日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

地球温暖化と日本農業の変遷

2018年08月29日 10時40分02秒 | 日々雑感
 今年の夏はやけに熱い。地球温暖化の影響との説が有力であるが、これから毎年こんな夏が来ると思うと憂鬱である。再来年東京オリンピックの年はどうなるのであろうか。

 気象庁の報告によると、日本の年平均気温は、長期的には100年あたり約1.19℃の割合で上昇しており、特に1990年代以降、高温となる年が頻出しているとのことだ。

 さて平均気温上昇の影響は漁業や農業の面では既に顕著である。例えば漁業では、最近、北日本の漁場に10年前にはいなかった南方系の魚が住みつくようになったと、最近東北地方の漁師さんから直接聞いた。

 年平均気温は毎年変動するだろうが、海水温は海水の熱容量が大きいため、その変動に左右されず、長期変動の影響を諸に受け着実に上昇し、生態系が変化していると考えられる。

 また気温上昇による作物への影響は、果樹ではリンゴやブドウの着色不良、温州ミカンの浮皮、ナシの発芽不良などに影響するそうだ。野菜においては、なす、トマトの高温による着花・着果不良などの生育不良や着色不良などの問題が起こっているそうだ。

 また、平均気温の上昇はこのような品質低下だけでなくに生産地の北上にも繋がると予想できる。

 リンゴの生産は年平均気温が6~14℃の冷涼で年降水量が少なく、昼夜に温度差が大きい地域が適しているそうだ。現在、長野県はリンゴの生産量が青森県に続く第二位と主要な県であるが、しかし、このまま地球温暖化が進むと、リンゴの適地が北上し、その内長野県でリンゴを生産することが難しくなるとの話だ。

 また、温州ミカンは年平均気温が15℃以上、冬の最低気温が氷点下5度以下にならないことが条件だそうだ。現在、和歌山県や愛媛県、静岡県といった比較的温暖な地域が主要な生産地であり、東北地方や関東地方では一部例外地を除き生産することは難しいが、このまま温暖化が進めばその内関東、東北地方もミカンの主要生産地になりそうだ。

 日本人に主要な食料であるお米に関しては、昼の温度が35℃、夜の温度が30℃程度を超えるとイネに高温障害が発生する恐れがあるそうだ。夜間の高温は、イネの呼吸作用を増加させ、日中に生産したデンプンが呼吸で消費されてしまい穂や根に送りこむ量が少なくなり、未熟米の増加の原因となるようだ。さらに高温の影響は害虫であるカメムシを増やす。カメムシは米に黒い斑点を付け品質を低下させる害虫だ。

 さて、1995年、それまでの食糧管理法が廃止され、米の流通規制は大幅に緩和された。その影響を受けて、最近全国各地からその地特有のお米がブランド米と称し、販売されるようになった。

 全国のお米の味や香りなどの評価で、今年始め昨年の出来に対し最高の「特A」に43もの銘柄が選ばれたそうで、産地間の競争が激化しているようだ。

 この現象は、地球温暖化とは関係なく、生き残りをかけた品種改良に対する努力の表れであり、お米に関しては平均気温が上昇しても、この努力が存続する限り問題ないかも知れない。リンゴやミカンに対しても同様な品種改良の努力はなされているのであろうが、どこまでカバーできるか懸念される。

一方、これまで南方系と見られていた、果物が日本でも栽培されるようになってきたのは楽しみだ。ライチはこれまで熱帯・亜熱帯地方で栽培され、甘み酸味のバランスが絶妙で、とてもジューシーな果実であるが、宮崎県の新富町は、稀少な国産ライチの生産地として新たなPRを展開している。また、ブラッドオレンジやドラゴンフルーツも、近年日本でも栽培する農家が現れ始めたようだ。

 このように平均気温上昇の影響は、日本人の品種改良に対する努力である程度は、解消されるかも知れないが、限界はあるだろう。これに対し、気温上昇の限界はあるだろうか。2018.08.29(犬賀 大好-472)

日大田中理事長の退陣は来春の受験者数で決まる?

