,性格には法案自体を廃案にするという意味になるのでしょうが。)。

何の意味があるの?

審議拒否の戦術,これは従前から私は理解ができないものでした。なぜなら,過半数持っている与党であれば,会議が開け,決議もできてしまうからです。
ということは,結局の所,なんの議論もすることなく与党案がそのまま国会の議決=国民の意思ということになってしまうわけです。
もちろん,実際の国会ではすぐにはそのような野蛮なことは行わず,調整が進められることになるわけですが,いざとなれば「えい,議決だ」となってしまいます。それに対して,仮に審議拒否しながら「卑怯だ,けしからん」というとすると,それは筋違いなのではないでしょうか。
本当にこの法案に反対するのであれば,むしろ本会議で議論をするべきではないでしょうか。しかも,牛歩戦術とかではなく,「演説」により,国民に対し,何が問題でどうすればよいのか,私たちはこう考えているが国民の皆様はどう考えますか,という点を積極的に示すべきでしょう。
場合によっては,審議拒否とは逆に,「議事場籠城」だってありだとおもいます。もちろん,無意味に籠城するのではなく,ずっとその間与野党間で議論をするという前提がありますが。

正直言います。今,小泉首相が衆議院を解散した場合,私は,「自民党圧勝,民主党惨敗」の結果になると思います。
これは,自民党がすごく良いことをしているからではなく,民主党が残念ながら野党(政権準備党)として国民に対するアピールが不足しているからです。もっというと,今選挙になると,投票率があり得ないくらい低い結果となり,政治離れに拍車がかかってしまうのではないでしょうか。投票率が低ければ,必然的に自民党,公明党が大勝利するということになります。

郵政民営化については,自民党内でも意見が割れています。野党としては,このような議員を取り込むことも視野に置くべきでしょう。とすると,やはり審議拒否という戦術は理解できません。
もし,審議拒否が,政治政策として重要な意味があるのならば,それをもっと国民にアピールしましょう。単に「時間切れ廃案を目指す」程度では,とうてい理解ができません。
国民の視点からの政治,忘れていませんか?

よろしければ1クリックお願いしますm(__)m人気blogランキングへ ちなみに,他の野党である社民党や共産党については,より一層頑張らなければならないでしょう。
次回の選挙では,冗談抜きで「議席0」もあり得ます。
なぜ前回の選挙で議席が減ったのか,それは自分たちが一番分かっているはずですから,その点を踏まえて政策を検討とするべきでしょう。
少なくとも,「**党が悪い」などと敗北の原因を人のせいにしているとしたら,その時点で政党としての未来はないでしょう。

市町村合併について(まとめ)

2005年05月20日 23時25分51秒 | 市町村合併
市町村合併についてまとめをしたいと思います。

第1 市町村合併の必要性を明確にする。
1 市町村側から見た合併の必要性

  どのような町にするのか,明確にしなければいけません。
  少なくとも,赤字解消という理由だけでは,合併は失敗します。
2 住民に対する情報開示
  合併におけるメリット及びデメリットを客観的に情報提供する必要があります。
  多くの場合,市町村側に有利な情報のみの提供や,また不利な情報も適当に修正したり独自の解釈を加えて提供している場合が大半ですが,これでは住民は正しい判断ができません。
  住民が正しい判断ができない合併は,どこかで必ず破綻します。
3 住民の理解を高める
  メリット,デメリットを提供した上で,なおやはり「合併が絶対必要である」ということを住民に対して時間をかけて分かりやすく説明し,理解を求めます。
  この際,「このままでは町がつぶれる」程度の説明では,およそ理解は得られません。1で述べた明確なビジョンを提示することが必要となります。

