日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

完全自動運転車と規制緩和

2016年08月31日 09時04分44秒 | 日々雑感
 米国フォードモータ社は8月16日、完全自動運転車を2021年までに供給すると発表した。この自動車にはハンドルやブレーキは無いとのことだ。開発した車は「ライドシェア」と呼ばれる配車サービス事業などを手掛ける企業向けに販売する予定だそうだ。

 ライドシェアとは、1台の車を多数の人が共有して使用するサービスの形態である。この配車サービスでは、スマートフォンで呼び出せば、無人の車が到着し、目的地まで届けてくれるサービスイメージである。いよいよ映画で見た未来社会の到達を予感させる。

 シェアリングエコノミーとは、「提供者が所有するモノ・サービスを利用者が共有することにより成り立つ市場経済の仕組み」であるとして、自動車ばかりでなく既にマンション等でも行われており、今後盛んになりそうなイノベーションの一種である。

 しかし、この自家用車ライドシェアは、日本で現行道路運送法に抵触するそうだ。このため、政府の規制改革会議はこの自家用車ライドシェアの法的整備などを検討するよう、国土交通省に要請しているとのことである。

 しかし、これにはタクシー業界からの猛烈な反対が予想される。2002年にタクシーが規制緩和され、新規参入や増車が原則自由になった。しかし、結果タクシー数が過剰になり、限られたお客を奪い合い、長時間労働等の運転手の待遇に問題が生じた。このため、国土交通省が事業者の同意を得て「特定地域」に指定すれば、国が減車を命令することが出来るようになった。表面上国交省の主導であるが、裏ではタクシー業界からの圧力があったためであろう。これと同様に、ライドシェアをタクシー業界がすんなりと認める筈がない。

 自動車メーカは、どう出るであろうか。現在でも若者の車離れが進んでいるとのことである。一台の車を多数の人間が使用できるようになり、個人使用の自家用自動車が益々売れなくなるようでは、反対するであろう。しかし、反対してばかりでは時代に取り残されるとして、自らも完全自動運転車の開発に勤しんでいるに違いない。

 シェアリングエコノミーは、より効率的な社会を目指すために非常に有効な消費モデルとして欧米で広がっている。限られた仲間の間で行ってきたモノの貸し借りや作業・サービスの分担を、広くネットワークの中で結びつけ、これを新しいビジネスとするものだ。社会イノベーションとなるが、日本で根付くためには、既成勢力との全面対決が必要である。安倍首相も成長戦略で規制緩和を掲げているが、自動車業界は農協以上に手強いだろう。

 自動運転に関しては、日本の技術も進んでいる。自動ブレーキシステムは市販の車に搭載され始めている。8月24日、日産は、セレナを全面改良し、高速道路での渋滞時に車線をはみ出さずに自動で走れる仕組みを採用、売り出した。この自動運転システムはドライバーは必ず運転免許を有しハンドルを握った状態で運転しなければならないようだ。従って、完全自動運転車とはまだまだ程遠いが、受注される車の大半はこのシステムが搭載される人気のようである。トヨタ、ホンダも高速道路で車線変更できる自動システムを売り出そうと計画しているそうだ。

 日本は技術的に進んではいるが、それを生かせる環境の実現はなかなか難しい。米国に比べ道路は狭く、交通量も多い。更に法的な規制も強い。しかし、手をこまねいていては、技術的にも置いてきぼりにされてしまう。このような環境の中で、取り残されないためには、特区を設け試行するより他は無いだろう。

 無人運転車が活躍するのは、広大な米国では高速道路かも知れないが、日本では過疎地における高齢者対策だ。地方の道路は空いてはいるが、整備は不十分だ。田舎道での自動走行は技術的に高速道路に比べ、はるかに難しい。国およびメーカは、このような所での完全自動運転車の開発に投資すべきだ。米国との競争は、米国とは異なった土俵ですべきである。2016.08.31(犬賀 大好-264)

地球温暖化と東京五輪開催

2016年08月27日 09時23分29秒 | 日々雑感
 今年8月5日から21日までの17日間にブラジルのリオデジャネイロで開催された第31回夏季オリンピックが無事終了した。4年後は東京オリンピックだ。2020年 7月24日(金)午後8時、開会式の予定である。

