日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

アベノミクス景気は格差社会の表れ

2017年06月28日 09時31分23秒 | 日々雑感
 2012年12月に始まった ”アベノミクス景気”が、バブル期を超えて戦後3番目の長さになったそうだ。つまり現在は好景気の真っただ中と言うことらしい。しかし筆者のような現役引退者には全く実感が無い。またマスコミ報道でも社会一般に実感が伴っていないとのことである。

 景気の動向は、内閣府が作成する景気動向指数によって判断されるそうだ。景気動向指数とは、生産指数、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率など幅広い経済部門からの経済指標で決められるそうで、主に生産面での活動状況で決められているようだ。

 これらの経済指標はネット上でも公表されおり、誰もが閲覧できるが、素人には理解不能であり、これらの数値から好景気と判断するのは到底無理である。しかし、経済の専門家から見れば、現在は好景気なようであり、日本の何処かには好景気を謳歌している人がいるようである。

 世間の一般人が好景気と実感できるのは、給料が毎年上がり、多少の贅沢品が購入出来、生活の余裕が出来、明るい将来を実感できることであろう。

 しかし、日本人の平均収入は、1994年に最大額664.2万円を記録し、あとは漸減状態にあるそうだ。2014年における全世帯の541.9万円は前年よりは増加したものの、相変わらず低いレベルである。一方、この20年間は消費者物価指数に大きな変動は無かったようである。物価は変わらず、収入が減ったとなれば、生活は苦しくなっていることになる。

 日銀の黒田総裁は、物価上昇率2%を目標に金融緩和を続けている。金融緩和により、経済活動が活発となると、需要が増え、生産が増え、給与が上がり、更に需要が増す、との好循環が期待できるとの説明であった。そこにおいてはインフレ基調であり、この状態を物価上昇率で示すのが端的と見たのであろう。すなわち、物価上昇率2%を好景気の指標としたのに、その値で見る限り、好景気は実現されていないことになる。

 一方、株価を示す日経平均は2万前後で推移し好調である。この好調さは、株を運用する金持ちは益々金持ちになるということではないだろうか。

 以上のちぐはぐさは、平均的には好景気状態ではないが、一部の所では好景気状態であること、すなわち経済格差が進んでいることを示唆しているのではないだろうか。つまり、アベノミクス景気は経済格差の上に成り立っているのだ。

 最近、JR九州の豪華列車「ななつ星」、JR東日本の豪華列車「四季島」、R西日本の豪華列車「瑞風」が相次いで登場した。注目されているのは、その豪華な施設やサービスだ。1泊2日のコースでも1人最低何十万円から、最高で100万円以上と、超高額である。それにも関わらず半年以上先の予約は既に埋まっているという。なぜこのように人気が高いのか理解に苦しむが、JRの豪華列車は格差社会の象徴と理解すれば、まだ納得できる。

 このような豪華列車は金を持つ者の優越感の誇示対象なのだ。マスコミは競ってその豪華さを宣伝し、乗客に感想等を言わせ、優越感をくすぐる。テレビに登場する乗客の満たされた顔は、優越感の幸せでいっぱいである。

 列車が運転されるのは特別な所ではなく、通常の列車が走る所で風景は同じだ。施設やサービスの豪華さは他にいくらでも競争相手はいる。現在、物珍しさからマスコミもはやし立てるが、マスコミは飽きるのも早い。マスコミが目向きもし無くなれば、人気も低下していくだろう。豪華列車は時代の無駄花と思うが、持たざる者のやっかみであろうか。2017.06.28(犬賀 大好-350)

G7のテロ対策は北朝鮮対策か

2017年06月24日 09時24分38秒 | 日々雑感
 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件は、当時の米ジョージ・ブッシュ大統領がウサマ・ビン・ラディン率いるイスラム系過激組織 ”アルカイダ” の犯行と断定し、アフガニスタン戦争やイラク戦争の開始の口実となった。

 そして、アメリカをはじめとする多国籍軍はアフガニスタンやイラクをテロの温床とみなして攻撃したが、イスラム過激派はますます欧米諸国に敵意を燃やして、より激しいテロ活動を繰り広げるようになった。

