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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

乱歩NO.77・・・映画「陰獣」(監督:バーベット・シュローダー)

2009-09-10 | 江戸川乱歩
■製作:2008年、フランス
■原作:江戸川乱歩
■監督:バーベット・シュローダー
■出演:ブノワ・マジメル、源利華、石橋凌、藤村志保、他

フランスの映画監督が江戸川乱歩の傑作「陰獣」を撮影しているニュースをかなり前にネットで見かけ、なんでまたフランス人の映画監督が江戸川乱歩を?それも外国資本による制作なわけで。乱歩もボクの想像を超えたところで国際的なんだなあと思っていました。このミスマッチな取り合わせが不思議でぜひ観てみたいと思っていました。ただそれが日本で公開される情報をなかなかみかけません。もうすっかり忘れてしまったところにミニシアターのレイトショーでの上映されるという情報が「名張人外境」というサイトの「RAMPO Up-To-Date」というコナーにアップされていました。このサイトはスゴいです。乱歩の現在進行形の情報が刻々とアップされています。どこでそんなに細かい情報を得ることができるの?と驚きの情報発信サイトです。

映画はえっ!「陰獣」はこんな展開で始まるの?と、いい意味で予想を裏切るチープかつエスニックなステレオ・タイプのジャポニズムな劇中劇から始まります。それは主人公である売れっ子のフランスのミステリー作家が大学のようなところで講演しているテキスト(映像を題材にしている)として使用しているということがわかってきます。その講義のテーマは、彼と同じジャンルを描いている謎につつまれた日本のミステリー作家・大江春泥(江戸川乱歩の原作にも登場する乱歩自身を模したような登場人物?というべきか)です。作風が似ているためライバル視しているしまた比較もされているようです。そのフランス人作家、講義が終わるとそのまま新刊のキャンペーンで日本へと飛んでいきます。



日本での滞在を世話するのは出版社に勤務するサラリーマン、彼の案内で京都・祇園の料亭にいくのですが、そこでフランス語が堪能なひとりの芸者に出会います。気になるのは、その芸者の踊り。素人目から見てもこれはひどいなあと。きれいな着物で誤魔化されているけれど、その所作の荒さは歌舞伎を見ているからかとても気になりました。もちろん歌舞伎役者のそれとは年季が違いますので比較するほうが酷なんでしょうが…。芸者にホの字の作家は彼女から相談を持ちかけられます。網を張った女に吸い込まれRて行くように心惹かれていく男、その過程の中で大江春泥の罠に、つまり乱歩が生み出した「陰獣」的な倒錯した世界へと物語は展開していきます。

ところで、小説家と芸者が結ばれる場面があるのですが、風呂場で女は赤の襦袢を纏いながら男の前に跪き足の指を一本、一本口に含んで舐めまわすところがありました。これ何かの風俗(お風呂の)のサービスの勘違いじゃないの?監督はおそらく来日した時に日本の風俗店に遊びに行き、そのサービスを受けていたく感動したんだろうなって勝手に想像させてくれる描き方でした。献身的な女性という海外から見た日本女性のイメージもそこに投影されているのかもしれません。ただ映画で使っているような愛撫は日常的に誰もがするわけではないので、日本女性がすべてそのようなことをすると思われては困ってしまうのですが・・・。

その後、いわゆる乱歩的な世界が目まぐるしく眩暈するように起こっていくのですが、最終的には、乱歩の小説を題材にとって東洋の闇の世界とでもいうような、異空間が用意した深い沼底に落ちて身を破滅させてしまうフランス人の男の話となっていました。それは悪夢と言っていいでしょう。多少変な日本の描き方がありましたが、別世界に入り込み身を破滅させた男の話と見れば、過剰な日本的装飾や背景はあくまで異空間を演出する装置(=記号)のひとつとみれば、その方がその世界、最早そこはブラック・ファンタジーの世界、に入り込みやすいんじゃないのかなと思いました。

※過去の投稿記事より江戸川乱歩の「陰獣」関連
◆乱歩NO.4・・・<江戸川乱歩の陰獣/1977年>
◆乱歩NO.5・・・<陰獣/1990年>
◆乱歩NO.6・・・<闇の脅迫者~江戸川乱歩「陰獣」より~/2001年>
◆乱歩NO.7・・・<妖しい傷あとの美女~陰獣~/1985年>
◆乱歩NO.74・・・演劇公演「陰獣 INSIDEBEAST」
◆江戸川乱歩の研究?⇒「陰獣」から
◆江戸川乱歩の研究?2⇒「陰獣」から
◆漫画no乱歩#6⇒「陰獣」古賀新一/角川ホラー文庫
◆漫画no乱歩#7⇒「陰獣」バロン吉元/小池書院
◆乱歩を巡る言葉17・・・「陰獣」吟味/井上良夫



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