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アニメ及び周辺文化に関する雑感

涼宮ハルヒの突撃 それゆけ!宇宙戦艦スズミヤ・ハルヒ(後編)

2006年08月18日 | アニメ

 すっかり掲載するのを忘れてた…… ^_^;

   ☆ ☆ ☆

 現在のところ両軍の残存戦力を比較すると、SOS団チームは古泉艦隊が全滅、俺の艦隊が半壊、ほぼ無傷なのはハルヒ艦隊、長門艦隊、朝比奈艦隊で3.5。しかし、朝比奈艦隊は戦力外だし、長門艦隊も策敵に専念しているから攻撃に使える戦力は1.5しかない。一方のコンピ研部長+エスタナトレーヒチームの方は御堂艦隊と松明屋艦隊に大きなダメージを与えたものの残りの部長艦隊、山本艦隊、白鳳院艦隊はほぼ無傷で戦力は4.0。まともに戦っては勝ち目が無いのは確かだ。
 もちろん、長門艦隊を攻撃に転用したり、朝比奈艦隊の指揮を長門に任せるという奥の手もあるが、それは最終手段。現状で勝ちに向かうにはやはり敵の大将である部長艦隊を集中的に叩くことしかないのだが、ハルヒの目には山本洋子の映ってないらしい。
「向こうが来ないのなら、こっちから攻め込むまでよ! さあ、敵陣に乗り込むわよ! みくるちゃん、逃げてばかりいないで前に出て盾になりなさい!」
 ハルヒは朝比奈さんの艦隊を盾にして敵陣に突撃するつもりらしい。何とも強引で自分勝手な指示である。
「ひぇ~~、そんなのできませ~ん」
 泣いて逃げ惑う朝比奈さん。だいたい、このまま突撃しても当たるのが山本艦隊とは限らない。下手すれば敵の総戦力に包囲されて袋叩きにされる危険もあるのだ。
「ハルヒ艦隊右舷後方に白鳳院艦隊接近!」
 古泉艦隊を全滅させた白鳳院綾乃の艦隊がここまで回り込んで来たらしい。
「うるさいわねぇ。キョン、回り込んで挟み撃ちにするのよ。露払いに葬り去ってくれるわっ!」
 俺はハルヒの指示にしたがって自分の艦隊の進路を変えて、白鳳院艦隊の側面を突くコースに転じた。ハルヒは艦隊を反転させ白鳳院艦隊の正面から迎え撃つ態勢に入ったが、接触寸前に白鳳院艦隊は大きく進路を変えてハルヒ艦隊から逃げる構えを見せた。
「逃がすものですか。追うわよ、キョン!」
 そう言って追撃に転じるハルヒ艦隊は大きく釣り出された形になった。
「まずい」
 俺は序盤で御堂艦隊に釣り出されたことを思い出した。いや、あの時と違って今は長門の斥候用の分艦隊がハルヒ艦隊をカバーしてるはずだ。敵が待ち伏せしてるなら最初に長門のレーダーに掛かる。

「ハルヒ艦隊左舷前方に松明屋艦隊接近!」
 案の定、アウトレンジ攻撃に特化した空母主体の松明屋艦隊が待ち受けていた。いや、それだけではなかった。
「ハルヒ艦隊右舷前方に御堂艦隊接近!」
 どうやら敵はこちらの大将であるハルヒ艦隊を集中的に攻撃して一気に決着を付けようとしているらしい。戦力比は約1.5対2.0。こちらが不利である。例えここをしのいでもダメージが蓄積されたところを無傷の山本艦隊に襲われでもしたら万事休すだ。
「有希、あんたも戦闘に加わりなさい!」
 ハルヒは索敵に専念中の長門艦隊を攻撃に加わらせようとした。確かに長門艦隊が加われば当面の敵に対する優位には立てる。しかし、斥候用に広大なマップの各地に分散した分艦隊をすべて呼び戻すには時間が掛かるはずだ。それに、長門艦隊の斥候部隊を引き上げれば優位にあったはずのこちらの情報収集能力を自ら放棄してしまうことになる。
「全艦隊を戻してたら時間が間に合わない。近傍の分艦隊だけ集結させ、残りは索敵を続行させる」
 長門はそう言ってハルヒ艦隊の比較的近くにいる艦隊だけを集結させ始めた。集結して減った分艦隊の数だけ索敵継続中の分艦隊を分割し、ルール上での分艦隊の上限数を維持し、それで索敵能力の低減を補おうとしていた。もちろんそんなことすればひとつの分艦隊の戦力はどんどん小さくなっていくから、敵艦隊と接触すればたちまち壊滅の憂目を見る危険性が高い。

