空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「警官の血」 佐々木譲 新潮社

2011-03-28 | 読書



「血」とは三代に亘って、地域警護に勤めた警察官の「血脈」を表す物語である。

第一部 清二

戦後の混乱を警戒して、警視庁は警官の大量募集をした。復員して定職のなかった清二は、それに応募して採用された。
研修中に3人の親友ができ、希望通り谷中の派出所の巡査になる。公園には浮浪者が溢れ、孤児も住んでいた。
ここで仲間同士の争いがあり、ミドリというホモが殺される。彼はこの事件の捜査を内偵していたが、捜査員でなく、巡査の身分では思うように進まなかった。
派出所のすぐ裏にある天王寺の五重の塔が不審火で燃える。そのとき、不審な動きをする人物をつけていき、跨線橋から落ちて死ぬ。

第二部 民雄

父を尊敬し、自分も地域を守る警官になりたいと思っていた。成績が良かったが進学をあきらめかけたとき、父の同期で友人だった三人が「血のつながらないおじ」だと言って援助をし彼に高等学校の教育を受けさせる。
無事、警察学校に入り訓練を受けることになったが、成績が優秀だったので、急遽北大に行けと言われる。そこではロシア語をべと命じられたのだが、内実は、北大内部の左翼グループの動きを探る役だった。
この、学生生活と偵察員の二重生活は民雄を蝕み、精神を病む。
やがて学生運動は鎮圧され、開放された彼は、父と同じ駐在所の警官になる。
彼はなぜか殉職扱いされなかった父の死に強い不審を抱いてきた。
だが、人質を取って立てこもった指名手配犯に向かっていき、射殺される。

第三部 和也

和也も大学を出て、地域警官になることを選んでいた。だが卒業間際に捜査官の素行調査を命じられる。
彼が内偵を命じられた警官は、加賀谷と言った。加賀谷は一匹狼の刑事として数々の実績を上げていた、暴力団相手の刑事だった。和也は彼からさまざまな訓練を受ける。
一方、祖父の不審死を父が探っていたことを知り、その遺志を継いで行こうとしていた。
加賀谷は地域暴力団の顔になっている。やはり裏で繋がっているのだろうか。
聞き込みで、父に援助した「三人のおじ」は亡くなったり引退していたりする。彼は当時のことを調べていく。



警官三代の物語が、それぞれの時代背景の中でつながっているのが面白い。戦後の荒廃した街で生きている浮浪者や孤児に暖かいまなざしを向ける民雄。

民雄は裏切りの生活の中で壊れていく。父が殉職扱いにならないという警視庁の判断のために、貧しい暮らしを余儀なくされた。しかし彼は父のような警官になることを目指した、だがあたら優秀な頭脳を認められたために特命を受けて利用される。貧しさ故といえるかもしれない。
恵まれた頭脳が生かしきれない環境というものもあるだろう。

和也もやはり組織の中では自由に生きられなかった、上司をスパイするという運命を受け入れなくてはならなかった。

和也の最終章になって事件は解決するが、長い年月をかけた割にはあっけない。調査方法が進んだこともあるかも知れないが、話としてはいささか簡単すぎるように思った。
祖父を殺したのは誰か、早くに思い当たる部分もある。

読書

37作目 「警官の血」佐々木譲 ★4


38作目 「ウッドストック行最終バス」 コリン・デクスター 
     クロスワード好きらしい作者の謎解きミステリ。
     バスが来ないというのでヒッチハイクをするつもりだったが、
     ちょうどやってきた赤い車に拾ってもらった。だが、そのうちの独りが殺された。
     モース警部は、パズルを解くように聞き込みをして、事件を構築してみる。
     何度か振り出しに戻ってやり直さなくてはならない。
     何がどう繋がって犯罪が成立するのか、とても面白かった。
     ★4


39作目 「隠し剣 孤影抄」藤沢周平
     短編8編 まず題名に惹かれる。
     それぞれが避けがたい運命の重さを背負っている。
     剣を交えなくてはならなくなる武士の生き方に、現代にも通じる哀しみがある。
     「女人剣さざ波」がいい。     ★4

    
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「蝉しぐれ」 藤沢周平 文春文庫

2011-03-20 | 読書
教わってすぐに図書館に行った。
買い物帰りの寄り道で。

今頃?
こんなに著名でファンの多い本を今頃?藤沢さんの本が初めて?

