空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「ペンギンの憂鬱」 アンドレイ・クルコフ 新潮クレストブックス

2014-08-13 | 読書


図書館の予約票を見ながら、余り長く来ないので、思い切って買ってこようかなと思っていたが、幸い雑用が重なり読む本もあったので気になりながら待っていた。それがやっときた。
夕食後読み始めて読み終わるまで眠れなかった。馴染みのない国の珍しいテーマだったが久し振りに出会えたいい本だった。

ウクライナのキエフに住んでいるヴィクトルは、新聞に追悼記事を書いている。小説を書きたいと思ってはいるがなかなか実行できない。
恋人と別れたあと孤独な生活をしていたが、動物園が資金不足で閉鎖になり、貰い手がなかった皇帝ペンギンを引き取って一緒に暮らし始める。
ミーシャという名前をつけた。退職した動物園の係りにミーシャのことを聞きに行く。独り暮らしの孤独な老人だったがミーシャのことを覚えていた。
「あの病気のペンギンか」
「病気なんですか」
「そう、鬱病で心臓も弱い、しかし動物園の殆どのペンギンに憂鬱症はあるな」
そこでペンギンに関する資料を借りて帰った。
ミーシャは殆ど直立しているが、くちばしでつんつん突っついたり、身体を寄せてきたり、じっと目を見たりする。気持ちがよく分かるときもあるが表現は豊かでない。もちろん喋りはしない。
冷凍したさかなの餌を食べおとなしく直立して(眠るときも)暮らしている。
それでも、呼べばぱたぱたと足音をさせてくる。ペンギンがいるので孤独が少し薄らだような気がしている。

そこに<ペンギンでないミーシャ>がきて、重病の友人の追悼文を書いて欲しいという。追悼文は500ドルになった。
ところがしばらくして<ペンギンでないミーシャ>が不意に来て4歳の娘を預けていった。ソーニャという。
その子は淋しがる様子もなくすぐに馴染んで嬉しそうに暮らしだした。

ふとした出会いでセルゲイという友達が出来た。ペンギンと預かった娘を連れて彼の別荘で過ごしたり川遊びをする。真冬の川は厚い氷が張っていて、釣り人が開けた穴からミーシャは出たり入ったりしてご機嫌に遊んだ。別荘の雪の上をソーニャと散歩したりする、寒いほど機嫌がよく、目も喜びに潤んでいるように見える。

ところが<ペンギンでないミーシャ>が突然死んだという知らせがきた、クリスマスプレゼントの中に大金も入っていた。ソーニャの養育費のつもりだろうか。

仕事も順調で生活も楽になってきた。ソーニャにセルゲイの姪をベビーシッタに雇った。ソーニャとも仲がよく家事もうまくいい子だった。

仕事はますます順調だった、編集長から、候補者と経歴が絶え間なく届く。経歴は詳しく記してあって書くべきところには赤線で指示してある。まとめるだけの楽な仕事だった。彼は署名記事が書きたかったが、追悼文の締めには「友人一同」と書くことになっていた。抵抗があったがそれにも慣れた。
追悼記事は死亡予定の人のものが多く、必要になるまで編集長の金庫で眠っているのだった。

ところが記事を書いた人たちが次々に死に始める。見知らぬ男が「ペンギンを連れて参列してくれないか、ペンギンは白黒で葬式に似合う」と言って来た。何度か参列したがその後の追悼パーティにまで出ろというので、口実を設けて、ペンギンだけを貸し出すことにした。レンタル料は一回1000ドル。ミーシャはいい仕事をしてくれて(訳もわからずただ項垂れて立っているだけ)ますます生活が楽になってきた。

そのうちベビーシッターのニーナと一夜を過ごし、三人とペンギンの家族ごっこが始まった。

追悼文を書いた人たちが死んでいくことも、葬式の迎えが来ることも、編集長が一時姿をくらますことも変だとは思ったが深くは考えなかった。

家族ごっこは愛情や恋しい気持ちから始まったのではないが、なんだか安らぐ。

突然ペンギンのミーシャがインフルエンザに罹った。入院してみると心臓の手術もしないといけない重病状態だという。
急にミーシャを何とかしてやらなければいけない気持ちに駆られた。ところが高額の医療費がまかなえない。出して出せないことはないが後の生活はどうする。
その時に電話があって、あの葬式の団体が何とかしてくれるという。これは「庇護者」が着いているのか。
ミーシャが回復したら、南極の事業に寄付を!という団体に協力しよう。