 敵の待ち伏せに突っ込んでいく形のハルヒ艦隊は、それでも進路を反転しようとはせずに白鳳院艦隊の追撃を続け、長門艦隊の到着を待たずして松明屋艦隊の艦載機部隊に接触した。それでも追撃をやめないハルヒは対空砲火で何とかしのごうとする。
 松明屋艦隊の戦力もすでに半減しているとはいえ、一撃必殺の大艦巨砲主義に徹底したハルヒ艦隊は艦載機からの攻撃に対する反撃能力は低い。大艦ならではの装甲の厚さによって辛うじて耐え忍んでる様子だ。目に見える被害は出て無いとはいえ、相当に拙過ぎる状況である。俺が行って何とかしてやりたいところだが、俺の艦隊の目の前には御堂艦隊が迫っていた。
 しかし、気になるにはハルヒが追ってる白鳳院艦隊だ。こいつが逃げている間は松明屋艦隊にしろ御堂艦隊にしろ個別に対処すればいい。しかし、味方が戦場に到着した今、いつまでも逃げ続けるとは思えない。こいつが反転して反撃に転じてくればこっちの状況は苦しくなる。
 ともあれ、当面は目前の敵、御堂艦隊を叩くしかない。こいつの性格はわかっている。ハルヒと同じ突出型の指揮官だ。ならば、正面からぶつかるのは愚の骨頂。俺は艦隊を二手に分け、それぞれ左右に迂回させて御堂艦隊との正面衝突を回避、両側面から包囲態勢に入る。この作戦は成功し、御堂艦隊の戦力は瞬く間に半減した。悔しがるおでこの姿が目に見えるようだ。
 これが個別の艦隊戦ならそのまま艦隊を反転させ、御堂艦隊の残存戦力を叩きに向かうところだか、そんなことしている場合ではない。一刻も早くハルヒ艦隊に追い付いてサポートしてやる必要がある。

