徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

季節の終わり/天皇杯決勝・鹿島戦

2011-01-03 04:59:02 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス06~10
健太「やっぱり一人ではなかなかできない。やっぱりチームがしっかりとした協力者がいないと勝てるチームはなかなか作れないなという風に思いましたし、いろんな意味で監督業はホントの意味で孤独なんだなということも、この6年間でつくづく思い知らされましたし、仲間うちで「楽しい」っていうわけじゃないですけど、協力して、みんなでという想いもありましたけど、やっぱり責任は自分は取らなければいけない。自分自身がしっかりしなければいけないという中で、やらなきゃいけない職業だなと、厳しさというところをこの6年間で思い知らされましたし、ホントに勝つということになれば、なんでしょうね、別にクラブのせいに……逃げるつもりは全くないですけど、ただやっぱり現場といろんな意味で一体になって戦わないとやっぱりタイトルというのは転がってこないんだなという想いはあります」(Sの極み 1月1日付)

元旦は天皇杯決勝戦、鹿島アントラーズ戦

結局家を出たのは8時を過ぎてしまったが、12番ゲートの上に場所をキープした。周囲も声を出す人たちが多かったので心強く、最後まで声を枯らした。

ゲームが終了後、松葉杖の兵働がゴール裏に姿を見せ、ひとりひとりと抱き合う。その印象的な姿を見送ってからは、しばらくは声も出なかった。前列とプレーヤーや関係者がトラブルを起こしたという情報もあるが(YOU TUBEに動画も公開されていた)、もはやそれも瑣末なことである。驚くほど心の動きがなかったのは、この「強い」チームが結局何も残せないまま終わってしまったからであり、その「強さ」すら儚いものだったことを実感してしまったからだ。
ゲーム終了後に飛び込んできたニュースには耳(目)を疑ったほど、余りにもサポーターには残酷なものだった。本当にこのチームはひとつにまとまっていたのか、結局バラバラだったのではないか。実に寒々しい思いがした。
この件も含めて移籍選手情報は公式に発表されるまでは信じ難いが、タクに「この」アントラーズに行って欲しくはない。

兵働「頼むから勝ってくれと思いながら、優勝して今シーズンを締めくくれれば、良い形でみんな送り出せると思ってみてました。(中略)準優勝で悔しい思いをしたので、来シーズンもまた頑張れるだろうと、また頑張ろうと言いました」(J'sGOAL 1月1日付

兵働のコメントの真意はよくわからないが、他サポはこの状況を「チーム崩壊」と呼ぶ。
ある程度の情報と状況を知る清水サポにとっては、個々の事情や報道のニュアンスに違和感を感じるので一概に「崩壊」とは思えないのだが、他人の不幸が大好物のマスコミのフィルターを通して見てしまえば、確かにそう見えても仕方がないような状況ではある。
かつてのヴェルディやジュビロのように、栄光を背負った主力が離脱することでチームを崩壊させるということもなく、タイトルを獲り続けることで強さを維持し続けたアントラーズ。一方チームが「高く評価」されながらも、結局何のタイトルを獲れずに終わってしまったエスパルス。
天皇杯優勝によってACL出場権を得るという、これ以上ない「タイトル」を決勝のモチベーションに変えたアントラーズ。「このチーム、このメンバー」という余りにも儚いモチベーションで勝ち上がったエスパルス。
準決勝で、三連覇という「おまけ」のようなモチベーションで挑んできたガンバ相手に準ホームのエコパで対戦するという状況で、エスパルスが「このチームらしさ」を発揮した、思い通りの快勝を果たすことができたのも、それはそれで納得できる。このチームはノンタイトルの、フラットな状況であれば実に素晴らしいゲームを魅せる「強い」チームだった。個々のプレーヤーのクオリティがアントラーズに劣っているとは絶対に思えない。むしろクリエリティブでは勝っていただろうと思う。しかしプレーヤーを突き動かすモチベーションやリーダーシップを得ることはついにできなかった。

アントラーズとエスパルスは実に対照的であると言える。それは紙一重とも言えるし、彼岸にあるとも言える。まあ「アントラーズに学べ」とは思わないけれども。
ただひとつ、今大転換の過程にあるチームが「アントラーズになれた可能性」はあった。
例えば2008年のナビスコカップ、2009年、そして2010年のリーグ戦、そして2度の天皇杯決勝。タイトルがひとつでも獲れていれば、このチームの未来は大きく変わっていただろうと思う。タイトルを獲ることで強い個性が強い絆を保ち続けるアントラーズのように。

しかしこのエスパルスの大転換が単なる一クラブだけの転換ではない可能性もある。
清水の場合、移籍ルールの変更に加えて、報道されているプレーヤーの多くが今シーズンでの契約満了を迎えてしまったがゆえに過剰な混乱を引き起こしているが、移籍ルールの変更と元旦の読売新聞が報じたニュースを併せて見れば、この状況は今後、他クラブでも起こる可能性が間違いなく、ある。プレーヤーの意識の変化、クラブ運営が見直されようとしている。他クラブが「(現在の)エスパルスになる可能性」もあるわけだ。

<2013年シーズンからJリーグに導入される毎年の資格審査、クラブライセンス制度の概要が31日、明らかになった。 3年連続で赤字を出したクラブはJ1からJ2に降格させる方向で調整されている。公式参加条件を明確にすることで、リーグの価値向上を目指す。(中略)赤字については緊急の選手補強などで発生する可能性のある単年度の赤字は容認するが、3年連続は認めない。 Jリーグ関係者は「財務でもフェアプレーを求めていく」と話している。(中略)審査基準は、J1はJ2より厳しくすることが検討されている。2012年6月にはライセンス申請を締め切る見込みで、今年は試行期間として仮の手続きを進める予定だ。>
読売新聞 1月1日より