しかし、何か変だとは気がついていた。今までの出来事や編集長の態度。

そして決心した。




いやぁ、特に激しい盛り上がりがあるというわけではないが、追悼記者の自然体から、なんだか目が離せない。
ペンギンが寄り添っているのも、不思議ではなくなる。ペンギンのいる日常が不思議でなくなるどころかいないと精彩を欠く。面白かった。
ロシアという国が出来て未だ政情が不安定な頃、書いた追悼記事が次々と不思議な形で新聞に載り始める。
しかし記者の気持ちは、追い詰められもしない、ちょっと居心地よく感じられる家族のなかで、落ち着いている。
編集長の裏の事情も、葬儀に集まる集団もなにか雰囲気が違うとはうすうす思いながら。
それなりの危機感でピストルを身につけたり鍵を取り替えてみたりするが。
セルゲイも派遣先で死に、不思議なことが起きる中で、目の前には緊迫感のない生活があることが心落ち着く。
ペンギンが病気になったときは、ヴィクトルだけでなく自分のペットのように気にかかった。

こういうものが読みたかった、読書の楽しみってこれだなぁと改めて感じた。


ブルガーコフを思わせるこの社会風刺小説のかなめはペンギンである。物語が進むに連れ、ありそうもないことがしだいに現実的なものに思えてくる。ペーソスとユーモアがそこかしこで際立ち、滅多にないほどすぐれたブラック・コメディに仕上がっている。なんといってもペンギンを登場させたのは天才的な思いつきだ。                                            
                                                  ジョン・ド・ファルブ




静かな夜など、この読みやすくて不思議な味のする面白い本をオススメします。
登場人物も少なくて分かりやすいし(^^)






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「キャサリン・カーの終わりなき旅」 トマス・H・クック 早川ミステリブック no1868

2014-08-12 | 読書


クックでまだ読んでなかったものを見つけたので、図書館に予約したが随分待ってやっと来た。
時間がかかっているので面白いだろうと期待して、早速読み始めた。


子供を誘拐された作家は、川から遺体が発見され、一時は絶望した。
痛みを引きずりながら今も暮らしている。
新聞社から小さい記事を頼まれ書くことで細々と生活をしている。

いつも行くバーで、退職警官から20年前から未解決になっている、キャサリン・カーという女性が失踪した事件の話を聞く。未だ犯人も明らかでなく、殆ど手がかりがない。
 失踪人に興味を覚えて聞いてみると、彼女の友人のところに彼女が書いて預けていた小説と詩が少し残っているという。
友人は余り協力的ではなかったが、始めの部分から少しずつコピーして見せてくれることになった。

彼の記事は、街の人物や出来事を取り上げ、楽天的な軽い表現で書くことだった。それは傷を抱えた彼への編集長の思いやりだった。

次はバーで話に出た、早老症で入院している12歳の少女を書く予定だった。病院に取材かたがた見舞いに行くと、彼女は老人に見間違うような風貌ではあったが、パソコンを駆使してミステリ小説を解き明かすのが趣味だった。
実に聡明で、キャサリン・カーに深い興味を持った。
二人でコピーを読んで事件の顛末を考える。それは彼女に活力を与えた。

小説は少しずつ渡されるので、考える時間は十分有った。だが読んでいくと、 小説は幻想的でどこまでが彼女の出来事なのか事実を探すのは難しかった。
二人は、その中から見つけた現実的な出来事を探し、事件と照らし合わせて繋いでいく。

徐々に小説が結末に近づいていく。

早老症のアリスも日々衰えて、死期が迫ってくる。



登場人物の不幸に加えて、事件の不透明感が読んでいても暗い。
作家は、かって殺人現場を訪ね、好奇心を満たすために、いわくのある土地などを歩いて様々な経験をした。その話がこれまた残虐で恐ろしい。