読み終えて、話すと驚きの声。
初めてだなんて、、、
そういう声が全くそのとおりだと思えた。

映画もドラマも沢山見て読んだつもりになっていた。


見ると聞くと読んでみるのとはこうも違う。映画では名優が演じ、演じることでますます名優になった。山田洋二監督の名もますます上がった。

しかし原作の味は文字の中にある。

「蝉しぐれ」が降る海坂藩で 成長する若者たちの姿に胸が躍る。

文章はまるでやわらかい淡い光を放つ絹糸のように風景を織りなしている。雨のあと頂に向かって上る山霧、霞のような朝霧。
家の屋根を染めながら落ちていく夕日。青々となびく田をわたる風。

織りあがる布は、詩情豊かな風景を浮かび上がらせ、移り変わる光の色が、忘れていた風景の中を歩いていく心地がする。

勇気と忍辱のこころ、友情と信頼の豊かな土壌の上で、過酷な現実を乗り越える力を感じる。

養子に入った貧しい家を守りながら、幼馴染の友人、隣の娘お福との交流が暖かい。

藩内の跡目相続に名を借りた権力争い。お福の運命を見守りお思い続ける気持ち。

藩内の抗争に巻き込まれたお福と子供を助けて、闇路を舟で下る緊張感。

稽古場での対立。ご前試合。伝授された秘剣村雨の威力。


上質のエンターテイメント作品に出会えて感激した。


読書 

36作目 「蝉しぐれ」★5
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「永遠の沈黙」 マイクル・ヘイデン&リンダ・ケニー 藤田佳澄訳 ハヤカワ書房

2011-03-18 | 読書

図書館の人気の本は配本時に題名の横に注意書きがある。
ーこの本は希望者が多いので早く返却してくださいー。そうでしょ、そうでしょ。私も待っている。
本好きは相身互いでしょう。早く読んで返しなさいね。私も返す。

これは <全米ベストセラーの話題作>
と言うのにつられて買っていた、積んでいたのだが、図書館の予約本がまだ届かない。8冊もあるのに。買っているからには読まないと作者に失礼かも。と思ったのだが。



ショッピングセンターの建設予定地を掘り始めると人骨が出てきた。
検死官のジェイクと弁護士のマニーが調査を始める。

ジェイクの尊敬する先生で友人のピーターから急な呼び出しがきて、急いでいってみると彼は末期の癌らしかった。何か言いづらいことがあるように見えたが無理に聞かないまま帰宅した。

そしてピーターの死の知らせが来る。

発見された人骨を調べていて、不審なことに気が付く。

ピーターからは関係のありそうな遺品を預かっていた。

一方弁護士のマニーは骨から名前の確定した父親の、死因を調べて欲しいと依頼される。

それから二人は命を狙われながら、入り組んだ過去を調べることになる。



検死官という職業は話では読めるけれど現実にはとても素晴らしい職業だとは感じられないのが普通だろう。

だが怖いもの見たさや最先端の医療、捜査事情を知るには読者のヒントになる部分も多い。難しい仕事には敬意を覚える。

作者が監視官と弁護士のご夫婦だそうで、特に検死官の仕事については書きすぎほどかかれている。

軽いロマンス小説だろうと思えるくらい登場人物も少なく読みやすい。

理系の検死官はなりふり構わない仕事人間だが、人柄は温かくて思いやりもある。
ファッションに人一倍気を配るおしゃれな弁護士とのロマンスも、そう来るのね。と思える。

単純な話はわかりやすくて、たまにはいいかもしれない。

読書

36作目 「永遠の沈黙」★3

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「影法師」 百田尚樹 講談社

2011-03-18 | 読書

「永遠の0」で泣いた作者なので、ろくに立ち見もしないで予約したのが来るのを待っていた。
たまたまパソコンを起動してみたら、ー準備できたー と出ていた。
連絡が無いけど、これは急いで取りに行こう。
図書館に着いたら「いま整理したところだったんですよ」あきれ気味に言われた。予約センターの通信は中央図書館にあって、受け取りは近所だ、ヤッタネ!
まったく、言葉も無いくらい面白かった。バスタオルほど涙は出はないにしても小型ハンカチはいる(^^)

