ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

としまえん閉園!

2020-08-31 18:47:37 | 雑談
もう開園から94年も経っているのですねー。

じつは ぬえは としまえんの近所で生まれ育ちまして、今でもすぐそばに住んでいます。
地域住民には無料パスがあったので、子どもの頃から 当時は「豊島園」と漢字書きだったこの遊園地が遊び場でした。学校が夏休みになると、日本中の子どもは「流れるプール」で遊ぶものだと思ってましたw。大きなローラースケート場もあって、よく遊んだなー。

練馬区では成人式が「としまえん」で行われるのは有名だと思いますが、のりもの券が配られて、式が終わるとみんな遊園地で遊んだものです。晴着とか羽織袴のままでジェットコースターに乗るとかw。

豪華メリーゴーラウンドの「カルーセル・エルドラド」が導入され、「波のプール」が登場し、少し遅れて「ハイドロポリス」というスライダーがプールに現れたり、と何度か盛り上がりを見せていましたが、その後はだんだんと人気がなくなってしまって。。

それでも東京ディズニーランドが開園すると、としまえんも触発を受けたのかリニューアルしまして、入園口が今のようにきれいにデコレーションされたり、木々にイルミネーションを取り付けたり、かなり様相が変わったようでした。でもそれも一時の賑わいで、外から見る限りでは夏のプールのほかはあまり人気があるようには見えませんでした。

ぬえも2~3年前に車椅子に乗った父を連れて園内に花見に行ったのが最後になってしまいましたが、昔のアトラクションがいまでも現役なのを見て衝撃。事故は起きないように、係員さんは世代を超えてメンテナンスを続けていたのでしょうねー。

子どもの頃は夏休みの期間の毎週土曜日に30分間の花火大会があって、自宅からよく見えました。。というか毎週なので見に行く気はしなかったのですが、風向きによっては花火の火の粉が降ってくるような至近距離で、大きな音でテレビも聞こえないので、見に行くしかなかったw これもバブルのあとには段々と規模が縮小されて、ひと夏に1回だけになって、最近は毎週末になりましたが ほんの8分? だけの規模になりました。

そういうわけで昨夜は「閉園イブ」で、近所で短い花火を見上げました。



もう花火も最後だからか、ご近所さんが結構な人出でした!

そして今日。最後だしちょっと覗いてみようかな、とも思ったのですが、例にもれずコロナウイルス問題で入場制限がかかっていて、チケットはすべて事前予約制、当たり前でしょうがすべて完売だそうでした。



なので入園口だけ画像に撮りましたが。。こんなに混んだ入園口を見たのは初めてかも。。なんと行列が出来てます!



この後 ぬえはまたコロナウイルスを避けて鹿嶋市に移動してしまいましたが、今夜も20時からラストの花火大会が。。8分間だけ打ち上げられるそうです。まだ時間があるのでお近くの方はぜひ。

最後に、ぬえの子ども時代の「豊島園」でのスナップを。。



普通の遊園地じゃん!

でもまあ、ぬえの思い出の遊園地でした。長い間お疲れ様でした。ありがとう、としまえん。
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5カ月ぶりの舞台

2020-08-26 22:21:45 | 能楽
新型コロナウイルス感染を避けて茨城県鹿嶋市に居を移して早5カ月になります。

去る8月8日に二子玉川ライズの屋上庭園で恒例の薪能が開かれました。ぬえにとっても3月11日の震災の日に石巻で能「龍田」を勤めて以来5カ月ぶりの舞台は能「石橋・大獅子」の前シテでした。久しぶりのお舞台でちょっと不安もありましたが、ミスもなかったし楽しく勤められました。

「石橋」は何度も勤めておりますがいつも半能で、前シテは初めてのお役。「大獅子」の小書がついて前シテは童子ではなく尉になるのですが、杖を突いて出るため、谷底を見込むなど気持ちを入れる場面で杖をぐっと突いて気持ちを込めやすいので、童子より有利かもしれません。それでも、「石橋」は前シテが童子の場合にも相当に重厚に勤めることになっていますので、尉となるとその上にさらに位取りを加えていくべきものであろうと思いますが、どうも。。声ばかりは元の調子に戻せず。。あまり自分でも気に入らない出来ではありました。

さて当日に会場に到着してまず、見所を見てびっくり。この、感染防止のためのいわゆる「ソーシャル・ディスタンス」を保った様子を見てください!





広い芝生の会場に2mの間隔を置いてまばらに並べられたパイプ椅子の客席。貼りだされていた座席表によれば、前後に招待席の区画が設けられていて、おそらく唯一有料の座席である「指定席」は わずか58席です。1度はこの公演も延期になったのですが、聞けばこの会場の持ち主である東急の社長さんが、こんな時期だからあえてこれ以上の延期や中止にはしないで、対策を十分にとった上で上演したい、という英断を下されたのだそうです。

しかし、これでは採算は取れない。。

この薪能は主催者が果敢な挑戦をしてくださいましたが、毎月、毎回となると難しいでしょう。ぬえの師家でも今月から感染防止対策を施したうえで月例公演を再開させましたけれども、これは公演不能となった春からの公演の延期公演という位置づけです。じつは延期公演というのは、催行不能となった公演の「やり直し」という意味だけではないのです。すでに前売り券を買って頂いたお客さまがいらっしゃるので、赤字であっても中止にはできないのです。中止すると払い戻しをしなければなりませんから。。

本当に怖いのは来年ではないかと思っています。もしもこのまま観客を定員の半分に削減しなければならない状態が続けば、能に限らず ほとんどの劇場での公演は採算が取れず、チケットの販売もできなくなるでしょう。

国や自治体は盛んに「オンライン配信」を勧め、報道も同じく有効な新しい発信方法だと伝えますが、果たして舞台芸術が本当にオンライン配信だけで生き残れるものでしょうか。少人数で上演できる狂言などは実際に有料オンライン配信を行っておられるようですが、出演者が多い能などでは出演料や会場費が配信だけで確保できるとも思いにくいですし、何より舞台芸術や音楽ライブなどというものは、映像では味わえない臨場感や、お客さまの前で演じるからこそ起きる、説明しにくいですが、高揚感とでもいうものによるのか、稽古の段階では得られない「成果」が舞台上に現れる、ということがあるものでしょう。

今は地謡の人数を減らしたり、お囃子方が少し着座位置を後ろに下げたり、またお客さまにもマスクの着用をお願いしたり、と感染対策をしながら、ようやく公演が少しずつ始まってきた段階ですが、能の長い歴史の中では今回のような疫病による危機は必ずあったことでしょう。その度になんとか乗り越えて今日のような上演の形態に戻されたのは確実なわけで、今回もいずれワクチンや特効薬が開発されれば、元のような公演に戻れる日が来ることでしょう。その日を信じて待ちたいと思います。。
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