話の中に小説が入る構造で、小説の中でキャサリンが主人公になってはいるが、幻想的な作風なのか事実に基づいたものなのか、遠い過去の出来事は雲を掴むようで、渡されたコピーを読んでも展開が分からない。
過去に暴行され傷つけられたことで、大きな心境の変化が有ったらしいことが伺える。
小説の中では、現実か架空のものか分からない登場人物が動いているが、何かを暗示しているのだろうか。彼女は今生きているのか、殺されたのか、手がかりになる記述が無い。

読んでいて、これはなんなのだ、と思った。

小説の中に具体的な記述がなければ、失踪か殺人か、二人がいくら考えても事件の上を滑っていくだけだ。
作家も、息子を誘拐され殺されたときに自分がいなかったという後悔にさいなまれているのはよく分かる。少女に対する思いも。
ついにホスピスに移された少女が残りのかすかな命をかけて、キャサリンを読み解くシーンは、未だ生きていけるものと、死を悟ったものの解釈の違いに胸が痛む。不幸な少女を道連れに選んだことが輪を掛けて救いようがない。最後の部分であるいはこうなって解決なのかというシーンはあるが。

しかしどう繕っても、この作品は難解というより混沌で、残虐なはっきり言えば悪趣味で、解決の部分も、きっとどう終わらせるのか迷ったのではないか、スッペ「軽騎兵」序曲のちょっと長い終章部分を思い出してしまった。でもあの曲は軽快なまま終わって落ち着くのに。
小説が結末に来ているのに、明らかになって落ち着く部分がない。なので、どうなりと後はお好きな形でお任せします。といわれているようだ。

キャサリンの小説はいい思い付きだが、それを読んでも何の手がかりもえられそうにない内容で、こういう思わせぶりなストーリーをなぜ作ったのだろう。

クックの回想形式の秀作は不幸な出来事に行き着いていく、今回は救いのある結末を用意したのだろうか。
ミステリについての常套手段に依らないという文中にある言葉は、未だ解決しない迷いがあり、新しい分野への挑戦かもしれないが、この作品は常に負の心を表す比喩も含め、全く暗すぎる。
少しずつ渡されるという小説のコピーにしても、世界の犯罪者の羅列にしても、奇病に苦しむ少女にしても、自然に読めるような流れにならず、ありありと作りものめいて、常に自分の読解力の不足ではないかと思うようだった。
次の作品はどうなっているのだろう。

図書館にない、買うのはやたら高すぎるし。こんなことを書いても未だファンなのでそのうち読もうと思って待っている。





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水引草が咲いています

2014-08-11 | 山野草

 晴れて秋めいた朝です。洗濯物が風で揺れて早く乾きそうです。
今年も水引草が咲きだしました。

また立原道造の詩を思う季節が来ました。四国の川沿いの細い山道を思い出します。


  
ミズヒキソウ 庭の雑草の中でも元気に増えてます。ちょっとピンボケ。



  のちのおもひに
                       立 原 道 造

 夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
 水引草に風が立ち
 草ひばりのうたひやまない
 しづまりかへつた午さがりの林道を

 うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
 ───そして私は
 見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
 だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……

 夢は そのさきには もうゆかない
 なにもかも 忘れ果てようとおもひ
 忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには

 夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
 そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
 星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう



白い立浪草はもう種になりました。次の春、又白い波頭を見ることができるかな、
増えて花の間に入り込んでいます(^^)


おまけの時計草です。


まだ夏本番だというのに、少し涼しい風が吹くと、秋の気配がします。ふといつも彼岸花が咲く辺りを覗いて見ましたが、影も形もなくて、未だ一月も先なのか、ごめんなさいごゆっくり、と言っておきました。

台所の窓から、突然油蝉の声がしてびっくり。出てみると金木犀に、二匹止まって頑張ってました。ラジオの声が負けそうな勢いで「やっぱり夏か、ハイハイ!」と言っているうちに気温がぐんぐん上がっています。