第2 市町村合併制度の問題点
1 住民不在であること

  住民が参加する機会が法律上皆無です。
  この点は,究極的には法改正により住民投票制度等を法定制度化することが望まれます。
  しかしながら,地方自治体としては,住民投票を行うことはもちろんのこと,定期的にアンケートを採るなどして住民の意向を把握しうる体制を取る必要があります
2 住民からのアクションが困難であること
  合併に消極的な住民もいます。これについても直接請求権等を法定化することが望まれます。
  しかしながら,やはり反対意見が出ている場合,町として十分な説明を実施し,また反対理由をよく吟味した上で説得または方向の修正を図るなど,住民本位の合併政策にしなければなりません。

第3 あるべき市町村合併の姿
1 明確なビジョンの策定(地方主権に向けて)

  合併したら町がどうなるのか,又どうしたいのかを明確に示さなければなりません。ゴール(目的)のない合併は,迷走するだけで終わります。
  また,住民も一番関心があるのは町の未来よりも自分の生活です。自分たちの生活がどうなるのか,明確に示してあげなければ,合併に対しては消極的となります。
2 住民生活の確実な向上
  合併の理由として,市町村の財政破綻をいくら説明しても,現実味のない話となってしまう以上,なかなか納得することは困難です。
  やはり,合併により何がどう変わるのかを具体的に提示する必要があります。
  特に,1でも説明したとおり,やはり生活がどうなるのかについて説明することが一番理解が得られやすいです。
  住民税が安くなる,上下水道が安くなる,上下水道の範囲が広がる,医療施設が増えるなど生活に関連することのメリットを説明しなければなりませんし,そのための合併でを考えなければ意味がありません。
3 住民とともに合併を検討する
  合併の一面として地方自治体の地位向上(地方分権の推進)があるため,ある程度は官主導による合併もあると思います。
  しかしながら,その場合であっても,まず住民の意向を十分調査,検討する必要があります。
  また,協議会への住民参加や住民投票制度を活用するなどして,住民が積極的に合併に対して意見を述べる場を提供しなければなりません。
  強硬な合併は,末代にまで影響を及ぼしかねません(昭和30年代の合併のしこりが未だに残る実例もかなりあります。)。
4 合併後の利益は住民に還元する
  合併により特例債や地方交付税措置など,財政面の一時的な負担軽減が図られます。また,合併による人件費軽減や効率化などにより,それなりに財政負担が軽減するはずです。
  この軽減分については,もちろん財政再建のために用いることも重要ですが,一部は住民に還元しなければなりません。
  住民税の軽減が,一番分かりやすく,理解が得られやすいと思われますが,住民税に限らず,各種施設利用料の軽減や国民保険税などの軽減という方法も可能ではないかと考えます。
5 国や都道府県と対等に歩む
  3でも説明したとおり,合併の主眼には,やはり地方分権の推進があります(やがては地方主権に向かうことも視野に置く必要があります。)。
  合併により職員が増えるため,相対的により優秀な職員も増加することになります。
  これにより,従前国や都道府県からのいいなりにすぎなかった各種施策について,むしろ積極的に行うようにし,逆に国や都道府県に対して意見ができる(問題提起ができる)ようにしなければなりません
  特に,政策法務の考え方(単に条例を作るだけではなく,法律や通達等を独自に解釈,判断して,市町村としての条例化する)を取り入れ,準則をまるごと条例化することから脱却する必要があります。

以上,市町村合併についての考え方をまとめました。
結局,今回もロングランとなってしまいましたが,最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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参考(私の過去の合併ブログ)
1 市町村合併が本格的に始まりました
2 市町村合併について(良いこと編)
3 市町村合併について(悪いこと編)
4 市町村合併について(お金の話)
5 市町村合併について(地方交付税に気を付けろ!)
6 市町村合併について(住民からみた合併)
7 市町村合併について(手続上の問題点)
8 市町村合併について(住民の対応策その1)
9 市町村合併について(住民の対応策その2)

