日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

イスラム教における宗派の対立

2016年02月10日 09時24分54秒 | 日々雑感
 宗教指導者の処刑と大使館襲撃をめぐってサウジアラビアとイランは現在国交断絶中だ。サウジアラビアはスンニ派であり、イランはシーア派である点がその背景にあるとみてもよいだろう。イスラム教を信ずる国においては、宗教的指導者と政治的指導者は分離しておらず、両者を兼ねたカリフに統治されているとのことだ。そのカリフの選別法として、スンニ派は話し合いによって皆の中から選ばれるべきとするのに対し、シーア派はムハマンドの子孫であるべきとしている点が大きな違いであるそうだ。

 両派の対立は、中東における争い事のすべてにおいて顔を出す。フセイン大統領はイラクにおける少数派のスンニ派であったが、多数派のシーア派を弾圧していたとのことで、米国は民主主義の導入を目的にフセイン大統領を倒した。しかし、両派の対立は根深く、民主主義どころではなく現在の混迷に至っている。

 兎も角、両国の仲たがいは日本への影響も大きい。何しろ、両国を隔てるペルシャ湾は石油の輸送路であり、日本の石油輸入元の上位3カ国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールはいずれもペルシャ湾に面している。そして対岸のイランは石油埋蔵量世界第4位で天然ガスは世界1位である。経済封鎖が解かれ,今後日本への石油輸出は増大すると思われるからである。

 サウジアラビアとイランは同じイスラム教の国家であり、日本から見れば親戚同士の国と思われるが、今回の国交断絶も初めてではなく、1987年にサウジで起きたイラン人巡礼者と治安部隊の衝突をきっかけに翌年断交した前歴がある。4年後に国交回復を実現したが、仲介役を努めたのはオマーンのカブース国王とのことだ。

 オマーンはペルシャ湾の出口に位置する国で、国民の過半数はイスラム教イバード派だそうだ。この派は、余り聞きつけないが、7世紀後半に現在のイランで始まり、オマーンで広がった宗派だそうだ。特徴は寛容さにあり、同国ではスンニ派もシーア派も共存しているようだ。これは単に宗教的な教えからばかりでなく、カブース国王によるところが大きいらしい。例えば公務員の採用願書から宗派の記入欄を無くした等である。

 この派は,教義や歴史解釈において,スンニ派やシーア派のそれにも匹敵する高度に体系化された思想を有するそうだ。二大宗派であるスンニ派やシーア派の両者を包含できる寛容さを有するものであれば、この宗派がもっと拡がって欲しいものである。

 宗教的な寛容さと言えば、日本人に勝る者は居ないであろう。日本人は、神道信者でありかつ仏教信者がほとんどである。何しろ両信者数を合計すれば日本国民数より多くなるとの話である。神道は八百万の神であり、あらゆるものに神様が宿っているとの考えである。仏教界には色々な宗派があり、かっては争いも絶えなかったが、現在では仲良く共存してように見受けられる。クリスマスだって祝うことが出来る。

 仏教徒であり、神道徒であり、また時としてキリスト教徒である日本人の寛容さは、自然の豊かさから来ていると思われる。イスラム教圏の国は概して厳しい自然環境であるため、イバード派と言えども、日本人ほどの寛容さがあるとは思えない。しかし、せめてスンニ派もシーア派もお互いの考えを認め合うくらいにはなって欲しいものである。今回の国交断絶に関しても、世界各国が仲介に動いているようであるが、日本もこの寛容さをバックに仲介に動いて欲しいものである。なお、カブース国王も動いているとの報道もあり、大いに期待している。
 2016.02.10(犬賀 大好-206)