 歳のせいでもあろうが、今年の夏は特に暑い。深夜になっても一向に涼しくならず、汗を拭いつつテレビで応援していた。今頃リオデジャネイロは冬の筈だが、それでも陸上選手は汗をかきながら頑張っていた。さて、この灼熱地獄の東京での陸上競技は無事平穏ことが運ぶのであろうか。

 女子マラソンは8月2日、男子マラソンは8月9日に予定されている。東京は気温もさることながら、湿度の高いことで有名である。陸上は普通高地でトレーニングが行われる。高地は温度も低いが、湿気も少ない。高地に順応した選手が東京で力を十分発揮出来るとは思えない。4年後を目指す選手は高温・多湿地域でのトレーニングの方がよいので無かろうか。

 国際オリンピック委員会(IOC)が開催時期をこの期間としているのは、欧米のテレビで五輪競技の放送時間を多く確保するためである。IOCは欧米のテレビ局から支払われる巨額の放映権を収入の柱としているのだ。そのため、欧米で人気プロスポーツが開催されておらず、テレビ番組の編成に余裕のある7~8月に五輪の日程を組み込むことで収入を得るという仕組みが出来上がったのだ。

 プロスポーツが欧米で開催されていないと言うことは、季節柄そのスポーツに向いていないとのことであろうが、日本ではサッカーにしても野球にしても平然と行われている。特に高校野球などは炎天下でやることを売り物にしている。東京五輪では、外国選手がばたばた倒れる中、日本選手の頑張りが目立つかも知れない。

 小池百合子新東京都知事が選出された。東京五輪の開催費が2~3兆円になるとの話で、小池氏はまずその内訳を明らかにし、なるべく削減する方針とのことである。もっともである。治安対策はどこの国でも共通課題であるが、猛暑対策は東京固有の問題であろう。新国立競技場は天井無しで決まったが、観客席に冷房装置を付ける話はどうなったのであろうか。当然冷房設備の完備はコスト高となる。猛暑対策を金をかけずにやる方法に知恵を出さなくてはならないだろう。マラソン競技を日の出前にやれば、欧米ではゴールデンタイムとなり、テレビ視聴率は上がるかも知れない。
 
 マラソン競技における熱中症対策は、選手ばかりでなく観客にも必要である。そのため道路舗装の工夫やドライ型ミスト施設の設置等の検討がされているようであるが、どこまで金をかけてよいものか、多くの人が納得できる状態はどこまでか、小池氏の腕の見せ所である。

 小池氏は五輪の新標語を”もったいない”にすると発表した(27日報道)。”おもてなし”の心と合わせ、この悪条件を克服する手が頭に浮かんだ。沿道のここかしこに浴衣姿の美人を配置し、打ち水をしたり、甲子園名物かちわり氷を配ったりすると、涼し気になると。

 東京特有の問題として、高温・多湿の他に、水不足や台風の影響も考えておく必要がある。この他首都直下地震や南海トラフ地震の心配もあるが、心配し過ぎでは何も出来ない。これらは、何の対策をしなくても運よく事が済むかもしれないが、運、不運の問題として手をこまねいている訳にもいかないだろう。水不足は2,3か月前から、台風の来襲は1週間前位から予測できるであろうから、緊急の対処法も考えられるが、地震は運を天に任す事しか出来ないであろう。

 最近、五輪開催費用が高くなり、開催できる都市が少なくなっているとの話がある。費用はオリンピックの開催法を変更する等で対処できるかも知れないが、気候に関しては如何ともし難い。

 地球温暖化が進めば熱中症のリスクが高まり、マラソン競技等が難しくなり、アジアで夏季五輪が開催できるのは2085年には2都市だけになると、英医学誌ランセットに米カリフォルニア大などのチームが発表した。標高1600m以下、人口60万以上を開催候補とすると、ウランバートル(モンゴル)とビシケク(キルギス)しか無いそうだ。

 冬季五輪に関しても同様な話はあるだろう。2年前のソチ五輪でも雪不足が話題となった。地球温暖化対策は経済が優先されて、一向に進まない。今となっては、地球温暖化のシミュレーションのどこかに誤りがあり、実は温暖化では無かったと願うばかりである。2016.08.27(犬賀 大好-263)

