普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

麻生さんのビジョン

2008-10-01 15:56:00 | 麻生内閣

[麻生さんのビジョン]
 麻生さんの所信表明演説でマスコミの批判の的になった一つに麻生さんが日本をどのように導こうとしているのかのビジョンがないと言うことだ。
 民主党の鳩山さんも、国のビジョンのかけらもない野党批判ばかりの所信表明演説だと批判している。
 首相のビジョンで印象に残っているのは安倍さんの「美しい国」、そしてどうしてそのような国に持って行くための諸施策だ。
 これに比べれば麻生さんの演説には安倍さんの言う様な壮大なビジョンは示されなかった。
 ビジョンなどでっち上げようと言えばいくらでも作れるし、演説にも取り入れられる。
 だから麻生さんが壮大なビジョンを繰り広げれば、マスコミは選挙対策だと言って批判するに決まっている。

 一方の民主党の小沢さんは「国民の生活第一」と言うばかりでその裏付けがなくて、与党やマスコミの追求で今になって財源をどうしようかと検討している始末だ。
 今日の代表質問で小沢さんが所信表明演説をするそうだが、是非聞いて見たいものだ。
 麻生さんの演説のなかでも、緊急課題として「日本経済の立て直し」を挙げたがその具体的な処方箋も財源も示さなかった。
 麻生さん、小沢さんとも大きなことが言えないのは、今の厳しい経済環境と膨大な国債費の圧力の中で、政府として如何に経済を活性化し、政府収入の増加するからの道が殆ど閉ざされており、どのような大きなことを言っても批判されるに決まっているからだ。
 せいぜい出来るし、やらねばならないことは、財政の見直しと官庁の合理化で金をひねり出して当面の年金、介護保険、医療崩壊の防止など国民の生活の安全保証で、それ以上の前向きの事はやろうと思ってもできないのが実情で、麻生さんとしては景気回復くらいしか言えない。

 今の日本の現状から考えて、壮大なビジョンを言うなら、官庁の合理化、無駄の排除は当然として、如何に経済を拡大し、政府収入を確保することで日本国民に明るい展望を示さねば、絵に描いた餅といわれるだけだ。

[激変する経済情勢]
 今までは小泉さんの言う、構造改革、自由主義経済、市場経済中心主義、規制緩和、「民間でできることは民間」のやり方も少なくとも修正、調整の必要があるようだ。
 米国中心主義の日本の経済も現在のような米国発の金融不安で大きく揺らいでいるし、中国、ロシヤ、インドの台頭で、その経済のリーダーの地位もおかしくなっている。
 さらに日本を含む世界各国の意のままにならない、利益を独占しようとする寡占化した巨大な資本、膨大な資金の流れの影響も避けられない状態だ。
 さらには地球の温暖化、限られた資源を浪費してまでして経済活動を無制限に拡大してして良いかなどの基本的な問題と、環境問題を理由に経済活動にある程度の実質上のブレーキを掛けようとする先進国と開発の遅れた国との調整と言う難しい問題もある。
 それらの経済的な大きな変化に対して政治家は勿論、経済の専門家からも具体的な解決策は出てきていないようだ。
 竹中さんの構造改革も少し色あせたようだし、積極財政論者の言う様な公共投資で今でも膨大なの国債を更に増やして、それで元を取り戻せるか、増え過ぎた国債の償還をどうするかも今の情勢では殆ど保証できないような気がする。
 中には日銀が紙幣をどんどん刷って積極投資をしろと言う人も居る様だが、素人が考えるとこれでインフレになって今の国債が実質的にただ同様になったのを利用して一挙に国債を処理できるメリット迄は考えられても、円にたいする信用失墜、開発途上国のただ同然になった紙幣→デノミまたはデフォルト(債務不履行)のリスクをどう回避するのか首を捻るだけだ。
 経済の識者や学者は輸出から内需拡大への転換と言うが、少子化の進行や契約労働者の増加にともない平均収入の低下で、どれだけ国内消費が増えるかもあやふやだし、輸出も日本得意の環境技術を活かして輸出増加すべきだと言うが、今までの自動車、電機製品などの輸出額に比べると、環境機器やその技術の輸出額は前者の何十分の一にしかなず、その効果は知れたものだと思う。

[政治家、経済学者の限界とマスコミの役割]
 経済情勢の大きな変化の対応で一番の障害になるのは、政治家、経済学者や経済の知識を売り物にしてきた所謂識者が、私のような素人と違って自分の意見が間違いや、現状に合わなくなったと知っても、あっさり意見を変えることが出来ないことだ。
 持論を変えることは政治家や経済学者に取って命取りになりかねないからだ。
 それが今の様に経済問題については当面の彌縫策は論じられても、基本的な経済問題については、あたかもタブーのようにこれと言った意見が出てきてないような気がする。

