飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

Black is fantastic ⇒ルドン#3フロベール「聖アントワーヌの誘惑」①

2007-08-20 | 美術&工芸とその周辺
渋谷の東急文化村で開催中の展覧会「ルドンの黒」を観て

『ルドンの黒』の作品群の中で一際多いのがフロベールの小説「聖アントワーヌの誘惑」の挿絵である。この聖アントワーヌ(アントニウス)は実在の人物で、キリスト教修道院制度の創始者とされ、エジプトの砂漠で禁欲生活にはいり、そこで悪魔から様々な誘惑をうけるが、最終的にそれに打ち勝ち、修道生活の父と呼ばれているそうだ。アントワーヌが見た奇怪な悪魔たちや美女のなどの幻影誘惑は、過去画家たちの主題にも選ばれたようです。(ちなみに無知のボクはそういったことは全く知りませんでした)

ルドンを観たボクの方といえばさっそく原作の小説を図書館で借りたのでした。話はキリスト教以前のエジプトやローマの神々が次々と登場したりで途中から段々とわからなくなってきました。理解できるのはアントワーヌが苦しんでいるということ。しかし終盤、悪魔との対決となり、そこで語られる悪魔の哲学が面白かったのです。

それは、悪魔がアントワーヌを体に乗せてグングンと上昇して宇宙空間に飛び出ますが、太陽の周りを公転している地球を見せ「やっぱり、地球は宇宙の中心ではあるまい?人間の自惚よ!つつましくしていろ!」とのたまう。そして宇宙全体に拡がる星々の調和と無限の空間に対して悪魔は語る。

「何処までも何処までも空へ乗昇ってみるのだな。けっつて頂上には着けないぞ!地球の下のほうへ、幾億万年かけて降りて行ってみるのだな。けっつて底には達せないぞ。―底もなく、高さもなく、低さもなく、全然かぎりがないのだからな。そして、このひろがりは、神のなかに含まれているのだ。これこれの大きさをもつ空間の一部分としてではなく、限りなく大きなものとしての神のかなにな!」

「・・・もし実体が分割出来るものとすれば、その本性を失うことになるし、実体ではなくなるし、神ももはや存在しなくなるだろう。それゆえ、神は無限でもあり不可分なものであるのだ。・・・」

そして悪魔は善悪の彼岸の哲学を語るのだ。

「お前の理屈の要求にあわせて、事物の法則が出来るとでもいうのかな?たしかに、悪は神にとっては無関係だ。地上は悪で蔽われているからな!神が開くにたえているのは、無力のためか?また、神が悪をそのままにしておくのは残酷のためなのか?お前は神がこの世界を不完全なる作品として、絶えずこれを修正するとでも思っているのか?蝶が飛ぶから人間が考えるまで、神は一切のの生物の動きを注意ぶかく見守っているとでも思っているのか?もし神が宇宙を創ったのであるならば、神の摂理は余計な物だ。もし摂理が存在するなら、天地創造は欠陥のあるものだ。

そうなのだ。善も悪も、お前だけにかかわるものなのだ。―ちょうど昼と夜、楽しみと苦しみ、死と誕生のようにな。これらもひろがりの片隅、ある特別な環境、個々の利害に関係をもっているもの。ただ無限だけが、永劫不変なものであるから「無限」というものが存在しているのだ。―そして、それだけしかないのだ!」


いつの時代の物語にも正義に対峙する悪の思想は魅力的に映るときがある。

※フーローベル全集4「聖アントワーヌの誘惑」渡辺一夫・平井照敏夫訳(筑摩書房)より抜粋


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