2018年08月25日 16時52分41秒 | 日々雑感
 田中英壽日本大学の理事長は、アメリカンフットボールにおける危険タックル問題や、チアリーディグ部におけるパワハラ問題で、学生に対する日大の執行部の教育姿勢が問われているのに、公の記者会見を一切せず、だんまりを決め込んでいる。

 日本大学は来年に創立130周年を迎える歴史と伝統のある国内最大規模の総合大学で、卒業生は約114万人を数え、現在も多くの卒業生が国内外の多種多様な分野で活躍していることを大いに誇りとしている、と理事長が語っているように、2016年5月時点での生徒数70,677人であり、日本の大学全体で第1位の超マンモス校である。

 これだけのマンモス組織を作り上げたのには、田中理事長の手腕によるところが大きいと思われる。しかし、学生時代に相撲部で輝かしい成績を収めているのに対し、その後の活躍は相撲と同様な力によるところが大きく、余り威張れたものでは無い。

 田中氏は、1969年日本大学経済学部経済学科を卒業し、日本大学農獣医学部体育助手兼相撲部コーチに就任した。

 1968年と言えば、日大が東京国税局から脱税を摘発され、約20億円もの巨額な使途不明金が発覚した年である。1968~1970年は大学紛争の時期でもあり、これに怒った学生は大学に抗議し日大全共闘が結成され、やがて各学部の校舎をバリケード封鎖することになった。

 日大全共闘は大学側に全理事の退陣、経理の全面公開、不当処分白紙撤回、集会の自由、などを求めて徹底抗戦した。しかし大学側は警視庁機動隊を導入して学生を厳しく取り締まり、多くの逮捕者を出した。また、機動隊ばかりでなく、右翼団体や体育会まで動員し、死傷者まで出すことになった。

 この体育会には相撲部員だった田中英寿・現日大理事長がいたそうだ。田中氏は相撲部では大活躍をしていたとのことで、学生を威圧するのには充分な体躯と体力であったであろう。

 大学紛争で学校は荒れたが、その後の立て直しの功績が認められたのであろう、1999年に学校法人日本大学理事となり、2008年より理事長となった。

 理事長メッセージによれば、教育目的は、日本精神にもとづき道統をたっとび、自主創造の気風をやしなう、としている。 日本精神にもとづき道統をたっとぶとは、何のことか分からないが、語感からは右翼的な考えが基にあることは確かである。

 自主創造とは自分で考え・学び、主体的に判断して課題を克服していくことだそうだが、先の運動部の問題においても、当事者の2名は主体的に判断したとは到底思えない。ここで言う主体的判断とは、上の命令を自らの判断で忠実に実行することであり、結果を上の責任としないことかも知れない。

 日大の教職員組合も、執行部の即時退陣を要求しているが、一向に怯む様子がない。日大の体育会の運動部の中で、7月末2人の部長がクビになったそうだ。田中理事長の辞任を求める日大教職員組合の要望書に賛同し、署名したことに対する報復人事と勘繰られているそうだ。

 田中氏の10年間に及ぶ理事長としての辣腕は隅々まで行き届いていることだろう。例え田中氏が理事長を辞任してもその影響力は簡単には無くせないだろう。解雇されたアメフト部の内田前監督やチア部の女性前監督も、ほとぼりの覚めるのを待って、復帰させるとの噂もあるようだ。

 田中氏は、大学紛争の時と同様に今回の不祥事を収束させるつもりのようであり、ますます闘志を燃やしているのかも知れない。

 しかし大学紛争時とは異なり、今は少子化時代である。来年春の受験シーズンに日大にどのくらいの受験生が押し寄せるかが、日大改革の鍵を握っている。激減となれば、改革は避けられない。それまで待つしかない。2018.08.25(犬賀 大好-471)

日本の原発事業はじり貧の方向

2018年08月22日 05時44分58秒 | 日々雑感
 今年7月3日、新しいエネルギー基本計画が閣議決定された。今回のエネルギー基本計画では、東電福島第一原発事故の経験、反省と教訓を踏まえ、2030年、2050年に向けた方針を検討するとしており、日本の将来のエネルギーを方向付けると大いに期待していた。