 マスコミは政治家、学者と違って(自社の主張にこだわる朝日新聞は別として)皆一応フリーの立場で報道、解説、主張できる立場だ。
 マスコミが、麻生さんの演説にビジョンがないと言うなら、自分たちが主張するビジョン、中でもその中心となる経済活動の活性化は如何にあるべきかを提言すべきだと思う。 私のような素人のならとにかく、天下の大新聞が自社のしっかりした考えもなしに、麻生さんの演説にビジョンが無いなど言える資格はないと思う。(*注記)

 かって、読売新聞は憲法改正の案を出して議論を巻き起こしたことがあるが、それと同じように心あるマスコミなら、日本のために難しい経済問題の対応についての提案や解説をして貰いたいものだ。

このブログを、より多くの人にも見て貰いたいと思っています。どうぞご協力をお願い致します。↓
政治ブログランキングへ
政治ブログへ

*注記
 私事になるが、08年6月のその場凌ぎの政治から抜け出すために
で、石油資源の問題、地球温暖化、永久に米国に依存してゆくのか、丸呑みのアメリカ型市場経済で良いのか、800兆の負債、少子化などの問題について、日本の立場から見た長期的視野で基本的、総合的に研究するシンクタンクの設立の必要性を書いた。
 勿論素人考えで問題点を思いつきで並べただけだが、強大な情報力を持つマスコミなら、そのつもりになればもっと具体的な提案が出来るはずだと思う。

 


最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
麻生総理のビジョン (菱海孫)
2008-10-02 01:57:55
私は麻生総理の著書『自由と繁栄の弧』を読んで、この方には総理としての十分なビジョンがあると判断しています。ただし「ビジョン」という言葉を狭く捉らえて、いわば政策構想といったように解釈するのではなく、もっと広く捉えて国政の将来に対する思想的態度といったように考えても良いのではないか思います。

かつて小林秀雄は日本人の思想的態度の問題点として「2×2=4か、それとも文体の問題かどちらかに帰着する」と述べました。また丸山真男は「一方の極には否定すべからざる自然科学の領域と、他方の極には感覚的に触れられる狭い日常的現実と、この両極だけが確実な世界として残される」と述べています。

これは共に同じ意味で、例えば現在の政治的状況を述べるにあたって、かたやGNPや消費者物価指数を例示しながら、かたや身辺の人々の暮しぶりを例示するという二極で説明しようとする日本人の態度を指摘しています。本当はこの中間に、哲学的あるいは観念的な言い方が存在するはずなのに、これが無いということです。

そして麻生総理の政治思想を語るには、ここを考えなくてはならないと思います。その上であえて麻生総理の政治思想をジャンル別けするならば「英米流保守主義」だろうと私は考えています。

英米流保守主義とは人間の不完全性を前提として、社会問題を処理する知識を、孤高の思想家の思弁的理論の中にではなく、歴史的経験によって蓄積された慣習に見い出そうとする信念です。このことは先般の所信表明演説における以下の部分に現われていると思います。

「わたしの前に、五十八人の総理が列しておいでです。百十八年になんなんとする、憲政の大河があります。新総理の任命を、憲法上の手続にのっとって続けてきた、統治の伝統があり、日本人の、苦難と幸福、哀しみと喜び、あたかもあざなえる縄の如き、連綿たる集積があるのであります」

またこの思想が民主主義と接点を持ったときにどのようになるかということは英国の小説家であり思想家であったG・K・チェスタトンの以下の言葉に現われています。「古代のギリシア人は石で投票したいうが、死者には墓石で投票して貰わなければならない」

長文で失礼致しました。
返信する
Unknown (Unknown)
2008-10-04 10:09:44
>「古代のギリシア人は石で投票したいうが、死者には墓石で投票して貰わなければならない」

では、投票権の無い子供たちは何で投票すればいいのでしょうか。仮に麻生さんが保守主義者であるとして、過去の習慣の保持も大切ですが、あるべき未来に向かって体制を保守するために改革する、という視点はもちえないものでしょうか。
返信する
保守主義について (菱海孫)
2008-10-05 00:30:15
私は保守主義が改革の全てを否定しているとは思いません。これについては保守主義が「社会問題を処理する知識を、孤高の思想家の思弁的理論の中にではなく、歴史的経験によって蓄積された慣習に見い出そうとする信念」であるということで回答になっていると思います。もっともUnknownさんの仰る改革がどのようなものであるのか不明ですから、それによっても意見が別れるとは思いますが。
返信する

コメントを投稿