 2013年1月には、アルジェリア南東部の天然ガスプラントがアルカイダ系武装勢力によって襲撃され日本人10名を含む多数の人間が殺害されることも生じた。

 当初はイスラム系過激派と先進国との対立の図式であったが、最近は様子が変わってきた。今年6月始め、イランの首都テヘランの初代最高指導者の故ホメイニ師をまつる廟が武装集団に襲撃された事件で、イランの革命防衛隊はテロにサウジアラビアが関与していると非難した。

 イランは9割がシーア派であり、サウジアラビはスンニ派が多く、両国は現在国交断絶状態である。このテロ事件はイスラム過激派の白人攻撃ではなく、イスラム教徒の中でのテロ事件だ。

 また、今月19日未明には、ロンドン北部でイスラム教のモスク(礼拝所)近くにいた歩行者にワゴン車が突っ込む事件が起きた。英国のメイ首相はテロと断定し、警察は47歳の白人をテロ攻撃や殺人未遂などの容疑で逮捕した。イスラム過激派による相次ぐテロを発端に、憎悪の応酬が宗教、民族に関係なく激しくなってきた。

 テロ発生の根本要因は経済的な貧困だと確信するが、経済格差も見逃せない。先進国と途上国との格差だけでなく、先進国内の格差も深刻化しており、貧困生活者の不満と敵意がテロに転化していくのだ。イスラム教圏は、概して自然環境が厳しく、経済的にも貧しい。貧しさから発生したテロが次第に憎悪となり、世界中に広がりつつあるのだ。

 もうひとつ技術革新の影響も大きい。インターネットはテロ組織のネットワーク化と新たなテロリストの勧誘に大きく貢献しているようだ。こうした環境の変化がテロの激増につながっているのは間違いないだろう。しかしこの要因はテロ活動を増幅させる二次的役目であり、あくまでも貧しさが根本原因だ。

 5月27日閉幕した先進7カ国(G7)首脳会議は、「テロ及び暴力的過激主義との闘いに関するG7タオルミナ声明」を開幕初日に採択し、国際組織犯罪防止(TOC)条約をはじめとするテロ対策の実施に向けた協力強化を打ち出した。

 声明では「テロと過激主義への対策は、G7にとって引き続き主要な優先事項だ」と強調し、テロを未然に防ぐため、当局間の情報共有や途上国などでの水際対策の取り組みを強化することを盛り込んだ。テロリストの資金源を絶つため、テロリストを支援するネットワークに狙いを定め、G7が連携して金融制裁を実施するとした。

 しかしこの声明は、始めにテロ集団ありきであり、そのテロ集団を撲滅すればすべて解決するとの立場である。テロの根源は貧困であり、世界のあらゆるところに根源があるとの視点が欠けている。

 貧困がテロの温床になっているとはずいぶん昔から指摘されているが、それは解消されるどころか、グローバル化の進展と共に、ますます悪化している。テロ撲滅を叫ぶのであれば、グローバル化がもたらす負の影響、すなわち貧困の拡散をまず議論すべきであろう。

 どうもG7の首脳には北朝鮮の国家によるサイバーテロが意識され過ぎているような気がする。5月21日のロイター通信は、 北朝鮮の主要な工作機関にはサイバー攻撃を専門に行う特殊部隊が存在し、既にサイバー攻撃の一部を実施した可能性があると、指摘している。

 国家が主導するテロは影響も大きく撲滅対象であることには当然であるが、犯人は特定されており、解決手法も明確である。しかし、貧しさが原因となるテロは根が深く、犯人は不特定多数である為、解決も簡単ではない。しかし、G7の首脳であれば、何らかの言及はすべきであろう。

 折りしも、イラク北部のモスルで過激派組織の「イスラム国」(IS)の崩壊が間際に迫り、組織の戦略がテロの拡散に変更されたとの話も聞かれる。貧しさがあればそこはテロの温床となる。2017.06.24(犬賀 大好-349)