 しかし、中身は極めておざなりなであった。2030年に向けた基本方針としては、エネルギーミックスの確実な実現へ向けた取組の更なる強化を行い、2050年に向けては、脱炭素化への世界的な潮流を考慮し、エネルギー転換・脱炭素化に向け、あらゆる選択肢の可能性を追求していくこととしており、極当たり前のことを言っているだけで、そこには主義・主張は何もない。

 原発事故の反省を肝に銘ずると言いつつ、将来の原発の在り方を避け、脱炭素化と一般化し、再生可能エネルギーと原子力エネルギーを同一レベルで論じ、当たりさわりの無い話となっている。

 原子力関係の2030年目標は、依存度をできるかぎり低減するという方針の下、安全最優先の再稼動や使用済燃料対策など、必要な対応を着実に進める、としている。放射性廃棄物の処分地が未定である等、これまでの積み残し課題に対しては、相変わらず先送りで緊張感が全くない。

 2050年目標において、原発は社会的信頼の回復がまず不可欠と位置付けている。そこで、人材・技術・産業基盤の強化にただちに着手し、安全性・経済性・機動性にすぐれた原子炉の追求、等の技術開発を進めていくとしている。

 しかし、ここにおいても具体性が全くなく、過去の柵を抱え、将来の夢が描けない現状を如実に表している。将来の夢が語れないところに、若い人材は集まらない。原発のじり貧は決定的である。

 原発業界は現在、稼働中あるいは稼働できる状態にあるのはわずか5基、新規稼働予定が大間原発と島根原発3号機の2基だ。許可を受けたが地元民からの反対等で再稼働していないのが9基であり、東電第1原発事故以前の60基に比較すると雲泥の差だ。

 一方、急速な経済成長で電力需要が増える中国やインドでは今後も建設が続くとみられている。中国の原発建設は急激に拡大し、2026年には米国を抜いて世界最大の原子力発電大国になるだろう、と予測する識者もいる。

 2018年5月現在、中国では高速炉実験炉を含めて37基の原発が稼働し、この他20基が建設中とのことである。しかも中国は2030年までに100基を超える原発の稼働を計画しているそうだ。

 また、同時に原発の輸出も積極的に進めている。中国はパキスタンに原発を建設しているほか、昨年はケニアとエジプトとの間で原発の輸出に関する覚書に署名したそうだ。また、ルーマニアやアルゼンチンからも注文を取り付けており、中東やアフリカ地域の市場を集中的に開拓しているとのことだ。

 日本では、原発事業が縮小傾向であるが、これまでの資産を外国で生かすべく、政府一丸となって努力しているが、見通しは甘くない。これまでの原発政策は政府主導で進められてきたため、政府としてもここで手を引くことは出来ないのだ。

 日立製作所が英国西部に原発2基を新設する計画であるが、原発の建設工事の中核から、米建設大手ベクテルが離脱しそうとのことだ。福島原発事故以降、安全対策の為建設費の高騰で採算をとりづらくなっているためだ。

 日立には痛手で、計画への支援拡充を英政府に求めているが、十分な譲歩を引き出せていないようだ。日立は事業の採算性が見込めなければ撤退も辞さない構えだが、原発を輸出したい日本政府の思惑もあって離脱は簡単ではない。更に政府は日立の大株主のはずだ。

 日本は原発事業を海外で、活路を見出したいが、中国との競争になると、金銭面で太刀打ちできないようだ。安全性に関する技術面では日本の方が遥かに上を行っていると思うが、当然コスト高になる。安全性は何事もなければその性能を発揮できず、その効用はなかなか理解されない。

 中国は国内の多数の建設で力をつけており、運用でも自信を深めているだろうが、慣れが一番恐ろしい。7年前の日本のように、この自信がそのうちどこかで破綻することを懸念するが、安全面を重視するのはその破綻以降であろう。それまで日本の原発事業は維持できるであろうか。2018.08.22(犬賀 大好-470)