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台風が通過して雨と風が止みました

2014-08-10 | 日日是好日
大きい音が続いていた雨と風がやみ静かになったので窓を開けてみました。
空は未だ灰色の雨雲が低く見えるけれど、台風はもう通過していったようで一安心。
これから影響が出る進路方面でも、何事もなく無事通り過ぎて欲しいと空を見上げています。

昨日から大慌てですだれを巻き上げて、手すりに結び付けました。
柔らかい繊維に表面は銀色の塗装がしてあるので効率のいい日よけになっています。
昨年取り付けたのですが、強力なマグネットのフックが窓枠につけられて、それにぶら下げるので簡単で軽いです。

秋になったら外しますが、遮光性を採ったら、部屋が暗いので、穴倉生活です。
出掛けるのは一番暑い、すだれが頑張る時間にしています。


この間から、ワードで作ったファイルを整理しようと買ってきた本を見ながら、ちょっと触ったら原稿が三本消えてしまいました。

どこかにないかと探したのですがダメで、そうしているうちにPCのご機嫌が悪くなったのか、点滅し始め、復元したり苦労して疲れました。

トラブルの度に勉強にはなりますが、書いたものが消えるとがっくりしてしまいます。

気分転換も早いので、DVDを見ました。
スティーブン・ジョブスを、又見ました。最後の講演も検索して読み直しました。こういう時、さまざまなサイトを作ってくださっている方に本当に感謝します。
亡くなったジョブスの言葉は忘れた頃に又読むことにしています。悼む気持ちもありますが、力のある言葉は今も生き続けていて励まされます。
今使っているiPadは、最後のプレゼンで話されたもので、アイコンもiCloudも画面で見て、同じだ!となんか当然なのにまた感動しました。

風が涼しくなっています。



k


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駐車場で迷子に ゜(*´□`*)゜

2014-08-09 | 日日是好日


運転免許証の写真って、これで5年間使うのかと思うと、落ち込んでしまう。
今回の更新の写真は、年取ったこともあるが、ますます酷い、その上髪が伸びている。
美容院嫌いでも、こんな時くらいは、何とか見られるようにしてもらうものでしょう、と思ったが手遅れ。
でも、免許証なんてめったに人に見せるものでもないし、毎日見られるほうを何とかしよう、と思い切って美容院に行った。
おとなしい美容師さんで、何もすることがないのでいろいろ考えた。
「この近くに文房具屋さんはあります?」
「ないですね」
複合ボールペンというのを持ち歩いていて、ボールペンのほうが書けなくなった。替芯もスーパーや近くの量販店にない。ここまで来たなら、駅前の新しいモールに行ってみよう。専門店が多いから文房具店もあるだろう。

行って見ると、聞いてはいたが、慣れた駐車場が4階建てになっている。面倒だなぁ。まぁいいかくるくるカーブをして4階へ。夏休みで子供連れも多いのかどこも満車。

下りて、案内所で聞いてみると、橋を渡って、エレベーターで二階で下りて、左手にあります。


久し振りに歩きました。

そこで替芯を入れてもらって予備を買って帰ろうとしたら、レジの横に探していたシャープペンシルとボールペンがあった。

KURUTOGA、とJETSTREAM、借りたら書きやすくて探しても近くではない。ボールペンはスーパーに有ったけれど、デザインがなぁと考えた。

それが並んでいた。
私なりに厳選、三本買った。使いかけはパソコンのそばのペン立に集めた。でも今のところ書くことがない、手帳のカレンダーに、この日クリニック、この日は病院と書いた。
パソコンのメモに書いてあるのに、書き始めが病院か アハ


そして。
帰りに駐車場に行ったが車がない。広い場内を計画的に探した、20分で汗だく。いよいよ見つからない。
疲れて佇っていたら、係りらしい人が来た。
「あのぉ車が見つからないんです」
「どちらから入られましたか」
「昔露天の駐車場が有った方からです」
「あ、じゃ南駐車場ですね、遠いですからご案内をします」
エレベーターまで連れて行ってくれた。