よく分かる(?)シリーズ 諫早湾干拓工事の仮処分決定について

2005年05月18日 19時49分16秒 | よく分かる(?)シリーズ
諫早湾干拓工事について,差し止めの仮処分に対する福岡高裁の決定がだされ,第一審の佐賀地裁における仮処分認容決定を取消し,仮処分申立てを却下する旨の決定が出ました。
今回は,この仮処分の内容について,解説したいと思います。最後の私見の部分を除いては,干拓工事に賛成,反対関係なく,客観的に記載しました。ただし,決定全文については,未だオフィシャルにも公開されていませんので,報道用等で配布された決定要旨を参照しました。
なお,「仮処分とは何?」という方は,こちらを参照してください。

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第1 事案の概要
諫早湾の干拓工事をやめてほしいということで,地域住民らが工事差止め(工事中止ですね)の仮処分を申し立て,平成16年8月26日,佐賀地裁は「そのとおり」といって仮処分決定をした。
納得のいかない国は,異議を出したものの,異議が認められなかったため,福岡高裁に抗告した。

第2 争点
1 そもそもこの場合に仮処分ができるか(行政事件訴訟法44条では,国の処分行為などに対しては仮処分ができないと規定しているが,干拓工事は国の処分といえると,そもそも仮処分が出せないのではないか。)。
2 住民らは干拓工事に対して文句を言える法律上の権利があるか。
3 干拓工事で住民のなんらかの権利を侵害したといえるか。

第3 福岡高裁の判断
1 干拓工事は単なる事実行為だから仮処分の対象になるよ。
2 沿岸住民は漁業行使権(漁師をやってよいという権利)を持っているから,誰かにこれをじゃまされたがそれを排除する権利(妨害排除,妨害予防などの物権的請求権)を行使できる(だから,法律上の権利はある。)。
  ただし,魚が釣れなくなった等の理由=妨害とは直ちに言い切れない。これが干拓工事によるかどうかについては,住民が証明しなければならない(ここがこの決定の肝)。
  (注:通常,仮処分は証明ではなく疎明で足りるとしています。疎明とは証明よりも簡単な程度のつながりが説明できれば十分,という意味だと考えてもらって結構です。つまり,仮処分の方が割と簡単に因果関係を認めやすいことになります。)。
3(1) 国や専門機関が行った調査では,確かに有明海の環境と干拓工事の関連性がありそうな気もするけど,その割合や程度までの証明はない。
 (2) ノリ養殖やアサリの漁獲量等の減少も干拓工事との関連性が疑わしいけど,周辺の生産量等も考慮すると,干拓工事との関連性は証明されていない
 (3) 有明海の漁業環境の悪化については,干拓工事がその原因の一つとして影響を与えている可能性程度にとどまり,やっぱり関連性の証明はない。国によるノリ不作の原因調査,研究の必要性は大きいものの,現時点では干拓工事=漁業行使権が侵害されたという証明はないといえる。
4 よって,仮処分は認めない。

第4 私見(仮処分に対して私が感じたこと)
1 干拓事業を無条件に認容したわけではない

 この却下決定は,「証明が弱い」ことを理由にして却下したのであって,干拓事業は無条件にすばらしいとは言っていません。むしろ,干拓工事が環境などへ影響を与えている可能性があることを指摘しています。
 その意味では,国が却下決定により直ちに工事再開をするというは,果たしてこの決定を本当に吟味して検討したのか疑問があります。
2 仮処分の証明の程度が高くなった
 今回の却下決定は,今後の仮処分について,どの程度の証明を求めるかというメルクマールになります。この決定を踏まえると,仮処分といえどもちゃんとした訴訟に近い程度の証明力を求めることとなり,果たして迅速に決定を出すべき仮処分の性質に適合するのか疑問があります。
 一方で,確かに闇雲に差し止めを認めてしまうと,ものによっては国家的損失を与えかねない場合もありますから,この点のバランスとして今回の証明基準を設けたというのも一応理解はできます。しかし,証拠関係は国が持っている場合が多いことからすると,仮処分段階では暫定的真実として国に証明責任を転換させてもよかったかもしれません。