石破元幹事長の頑張りが自民党を活性化する

2018年08月18日 09時19分22秒 | 日々雑感
 自民党総裁選は今年9月に行われる。そして来年は4月の統一地方選挙、同7月の参院選と続くが、衆院の解散は不測の事態が起こらない限り当面無いとの予想である。

 さて、自民党の石破茂元幹事長は今月10日に、党総裁選に出馬する意向を正式に表明した。安倍晋三首相の政権運営を念頭に”正直、公正” をキャッチフレーズとした。安倍首相は、語り口は実に明快だ。しかし、言葉とは裏腹に実際の行動は伴っていない。森友、加計学園問題では丁寧に説明すると何度も繰り返し言いながらも、国民の大半は今もって納得していない。

 NHKは、今月3日から3日間、全国の18歳以上の男女を対象に世論調査を行った。それによると、安倍内閣を支持する人と支持しない人も同じ41%であったそうだ。しかし、国会議員の大半は安倍政権を支持しているのだ。

 世論調査において支持する第1の理由は、他の内閣より良さそうだからが50%、逆に支持しない理由の第1位は、人柄が信頼できないからが42%であった。野党のだらしなさに救われ、人格の悪さも隠された結果だ。

 国民の人気がなくても、自民党総裁選では、7派閥の内5派閥が安倍氏を支持し、国会議員の7割が安倍指示で固まったようで安倍首相の圧倒的リードが伝えられる。

 竹下派は、自主投票を決めたが、その背景には参院は石破氏に、衆院は安倍氏への支持が大勢を占めているとのことだ。参院と衆院で意見が分かれ理由は、参院は来年選挙があるが、衆院は無いことに大いに関係していると考えると納得が出来る。

 国会議員は、国会議員たる権利を絶対に手離したくないのだ。安倍氏が3選されれば、恐らく衆院解散はないので、衆議院議員は少なくとも来年中は議員でいられる。一方参議院議員の1/2は選挙を免れない。石破氏は、2012年の総裁選で、安倍氏の倍近い地方票を獲得した。その地方の人気にあやかりたいのは人情だ。

 石破氏は、相次ぐ安倍政権の運営や不祥事に国民の批判が高まったことに危機感を覚え、”国民の信頼回復へ国民本位の政治・行政改革”の断行を公約に掲げている。現在の一強多弱体制は問題が多い。議論が不十分なまま強硬採決で決定した政策が多い。カジノ法案、働き方改革、議員定数問題、等である。

 しかし、この問題は政権の問題と言うより、個々の議員の問題であるかも知れない。議員が一人一人自分の意見を持ち、納得するまで議論すべきであるが、大半の議員は選挙における公認欲しさから、だんまりを決め込んでいる。あるいは、元々自分の信念など持ったない烏合の衆かも知れない。

 最近の国会議員には世襲議員が多いとのことである。世襲議員は親から地盤、看板、鞄を引き継ぎ、議員を長とする村社会を形成している。村社会の長は村の利益が最優先で、国の利益は二の次だ。長いものに巻かれていれば、村は安泰だと思っている。

 石破氏も世襲議員であるが、自民党国会議員のこのていたらくに黙っておられない心境なのであろう。石破氏の具体的な政策はよく分からないが、安倍政権とは大きく変わらないであろう。

 石破氏は国民の信頼を勝ち取るためには、政策の転換より、少なくても国会内での議論の活発化が必要と考えているようだ。

 森友、加計学園問題では国民の大半が納得していないに、国会ではなぜ問題とならないのか。この他、選挙制度、派閥の問題、内閣人事局等、議論すべき問題はいくらでもある。国会議員は地元に帰り、各自の意見を率直に披露すべきだ。

 総裁選において、安倍首相が3選を果たすであろうが、このままでは、自民党の肥満体質、動脈硬化が一層進み、脳梗塞や心筋梗塞へと繋がるであろう。石破氏のこの積極姿勢が自民党の活性化を呼び戻すことを期待している。2018.08.18(犬賀 大好-469)