又四階で下りてみたらなんだか前のところとは感じが違っていた、そうかここか、じゃ二番の筋で。

待っておりました、可愛い顔した鼻ぺちゃのタント君。

広くなって、入り口も東西南北がある。たまにはこういうところへ来て買い物でもしよう。







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「11の物語」  パトリシア・ハイスミス  早川書房

2014-08-09 | 読書

 
 映画の原作者で有名だが、この短編集でも、残酷で、常に自分の思いに縛られ、次第に深い心の底の暗黒に向かっていく。最後にはその中に落ちて命まで落とす。昔みた映画の雰囲気も感じられる、そんな話が集めてある。

映画「太陽がいっぱい」はアラン・ドロンのキャラクターで、悲劇性が増した。だが後で公開された「リプリー」同じ原作でもこちらはトム・リプリーという主人公の心理が心に残った。ジャケットを借りて、富豪の息子に間違えられてから運命が狂いだす、マット・デイモンの細かな表情も所々覚えている。その時は未だパトリシア・ハイスミスは存命していて、この本を買って読もうとしたのを覚えている。
でもそのままになっていた。


かたつむり観察者

かたつむりの観察が趣味だったが、最初は数匹飼っていて観察していたかたつむりが増える、周りが止めさせようとしたが嬉々として楽しんでいる。仕事が忙しくて書斎を覗かなかった一週間の間に増えたかたつむりが。

恋盗人
恋人からの手紙を待ちかねたドンは色々な理由をつけて自分を慰めていた。隣りのボックスに入った手紙が三通残ったままになっていた。気になって盗み見たら、返事を待ち焦がれる文面だたった。彼はこっそり何度も返事を書いて、ついに会うことになった。

すっぽん
母がすっぽん料理を作るという。すっぽんに興味を引かれ、友達に見せる約束をした。だが母は来客用の料理にするといって包丁でばっさりと解体して煮立った鍋に放り込んだ。

モビールに艦隊が入港したとき
売春婦だったが昔はよかった、モビールで見初められて結婚したが夫は暴力的で、殺して逃げ出したはずが。

クレイヴァリング教授の新発見
生物学者の教授は、新発見をした生物に自分の名前をつけたかった。おおかたつむりがいるという島に一人で上陸した、探した末に見上げるようなかたつむりを見つけた。でも来たときの船が流されて。

愛の叫び
二人で部屋を借りて暮らしていた老女はお互いに嫌気がさしていた。相手の嫌がることをして部屋を別に借りたが、二人とも眠れなくなった。

アフトン夫人の優雅な生活
精神科医に定期的にやって来るアフトン夫人は、夫のことについて様々な相談をする。医師は直接本人と話したいと思って訪問するが。

ヒロイン
メイドの仕事がとても気に入った、家も子供たちも、優しい母親も。どうしたらもっともっと気に入られれるのだろう。給料も貰いすぎぐらいだ。恩返しをしないといけない。もし災害が起きて献身的の助けたということになればもっと認められるだろう。

もうひとつの橋
妻と子を事故で失い、会社経営も興味がなくなって、旅に出た。泊まったホテルのそばで少年と知り合った。裕福そうな人たちばかりの中でハンドバッグがなくなって。


野蛮人たち
4階から見下ろすと、大声で少年たちが野球をしていた。声は近所迷惑で住民は困っていた。彼は窓から石を落とした、誰か怪我したのか、死んだりはしてないか。不安だったが、しばらくしてまた大声が聞こえだした、そしてあちらこちらの窓に石が投げられ始めた。

からっぽの巣箱
平穏な日々を過ごしていたが、空っぽだった巣箱でチラリと黒い目と影を見た。夫に言って調べたが巣箱は空っぽだった。ところが黒いすばしっこい影が家の中を走るようになった。夫もそれを見た。