日銀金融緩和と限界

2016年08月24日 09時36分54秒 | 日々雑感
 日本銀行は7月29日の金融政策決定会合で、株価指数に連動する上場投資信託(ETF)の買い入れ額をほぼ2倍に増やす追加の金融緩和を決めた。今回の金融緩和でETFの買い入れ額は、今の年3.3兆円から6兆円に拡大するが、大規模緩和で市場に流すお金の量は80兆円で変えず、マイナス金利幅の拡大なども見送ったとのことだ。

 金融緩和の手法にETFの買い入れを増やす手があるとは、経済素人の私は全く知らなかった。多分、未だ、いろいろな手が残っているのであろうが、その波及効果は次第に小さいものになってくるのではなかろうか。

 今回決めたETFの買い増しは、日銀が損を抱えるリスクはあるものの、株価を下支えする効果が期待できるとのことである。株価の下支えと言えば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が有名である。アベノミクスの成長戦略の一つとして、年金運用改革があった。GPIFの投資対象に対する株式比率を 従来の2倍の50%に引き上げ、国民年金と厚生年金の積立金、140兆円の半分が株式市場へ投入されたとのことである。

 ETFの6兆円は、GPIFの70兆円に比べれば1割以下であるが、個人投資家からすれば莫大な額であり、株価下支えの効果は抜群であろう。しかし、政府はアベノミクスのエンジンを最大限に吹かすと繰り返し述べ、市場は大幅な緩和拡大を期待していたが、6兆円規模では少ないと失望感が広がったとのことである。6兆円でも少ないとは、市場も金銭感覚が麻痺してきたに違いない。

 昨年の今頃、日経平均の株価は2万円を超えていたが、今年8月には1.7万円以下と低迷している。円高と原油安がその原因とのエコノニストの分析であるが、日本の株価は外国次第となり、アベノミクスの第3の矢である国内の成長戦略は歴代の政権と変わりなく、またしても失敗となりそうな気配である。

 日銀の国債保有額が400兆円に迫る中、限界が見え始めたようだ。日銀の購入額は新規発行額を超え、市場に流通する国債の3割超を買い占めているのだそうだ。IMFのマレー副報道官は、先月28日、日銀の金融政策について、国の借金を日銀が代わりをしているだけとの懸念が強まれば、金利の急騰などの深刻な市場の反応が起こるリスクがあると、釘を刺したそうだ。

 日本の国債は、ほとんどが日本人が保有しているため、家庭内における貸し借りと同じで、全く問題ないとの主張がある。消費税の再延期により日本の財政に関する世界の市場の評価が低下したが、相変わらず円高が進んでいるところを見れば、なるほどと納得してしまう。

 しかし、国債離れも着実に進んでいる。三菱東京UFJ銀行が、国債入札に特別な条件で参加できる[国債市場特別参加資格者」の資格を7月13日に返上すると財務省に届け出た。この資格を有すれば財務省と意見交換できる利点があるが、すべての入札に4%以上を応札し、一定割合以上を落札する義務を負うそうだ。資格返上は国債購入のメリットが無くなったということであろう。現在、資格を有するのは、メガバンク2社と証券会社19社となったが、彼らが右に倣へすると国債の人気は一気に下がるに違いない。当然そうはならないように財務省は裏で必死に引き留めているに違いない。

 日銀は8月3日、6月15,16日に開いた金融政策決定会合の議事要旨を公表した。巨額の国債を買う今の緩和手法を続けることに複数の政策委員から懸念が示されそうだ。政策委員は定期的に交代するが、金融緩和の懐疑派が辞め、積極派に交代しているとの話もある。それでも疑問が持たれてきたようである。そこで、これまでの緩和策の総括的な検証を9月の会合で行う予定とのことである。黒田総裁も安倍首相の意向を受けて異次元の金融緩和を続けてきたが、いよいよ方向転換を迫られるかも知れない。2016.08.24(犬賀 大好-262)