高速増殖炉 ”もんじゅ”の失敗は、特攻精神の産物

2018年08月15日 09時21分36秒 | 日々雑感
 原子力爆弾の材料となるプルトニウムが主役の核燃料サイクルは、高速増殖炉 ”もんじゅ”の挫折で、事実上破綻した。核燃料サイクルは、原発の使用済み核燃料を再処理して、取り出したプルトニウムを再び発電に使うことが出来る為、資源の少ない日本にとって夢のシステムになる筈であった。

 もんじゅは、1968年に予備設計が始まり、1994年に初臨界を経験し大成功と思われたが、翌年にナトリウム漏れ事故で停止した。その後核燃料の交換装置が原子炉容器内に落下する事故もあった。杜撰な事故であったため、文科省所管の日本原子力研究開発機構の管理能力が疑問視された。

 初臨界以降20年余り、その間稼働は計250日で、2016年末に廃炉が決まった。余りにも問題が多く、にっちもさっちも行かなくなった結果だ。
 
 廃炉の決定は、高速増殖炉計画自身の破綻ばかりでなく、核燃料サイクルの破綻を意味するため、影響は果てしなく大きい。これまで貯め込んできたプルトニウムの後処理問題、廃炉に伴って生ずる放射性廃棄物の処分地問題、等の他、燃料サイクルの破綻に伴う、青森県6か所村でほぼ出来上がった再処理工場の運営問題や2022年度上期竣工予定のMOX燃料工場の今後の計画問題、強いては青森県の地域振興問題等、果てしなく広がる。

 これまでに費やしたもんじゅの研究・開発経費は、今年5月の会計検査院報告によれば、1971年~2016年で、1.1兆円だったそうだ。一方、性能試験開始以降の技術成果の達成度は当初の目標の16%にとどまっていたという。何ともいい加減な管理・運営であったのか。

 しかし、もんじゅの問題はこれで幕が下りたと言う訳にはいかない。原発には必ず負の遺産が付きまとう。原子力規制委員会は今年3月の定例会で廃炉計画を認可した。工程は2047年度までで、費用は約3750億円と見積もられる。

 核燃料の取り出しは今年7月より始まる筈であったが、燃料を取り出す設備に不具合が見つかり、年内に100体の燃料を取り出す計画の見直しを迫られているとの報道が7月末あった。8月中現在どのような状況にあるか不明である。

 確か、以前原子力規制委員会はもんじゅ運営を日本原子力研究開発機構に任せられないと進言していたはずであるが、この機構が相変わらず音頭をとっているようである。人材不足で代わる人材が見つからないのであろう。このままでは、工程が延び、廃炉費用3750億円をはるかに超える可能性がある。 

 高速増殖炉計画は、多額の費用を投じた挙句、莫大な負の遺産を残してなぜ失敗したか、色々議論されている。

 1955年~1973年日本の実質経済成長率は年平均10%を超え正に経済成長が著しい日本であったが、技術的には物まね・改良の時代であった。

 高速増殖炉は1980年代まで、ウラン燃料の有効利用促進のため原発先進国では積極的な開発が進められてきた。当時日本は世界の先進国に追い付き追い越せの時代でもあり、日本も遅れまいと後追いをした背景もあるだろう。

 1990年代には高速増殖炉の開発はその技術的困難さから停止状態となり、フランスを除く欧州各国は高速炉の開発を中止した。その後各国は技術の難しさから開発を中断したが、日本には昔から努力すれば必ず報われるとする特攻精神が根付いている。第2次世界大戦でも、周りの状況をよく分析せずに、いざというときには神風が吹くと、無謀な戦争に突入した。

 政府は今もって核燃料サイクルの夢から覚めず、高速増殖炉計画を存続させたいようであるが、再び日の目を見ることは無いだろう。最大の理由は人材不足である。当初開発に携わっていた研究者はみんなリタイアしてしまい、電力会社やメーカーから出向してくるのは未経験者ばかりで、廃炉ですら覚束ない。世界的に見放された高速増殖炉に関しては若手研究者も尻込み状態であろう。笛吹けど誰も踊らない。2018.08.15(犬賀 大好-468)