どの作品も、日常の何気ない中から現れた恐怖、悲しみ、やむない衝動が不幸につながっていく。平凡な日常が壊されるかも知れないという恐れや、愛情を求める余りに犯した罪や、生活の中から芽を吹いてくる恐ろしい兆しを書いた、暗い短編集だった。
始まりと結末だけでは語れない、しだい次第に緊張感が張り詰めていく、導かれていく細部がとても読み応えが有る
「かたつむり」は虫好きの息子が飼ったことがある。書いてあるように小さい丸い卵をどんどん産んでそれが孵化する、小さなかたつむりの群れに恐れをなして山に捨てた。
肌があわ立つような作品だった。
「ヒロイン」も面白い。両親に恵まれなかった少女が雇い主に気に入られようとして気持ちがエスカレートしていく、若い時の作品でデビュー作だそうだ。

忘れることを許されぬ11篇

その通りだった。




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DVD 「悪の法則」

2014-08-04 | 映画
監督がリドリー・スコットだし、見てみようかなと思った。俳優もいいみたいで楽しみにしていたが、悪は悪でも全く汚れきった社会悪のどん底あたりの話で少し辟易した。

ちょっと欲を出した弁護士が、仕事柄知るようになった儲け話に足を突っ込み、破綻する話だった。
大金になると言う麻薬取引に加担すれば、うまく行っても行かなくても身の破滅だが、覚悟が浅かった。
取引と言うのは相手もあるし運び屋も居る。そううまく行くものではない。秘密などどこからでも漏れる、結局、そういったシンジケートに知られ、途端に手を組んだつもりの仲間は逃げてしまう。

頼っていったギャング社会のボスが、悪の哲学のようなものを話すが、悪にもそれなりの哲学がありルールがあるということ。
そんな事を聞かされても後の祭りで、浮かぶつもりがごみのように処理されてしまう。行く末の悲惨な、それでも、生きていくには甘い汁だけではない、強靭な精神力と智恵と、抜け目なさがいる、と言うことで、暗い救いのない、何も得るところのない映画の世界だった。

画面も無意味に残虐なシーンが多く、それが何かを主張しているわけではない、映像に自信のある監督で重厚な映画を作る人だと思っていたが、空回りをしたようだ。


後は気楽に、「スタートレック」を見よう。これはちょっと楽しみ ♪




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「雨の日曜日」

2014-08-04 | その外のあれこれ

 雨で少しだけ暑さが和らいだ日曜日でした。
ニュースで雨の被害が報じられて、床上浸水もあったとか、未だ今日も小雨が降っていますので心配しています。
愛媛のほうも増水しているようで、不用意に外に出ないようにしていると話していました。

一日中雨でしたが、湿度も高くて暑さにも疲れて、真夏日に比べると、いい休養日だと思ったのですが。
 食べるものさえあればいいやと、冷蔵庫の中を覗いてみると、暑くて買い物にも行かなかったので、これといった食材がなくなってました。そうめんやパスタ、うどん類だけで、これじゃ元気が出ないわ、といっても休日なのに、細かい食事など作る気持ちもなくなって、お昼前になって「腹ペコ遊民といこう」とお店を探して出発しました。

 お昼は、娘がいたとき以来行ってないファミレスで、「変わったね~~」と言いながら久し振りに社会見学をしました。リクエストどおりステーキがおいしいというチェーン店に行ったのですが、期待はずれで、お客さんも二組だけ、「モウ次は止めよう」と点が辛かったです。お肉屋さんで買ったほうがいいね というので(作ってくれるならね、サラダもよ)と私は休日気分がそがれました。

それから、夏服が安いよ、と言うので、帰り道でTシャツや下着を買い、私は「捨ててから買う」とちょっといいことを言いながら付き合いました。

その後恒例の本屋さんで、ビデオを借りてきました。見逃したものがもう準新作になって何か月分も並んでいて、ご無沙汰だったねぇとみんなで感心しながら、ここでは私だけ借り、家族は重そうに本を抱えていました。

録画もたっぷり溜まっているし、最近はBSをどんどん撮っているので、早く見ないと容量がなくなりそうで、レンタルビデオどころではないのですが。


 「夏はむくげが綺麗だねぇ」と言いながらさて、と見たらカメラがなかった。お店でしょう、かもね、と引き返して見てもなくて、結局「又忘れたんでしょう」「そう言えば えへへ」ということで、帰ってみたら、行く用意したときのまんま机に乗っていました (*´□`*)゜
さて、そろそろ軽いカメラを出すか、と思ってバッテリーの充電もし、4Gあればいいかとカードも入れ、準備したのに忘れました。