よく分かる(?)シリーズ 刑事責任能力について

2005年05月15日 12時50分07秒 | よく分かる(?)シリーズ
前回の執行猶予と保護観察に続いて,今回は刑事責任能力について説明したいと思います。
女性監禁事件の被疑者が統合失調症であることを供述していることから,場合によっては心神耗弱として減刑される可能性が理論上あり得ます。一方で,そもそも減刑を認めて良いのかという議論も出始めており,刑事責任能力に対する関心が高まっていると言えます。
そこで,その議論の参考とするべく,ここでは,そもそも刑事責任は何か,どうして減刑されるのか,誰がそれを判断するのかなどについて説明したいと思います。

よろしければ続きを読む前に1クリックお願いしますm(__)m人気blogランキングへ 第1 刑事責任能力とは何か
1 心神喪失と心神耗弱
 
刑法39条1項では,心神喪失者は処罰しないことを,2項では心神耗弱者は刑を減軽すると規定されており,裁判官が被告人は心神喪失又は心神耗弱だと認めた場合は,必ず刑を免除または減刑しなければならないことになっています。
ここで,心神喪失とは簡単にいうと「自分が何をやっているのか自分でも分からない状態」をいいます。イメージとしては痴呆性高齢者のような方になります。
心神耗弱とは簡単にいうと「自分が何をやっているのかちょっと理解できない上代」をいいます。イメージとしては,酔っぱらい(実際は責任能力あるのですが,イメージです),統合失調症などの精神障害などになります。

2 責任能力
責任能力とは,犯人に対して犯罪の責任を問える為の能力です。つまり,今風にいうと「自己責任」の原則といえるでしょうか。「お前はすべて悪いと知っていながらやったな。けしからん。」ということを問うための能力です。
刑法では,上記心神喪失者,心神耗弱者及び14歳未満のものについて刑事責任能力がないと規定しています。つまり,これらの者については「お前はすべて悪いと知っていた。」という部分が「きっと知らなかったよなあ。しょうがないかあ。」と考えられるとして,責任なしとしてしまったわけです。

第2 そもそも刑法とは何か
1 なぜ処罰するのか

ところで,責任能力を考える上では,もっと大きな話として,「刑法って何のためにあるの」というところを考えなければいけません。
ここは実は世界中で昔から熱い議論をしており,今でもこれ,という考えは固まっていません。
代表的には次の2種類があります。
(1) 応報刑論(刑法セーラームーン説)
  簡単にいうと,刑罰は「お仕置き」だとするものです。裁判官の判決には「月に代わっておしおきよ」という意味が込められているとするものです。
(2) 目的刑論(刑法やんくみ説)
  簡単にいうと,刑罰は「再教育」だとするものです。裁判官の判決には「おめーら,人の道ってんのをしらねーのか。その根性,たたき直してやる。」という意味が込められているとするものです。

2 日本の刑法はどっち?
日本の刑法は明治時代に作られたものです。2,3年前に片仮名から平仮名に変わりましたが,内容それ自体はほとんど変わっていません。
そして,多くの学者は,当時主流だった「刑法セーラームーン説」を取っていると説明してます。
一方で,実際の刑務所では受刑者の更正プログラムが用意されていることや,刑法以外に更正のための措置が執れる法律があることなどから,最近では「刑法やんくみ説」も強く主張されています。
結局のところ,この両方の意味がある,というところになるでしょうか。

第3 なぜ刑事責任能力がないと減刑または刑が免除されるのか
1 責任が免除されること

上記第1第2から,結局刑法は何を考えているのかというと,「分別がつく奴には,それ相当の罰を与えよう。」ということです。これを逆からいうと「分別の付かない奴には,罰は与えられない。」ということになります。
刑法セーラームーン説を採ると,刑法は「お仕置き」ですから,分別が付かなくてもできるのではないかという疑問がないわけではありません(子供へのお尻ペンペンと同じですから。)が,少なくとも刑法やんくみ説では,「再教育」の意味があるため,自分がやったことを理解し,再教育(これが刑罰)の内容も十分に理解できる人でなければ罰しても意味がないということになります。
そして,前述のとおり刑法には両方の意味があることからすると,やはり理解できない人(心神喪失の人)を処罰することはよくない,という発想になるわけです。

