飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

Black is fantastic ⇒ルドン#5ボードレール「悪の華」①

2007-08-22 | 美術&工芸とその周辺
渋谷の東急文化村で開催中の展覧会「ルドンの黒」を観て

ルドンはボードレールの詩の世界にも触発されその絵を描いている。

■■■「悪の華」24(無題)■■■



夜の穹窿にも等しく、私はきみを愛する、
おお悲しみの器よ、丈高い寡黙の女よ、
私の愛はいやますばかり、美しい女よ、きみが私を遁れようと

すればするほど、また、わが夜な夜なを飾るものよ、
私の腕を涯しもない空の青から引き離す
道程を、皮肉っぽく、きみが延ばすと見えれば見えるほど。

死骸めざして這い寄る蛆虫の合唱隊のように、
私は進んで攻撃し、よじ登って襲いかかる。
私はいとおしいのだ、おお情容赦なく残酷な獣よ!
きみを私には一段と美しくする、その冷たさまでもが!



■■■「悪の華」25「香水壜」■■■



どんな物質の中をも通りぬけるほど強い
香りがある。ガラスをさえ貫くとでも言おうか。
<東方>から渡来した小匣を開こうとして、
錠前が軋みさからって叫び声を立てるとき、

あるいは人住まぬ家の中、鼻を刺す歳月の匂に
充ち、埃をかぶって黒い箪笥をあけるとき、
たまたま現れる古い香水壜は、過ぎし日を思い出し、
その中から、甦る魂が、生き生きと迸り出る。

重苦しい暗闇の中で静かに震えながら
陰惨な蛹のように眠っていた数知れぬ思念が、
翅をのばして、いっせいに飛び立とうとする、
紺碧に染まり、薔薇色に光り、金メラに飾られて。

今こそ、心酔わせる思い出は、濁らされた空気の中を
舞いまわる。眼は閉ざされる。<眩暈>は、
圧倒された魂をつかまえて、両の手で押しやる、
人間の瘴癘の気にくもされた深淵の方へと。

年古りた深淵の縁に、<眩暈>が魂を打ち倒せば、
その底にうごめくものは、匂のするラザロが、
屍衣を引き裂くにも似て、眠りから醒める、
墓に埋もれた、愛らしい、饐えた古い恋愛の、幽霊めいた死体。

そのように、私もいつか、人々の記憶の中で、忘れられ、
不吉な箪笥の片隅に、老いぼれて、埃くさく、
きたなく、卑しむべく、ぬるぬるとして、ひびわれた、
みじめな古い香水壜よろしく、打ち捨てられたその時、

私はきみの棺桶となろう、愛すべき疫病よ!
きみの力ときみの猛毒とを、証し立てる者と私はなろう、
天使たちの調合した、愛しい毒よ!私を蝕む
酒精よ、おおわが心の生命にして死なるものよ!



■■■「悪の華」70「埋葬」■■■



もしも重くるしく陰気な寄る、
良きキリスト教徒が、慈悲の心で、
どこかの古い廃屋の背後に、
世にもてはやられたあなたの身体を、

純潔な星たちが重くなった眼を
閉じる刻限に、埋葬するなら、
蜘蛛はそこに網をかけようし、
蝮は子どもを産みつけるだろう。

一年じゅうあなたの耳にとどくものは
罪被せられたあなたの頭の上で
狼や腹の減った女魔法使たちの、

恨めしげに泣きさけぶ声、
好色な老人たちのさんざめやら、
腹黒いぺてん師どもの謀めごと


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