だから、写真はむくげでなくてカメラです。

長く使ってなかったので、庭でも写そうかと思ったら、その頃写真を撮りたくて頑張っていたので小さいのに高機能で、またまた説明書を読んで、「あなた、賢いけど面倒ね」といやみたっぷり、やつあたりかも (^∇^)



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「脳男」  首藤瓜於   講談社文庫 

2014-08-02 | 読書

第46回江戸川乱歩賞受賞

 小さな爆弾があちこちに置かれついに死者が出た。アジトをつきとめ逮捕に向かったが、倉庫の中に二人の男がいて争っていた。一人は捕まえたが主犯は逃がしてしまった。
共犯と見られたのは鈴木一郎と言う青年だった。彼は無口で協力的でなかった。精神科医の鷲谷真梨子が担当になって鈴木の精神鑑定をする。
 身体検査ではかすかな傷が二箇所あるだけで、過去の手がかりがない。彼は過去の記憶をなくしていた。
 真梨子は彼について調べる。
 頭蓋骨の形から、鈴木一郎と入陶大威と言う人物が同一人だと分かる。

 脳に障害を持って生まれた上に、両親は亡くなり、火事にあって祖父も亡くす。重度の火傷から生き延びた入陶倫行(いりすのりゆき)の孫入陶大威(いりすたけきみ)は皮膚移植の後祖父の知人に預けられて育った。

 鈴木一郎が検査入院している病院に爆弾が仕掛けられる。幼児に仕掛けられた時限爆弾の解除に、彼は警察に協力しようとする。




 これが完成された作品なら時間を惜しんで読んだかも知れない。
 作者が作り上げた「脳男」鈴木一郎が、生まれたときには、言語も行動も自由にならない脳障害をもち、その上感情がない、それが見かけは普通人と代わりがないような鈴木一郎になった。
 SFホラーという分野に近い作品に仕上げているが、読んでいて素人ながら腑に落ちないところがある。

 鈴木一郎として再生する過程が、難しい感情の分野で、いかに人間離れした知能でも、人の感情の動きをゼロから学習できるものだろうか。お話なので難しいことは抜きにして、新聞社を経営したり、痛覚を制御したり出来るのだろうか。
 火傷した後、皮膚移植の跡を残さない天才医師はいるのだろうか。途中で作者の意図も分かってくる。設定が面白いので最後まで読んだが、私の気持ちのどこかに抵抗感があって、なかなか進まなかった。


 張り巡らされた時限爆弾装置につながる細いワイアーをすり抜け、幼児を救出するところは、トム・クルーズの「MI」や「エントラップメント」で赤外線をくぐる、キャサリン・ゼタ・ジョーンズを思い浮かべたし、犯人がヒントにした「ヨハネ黙示録」ではあの「セブン」を思い出した。
 なんだか「アイ,ロボット」を裏返したような気分で読んだ。
人間に奉仕する目的で作られたロボットが、感情を持つようになる。競演のウイル・スミスは一部分を改造されたサイボーグだった。ラストシーンで丘の上に建つ開放されたロボット「サニー」は綺麗だった。


そういった映画を思い出すということは、興味深い作品ではあった。
超人「脳男」を創り出した作者なら、又今後、面白い作品でお目にかかるかもしれない。

映画になったと言うが、そちらの方は劇画風で面白かったのではないだろうか。




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「追想五断章」  米澤穂信  集英社文庫

2014-08-01 | 読書

題名が気にいって買ってきた。漢字五文字と言うのは「純情小曲集」とか「五言絶句」の名文とか沢山有るが、レトロな感じもするし、今風のゲームのタイトルにしても収まりがいいようで、落ち着く。

以前旅先のホテルで見た有料の映画で「インシテミル」と言うのが面白かったので作者の名前は知っていた。
少し遠くに行くと、地方局のニュースなどを見て、眠れないと映画を見るのが楽しみになっている。