2 責任が減ること
では,若干意識があるが,普通の人よりもその能力が劣るという場合(心神耗弱のひと)はどうでしょうか。
ここでは自分のやったことは一応理解しているため,お仕置きにしろ再教育にしろやる価値はあります。ただ,やはり普通の人より理解する能力が劣るのであれば,まあ善悪の判断も難しいかな,ということになります。
だから,お仕置きも少な目,再教育もそこそこに,という発想になります。

第4 刑事責任能力は誰がどのように判断するのか
1 医師の鑑定

まず,責任能力は,医学的な見地から判断される必要があります。医者の精神鑑定がその典型例です。

2 最後は裁判官
でも,裁判官はその鑑定を鵜呑みにしません。責任能力の有無は医学的な鑑定を参考にしながらも,法廷での被告人の言動や犯行時の状況などを総合的に判断して責任の有無を考えることになります。
つまり,最後は裁判官が,「こいつは悪いと知ってやったなあ。だからお仕置きなり再教育する必要あるね」と考えた場合は,責任能力があるということになります。
実際にも,医師の鑑定では軽度の精神障害の結果がでつつも,通常の責任能力があるとして刑事責任能力を完全に認めた事例は多数あります(逆にいうと,医師の鑑定もないが,刑事責任能力を認めないという例もたまにはあると聞いています。)。

第5 刑事責任能力がないと判断された場合どうなるか
1 現在の運用

刑事責任能力がないことを理由に不起訴(つまり裁判にさえならなかった場合)や,裁判で無罪となった場合,刑法としては無罪放免となります。
しかし,それではまた同じことをやる可能性があることから,「措置入院」ということで病院に強制的に入院させるという手法を取っています。
しかし,刑罰ではないため,病院の判断でいつでも退院できますし,病院を抜け出してしまったらそれまでです。また,親族が連れて帰るといったらばそれまでです。
つまり,限りなく野放し状態にであるというのが現状です。

2 心神喪失者等医療観察法の施行
そこで,今年7月から「心神喪失者等医療観察法」が施行されます。これについては,実はまだ勉強していませんが簡単にいえば,刑事責任がないと判断されたものについて,別途検察官が裁判所に申立をして,病院への強制入院を可能とするものです。
これにより,ある程度は病院に強制的に入れておくことができることになります。

第6 刑事責任制度の問題点(私見)
ここからは個人的な見解であり,異論も多いと思います。参考程度にお読みください。
1 被害者の観点が抜けていること
刑事責任は,結局加害者にお仕置きなり再教育ができるか,という観点で考えられています。一方で,被害者としての観点は,お仕置きという点では多少考慮されるものの,刑事責任の観点では,結局ないがしろにされています。
例えば身内を殺されたのであれば,それが普通の人であろうと心神喪失者であろうとその怒りは変わらないはずです。
2 刑罰としての入院治療がない
保安処分といいますが,刑事責任が問えないとしても病的な理由であるならば徹底的な治療が望まれます。しかし,上記措置入院による治療が可能であるものの,刑期がない以上,結局は医師の判断になります。
また,責任能力とは若干はずれますが,最近話題となっている性犯罪については,例えば再犯防止のために性欲を抑える薬を注射する等して再販を抑えるという刑をアメリカの一部の州などで採用しています。
人権問題など課題は多いものの,保安処分は刑事責任がない場合はもちろんのこと,再犯率の高い犯罪者に対する抑止として有効であると思われます。


TB先(途中から始めましたので一部です)
http://blog.livedoor.jp/yononakakoubou/archives/50528462.html
http://asatteblog.exblog.jp/3055997/

