虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

教育現場に必要な 『ブラックボックス』 という言葉 3

2010-06-06 09:37:12 | 番外(自分 家族 幼少期のことなど)
空間と行動の話をもう少しだけ。

以前、児童館で工作を教えていたとき、
館長先生は工作用のテーブルといすを用意してくれていました。
当時、私は、同じ部屋を使って、
えほん大好きクラブという小規模なイベントもしていました。
また別の子ども用施設で「つくるんクラブ」という工作教室もしていました。ここでの製作スタイルは、低いテーブルで、じゅうたんに直接座ってするものでした。

この3つの集まりで、子どもたちは全く異なる集中力や製作の仕方をしていました。
まず、高いテーブルを用意してあるスペースでは、3歳以下の子たちは、
工作教室の参加者だということすら気づけない様子で、走ったり、おもちゃを引き出したりして遊んでいました。

が、同じ部屋を使ったえほん大好きクラブで、
大きなシリコン系ゴムの積み木で、
囲いを作り、
部屋の中にもうひとつ絵本の世界のお部屋やお城のようなものを作って、低い子どもイスの高さに空間を統一し、
全体に目線を下げた配置にしていたため、
幼い子たちが積極的に参加し、途中でする工作もどきも
楽しむことができていました。

幼児が何かに取り掛かり、熱中するためには、幼児の目線や自分のテリトリーを目で確かめられるようになっていることが大事なのかな?
と感じました。

また、もともと机が低くイスを用いない部屋の工作では、
(ここの工作は小学生限定)どの子も長時間、工作に熱中し、2,3の力作を仕上げる子もたくさんいました。
別の機会に、小学生を相手に、近所の小学校の理科室で、
凧作りと、子ども神輿の製作を教えたことがあるのですが、
学校という空間では子どもが自主性を欠いた「教えてもらって指示通り何かしよう」という態度になりがちなことも気づきました。
空間が異なるだけで、同じような子たちなのに、
自主性も作る作品も会話も創造力もまったく別物になるのです。

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空間と態度と言えば、もうひとつ心に残った体験がありました。
先月、ごゆっくりさんのyoshikoさんのお宅にお邪魔しました。
そのときの自閉症のトムくんとの交流を私が書きつづったものを
yoshikoさん☆奈緒美先生との2日間という記事で整理してくださっています。
この中でも書いているのですが、
私はトムくんが空間や場所によって、集中力や注目する力、再現する力、理解力などが全く異なることに気づきました。
それには自閉症の子の特徴である
ボディーイメージの弱さが関係していると思われました。
風呂場のような囲まれた空間、また湯をかぶっていて、自分の身体が皮膚から認識できているとき、トムくんは高い能力をしるしたのです。

この日、私は別の興味深いことに気づきました。
ベランダで日光を浴びているトムくんは高い能力をしるすことがよくあり、
またこのベランダからの日光が差し込んでいる室内の空間で、おまけに、廊下があるので、目で見えるものが制限されている場で、
新しいことができるようになりやすかったのです。

極端に苦手な「やりとり」についても、
そこでは、きちんとできることが何度かありました。

それが別の場所で、視覚をさえぎる道具で人工的にそうした空間を作るのでは、
あまりうまくいかないようでした。

「日光も水と同じように、皮膚からトムくんに
ボディーイメージを与えているのでしょうか?」とyoshiko
さんにたずねると、
「考えたこともありませんでした」という返事が返ってきました。

日光が空間を作るって妙な考えなのですが、トムくんのように、
自分の身体と世界の境界線がわからなくなってしまう子には、
日光もひとつの空間を区切る道具なのかもしれません。

空間と学習態度や能力の関係は、多くの方が感じている以上に
大きなものなのかもしれませんね。

次回に続きます。 タイトルから話が脱線していますが……。

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