と言って原作を読んでみる暇もないままで、やはり何か引っかかっていたのかこの本を買ってきた。



解説を読んでこれは、リドルストーリーという形式だと知った。結末がない物語と言う意味らしい。その中で東野圭吾の「どちらかが彼女を殺した」が上がっていたが、そういえば最後の変わった話だったと思い出した。なんだか消化不良になりそうな感じだったが、そういう形式のものだったのか。それで結末はどうなるの?と言うコメントも見たことがある。
読後感は余りよくなかったので、なんとも言い切れないが、この「追想五断章」は面白かった。

結末はある、真相も分かる。でも作者が書き残した最後の部分は読者が推測してもいい仕組みになっている。作者の意図通りに収まるのが当然だが、途中で自分なりに遊んでみるのも面白い。


両親と娘の三人家族である、裕福な家に生まれた父は放蕩の末、女優の妻を貰い,娘も連れて海外を転々として暮らしていた。スイスに逗留中に、ベルギーのアントワープを訪れた。その時滞在していたホテルで妻が首をつって死んだ。その時古い拳銃を持っていてその弾が妻の腕をかすっていた。
自殺か、殺人か、当時は大事件として報道され、夫に疑いがかかった。しかし起訴はされず、22年前に帰国して、松本でひっそりと暮らしはじめた。そして。

娘は手紙を見て、亡くなった父親が小説を書いていたことを知る。
帰国して二年後に、父が書いたはじめての小説が同人誌に発表されていた。筆名が叶黒白といい小説は五編あったことがわかる。
手がかりがあった。娘は発表された同人誌「壷天」を探して古書店に来る。
応対した店員にいきさつを話して、残りの小説捜索を依頼する。店員は一作見つかると10万を出すという娘の言葉もあって探すことを約束するが、いつどこにどういう名前で発表されたのか皆目見当がつかない。

暗中模索、紆余曲折の末5編の小説は見つかるが、どれも結末の部分が抜けていた。
ところが彼が逼塞して過ごした家の文箱に、五編分が一行ずつ書かれた5枚の紙が入っていた。

娘は事件当時4歳だった。ぼんやりした記憶しか残っていない出来事を知りたいと思った。ついに見つかった小説から、事件の輪郭や、当時の父の思いに気づく。

そうそう、でちょっと思ったのだが、お父さんは白黒つけるために小説を書いた、それはいいけど、じゃそれを知った娘はって思う(ネタバレじゃないつもりだけど)

と言う事なのだが、父親の書いた小説と言うのが実によく出来ていて面白い、結末が知りたくてじりじりするが、最後の一行は文箱の中にある。

これは読んでみなければ分からない、娘と店員の小説探しもあって二重に楽しめる。余り長い話ではないが巧緻をきわめたと言うと言いすぎだろうか。

少し暗い蔭のある悲しい出来事も深みがある。





 積読の解消で、何冊も読んだが、4.5冊は50ページほどで止めてしまった。自分の本なので期限がないし、気になればいつでも読めると思うので、面白くて読みきれるものから先に読みたいと思って。
積読は場所を変えて又積読になった。

 中に、意味もなく人名や地名に読みにくい難しい漢字を使ったものがある。
 地方名などは、今でも歴史がある読みの難しいものも多く有るのは事実、謂れなどを聞くと興味深く新しい名前は味気ない気もするけれど、架空の土地によく知っている文字を、わざわざ馴染みのない読みにしてルビを振っているのはなぜだろう。
 作者がモデルを類推されるのを嫌ったのなのだろうか、それならもっと関わりのない名前や場所を選んで欲しい。人名もそう変わった姓も少ないと思うが、なかなか手ごわい名前の脇役がいる。

 外国の優れたものなら、カタカナが読みにくくても頑張って読むけれど、現代小説で古い漢字の羅列は、わぁ~~っとなってついに読むのを止めたくなる(夏だから?頭爆発してしまうから?)
 こんな、漢字くらいで躓かないほど面白い本に出会いたいとは思うが おほ。





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