人間の進化は地球温暖化についていけない

2016年08月20日 10時21分59秒 | 日々雑感
 進化生物学と称する学問があるそうだ。この学問にはやや異なる二つの側面があるとのことで、その一つは生物の種は共通祖先からどのような歴史をたどってきたかを明らかにすることで、もう一つは自然選択など、進化を駆動する要因やメカニズムを明らかにすることであるそうだ。これからの人類の行方を考察するのは後者であろう。兎も角、何千年、何万年を単位とする話であろう。

 最近の地球温暖化のせいか、熱中症患者の話題がマスコミを賑わす昨今である。温暖化はここ何十年の話であり、進化生物学的には人間は到底適応出来る話でない。

 何万年の歴史の中で人間は、皮膚を露わにして大量に汗をかくことでその蒸発熱で体温を下げることが出来るようになり、活発な活動が出来るようになった。霊長類の仲間でも、サルやチンパンジーはヒトのように汗をかくことは出来ないため、暑い盛り木陰でじっと座っていることしかできないそうだ。彼らが熱中症になったとの話は聞かれないが、老人は家の中でじっとしてても熱中症になってしまう。人間は哺乳類の中でも、珍しい動物との話だ。

 地球の温暖化がもっと長期にわたりゆっくりと変化する現象であるならば、人間もこの灼熱地獄に適応できる体質に進化出来るかも知れないが、地球温暖化は急激だ。現在、地球温暖化は炭酸ガス等の温室効果ガスの影響と考えるのが主流である。太陽活動の影響と考える学者もいるが、逆にそうあって欲しいものだ。そうであるならば、いずれは元に戻る筈だからだ。

 さて、地球温暖化の影響の一つとして、北極海の海氷が急速に減り続けているとのことだ。今年5月に行われた観測では、過去の5月の海氷面積の最小記録を更新したそうだ。予想によれば2030年~2050年頃、夏季には北極海は氷が無くなるとのことである。

 そうなれば、北極海航路が拓けてビジネスチャンスと喜ぶ人も居るだろうが、北極海の海氷融解は、地球温暖化に決定的な影響を及ぼす。海氷は、太陽光を反射するという非常に大きな役割を果たしており、いったん海氷が解けてしまうと、熱の吸収が促進され、海水温がさらに上昇し、温暖化を加速するに違いないと考えられるからである。地球温暖化の原因が例え太陽活動にあったにせよ、一旦消滅した海氷を復元するのは容易では無いだろう。温度が元に戻っても、熱を吸収するようになった海は、簡単には氷結しないだろう。自然は可逆的ではないのだ。

 こうした北極の温暖化増幅が、グリーンランドの氷床を解かし、さらには海面上昇をも引き起こす可能性もあるらしい。また、グリーンランドの氷床が解け続ければ、海面上昇のみならず世界の海流にも影響を及ぼすだろうと考えられる。日本は、銚子沖でぶつかる親潮と黒潮のお陰で、豊かな漁業資源に恵まれているが、幻と消え去るかも知れない。

 現在、地球温暖化防止のため、温室効果ガス削減の努力が世界的に進められているが、自然は必ずしも可逆的で無い。いったん動き始めた自然は次の安定状態を目指して人間の活動に関係なく動くかも知れない。次の安定状態が人間にとって住み易い環境であればよいが、そうであることを願うばかりである。

 ここで、進化生物学に戻るが、霊長類の中でも人間の頭髪はなぜ伸び続けるのであろうか。白髪三千丈はオーバーとしても、少なくとも自分の背丈ぐらいは伸びるであろう。これも異性を引き付けるための工夫の一つと勝手に考えているが、温暖化の影響を加味すると今後頭髪は少なくなるのではなかろうか。若くして頭の薄い人はそれを悩みとしているが、これらの人は時代の先を行っている人かも知れない。
2016.08.20(犬賀 大好-261)

お坊さんビジネスの今後

2016年08月17日 09時50分04秒 | 日々雑感
昨年12月、ネット通販大手アマゾンに法事や法要に僧侶を手配するサービス[お坊さん便]が出品されたそうだ。定額サービスで、基本価格は税込み3万5千円との話だ。

