七曜工房みかん島

18年間の大三島暮らしに区切りをつけ、
滋賀大津湖西で、新たに木のクラフトと笛の工房
七曜工房を楽しみます

一人で建てる木組みの家~④木材~

2006年09月01日 | 『一人で建てる木組みの家』
1.木材をどこに使うか 
木は基本的には火や水に弱いものである。火事になれば木造家屋はやはり燃えやすいし、切り倒されて山林に放置された木は数年で朽ちて腐ってしまう。広葉樹などは2年もすれば朽ちる。だが法隆寺のヒノキは千年でも腐らない。スギであっても湿気から遠ざければ、数百年は大丈夫だろう。だから、火や水に近いところには木を使おうとは思わない。風呂場の浴槽や壁は水に強いステンレスやタイルを考えているし、台所のレンジ裏や薪ストーブ裏の壁には不燃ボードにしっくいを塗ろうと考えている。ただそれ以外は総て木作りになるだろう。木材ほど多様性のある優れた材料はない。軽軟で加工成形は楽だし、なによりも親しみの湧く材料だ。ただ火災だけはどうにもならない。火事を起こさぬように注意しなければ。

2.国産材か輸入材か
 どちらを使いたいかと尋ねられたら、当然のごとく国産材と答えるだろう。それも地場産の木材を使いたい。書物では地場産の木材の良さを示して使うことを奨励してはいるが、私の周りではまだ実例を見ない。材木購入時に、関係機関や材木店に地場産材を使いたい旨を伝えても、どこからも積極的な反応は帰ってこなかった。なぜこだわるのかという感じだった。というのも、低コストでと言う条件をつけるから、それなら輸入材という、低コスト=輸入材の公式が出来上がってしまっているからだ。それやこれやで結局は地場産材へのこだわりは消えた。が、せめて国産材へのこだわりはあったので、スギなら低コストに見合うと国産材のスギを中心に使うことにした。
 小物の木工品作りでは国産材へのこだわりはない。使用量も少なく、色彩や質感の多様性を求めるなら輸入材もおもしろい。ただ、自分がその中に入り込んで暮らす家を作るなら、やはり日本で育った木を使いたいし、沢山の木材を使うなら日本の森林を守るためにも国産材を使うことにこだわった。

3.材木の種類はスギが中心
 スギは一等材であれば、外国産の輸入材よりも安価である。一等材とは言っても材木等級では最下級である。節があることを気にしなければ良い。また軽量なため
“一人で建てる”には取り扱い易い。加工するには軟らかいのでノコギリで切るには易しいが、ノミやカンナで削るには刃物をよく切れるようにしておかないときれいには仕上がり難い。カンナ削りなどは、ヒノキを削るほうがずっと易しくツルツルに仕上がる。
 適材適所と言われるように、使用する箇所に応じてスギ以外にもその他の材種を使用した。耐湿性を要求されるネコ土台や土台にはベイヒバやヒノキを。梁は材の背高を押さえるために強度のあるベイマツを。磨り減りに強くなければならない敷居や鴨居にはヒノキを。使用量の多い床材については、当初はスギを考えていたが、長年の使用における表面の汚れや傷のことを考えるとヒノキに軍配が上がった。
 『法隆寺を支えた木』などでよく知られる西岡棟梁はヒノキの良さを充分に伝えてくれている。総てヒノキで作れば悩まなくてもいいのだが、“低コスト”を考えるとやはりスギが中心となった。