忖度する官僚は安倍政権が生みの親

2017年06月21日 09時48分33秒 | 日々雑感
 共謀罪に関する法律では、運用の仕方によって拡大解釈される懸念があるにも関わらず、多数を占める自民党議員のイエスマン集団の賛成により決まってしまった。投票の際、騒ぐ野党議員に向かって、 ”共謀罪で逮捕だ”とやじった議員がいたとの話だ。共謀罪とはいともたやすく拡大解釈される典型例だ。現段階では冗談で通ずるかもしれないが、運用の仕方により、冗談で無くなる恐れは十分にある。

 民主党の政権時代は決められない政府と揶揄されていたが、安倍一強体制が確立した現在、強引に決める政府が大手を振っている。19日の記者会見で、安倍首相は国会運営の強引さを反省したが、恐らく言葉だけで今後も同じ運営を続けるであろう。これは、直近の都議選を意識した発言で、国民はすぐに忘れると期待しているのだろう。国民も馬鹿にされたものだ。

 今月16日朝、共謀罪を成立させた直後の毎日新聞の全国世論調査では、安倍内閣の支持率は36%、不支持率は44%となり、不支持率が1年8カ月ぶりに支持率を上回った。

 政権発足からすでに約4年が経過している安倍政権だが、これまで内閣支持率は発足当時からほとんど低下しないという未曾有の高値安定状態を維持していた。なぜ、安倍一強体制が確立したのか、色々な説がある。

 民主党の政権時代のていたらく、自民党のキャッチフレーズ政策や広報・宣伝戦術の巧みさ、等色々理由が指摘されるが、その一つに官僚の人事権を掌握したことが含まれていると確信する。

 森友学園問題では財務省の、加計学園問題では内閣府や文科省の集団忖度が問われている。官僚は政権の上層部が何を希望するかを察知、忖度し、実行に移す。官僚は国家公務員の上級試験を経てきた超優秀な集団であり、一を聞けば十を知る人間ばかりの筈である。

 文科省が内閣府から総理のご意向などと記載された文章に関し、荻生田副官房長官がそんな指示を出した覚えは無いと述べたが、恐らく直接指示したことは無いだろう。官僚であれば直接の指示は無くても普段の言動より、何を欲しているかは充分心得ている。

 この忖度システムの良い点は、いちいち具体的に指示しなくてもことが実行されるばかりでなく、何か問題が起こりマスコミに騒がれた場合でも、そんなことを言った覚えが無いと、責任逃れが出来ることである。

このような素晴らしいシステムが出来上がったのは、官僚の人事権を内閣が握ったからである。安倍首相のおひざ元である内閣官房に内閣人事局と称する組織があり、国の省庁の幹部の人事をまとめて管理する役割を担うところである。

 この組織は、官僚の採用が省庁別々に行われているため、どうしても縄張り意識が生まれやすく、国益よりも省益を優先しているという弊害があったことを踏まえ、出来たのだ。

 例えば、保育園は厚労省の管轄、幼稚園は文科省の管轄と別れており、小学校入学前の教育の一貫性や、少子化に向けて統一が望ましい状況下にある。しかし、それぞれ官庁が縄張りを主張し、統一することが出来ず、結果、喧嘩両成敗で内閣府管轄の認定こども園の制度が作られた。これで、教育体系は一層複雑化し、幼保一体教育の理念は吹き飛んだ。

 このような出来事の反省を踏まえ、2012年の総選挙で樹立した第2次安倍政権下で、内閣人事局が2014年設置された。以降国家公務員の人事は、最終的には、すべて内閣の権限と責任の元で行われ、首相をはじめとする政治家の関与が強まった。

 民主党政権では官僚を十分使いこなすことが出来なかったことが、崩壊の原因の一つと言われていた。しかしこの制度の成立により、官僚は政府の言いなりになった。森友、加計学園問題では、たまたま文科省や内閣府が問題になっているが、この問題に関わりある筈の財務省や農水省では大きな問題となっていない。安倍首相は文科省人事に大いに口を挟むであろう。2017.06.21(犬賀 大好-348)

都議選に向けて自民党の態度はいただけない

2017年06月17日 09時37分36秒 | 日々雑感
 東京都議選は23日公示、7月2日投開票に決まった。一方、小池百合子都知事は今月1日、自民党に離党届提出すると共に、地域政党 ”都民ファーストの会”の代表に就任し、「東京大改革を進めるために決意を示した」と述べた。