 相変わらず松明屋艦隊艦載機のアウトレンジ攻撃を浴び続けてるハルヒ艦隊だったが、さすがの大艦巨砲主義思想による分厚い装甲も耐久力の限界が来て次々と被害が現れ始めていた。
「うるさいハエどもねっ! キョン、何とかしなさい!」
 やれやれ。こいつは目指してる敵以外自分で何とかしようとは考えないのか、まったく。ハルヒ艦隊の左舷前方からアウトレンジ攻撃を仕掛けていた松明屋艦隊だったが、まったく相手にしようとせずひたすら白鳳院艦隊を追い掛けてるハルヒ艦隊に引き摺られる形になっていて、ハルヒ艦隊を追い掛けてる俺の艦隊との距離もいつの間にか縮まっていた。おまけに、松明屋艦隊の虎の子の艦載機戦力はハルヒ艦隊の攻撃に掛かりっきりになったままだ。これはチャンスである。俺は防御力が手薄になった空母主体の松明屋艦隊を叩くため、進路を転じ、全速力で松明屋艦隊に向かった。
 一方、一目散に追い掛けて来るハルヒ艦隊を釣り出した形になっていた白鳳院艦隊はマップの中心の障害物のあまりない広大な空間にたどり着くと、おもむろにその進路を反転させた。最初からハルヒ艦隊を釣り出したところで反転し、側面から迫ってた御堂艦隊、松明屋艦隊と共に挟み撃ちする作戦だったのだ。しかし、そうは問屋が卸さない。俺の艦隊に叩かれた御堂艦隊は反転して追撃してくるだけの戦力は残って無いだろうし、松明屋艦隊の前には俺の艦隊が立ちはだかってる。
 残るは未だ戦線に加わっていない山本艦隊と部長艦隊だが、部長は危険を冒してまでまず出て来ないだろう。問題は山本艦隊の消息であるが、長門の探索に関わらず現時点で引っ掛かっていないというところを考えれば、当分は直接的な脅威と考えなくて良いだろう。
 松明屋艦隊の艦載機攻撃を受け続け、その被害が出てるとはいえ、ハルヒ艦隊と白鳳院艦隊の戦力差はそうないはずだ。1対1の艦隊戦になればハルヒ艦隊の大艦巨砲主義が効果を発揮してくれるだろう。山本艦隊の心配はその後で良い。俺はそう考えた。
 現実時刻の一四〇〇、運命の戦端が開かれた。松明屋艦隊を有効射程距離に捕らえた俺の艦隊は艦載機の出払った無防備な敵空母を次々に撃沈していく。もちろん、松明屋艦隊にも巡洋艦や駆逐艦の護衛部隊があるが、それらは主に航空攻撃からの防御に特化した編成であり、強力な打撃力のある艦隊戦での対応は想定されていないようだった。艦載機が出払ったところを叩かれるとは思ってもいなかったのだろう。
 それとほぼ同時にハルヒ艦隊と白鳳院艦隊との戦いも開始された。戦力はほぼ互角と考えた俺だったが、どうやらそれは間違っていたらしい。突進したり撃ちまくるしか能の無いハルヒとは違って、白鳳院艦隊の動きは頭脳的だった。ハルヒ艦隊自慢の強力な砲火もあまり被害を受けないように巧妙にかわし、一方でハルヒ艦隊の弱点を付くような細かい攻撃を仕掛けてきたのだ。
「なんかムカつく攻撃ね!」
 ハルヒはまるで薮蚊の大群を払い除けようとするかのように主砲を左右に散らして応戦するけど、白鳳院艦隊は散っては集まり散っては集まりを繰り返し、拉致が開かない様子。それでも互いの艦隊が真正面からぶつかってるのだから双方共に被害は甚大になる。
 これは不味いと俺は思ったが、そこに吉報が届いた。転進してきた長門の艦隊が白鳳院艦隊の背後を突いたのだ。いかに白鳳院艦隊が善戦しようとも、猛烈な速度でコマンドを打ち込んでる長門艦隊の攻撃を背後に受けてはハルヒ艦隊への攻撃を続けられない。白鳳院艦隊はたまらず進路を変えて退却のコースをたどり始めた。
「逃がすものですかっ!」
 たちまち追撃に向かおうとするハルヒだけど、自分の艦隊も満身創痍なのはお構い無しらしい。
「自分の艦隊を立て直そうとか思わないのか?」
 俺は頼むから敵に釣り出されるのはやめてくれるようにとのことを婉曲的に言ったのだが、その真意をハルヒが理解したようには思えなかった。
「叩けるときに叩いておく。これが勝利の鉄則よ!」
 ハルヒがやられたらその時点で俺たちの負けは確定するから少しは自重してくれと言いたいところだが、言っても無駄だろう。幸い、長門の艦隊が援護に回ってるからそんなに心配は要らないのかも知れないと思ったのだが、すべては二重三重にも計画された敵の巧妙な罠だったのである。