これを「宗教の商品化」として、全日本仏教界(全仏)は、昨年暮れ、「宗教に対する姿勢に疑問と失望を禁じ得ない」と、当時の斉藤明聖理事長名で声明を出した。お坊さん便は葬儀関連会社「みんれび」が3年前に始めたとのことだ。葬儀社や霊園がお坊さんを紹介することは、かなり以前から行われていたことであり、「みんれび」はそれをネットを利用して組織的に行っただけであろう。全仏は ”何を今更” の感である。

お葬式には死者に戒名を付与するしきたりがあり、葬儀の慌ただしさに紛れて何十万円も請求されるとの話はよくある。戒名には階級があり、「信士・信女」が一般的で最も多くの人が授かる戒名で、それより上は「居士・大姉」、「院居士・院大姉」等があるとのことだ。

戒名料は後者になるほど高くなり30万円程度、50万円程度、100万円程度が相場のようだが、お坊さん便では信士・信女の戒名を2万円で授与するとのことで、相場に比べれば格安だ。全仏は、”お布施は慈悲の心をもって他人に財施などを施すことで「六波羅蜜」といわれる修行の一つで、見返りを求めないところに自利利他円満の功徳が成就されるのです”、と言っているところを見ると、お坊さん便の格安サービスに目くじらを立てて居るのではなく、値段を付けること自体に反対しているのであろう。しかし、本音とは思えない。

 高い戒名料に拘わらず、そもそも死者になぜ戒名が必要かの説明もなされないことが多い。僧侶は亡くなった人を葬儀を通じて仏の世界、すなわち彼岸へと送り出すが、仏の世界に往くのに俗名のままでは行けない、ということで死者に戒を授け浄土へと送り出す、が一応の説明であろうが、なぜ俗名ではだめかの説明は無い。 

 かって、今は亡き永六輔氏の講演を聞いたことがある。人間は死ぬと三途の川を渡り、閻魔様の前で裁きを受ける。閻魔様は名前を聞いて、その人が生前何をしていたかを知り、極楽に行くか、地獄に行くかを決めるのだそうだ。その時の名前は、俗名ではなく戒名とのことだ。閻魔様も冥界の表現でないと判断ができないらしい。戒名が立派であれば、閻魔様は立派な人であったと判断し、極楽の方へ導いてくれるそうだ。そこでお坊さんが授けてくれる戒名は重要なのだと。何と分かり易い説明ではないか。

 そうであるとすれば、戒名は檀家システムの中で重要な役割を占めると思える。すなわち、お坊さんは死者の存命中の行状を長年の付き合いの中で知り、その功徳を十文字程度の戒名に凝縮する役割を果たさなくてはならない。しかし、檀家システムが崩壊した現在戒名は単なる記号で、金で買えるようになってしまった。これでは閻魔様も正しい判断が出来るとは思えない。

 都市近郊のお寺は、墓地を分譲したり、駐車場を経営したり結構実入りがよさそうである。お寺は昔より、知の中心として近くの人々の尊敬を集め、地域のコミュニティの中心となっていた筈だ。精神的な支えが檀家システムを形成したのだ。今はお寺を金ピカにして、上辺だけでも有り難さを出そうと、俗人丸出しのお寺も結構ある。全仏はこのような寺の存在に疑問を持つべきだ。

 地方から都会に住みつくようになった人には、昔の菩提寺は遠すぎ、それでも呼べば気兼ねと、金が必要だ。一方お坊さんにとっても登録をしておけば、宗派に応じてお客さんを紹介してくれる便利なシステムである。時間的な余裕が出来れば、依頼者の要望により、お経ばかりでなく、説教をすることもできる。需要と供給がマッチした旨いシステムとして、これから益々盛んになるだろう。

 全仏の新理事長、石上智康氏は、「決定打はなかなかない。このような商品が成立しない土壌を作るために我々も襟を正し、愚直に信頼を回復していくしかない」と話す。現在世の中にはモノがあふれているが、精神的な支えが不足している。従来の仏教は葬式仏教と衰退しても、オウム真理教等の新興宗教が盛んなようであり、精神的な支えを必要とする人は多い。全仏はこのような状況を直視し、何をなすべきか愚直に考える必要があるだろう。
2016.08.17(犬賀 大好-260)