第1回目材木搬入 2005年9月


4.木材の乾燥をどうするのか
 木を使って家を建てる場合、木の乾燥をどうするのかが大きな問題となる、どうするもこうするも、木は充分に乾かしてから使うのが常識だと言う人もいるだろう。私も小物の木工品作りでは、よく乾燥した暴れの少ない材木を使いたいと思っている。乾燥が不十分だと、反り、割れ、縮み、ねじれなど出来上がった作品を台無しにしてくれることがある。
 だが家作りではこの乾燥の考え方が少し違っている。ログハウスは最近では充分に乾燥させた丸太やマシンカット材を使うが、そもそもの丸太小屋は切ったばかりの丸太を積んで作った。だからセトリングと言って、木が乾いて収縮することを見越した仕掛けがある。また軸組の家でも、少々乾燥が不十分でも、木組みで押さえ込んでしまえば歪んだり狂うことはないとも言われている。
 どの書物にも材木の乾燥の重要性が述べられている。3年以上寝かせて天然乾燥させると良いという風に。だがそうはいかないのが現実だ。天然乾燥材もあるが大変高くつくと材木店主に言われた。低コストなら未乾燥材にするかとも思ったが、主要構造材が刻んでいる途中で、反ったりねじれたりしたら、建前の時に一人ではどうしようもなくなるではないか。
 悩んだ末に人工乾燥材を使うことにした。見積もりをとると未乾燥の荒材に比べて、プレーナーをかけた人工乾燥材でも一割強程だけ高いだけだったので、主要構造材だけは乾燥材とした。建前の時には何とかうまく収まった。ただやはり、人工乾燥材は日が経つと仕上げ表面の木のツヤがなくなってしまうのが残念だ。

積み上げられたスギの4寸角材 
搬入された材木の量の多さに唖然とした


5.材木の太さは1ランク上
 “安心してすめる家”を素人が作るので、材木は太くてしっかりしたものが良いだろうと、一般的に使うものより太くした。一般的には柱で言えば10.5cm角(3寸5分角)を使用するが、1ランク上の12㎝角(4寸角)を使った。昔から行われている木を組むための組手や継手の仕口はいろいろあるが、自分で刻んでみても気付いたのだが、どうも4寸角を基準に寸法が決められているようだ。と言うことは、4寸角材を使うのが無理がなく、しっかりした木組みができるのだと自分では納得している。
 建前を見た近所の人は、ことごとくがしっかりした太い材を使っていると感心してくれた。3寸5分角を見慣れた目では4寸角の柱は相当太く見えるようだ。

6.防腐剤や防蟻剤を使うのか
 ”健康的な家”作りを目指すため薬剤の使用は避けた。土台や柱の足元には、湿気による腐りやシロアリの害を防ぐために防腐剤や防蟻剤を塗るのが通例であるが、基礎を高くしてネコ土台で通風性を確保し、耐湿性の強いベイヒバや芯持ちヒノキを使うことで腐りや蟻害を防げると考えた。
 建物の外装は15mm厚の杉板を下見板張りとしたが、これにもペンキもオイルスティンもなにも塗らないことにしている。日が経てば黒く汚れてくるだろうが、それも古びた木の味わいと見ることにしている。庇は屋根と同じように、何らかの屋根材を載せるものだが、屋根のように雨が当たることも少ないので下見板張りとしてなにも被っていない。どうなるのか見極めるでつもりいる。

購入2ヶ月後ようやく刻みの完了した4寸角材 2005年11月中旬
手前が土台のヒノキ 向こう側が柱のスギ


付記 妻・ひろより

材木満載のクレーン付き4tトラックが2台連ねて我家に来るのを見たとき、夫も私も、びっくりした。
夫は、自分がこれだけの量の材木に刻み加工ををするのかと不安になったそうだ。
私は、これで3分の1と聞き驚いた。

家作りの撮影担当は妻・ひろだが、基礎や単に材木加工だけの変化のない面白くない写真はほとんど撮ってない。(かなり長時間かけていたが)
それで、夫より、「肝心の大事な写真がない」と、クレームが出ている。
夫の指示で撮ったはずの写真も、訳が解らず、ゴミ箱に捨てたようである。
夫に言わせれば、文章も家作りも、”面白くない部分”が、なくてはならぬ大切なところらしい。
コメント
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