 自民党東京都連会長を務める下村博文幹事長代行は記者団に ”これで非常に分かりやすい構図となった”述べた。これは、今まで小池氏が自民党に進退伺を提出していたが、自民党はこれを保留しており、小池氏が自民党員であるような無いような状態でいたからだ。

 これまで都議会で過半数を占め我が世の春を謳歌してきた自民党は、今回の選挙では苦戦を強いられるとみて、小池批判を強めている。攻撃のキーワードは、専ら ”決められない知事”や”小池氏の言いなりになる都政の弊害” である。

 菅義偉官房長官も4日、東京都議選の党公認立候補予定者の決起大会に出席し、小池知事について ”決められない知事だ”などと批判を展開し、対決姿勢を鮮明にした。決められないとは、例えば石原元都知事が築地市場の豊洲移転を決めたことに対し、安全性の観点から見直しを図ったが、その後の計画をなかなか具体化できないことを指している。自民党は小池氏の進退伺に対し、何も決められなかった件はすっかり忘れてしまったようだ。

 6月11日、都の専門家会議が豊洲市場の土壌汚染対策に関し追加対策案を妥当と判断する提言をまとめた。また、市場問題プロジェクトチーム(PT)は築地市場を残すよう促す報告書を取りまとめており、小池知事が二つの有識者会議に求めていた判断材料が出そろった。いよいよ小池氏の決断が迫られている。

 小池氏の判断は頭の中では既に決まっていると思われる。心の内を明かさないのは、都議選との絡みではないだろうか。巷では基本豊洲移転とするが築地市場も売却することなく有効活用する方針とのことらしい。この案に対し、自民党はどのように批判して来るであろうか。

 豊洲移転のみであれば、自民党は”それ見ろ自分たちの主張と同じになった”と、自分たちの正しさを主張し、決断の遅れを一層衝いてくるだろうと思われていたが、小池氏はその反撃も封じたことになる。なかなかの知恵者だ。

 自民都連会長の下村氏は、ファーストの会の躍進と自民党の後退を予期してか、都議会が小池知事のイエスマン集団になってしまってよいかと、危機感を煽っている。

 下村会長のこの発言は、石原元都知事時代、東京五輪や豊洲移転経費の膨張は過半数を占める自民党にチェック機能が無かったからとの反省からと思い、さすが会長を伊達に勤めてはいないと感心していた。しかし、その後の発言を聞くと、イエスマン集団の弊害の例を北朝鮮にしており、自らの反省は全く無いようだ。

 自民党と都民ファーストの会は真っ向から衝突しているように見えるが、安倍首相と小池知事の関係はそう悪くはないとのことである。両者ともに改憲論者であり、右翼の政治結社である日本会議を介しての同志とのことだ。

 下村会長にとって、都議選での敗北は辞任問題に直結するが、安倍首相にとっては大きな問題と考えていないのではなかろうか。自民党と都民ファーストの会の関係は、自民党と大阪維新の会の関係と同じになるとみている人もいる。憲法改正を本望とする首相にとって、将来小池氏が都政を踏み台にして国政にまで進出した場合、東京における自民党の敗北も、代わりの改憲勢力が穴を埋めてくれれば、それで十分だと言う訳である。

 さて、先日共謀罪に関する法案が成立した。強行採決で参議院を通過させたのも、早く国会を閉会させ、都議選への影響を最小限にするためと言われている。共謀罪の他に加計学園問題もある。政府は正式な手続きを経ており何ら問題ないとしているが、そうとすれば正々堂々とすべて公開すればよいが、ひたすら早く幕引きを図り、国民が忘れるのを待っているようだ。国会閉会しても身の潔白を証明すべきである。民主主義の基本は情報公開である。2017.06.17(犬賀 大好-347)

トランプ人気を支える人々

2017年06月14日 09時25分43秒 | 日々雑感
 6月8日、連邦捜査局(FBI)元長官のジェームズ・コミー氏が上院・情報特別委員会の公聴会に出席した。コミー氏は、ロシアとの関係をめぐって辞任したマイケル・フリン前大統領補佐官について、トランプ大統領から ”この件は放っておいて欲しい”などと言われたとし、これを ”大統領からの捜査中止の指示だと受け止めた”と証言した。これによりトランプ大統領は司法妨害をしたとして窮地に追い込まれた。

