「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

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レベル7を真剣に考えていない人々とどう向き合えばいいのか

2011-04-13 00:44:16 | 福島第一原発と放射能

 今回、菅総理の会見は本来、前日に予定されていたのが、大規模な余震のため、翌日に延期されました。震災一ヶ月の会見ですので、日付の設定はおかしくはないのです。しかし、レベル7に原子力保安院がするという情報が報じられたのは、会見が設定されていた時間よりもあとですし、実際は、きのうレベル7は公表されました。つまり、何が言いたいかというと、本来であれば、菅総理の一ヶ月会見の翌日に、レベル7を公表するつもりだったのではないのかということです。これは、根幹的なことで、この福島第一原発でおきている事象の、現段階での評価を、長らくレベル5と言い続けた訳ですが、それを突然、レベルを二段階あげる判断を示すのが、総理の一ヶ月会見の後に、もともと設定されていると言うことが、この政権のいい加減な対応を端的に表していると私は思います。今回の震災の被災者に対する話と同時に、この原発災害についてのきちんとした見識を示すことが、国のトップである総理大臣にまず求められているところであって、強い余震がなければ、実はスルーするつもりだったのかという構えが分かると、どうしても真剣におきている事柄を考えようとはしていないんだなと思います。官邸の中でも「大丈夫、収束できる」というワードは飛び交っていますが、こうだから大丈夫なんだというきちんとした背景説明をともなった話がないんだと、僕は内部から聞きました。

 レベル7というのは、大変な状況なのですが、小出先生に言わせれば「もともと、出ている放射性物質の量の概算で、数週間前からレベル7という判断をするのが、おかしくもなんともないんですよ。今更なにをいっているのかなあと。国際基準に普通に当てはめれば、すぐに終わる話を、どうしてだまっているのか」という次元の話だそうです。吉岡先生は、「レベル7の発表は、地震から1カ月が過ぎ、原発による避難民キャンプ状況が維持することが現実に難しくなり、ある種の疎開を進める時期が来たと官邸関係者が認識し、そのための露払いをしたのではないか」と解釈していたともおっしゃいました。そんな前向きの判断であればまだマシなのですが。きょう官邸のスタッフに僕が聞いてみても、今回のレベル7をきちんと考えて想定して動いていた感じがまったくしないとこぼされたり、経産省の陰謀のようなワードまで聞こえてきて、レベル7という事象の深い意味合いを正確に捉えて、国民にいち早く公表しようというような積極的な意思表示はどこにも存在しないようだということだけが分かった感じがしています。

 原子力安全委員会も、自分たちは3/23からレベル7と思っていたが、保安院の仕事なのでこちらからは、口を挟まないと言うような、意味の分からない言い訳を続けています。こういうことが事実なら、現実に起きていることを専門家たちが隠蔽していただけですし、政府とメディアの大勢がそれに加担したのも間違いないと、私は思います。危険が大きなものであることを言わないように自粛したメディア関係者は、今回のレベル7という事実を厳粛に受け止めるべきです。事態は、チェルノブイリと同程度の災害になる可能性があったのですし、さらに、今でもその危険は継続しているのです。このことは、僕は何回でも言いたいですし、そのことを言わなかった報道の人間は、自分が、日本社会の安全に寄与すると言う基本的な事柄さえも、守ることのできないレベルだということを痛感するべきです。上に言われてルーティーンワークにしたがっていることで、許されたりは絶対にしません。あなた達個人個人の人生に、必ず大きな陰を落とすことになると、僕は思います。「専門家か安全だから、安全と言え」と指示を出していたメディアの大幹部はそれどころではありません。人間の屑です。

 チェルノブイリは広島型原爆のおよそ五百発分ですから、福島第一原発でおきたことはすでに広島型原爆のおよそ六十発分の放射能を現時点までに撒き散らしていると言うことなのです。そして、これからまだまだ増えていきます。地中に染み込んでいった放射性物質はさらにわからないのです。もう並の話ではないという現実をなぜ認識しないのでしょうか。しかも東京電力の言い方では、最終的な放射性物質の拡散量はチェルノブイリを超える可能性まで話をしだしています。

 このところ、原子力安全委員会の言い訳口調のみならず、推進側の現役、OBの学者にせよ、現状認識について、紙をまとめる作業をしていて、世間に公にしています。僕はこの行動が、事態がなんとか最悪の状況だけは回避できたものの、放射能の被害を拡大させた責任について、いちはやく言い訳をしておこうという感覚ならば、まだ許せると思っていました。つまり事態はようやくなんとかなるなら、言い訳だけしておこうと言うレベルであるならば。しかし、今回、現役の皆さんのペーパーを呼んで驚いたのは、割合に率直にお書きになっていて、今の爆発の危険も書いていることなんです。推進側の現役の中心的な学者の方々の本音がよくわかります。危険は去っていないのです。

 この中身を小出先生に確認していただき、聞いてみると「雁首そろえて、何を今更」という感じでしたし、「こちらが指摘していることを追認しているレベル」という感じでした。吉岡先生も格納容器・圧力容器の同時破損の事実と、水素爆発やドライベントが起こる危険性を、みとめている点で同じとされています。ただし推進側の皆さんが、メルトスルーの危険性に言及していないことや、核燃料損傷の比率の推定根拠が不明とお考えのようです。

 どちらにしても、危険が去っていないどころか、「今、そこにある危機」という状態なのも間違いありません。こうした流れの中で、僕らは今があるという苦い現実をもう一度噛み締めるほかはないと私は思います。

 さて、このところ、ブログへの個別の問い合わせがあったうちで、次の書き込みのことが気になっています。「政府関係筋からの情報があり、圧力容器に亀裂が入り、かなり爆発の可能性が高まっているとのこと。もう制御不能だということです。レベル7の情報はそれを見越した上での処置だそう。どこまで正しいか分かりませんが、現場の人間はその辺の認識でいるようです。」

 レベル7がそれを見越してかどうかと言う点については、専門家は否定的ですし、官邸内でも裏付ける情報はありません。そんなにきちんと思考している形跡がそもそも見つけられません。ただし圧力容器の亀裂は、専門家でも同じような判断をしている方もいますし、爆発可能性がありうるということや、制御不能も、ある程度はそうではないかという推定をされている方もいます。政府が収束方向と言っているのとは異なる見立ては複数あります。ただ、現況でかなり爆発の可能性が高まっているかどうかについては、裏付ける情報はありません。この点は、今夜、いろいろと取材しましたが、プラスもマイナスも、情報と呼べる話は僕のところには入ってきていません。ただ、大変に気になりますし、あたっていれば、大事ですので、引き続き取材は続けるつもりでおります。

 なお、最近情報提供のメールを多くいただいておりまして、大変にありがたいです。情報交換はできる場合はお電話で話したいと思います。お名前と電話番号を明記していただき、中身がきちんとしたメールならこちらから必ず連絡いたしますので、ご協力いただければ大変にありがたいです。僕自身、木下黄太、一人で全てをこなす状態ですので、行き届かない点が多々あろうかとは思いますが、お許しいただいて、教えていただけば、大変にありがたく思っています。よろしくお願い致します。