《右舷、第13水雷戦隊壊滅!》
《右舷、第65駆逐戦隊壊滅!》
《第4戦隊、戦闘不能!》
 突如としてハルヒのコンソールに次々に表示される被害状況。
「な、何よ、いきなり!」
 突然のことに慌てふためくハルヒ。
《第34ミサイル艦群大破!》
《第1防空戦隊通信途絶!》
「有希、敵の接近に気付かなかったの!?」
「レーダーには何も映ってない」
 長門がポツリと答えた。しかし、いきなりハルヒ艦隊の至近距離に現れた敵部隊はヒットアンドアウェイ攻撃を繰り返し、着実に大きな被害を与えている。
「しゅ、瞬間物質移送機……」
「ま、まさか。デ……いや、相手の隠し機能ですか?」
 俺と古泉が顔を見合わせた。
「いや、それは無い」
 長門はあっさり否定した。
「敵は細かく分けた分艦隊を順番に、こちらの索敵圏外からピンポイントでワープさせて攻撃してきている」
 つまり、こちらの艦隊の位置は交戦中の敵艦隊からは明らかであるから、それを利用して一気に勝負をかけてきたのだ。これが今まで姿を現さなかった山本艦隊の秘策だったのである。艦隊がワープするには一定時間以上、エネルギーを蓄積する必要がある。向こうがワープで仕掛けてきたからってこちらも簡単にワープするわけには行かない。
「ムカつくわ! こんな攻撃であたしを倒せると思ってるの、山本洋子!」
 強がるハルヒだったが、どう見ても被害は拡大していく一方だった。ハルヒを援護しようとする長門艦隊だったが、新手の分艦隊はことごとく長門の手の届かない場所に出現してハルヒ艦隊に攻撃を加えていく。いくら長門のコマンドオペレーションが早くてもシステムに規定された以上の艦隊速度は出せない。
 もはや敗北は必至だった。俺の脳裏には猫目の少女の勝ち誇る姿が浮かんだ。

 しかし、勝負は意外なところで決着が付いた。逃げまくってるあまり誰からもその存在を忘れ去られていた朝比奈さんの艦隊がマップを大きく迂回してたどり着いた先でたまたまコンピ研部長の艦隊と遭遇し、どういうわけだか奇跡的にこれを打ち破ってしまったのだ。いくら山本洋子が圧倒的に優位な戦いを繰り広げていても自軍の大将を守れなかったらそれでお終いである。勝負はSOS団チームの勝利に終わったのだ。
 俺はその時に知ったのだが、長門が懸命にキーボードを叩いていたのはハルヒ艦隊の援護のためじゃなく、朝比奈艦隊のコントロールに介入して部長艦隊と戦っていたのだ。
「みくるちゃん、よくやったわね」
 何も知らないハルヒが朝比奈さんを褒めていたが、朝比奈さんの方も何がどうなっていたのか理解できてない様子だ。

 自分が原因で敗れた部長はぐったりとうなだれていたが、助っ人のエスタナトレーヒチームの4人はさばさばとした様子だった。
「惜しかったなぁ。あと少しやったのに……」
「あたしがあれだけ犠牲出してるのに、あんた出てくるのが遅いのよ、ヨーコ!(キラ~ン)」
「初めてでしたけど、なかなか奥の深そうなゲームでしたわ」
 それぞれに感想を述べてる3人。そして最後に猫目の少女が言った。
「なかなか楽しませてもらったわ。あんな形で終わってしまうのは不本意だったけど、またお手合わせ願えるかな? 今度はあたしたちのフィールドで」
「もちろん! 望むところよ!」
 ハルヒはまるで自分が実力で勝ったかのように、自信満々に受けていた。しかし、向こうのフィールドということは向こうが圧倒的に自信を持ってるジャンルということだぞ。対戦型格闘ゲームか、対戦型シューティングゲームか、それが何なのかはわからないけど、この『THE DAY OF SAGITTARIUS IV』でこれだけ苦戦してたらとても敵う相手とはとても思えないのだがな。

《つづく?》