作者は、つぼを心得ているのが良くわかる、自分でもこうきたら泣く。ホラ、ヤッパリだ、と思いながら引き込まれた。

 



ちょっと身分の差がある家の二人子供の辿った運命。

「刎頚の友」の契りを交わした二人。

同じように学問の成績は抜群で、剣の腕も揃って午前試合に出るほどに優れている。

下士の勘一と、中士の家柄の彦四郎。

家を継げず養子に出ることしか道の無い次男の彦四郎と、下士で貧しくはあるが長男の勘一という立場の違い。


ついに勘一は藩主に認められ、国家老になった、いっぽう彦四郎は、出奔して、晩年に帰国し不遇のうちに死んだ。

勘一は二十年あまりの江戸詰めを終え帰国したが、彦四郎の死を知らなかった。
そして、刺客に襲われ、一命を助けられ、それを切っ掛けにして彦四郎の過去が次第に現れる。

彼は如何に生きて死んだか。
「刎頚の誓い」はどうなったのか。

わずかな運命のづれ、時間のずれが大きく生き方を変えた。
しかしそれだけだったのか。

生き残った片割れの悲憤と、爽やかな幕切れが、痛々しくも悲しい。

気負いの無い読みやすさで一気に読み切ることができる。

今、泣くことも必要だと思った。

佐々木小次郎と武蔵が友達であったなら、絶好の配役なのだが
と他愛の無い想像までした。

大収穫の一冊


読書
35作目 ★5

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「制服捜査」 佐々木譲 新潮文庫

2011-03-17 | 読書

       

「警官の血」を予約したら、これが先に来た。この作者は「笑う警官」から二作目。

不祥事を改善するため道警本部がとった、長期滞在をなくすための配置換で、十勝の片田舎、志茂別町の、派出所勤務になった、川久保巡査が主人公の短編5作が収められている。

捜査権のない巡査が、旧弊固陋な町で起きる事件解決に腐心する姿が主題になっている。

 

 

「逸脱」

一人息子が帰ってこないと訴えで田母親。ここは母子家庭で、息子は町の悪童たちに苛められていたという。

聞き込みも効果がないある日、道端に息子の死体と、盗まれたバイクが転がっていた。町は交通事故で済まそうとする。

 

「遺恨」

散弾銃で犬が殺された、その家は入村も新しい余所者で酪農を営み隣家ともめていた。

隣家は中国人学生も受け入れるほどの大酪農農家だった。

調べるうちに起きた事件と、調べるうちに過去の出来事に当たる。面白い一編。

 

「割れガラス」

父親に虐待されていた少年を、見込んだ流れ大工に預けてみた。少年は彼になついて仕事を覚え大工も教えることに生き甲斐を持ったいた。

事件が起き、それを突き止めたときには、濡れ衣は晴れたものの大工は解雇され、少年は福祉事務所に引き取られていった。

川久保の人情味があたたかい、最後に川久保の一刺しで、ちょっと気が晴れる。

「感知器」

放火事件が相次ぐ。町の連続放火犯を追うミステリらしい一編。

 

「仮装祭」

復活した祭りの最中に前に起こって未解決だった誘拐事件が、同じ形で起きる。

当時の巡査ととともに阻止するために駆け回る。

町の人たちの絡んだ過去。川久保の境遇などいちばん長い一編だが、押さえとして上質の感がある。

時々登場する町の物知り、片桐もいい味で、とても読みやすい。

読書

34作目 「制服捜査」★4

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「女彫刻家」 ミネット・ウォルタ-ズ 成川裕子◆訳 東京創元社

2011-03-16 | 読書

1994年 MWA最優秀長編賞作

図書館で予約していあったのが来て、借りてきた。読み終わってから、時間があったので、ほかに何かないかと側の積読の山を捜したら、また買った本の中から同じ文庫が出てきた。図書館の重い単行本を支えて読んだけれど、以前読んだことなどは全く覚えてなかったので、とても面白かった。まぁいいか。 続いて「氷の家」を読んでみようと思う。

「鉄の枷」も本棚にあったが、全く覚えていない、再読してもいいが、こんなに忘れるとは困ったことだ。

 

