普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

日本型経営(新日鉄の危機)

2007-05-09 07:21:24 | 企業経営

5月7日にNHKスペシャル「敵対的買収を防げ~新日鉄・トップの決断~」
の放送があった。

<<ミタルの新日鉄買収の動き>>
その概要は、NHKの番組の紹介によると、
世界2位の鉄鋼メーカー新日鉄が買収の脅威にさらされている。世界25か国の製鉄所を次々買収し、世界一となったミタル。次の標的は、拠点を持たないアジアで、世界一の技術力を誇る新日鉄だとも言われている。マネーの論理に対抗し、日本のものづくりを守るため、敵対的買収を防ごうとする三村明夫社長と社員の動きに密着。40万人もの個人株主を味方につける活動や、ミタルに対抗してブラジルに生産拠点を築く取り組みを追う。
の中で、三村明夫社長の孤軍奮闘ぶりが描かれていた。

然し、個人株主を味方につける活動も考えて見れば、株主の殆どが利殖を目的にしているので、もしミタルから高値のオファーがあった時、日本の利益を考えて株を持ち続けてくれる保証はなにもない。
まして、新日鉄の為など誰も考えないだろう。

放送でもあったが、
  Wikipediaによると、
ミタルは2006年にフランスのアルセロールの買収を提案したが、アルセロール経営陣(やシラク大統領など)強い抵抗に遭い、買収は困難と見られていた。(ミタルと組んだヘッジファンドによる個人投資家の株の買い占めにあい)、一転、アルセロールは2006年6月25日に、買収を受け入れた。
合併後、生産量が約1億1000万トン(新日鉄の8倍以上)、売上高は約719億ドルという巨大企業となった。 しかしながら所有特許数は40足らずで新日鉄の1000超には大きく水をあけられ、同社の次期買収企業は、同社が世界で唯一拠点を持たないアジアの製鉄会社ともいわれている。
そうだ。

放送によると、新日鉄の直接的な危機は、西欧に拠点を置いている日本の自動車メーカーのために、ミタルに買収されたアルセロールに自動車用の高級鋼板の技術を供与しいてることだ。

ミタルは新日鉄に、アルセロールに提供した技術を他のミタルの工場にも供与するように要求したが、三村社長が拒否し、それ以後のミタルの反撃の可能性を匂わせた所で放送が終わった。

その放送の間、三村社長や同社の財務部の奮闘ぶりは何度も出たが、日本政府の動きは何も放送されなかった。

日本は技術、特に工業技術で世界の中で生き延びてきた国だ。
その工業技術が、合併の名で他国に渡ろうとしているのを傍観して良いのだろうか。

第一、企業は、株主だけの物ではなく、経営者と従業員のものだと言う日本独自の考え方が、企業は全て株主のものだという、マネーの論理に呑み込まれて、人的しかない国、世界的に見れば割高な給与水準で日本経済のバランスを保ってきた、日本は立って行けるのだろうか。

日本政府はグローバリゼーションの名のもとに、米国流の経済システムの殆どを受け入れてきた。
それで万事OKだと言うのだろうか。

<<ミタルの世界戦略の行く先>>
新日鉄に勤めていた父を持つ私にとって、新日鉄には特別な思い入れと苦い思い出がある。

それは新日鉄が生き残りのために、大幅な再編成を行った時、八幡製鉄所の設備の大部分を千葉県の君津に集約したことだ。

そのため同所創業の地である、八幡地区の工場は殆ど消えて、広大な砂漠地帯同然になった。

そして、北九州市の元市長のルネッサンス計画による各種の復興政策の殆どが不発に終わり、福岡市に大きく水を明けられてしまった。

最近になって、空いた工場のレンタルや、大型ディスカンウト店の出店で、少しづつ穴が埋まれかけている状態だ。

然し、日本の立場から言えば、八幡が寂れても、君津が栄えれば、収支はバランスするだろう。

一方、ミタルが新日鉄を買収したあと、いずれ来る鉄鋼不況のさいに、その世界戦略で、新日鉄がかってやったように、賃金の安い国にその日本の施設を移したらどうなるのだろう。

日本はその企業活動によって栄えてきた一方、政府は色々の面で企業に便宜を与えて来た。

そのような関係が、日本から消えてしまうことも、そして儲けるだけ儲けて、日本から手を引く外国企業が出ることも、グローバリゼーションの中で起こりうることだと思う。

私は経済は全く素人だが、外国からの投資資金の必要なことは何となく理解できるような気がする。
然し、日本に取って、本当に必要な資金もあれば、要らないばかりか入っては困る金もあると思う。

人的資源しかない資源小国、技術立国の日本。
改善運動のように、従業員の企業への忠誠心で、やっと世界に伍して行ける日本。

そんな日本に相応しい経済政策への見直しが必要だと思う。

三角合併では株主の同意が前提条件だそうだか、会社の構成要員の一員である従業員の意見も何らかの形で反映させる等何らかの歯止めが必要だと思う。

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