 この出来事が無くても、トランプ大統領の支持率は低迷している。トランプ氏が選挙運動中に約束したことを大統領令として矢継ぎ早に交付したが、大くが頓挫しているのも原因であろう。例えば、オバマケア撤廃の命令は議会の承認を得られていない等である。

 ロイター通信などが5月19日に発表した世論調査によると、トランプ米大統領の支持率が38%となり、1月の就任直後も低かった支持率を更に下げたそうだ。支持率は歴代大統領の中でも最低と言われている。しかし、逆に、選挙運動中に公約したことに対しても、大した成果を上げられないのに、それでも国民3人に1人以上が相変わらず支持しており、驚くべき現象である。背後には熱烈な支持者がいると思われる。

 トランプ氏の人気は特に米国のラストベルトと呼ばれる地域で高いそうだ。ラストベルトとは、アメリカ合衆国の中西部地域と大西洋岸中部地域の一部に渡る領域を表現する呼称であるとのことだ。この地域ではオハイオ州、ケンタッキー州等が有名であるが、石炭の産地であったことから、その昔鉄鋼業で大繁栄した。しかし、現在この工業地帯の経済が悪化したことによりこの名称、すなわち錆びついた地域、ラストベルトが幅広く使われるようになったのだ。

 これは、1970年代、国際競争が激しくなり、鉄鋼業関連の製造業者はこれらの地域からアメリカの他の地域やメキシコに工場を移転してしまったのが原因だ。現在これらの地域では、工場閉鎖にともなって、多くの人々はこの地域を去り、残された人々は貧困と薬物汚染に苛まれているとのことだ。

 しかし、多くの政治家はこの地域のこの問題に関心を払わず、ヒラリー候補の関心も低かったとのことである。しかし、トランプ氏は、少なくとも問題の所在や深刻さを理解していたとのことだ。この地域の人々は、トランプ氏の ”米国を再び偉大に”の演説に、昔の栄華を思い出し歓喜したことであろう。

 トランプ氏の成否の鍵は、雇用を生み出し、日常的な貧困、薬物依存から脱却させることが出来るかであるが、少なくとも大統領当選直後、製造工場をメキシコから呼び戻したり、新設したりする企業が話題となり、雇用拡大の希望があった。

 実際に雇用の拡大はあったのか、あるいは今後雇用拡大の計画はあるのか、不明であるが、他に希望を抱かせる政策が無ければ、トランプ氏に縋るより他がないだろう。米国全体では人気の低いトランプ氏であるが、ラストベルトの地域の人々を救う処方箋を示せる政治家が他に居ないのだ。

 時代の流れ、技術の流れは誰にも変えられない。昔の鉄鋼業の繁栄の再来は確実に無理である。最近、この地域で頭角を現している技術としては、液体水素燃料電池の開発、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技術および認識技術があるようだ。しかし、昔鉄鋼業に従事した年寄りには適さない。この意味でもお年寄りの未来は暗い。

 また、トランプ氏は大富豪であり、また政策的にもオバマケアの廃止等、必ずしも弱者の味方のようには思えないが、それでも人気が衰えないのだ。米国では「うまくやってのけた人を責めるのではなく、それを許した仕組みを責めろ」と言われるのだそうだ。この言葉の真意はよく理解できないが、トランプ氏の個人的な金儲けは全く問題なく、社会の仕組みを上手に使った手腕は褒められるべきとの意味であろうか。兎も角トランプ氏の個人の力を大いに評価しているに違いない。

 余談であるが、わが国では集団の力が話題になっている。加計学園問題では従来の規制に風穴を開けると称し、獣医学部新設の4条件には目を瞑り、内閣府と文科省の忖度集団の大活躍である。個人の力による独裁体制か、集団の力による翼賛体制か、どちらにしても ”過ぎたるは及ばざるが如し”である。2017.06.14(犬賀 大好-346)