よく分かる(?)シリーズ 執行猶予と保護観察制度について

2005年05月14日 11時43分30秒 | よく分かる(?)シリーズ
女性監禁事件が発生し,容疑者が逮捕されましたが,各種報道によりますと,現在保護観察付き執行猶予中であったこと,また本人が統合失調症であることを述べているとのことでした。
このニュースを聞いて「保護観察って何」という疑問と「統合失調症だと刑事責任なくなってしまうでのは?」という疑問を持たれた方もいるのではないでしょうか。
そこで,2回に分けまして,久々によく分かる(?)シリーズを掲載したいと思います。
今回は「執行猶予制度」についてです。次回は「刑事責任能力」について掲載したいと思います。

よろしければ続きを読む前に1クリックお願いしますm(__)m人気blogランキングへ 第1 執行猶予とは
執行猶予自体はご存じの方も多いと思いますが,簡単にいうと,執行猶予期間中に犯罪を犯さなければ,刑務所に行かなくて良いという「アタックチャンス」的な制度です。
そして,執行猶予には実は大きく分けて次の2種類があります。

1 初回の執行猶予(刑法25条1項)
  禁固刑以上の前科がない人か,前科があっても刑の執行終了後5年以上経過している人が対象(この5年というのは犯罪実行日ではなく,判決言い渡し日です。)。
  この人が3年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑の言い渡しを受けた場合は,5年以下の猶予期間を定めることができます。
  この場合,保護観察をつけるかどうかは自由
2 再度の執行猶予(刑法25条2項)
  現在禁固刑以上の刑に処せられて執行猶予期間中の人が対象。ようは,「もう1回だけチャンスを上げる」制度。
  この人が1年以下の懲役の言い渡しを受けた場合,5年以下の猶予期間を定めることができます。
  この場合,保護観察は必ず付きます
(この保護観察の有無は大きな違いがあります。詳しくは後述します。)

つまり,実際には①最初の執行猶予(保護観察なし)②最初の執行猶予(保護観察あり)③再度の執行猶予(保護観察あり)の3パターンが考えられます。
ちなみに,今回の監禁事件の被疑者は,前回の刑において②がチョイスされたものと推測されます。
そして,執行猶予期間を無事経過すれば,刑が執行されない,すなわち刑務所に行かなくていい,ということになります。

第2 執行猶予が取り消される場合
このように,執行猶予とは,とりあえず刑務所に行かなくて良いだけの話であり,無罪ではありません。
したがって,執行猶予期間中は生活上の制約があります。代表的なものとしては,パスポートの発行制限,即ち海外旅行が制限されます(禁止はされませんが,発行拒否される場合もあります。)。
また,一定の場合,執行猶予が取り消されることもあります。この場合,直ちに刑務所送りとなります。
取消にも2種類あります。
1 必要的取消(刑法26条)・・絶対に取り消されるもの
  いくつかありますが,一番分かりやすいのは,猶予期間中にまた犯罪を犯し,そこで実刑判決が出た場合です。
2 裁量的取消(刑法26条の2)・・絶対ではありませんが,情状が悪いと判断されたら取り消されるもの
  いくつかありますが,主なものは,①猶予期間中に罰金刑以上の刑をおかした場合,②保護観察付き執行猶予の場合,遵守事項を守らなかった場合などです。

執行猶予が取り消されますと,そのその判決で下された分刑務所に入らなければなりません。特に,猶予期間中に犯罪を犯して取消となった場合は,その分の刑にも服さなければなりません。
例えば,懲役3年執行猶予4年の判決を受けたものがまた犯罪を犯して懲役2年の実刑判決を受けた場合,執行猶予が取り消され,刑務所にはこの2年と最初の3年の合計5年間はいることになります。
(余談ですが,田代まさし氏については,まさにこの例に該当しますので,4,5年は刑務所にいることになります。)。