フリーライターのロザリンド(ロズ)・リーはエージェントから、売れそうな本を書かないと契約を切ることになる、と言われた。

気に入らない仕事だったが、与えられた課題の「彫刻家」と呼ばれる囚人に面会に行く。

28歳になった囚人(オリ-ヴ・マーチン)は、異常に肥満した身体を大儀そうに面会室に運んできた。彼女の落ち着きと物腰と彼女の犯した異常な犯罪はロズに恐怖感さえ与えるほどのものだった

p>彼女は6年前に母親と妹を殺し、死体を切り刻んでまたもとの形に並べ変えるという異常な形の罪を犯したが、なぜか裁判では上告せず、精神分析も受けず、終身刑で服役中だった。

彼女はそれまで面会者を拒み続けていたが、なぜかロズには会う。

そしてロズは、彼女の異常な体形と緩慢な動作の中に、明晰な頭脳を感じ、現状をはっきりと認識し分析できる能力があるのではないかと思う。

オリーブの妹は恵まれた容姿で回りに可愛がられ、オリーブは彼女の庇護者として、厳しい母の教育から守ってきた。外では可愛がられ家に帰れば狂ったように我侭であった妹を世間から守ってきたことが分かってくる。

また、思いがけないことに、オリーブには妊娠した過去があり子供は中絶されていた。

ロズは、面会の数が増えるにつれ、ますますオリーブの犯罪に疑問を深めていく。

 

 

凄惨な犯罪から始まるこの本も、手強かった。半分読んでも事件の全容と行く先がわからなかった。

まずオリーブは精神異常者か。世間の評判どおり虚言癖があるのか、彼女の話にはどの程度の真実があるのか。

過去の調査に漏れはないのか。第一発見者の警官ハルはオリーブと犯罪を調たうえで彼女を少しは理解しようとしたのか

なぜ父は事件の家に住み続けていたが、わずかな間に死んだのか。

ブーデゥーじみた彼女の行為はオカルティスムに関係するのか

作者の仕掛けは女性らしく多少のロマンスの味付けと、情感豊かな文章、情景描写の巧みさは、過剰に見えても、読みやすい点で許される。

ミステリというジャンルにはこういう作品も入るに違いない。形式通りに出来上がった秀逸なミステリの次には、こういった何かやわらかい作品を読んでもいい。面白い作品で飽きなかった。

読書

33作目 「女彫刻家」 ★4 

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「オックスフォード運河の殺人」 コリン・デクスター 大庭忠雄訳 角川文庫1996年

2011-03-15 | 読書

もう忘れかけていた。クロスワード好きのモース警部。

少し前に「森へつづく道」を読んでいた。たしか最初の部分は新聞投書の騒ぎから始まったと思うのだが、メモしてなかったので分からない。

ヒッチハイク女性が行方不明になる事件でとても面白かった、のだが。大筋は忘れてしまっている。

とにかく、こfれが大昔に読んだかもしれないものがあったとしても記憶では二冊目になる。

 

モース警部は胃を悪くして入院する破目になる。確かに彼は飲みすぎだ。

そこで隣にいてなくなった大佐が出版した本をもらう。入院の退屈さを紛らすのに、読んでみた。

それは1860年にオックスフォード運河で起きた殺人事件の記録だった。

彼は中から不審な点を見つけ出し、退院後にルイスとともに、記録をたどって疑問を解決しようとする。

 

まだ辛うじて各地に記録が残っていたり、墓石の風化も、文字が判別できる状態で、徐々に事件の陰を辿ることができる。

殺された女性(ジョアナ)の育った家を見つけて、ルイスが疑問の部分を決定的に解決する跡を見つける。

読んでいても快哉を叫びたくなる「やった!!」

単なる推理から、手探りで真相に近づいていく。読者は、モースの推理をたどって行くに過ぎないのだが、それでも飽きないとても面白い展開で、一気に読める。

コリン・デクスターのモース・推理スタイルだ。

 

独身のモースをとりまく美人看護婦たちとのやり取り、治療の眼を盗んでルイスの心遣いはやはり酒と本。そして情報。

彼らのさりげない会話から、純真なルイスがモースに無心に従っている様子や、それが当然のように振る舞いなからコンビを組んでいる二人がやはり好ましい。

32作目 「オックスフォード運河の殺人」 ★5

 

