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安全保障戦略の根幹

2012-10-09 | 日記
孫崎亨 『日米同盟の正体』 ( p.9 )

 日本でもいままで安全保障に関する議論は行われてきた。しかしこれまでの安全保障論議では、誰が敵か、いかなる手段で攻撃してくるか、攻撃を避けるためにいかなる対応をするかの議論が不在であった。わが国の安全保障の根本は、他の国に軍事攻撃をさせないことにある。
 それは従来の日本の安全保障政策が根本的欠陥を持っていることに起因する。
 第二次大戦以降、世界の軍事戦略では、他の国がなぜ攻撃しないかとの問いに対する安全保障上の答えは、攻撃した国が軍事的に攻撃以上の報復を受けることである。
 この軍事戦略論に基づけば、日本自らが、日本を攻撃した国に対して、日本に与えた被害以上の被害を与える能力を持つことが最も自然である。しかし、日本にその能力はない。じつはこの選択は単に日本独自の選択ではない。第二次大戦後の日米同盟という約束事に、明文化されていない重大な取り決めがある。それは日本が攻撃能力を持たないことである。
 その役割は米軍が担っている。しかし、どこまでの確実性を持っているのか。ヘンリー・キッシンジヤーは、代表作『核兵器と外交政策』(日本外政学会、一九五八年) の中で、「全面戦争という破局に直面した場合、長くアメリカの安全保障の礎石だったヨーロツパといえども、全面戦争に価いすると(米国の中で)誰が確信しうるだろうか?」「アメリカ大統領は、西ヨーロッパとアメリカの都市五〇とを引換えにするだろうか?」「西半球以外の地域はいずれも敢えて『争う価値』がないようにみえてくる危険が大きいのである」と記述している。
 こうしてみると、わが国の安全保障をどう確保するかは、極めて脆弱な基盤の上にあることに気づく。
 では、たとえば、中国はなぜ日本を軍事的に攻撃しないのか。中国が核兵器で日本を破壊したいと思ったとき、日本にはこれを阻止できるだけの軍事力はない。中国は米国の報復力を恐れてのみ日本攻撃を思いとどまるのか。米国が中国を核攻撃すれば、中国はニューヨーク、ワシントン等に報復攻撃を行う力がある。キッシンジャーの説に従えば、自国の主要都市を犠牲にしてまで米国が同盟国のために戦うかどうかは疑問がある。では、なぜ中国が日本を攻撃しないのか。
 攻撃を行わない大原則は、繰り返すが、攻撃した国が逆に軍事的に攻撃以上の報復を受けること、あるいは犠牲を受けることである。もっともこの報復や犠牲は軍事に限らない。
 ソ連の崩壊後、中国を含めどの国も、共産主義の理念では国民の支持を得られない。今日の中国の体制は、ナショナリズムの高揚と、国民に経済発展を約束することによって維持されている。中国経済が国際経済に組み込まれた今日、日本への軍事攻撃は日中貿易を途絶えさせる。当然中国は真大な経済的損失を被る。他の国も中国との関係を差し控える。これらの被害は中国国民が受容できる限界を超える。つまり中国経済を国際経済に組み込むことは、じつは日本の安全保障に貢献する措置でもある。そのことは北朝鮮に関してもあてはまる。
 こう見てくると、今日の安全保障戦略を考えるとき、狭い意味の軍事のみでなく、経済的結びつきも含めて考えるという広い視野を持って考察する必要がある。こうした観点を含めての安全保障論は従来ほとんど存在していなかった。本書ではこの視点を含め、日本の安全保障を考察しょうとするものである。


 上記内容を要約すれば、
  1. ある国はなぜ、他の国を攻撃しないのか。その答えは、現在の軍事戦略論によれば、「攻撃した国が軍事的に攻撃以上の報復を受ける」からである。
  2. ではなぜ、中国は日本を軍事的に攻撃しないのか。日本には報復能力はないし、米国が報復するかどうかもわからない。上記軍事戦略論では説明不可能である。
  3. 中国が日本を攻撃しないのは、経済的に中国が大きな損失を被るからである
  4. したがって安全保障戦略を考える際には、経済的結びつきをも併せ考える必要がある
となります。



 上記のうち、結論部分、すなわち安全保障戦略を考える際には、経済的結びつきをも併せ考える必要がある、という部分には同意します。

 しかし、それのみでは、日本の安全は保障されないでしょう。

 なぜなら、今日、中国は国際経済に組み込まれてきているにもかかわらず、近年、中国は日本に対し、圧力を弱めるどころか、強める方向に動いているからです。

 このことは、著者の主張が破綻していること、すくなくとも論理として「弱い」ことを示しています。

 したがって、「経済的結びつきをも併せ考える必要がある」という著者の主張の結論部分には同意しますが、「経済のみでは」日本の安全保障戦略として不十分であることは、あきらかです。



 近年、中国が日本に対して圧力を強めている背景には、日米安全保障体制の弱体化があると思います。普天間飛行場移設問題や、オスプレイ配備問題などにより、日米の安全保障体制にきしみが現れるとともに、中国の対日圧力は大きくなっているからです。

 したがって、著者の論理は「誤り」で、今日においてもなお、安全保障の中核的要素は軍事面であると考えなければなりません。経済的要素は、軍事的要素を補強する程度のものでしょう。



 それではなぜ、中国は日本を(核)攻撃しないのか。

 その理由は、「米国が報復するかもしれない」からだと思います。



 中国の立場に立って考えてみます。

 「日本には報復能力はないし、米国が報復するかどうかもわからない」。でも、「米国が報復するかもしれない」。

 これで十分です。中国が日本を(核)攻撃することは、現実問題として難しいでしょう。



 もっとも、米国による報復は、「あるかもしれない」し、「ないかもしれない」。両方の可能性が考えられます。

 したがって日本自身が核武装することが望ましいと思います。日米関係、米中関係がどうなるかわからないからです。

 とすれば、いまの段階においては、日本は米国と協調しつつ、じっと時期を待つことが得策であると思います。したがって当然、「日米同盟:未来のための変革と再編」は好ましいものとして、肯定的に捉えることになります。



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