この決勝戦で6年間を振り返るのは重過ぎる。
この6年間、あまりにも無邪気に一喜一憂してきた。

淳吾「格好良くいえば、このチームの次に進むときが来たと思うので、そういうタイミングじゃないかと思います」(J'sGOAL 1月1日付

お前が言うな…とは思わないでもないが。
淳吾の言うとおり、個々のプレーヤーだけではなく、チームは次の段階へ進む時期に来ていたのは間違いない。健太体制と同時に加入した兵働は6年、淳吾にしても5年、選手寿命が短い大卒プレーヤーという意味でも、彼らがエスパルスで過ごした時間は決して短くはないし、重くもあるだろう。それでも彼らに失望してしまうのはほとんど感情的な部分でしかなく(しかしそれが大きいんだな、これが)、プレーヤーとしての判断はそれなりに尊重できる。自己プロデュースとしてはあまり良い判断とは思えないけどね…。

5年前の元旦、オレたちは「チーム」に確信を抱いた。最後まで残留争いをしたこのシーズンの終わりに、このチームは強くなると確信した。そして、それは「ほぼ」間違いなかったと今でも強く思う。「浦議」のキャッチコピーではないが、Jリーグの中で「健太エスパルスほど熱く語れる対象はな」かったのだ。それは自信を持って言える。
しかし、その5年後の元日の国立競技場で<心血を注いだものが破壊されるのを見て>しまった。
それでもオレたちは<腰をかがめてそれを拾い、古い道具で再建する>の見守るしかないのよね。

ひとまず今月中には陣容が固まる。もちろんオレも腹は括った。
どんなカテゴリーであってもプレーヤーはチームによって変わる。そしてチームを変えるのは監督であり、フロントである。
あまり…というか、この冬はほとんど良いニュースがないのだけれども、個人的には意外と今季を楽しみにしている。残るプレーヤーたちが、本当にこのチームを「オレのチーム」と呼べる、戦えるチームに変わっていくことを願う。そして、また清水エスパルスを熱く語れる季節がやってきてくれることを祈る。

岩下「(清水は)力のあるチームだと思うし、タイトルを取ることによって、それぞれの選手たちの自信にもつながって、違うチームになれるぐらいの刺激とかきっかけにもなるので、タイトルが本当に欲しかったですね。だから、取れなかったのはすごく悔しいし、まだまだ力不足だと思います」
J'sGOAL 1月1日付

真希「いや、勝ちたかった……サッカー人生で一番泣いたかも知れない(中略)(Q来季はマサキが中心でやるぐらいのつもりで?) そうっすね。ホント気持ちはそのぐらいで、やらなければいけないと思いますし、やりたいっすね」

宏介「心機一転、また気持ちも切り替えて、全員ゼロからのスタートなんで、また勉強になることも多いだろうし、そん中でポジション争いに勝って、来季はずっと出続けられるように頑張ります」
(以上、Sの極み 1月1日付)


健太ありがとう。どうしたって清水との縁が切れるわけじゃないんだし、また第二次体制の時期がやってくることを願っている。今季を最後にチームを離れる健太チルドレンたちありがとう(鹿島はもちろん、個人的にクズクラブに認定した名古屋と柏は絶対に負けられねェけど)。
そしてバーケンさんありがとう。あなたのお陰で密度の濃い6年間を過ごせたと思うよ。あなたは本当に大事な場面で去ってしまったけれども、エスパルスの戦いはまだ続いていく。
この6年間はJの歴史には残らなかったけれども、オレの心の中には歓喜と失望がはっきりと刻まれた熱い季節だった。

今季のプレイバックと愚痴と恨み節は今季の陣容が固まり次第…たぶん。
変わるのは楽しみ、だが、さすがにフロントもサポを生殺し状態にするのはいい加減にして頂きたい。
本当、どうすんの? 今年のカレンダー。グルーポンの謹製おせち詐欺じゃないんだから…。

(1月3日追記)
何か煽られたようなので追記しておく。
Twitterにも指摘があったし、サポも認識しているはずだけれども、このブログのスタンスも以前から「エスパルスの選手層はリーグトップレベルの厚さ」と主張してきた。ということで「ひとつのサイクル」が終わった時点で「選手層」が見直され、大改革が断行されるのは当然である。
もちろん6年という時間を共に過ごし、「清水の顔」とも思えるプレーヤーにまで噂が立っていることは残念だし、寂しいことでもあるけれども、清水の厚過ぎる選手層を前提に考えた場合、心ないマスコミや他サポのいうような「崩壊」というニュアンスには違和感があることを表明しておく。「崩壊」した方がマスコミや他サポには都合のいい話のタネになるのはわかるけれども、そういう安直な話題作りには徹底的に抵抗する。
井原のCMじゃないが、「メンバーが足りません」みたいな状況だったらわかるがw
オフィシャルの情報が少なすぎるためにフロントのスタンスは実にわかりずらいのだけれども、現イラン代表監督のゴトビ氏を招聘する以上、残留争いの危険性も秘める賭けとはいえ、何のヴィジョンもないとは思えない。ゴトビ氏については昨年の年末に書いた。
あとは陣容が固まってから振り返りたい。