第3 保護観察制度
ところで,第1で触れた保護観察ありなしというのは,被告人にとってはかなり大きな問題です。
具体的には,このようなメリット(被告人側から見るとデメリット)があります。
1 保護観察が付くと,再度の執行猶予は付かない(つまり,②のパターンになった場合,次は即実刑,ということになります。)。
2 定期的に保護観察官(または保護司)との面接を受けなければならない(裁判官から遵守事項が言われ,それを守っているかどうかを保護観察官がチェックするわけです。)。
保護観察については,こちらの法務省HPを参照してください。
つまり,保護観察が付くということは,「ラストチャンス」であるということです。裁判官側から見た場合,実刑にしようか執行猶予にしようか悩んだ事例については,初回から保護観察をつけるということになります。

保護観察が付いた場合,被告人は保護観察所に行き,そこで担当保護観察官(実際は地元のボランティアである保護司が担当する場合が多い)が決まります。そして,裁判で言われた遵守事項に基づいて,更正計画を立てます。さらに,定期的に面接を行い,状況確認やアドバイスなどを行います。
保護観察期間中の引っ越し等は原則として許可が必要です。ただ,これは引っ越しがけしからんという意味よりも居場所を確認する必要がある,という理由によるものです(今回の事件では,この点の連携が甘かった点が指摘されています。)。

第4 似て異なる制度(仮出所)
執行猶予と仮出所がよく混同されています。
仮出所とは,刑務所の受刑者が刑期満了前に刑務所を出られる制度です。
したがって,仮出所は受刑者という地位が残ります。
よって,やはり保護観察を受けることになりますが,執行猶予の場合以上に厳格に保護観察が行われることになります。
仮出所も一定の遵守事項を守らないと取り消されて刑務所に戻されますが,その中には素行が悪い場合なども含まれており,やはり執行猶予以上に厳しい条件となっています。
これは,執行猶予はまだ受刑者ではないが,仮出所制度はあくまでも受刑者である,という前提があるからです。

第5 執行猶予制度の問題点(私見)
以上が現在の執行猶予制度です。
ここからは,個人的見解になります。
これを読んで,「あれ?」と思った方がいるかも知れません。
そうです,その部分が今の執行猶予制度の問題点です。

1 理論上,裁判で5年以上ねばれば初回の執行猶予がつくことになる。
第1で書きましたが,初回の執行猶予は前5年間禁固刑以上に処せられていないことであり,この起算点は犯罪実行日ではなく,その判決の言い渡し日になります。
よって,極端な例をいうと,出所翌日に犯罪を犯して逮捕された場合でも,裁判で5年間争い続ければ,5年以上経過したことになり,執行猶予の言い渡しが可能となります。
ただ,現実的には,裁判官もバカではないので,このような輩にはほぼ確実に執行猶予はつけないでしょう。執行猶予をつける,つけないは裁判官の任意的な判断に委ねられていますから。
一応,立法上の問題点という程度の指摘です。
2 保護観察なしの執行猶予期間中の更正対応がない
保護観察が付かないケースでは,被告人を監視またはアドバイスや相談を受ける法的制度はありません。執行猶予=無罪と思われる理由はここにありますし,前述のとおり,保護観察の有無は被告人にとって天国と地獄の違いがあります。
一方で,執行猶予の任意的取消事由には前述の仮出所と異なり「素行が悪い」は含まれません。つまり,犯罪を犯さなければとりあえず取り消されることはありません。
執行猶予制度が被告人の更正に役立っているかどうか疑問視する学者は,この点を指摘しています。
3 保護観察中に行方不明になった者を強制的に捕まえる手段がない
保護観察に来なくなった者は,保護観察の遵守事項を守らないということで任意的取消事由となります。まず,そもそもこれが任意的取消でよいのかという問題があります。
また,来なくなった人を捜す手段がありません。正しく言うと,逮捕状のような令状がありません。したがって,強制捜査はもちろんのこと,仮に居場所を見つけたとしても,無理矢理保護観察所につれてくることが認められていません。
アタックチャンスの制度である以上,来なくなることも想定した対応を検討する必要があるかも知れません。