虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

教育現場に必要な 『ブラックボックス』 という言葉 4

2010-06-06 11:14:42 | 教育論 読者の方からのQ&A
エドワード・ホールの著書の『かくれた次元』の話に戻ります。
この本は、おそらく空間デザインについて語った本なのだろう……と早合点して
購入して帰ったものの、
読み始めたとたん、まず興味を惹いたのは、言語についての話題でした。

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化学者であり技術者であったが、言語学領域ではアマチュアだった
ベンジャミン・リー・ワーフは、
『思考と知覚』と『言語』との関係について
次のように結論づけました。
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言語とは、思想形態の一つの主要な要素なのである。
日常から例をとれば、
人間による世界の知覚は、その人のしゃべる言語によってプログラミングされている。
2つの言語は、同じ部類の出来事をしばしばまったく違うようにプログラムするので、
信仰あるいは哲学体系は、言葉を離れて考えることができない。
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人間と体験は、2人の人が同じ「体験」を持ったなら、中枢神経系には同じデーターが与えられるのだから、
2つの脳は同じような記録をすると考えられていました。
しかし、プロクセミックスの研究によって、
この仮定に疑問が投げかけられているのです。

こういった言語についての話題は、数日前、息子と話し合ったばかりで
新鮮だったため、
さっそく夕べ、息子の部屋にこの『かくれた次元』の本を持っていって、
「ここ読んでみて、★(息子)が興味持ちそうなことが書いてある」と差し出したのです。
こんな風にたびたび息子の受験勉強に茶々を入れている私ですが、
息子もちょうど勉強に飽きてきた時間だったらしく、

さっそく本にざっと目を通して、
思うことをいろいろ話し始めました。

結局、それから2時間以上、ふたりで議論し続けて、時計を見ると11時半をまわっていました。

息子が常日頃感じている言語の問題は、次のようなことらしいです。

「情報化社会が進んで、広告のコピーなんかで言葉だけが実態のないまま主張を持ち出してるじゃない?
言語のメタな部分が存在を持ち始めているといったら良いのかな?

たとえば、優しい!とかおいしい!とかいったことを感じる体験は、
それぞれその言葉の裏付けとなる……

こういうときに、このような行動を取るのが優しいということだとか、
こんなとき、このように扱われたら優しさを感じたとか、こういうものをこのような食べ方をするとおいしかったとか……

個人の具体的で主観的な体験があってはじめて成り立つ言葉なのにさ、
最近は、
『癒しの体験』なんていう言葉が、
まるで人がさまざまな場面で感じる癒されて優しい気持ちになるといった体験を最適化したものが存在していて、それを直に受け取れるような錯覚を起こさせているからね」

息子の言葉が、私もちょうど難波に出かけた先で感じたことと重なって、
思わず夢中になって話しました。

「最適化……そうなのよ。
最近、幼い子を育てている方々と接していると、経験の前に、
わが子に与えたい経験を最適な状態でセッティングするための情報を得ようと、常に情報集めをしているように感じるときがあるの。

そこには、子どもに最高に合理的で価値があり、濃度の濃い体験を与え続けたいという気持ちが見え隠れするのだけれど……。

たとえば、私がトルコのアイスを買いました。トルコの方の国民性や、屋台の雰囲気を体験しました……とブログで紹介したとすると、

それはどこにありますか?
とたずねられて、一直線にそこへ向かい、帰宅後、トルコの地図や図鑑を確かめるという方がいたとすると……とてもそういう方は多いのだけど、

その体験に、「~へ行こうとすると思ったより遠くて、疲れたところで、偶然、おもしろい店を見つけた」という

見つけたとか、疲れたとか、甘い物食べていると疲れも我慢できてしまったとか、目的以外の道草のおもしろさとか、自分や子どもの持っている感性やアンテナを初めてみる環境に投げかけるとか、不確定要素との出会いを楽しむ

といった自分独自の体験がなくて、

最適化され、意味や言葉で切り取られた体験のみが子どもに与えられている……それは、ブラックボックスとなりつつある現代の世界を
さらに奇妙なものにしているように感じるのよ。
だから、情報を伝え合って体験する際には、大人の側がそうしたことを把握していることと、かなりの柔軟性が必要だと思うのよね」


次回に続きます。


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