空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「脳男」  首藤瓜於   講談社文庫 

2014-08-02 | 読書

第46回江戸川乱歩賞受賞

 小さな爆弾があちこちに置かれついに死者が出た。アジトをつきとめ逮捕に向かったが、倉庫の中に二人の男がいて争っていた。一人は捕まえたが主犯は逃がしてしまった。
共犯と見られたのは鈴木一郎と言う青年だった。彼は無口で協力的でなかった。精神科医の鷲谷真梨子が担当になって鈴木の精神鑑定をする。
 身体検査ではかすかな傷が二箇所あるだけで、過去の手がかりがない。彼は過去の記憶をなくしていた。
 真梨子は彼について調べる。
 頭蓋骨の形から、鈴木一郎と入陶大威と言う人物が同一人だと分かる。

 脳に障害を持って生まれた上に、両親は亡くなり、火事にあって祖父も亡くす。重度の火傷から生き延びた入陶倫行(いりすのりゆき)の孫入陶大威(いりすたけきみ)は皮膚移植の後祖父の知人に預けられて育った。

 鈴木一郎が検査入院している病院に爆弾が仕掛けられる。幼児に仕掛けられた時限爆弾の解除に、彼は警察に協力しようとする。




 これが完成された作品なら時間を惜しんで読んだかも知れない。
 作者が作り上げた「脳男」鈴木一郎が、生まれたときには、言語も行動も自由にならない脳障害をもち、その上感情がない、それが見かけは普通人と代わりがないような鈴木一郎になった。
 SFホラーという分野に近い作品に仕上げているが、読んでいて素人ながら腑に落ちないところがある。

 鈴木一郎として再生する過程が、難しい感情の分野で、いかに人間離れした知能でも、人の感情の動きをゼロから学習できるものだろうか。お話なので難しいことは抜きにして、新聞社を経営したり、痛覚を制御したり出来るのだろうか。
 火傷した後、皮膚移植の跡を残さない天才医師はいるのだろうか。途中で作者の意図も分かってくる。設定が面白いので最後まで読んだが、私の気持ちのどこかに抵抗感があって、なかなか進まなかった。


 張り巡らされた時限爆弾装置につながる細いワイアーをすり抜け、幼児を救出するところは、トム・クルーズの「MI」や「エントラップメント」で赤外線をくぐる、キャサリン・ゼタ・ジョーンズを思い浮かべたし、犯人がヒントにした「ヨハネ黙示録」ではあの「セブン」を思い出した。
 なんだか「アイ,ロボット」を裏返したような気分で読んだ。
人間に奉仕する目的で作られたロボットが、感情を持つようになる。競演のウイル・スミスは一部分を改造されたサイボーグだった。ラストシーンで丘の上に建つ開放されたロボット「サニー」は綺麗だった。


そういった映画を思い出すということは、興味深い作品ではあった。
超人「脳男」を創り出した作者なら、又今後、面白い作品でお目にかかるかもしれない。

映画になったと言うが、そちらの方は劇画風で面白かったのではないだろうか。




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