仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

MISTY

2017年03月20日 | ムービー
『MISTY』(1997年/三枝健起監督)を見た。
物語は、「平安時代。由緒ある家柄の青年・武弘(金城武)の所へ嫁入りすることになった真砂(天海祐希)は、二人で都へと向かっていたのだが、その途中、森の中で野獣のような男・多襄丸(豊川悦司)に襲われる。多襄丸は武弘を縛り上げ、真砂ににじり寄った。夜が明けて、森の中に武弘の死体と切り落とされた男の腕が発見され、調査に当たった検非違使たちは、真砂と多襄丸、そして事件の目撃者である盗賊のミミズ(小西杏奈)という子供から証言を得たものの、3人の証言はそれぞれに食い違っていて・・・」という内容。
これは『藪の中』(芥川龍之介/作)を映画化したもので、同短編小説では武弘が26歳、真砂が19歳と書かれていたのだが、本作品ではもう少し上の年齢に設定されているような配役だった。
現場検証をした白河(小日向文世)、紺野(六平直政)、赤堀(篠井英介)といった検非違使によると、多襄丸は懸賞金が掛けられているほどの悪党なのだそうで、広い森の中でそんな男に出くわしてしまった2人の運の悪さには同情してしまうものの、キッカケは武弘と真砂が盗賊の子供達に荷物を盗まれてしまったこと。
「あの男さえいなければ」という真砂の台詞があったのだが、そもそも、大事な物を置きっぱなしにしてその場を離れるような油断がこの事件を引き寄せてしまったのだから、人のせいにばかりはできないだろうとも思う。
それぞれの証言時には再現映像が同時に写し出されるのだが、その証言によって、土砂降りだったり、雨上がりだったり、風が強いだけだったりと、いろいろと状況を変化させているのが面白かった。
さて、今時の"藪の中"といえば、学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却に関する問題だろう。
同法人が国有地を評価額より大幅に安く取得できたことに関して、国会議員の関与があったのか。
疑惑とされる指摘がどんどんと広がり、現職防衛大臣稲田朋美氏と元理事長籠池泰典氏との接点、現職の内閣総理大臣である安倍晋三氏と同氏の接点、さらには、開設が予定されていた森友学園運営による小学校の名誉校長に一時期就任していたという安倍首相の配偶者・昭恵氏と同氏の接点等についてが、テレビのニュース番組やワイドショー等でほぼ連日取り上げられている昨今だが、3月23日(木)には参議院(午前10時)と衆議院(午後2時50分)の予算委員会において籠池泰典氏の証人喚問が行われることになったようだ。
証人喚問で虚偽発言があれば偽証罪に問われることになるので、その場で何の根拠もない話がでっち上げられることもないだろう。
果たして、つついた"藪の中"から一体何が飛び出してくるのか。
疑惑と言われているものの何かが解消されるのか。
3月17日(金)の東京株式市場で小幅に反落した日経平均株価(前日比68円55銭安の1万9521円59銭)を受け、ついに「森友学園への国有地売却を巡る問題で政局の停滞が懸念され、小口の売りが優勢だった」とも分析され出したようであり、単なる馬鹿げたゴシップでは済まないような状況になってきた。
この証人喚問は、目下、世間の大注目である。

オリヲン座からの招待状

2017年03月16日 | ムービー
『オリヲン座からの招待状』(2007年/三枝健起監督)を見た。
物語は、「別居中の三好祐次(田口トモロヲ)と良枝(樋口可南子)。良枝の所へ故郷京都の小さな映画館オリオン座から謝恩最終興行の招待券が2枚届いた。幼馴染の2人が子供の頃にいつも遊びに行っていた近所の映画館だが、57年間の営業に終止符を打つという。一緒に行こうと誘う良枝に祐次の返事はつれなかった・・・」という内容。
豊田松蔵(宇崎竜童)とトヨ(宮沢りえ)が2人で営んでいたオリヲン座は昭和25年に開館したのだというが、テレビのない時代には大盛況だったのだろう。
昭和32年に仙波留吉(加瀬亮)が住み込みで働くようになった時も、オリヲン座は満席だった。
入口に「入場料/大人70円、小人35円」と書かれていて、売店には柿の種・ピーナッツ・煎餅・あんパン10円、ラスク20円、かりんとう35円などと書かれていたが、柿の種などは小さなスコップでガラスの瓶からすくって手製の紙コップに入れるという何ともほほえましい販売方法だったようだ。
日本の映画館入場料は『戦後値段史年表 週刊朝日編』(1995年/朝日文庫)には、昭和26年が80円と書かれていたものの、昭和32年は150円となっていた。
オリヲン座は封切館ではなかったので、昭和32年でも入場料が安かったということなのだろうか。
(^_^)
昭和32年にかけていた『君の名は』と『二十四の瞳』の2本立てや、昭和35年の『幕末太陽傳』では満席でにぎわっていたオリヲン座も昭和36年にはテレビが普及し始めたこともあって客がまばらになっていた。
閉館する頃の豊田トヨ(中原ひとみ)と仙波留吉(原田芳雄)はすっかり老人になっていて、施設もすっかり古ぼけ、たばこの自動販売機は故障中、売店にもほとんど何も置かれていなかった。
何とも切ない様子が映し出されていたが、家族経営の映画館というのは今はもう日本のどこにもないのだろう。
歴史の1ページという話だ。