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「禁猟区」 乃南アサ 新潮社

2011-03-11 | 読書

乃南さんを読んで肩の凝りをほぐそうと、図書館で見つけてきた。
短編集なので読みやすかった。

警察官の規律違反や犯罪を、隠密裏に調べていく、監察官という部署の人たちの話。
だが警官が犯罪の罠にはまっていく経緯が、少し物悲しく、厳しい規律の中で働く人たちの、哀歓もうかがえる。

「禁猟区」
違法な風俗営業の実態を調べていくうちに、ホストはまった、婦人警官。

「免疫力」
子供の病気が助かった民間薬を、同じ立場の人に知らせ、少しでも役立てばと思った。警官。
声をかけたのがヤクザだった。信じていたヤクザはやはりヤクザな人間だった。

「秋霖」
時効直前まで追い詰めた犯人。刑事の執念が自分の仕掛けた罠に落ちる。

「見つめないで」
管理官の女性に片思いをした、無骨な警官が思いついた作戦は。




あまり周囲から好意をもたれない監察官も、必要な部署である。
しかし、間違えばスパイと呼ばれかねない隠密行動や、内部告発に近い警官狩り。

そこには、犯罪とはいえ、隠された警察官の物語があった。

面白い視点で書かれた小説で、読みやすい上に感情移入も容易。
ありがちだろうと言うストーリーも読ませる腕は確かだ。

あまり目新しい話ではなく、警察小説もいろいろと出すぎた感がある。

乃南アサさんは音道シリ-ズが面白い。★3

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 「雨に祈りを」 デニス・レヘイン 鎌田三平訳 角川文庫

2011-03-06 | 読書

「ミスティック・リバー」 映画「ゴーン・ベイビー・ゴーン」の原作を書いた人に、こんなシリーズがあると知らなかった、シリーズ最新作。

悪人にもいろいろある、犯人には悲惨な生い立ちという過去があり。衝動殺人とか、計画殺人とか、その他百の話には百の犯罪を犯す。悪は不幸のようにいろいろな形がある。

しかしこのように、悪を愉しみ、じわじわと苦しめて目的を達しようとする、こういう残酷な呵責のない悪はだれにとっても耐えられるものではない。
その上最後までその全体が確定できない。読者までわなにはまってしまう。
暗い話だが構成が面白かった。


パトリックの事務所に穢れのない清純な女が相談に来た。彼女は別れた相棒のアンジーの紹介だった。
彼は一肌脱いで解決をする。が、暫くして彼女は全裸で飛び降り自殺をしてしまった。
死ぬまでの彼女の暮らしに疑問があった。、裕福な両親、兄弟もいた。しかし自殺直前は売春をし麻薬におぼれて自分を見失っていた。引き金になったのは婚約者の突然の事故で、彼は植物状態になってしまっていた。

パトリックは、彼女を襲った絶え間ない悪運の背後に、執拗な悪意を感じる。

彼は、また、アンジーと爆弾と銃を持たせれば怪物になるブッパの協力を得て、背後の人物を追い詰める。
ブッパと言う憎めないキャラが可愛い恋をするのはちょっといい。


金のために張り巡らした複雑なワナ。パトリックの前に、ちらちらと姿を現す犯人の影。
まさに命がけの戦いが壮絶。犯人像も二転三転。

レヘインの文もますますこなれて絶妙なフレーズは立ち止まって読み返してしまう、彼のこの作品ははまさに一流。

面白かった。★5

31作目 「雨に祈りを」

32作目 「球体の蛇」道夫秀介
     最近何かと話題が多いので読んでみた。
     デビューして5作目という。
     これはミステリというより文芸作品に近い。
     青年になっていく成長期(高校生から大学時代)に
     体験した忘れられない出来事。
     それは成人し、子供を持ち 16年たっても解決
     できない大きな悲しみの塊になっている。
     雪のドームの風景のように。
     最後の1ページは蛇足のように思う。
     題名もインパクトが強すぎる。
     そういった話ではあるが。
     ★4

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「5番目の女」上下 ヘニング・マンケル 柳沢由美子訳 創元推理文庫

2011-03-01 | 読書



ただ、比べるほどほかの本を読んでいないので、言い切るのは不安だけれど。

幸い、やっと二作読んで警察の人たちを覚えた、スェーデンは日本より少し寒いらしい。イースタという港町に親しみも沸いてきた。

「五番目」と言うのがこじつけでなく意味がある。
始まりは凄惨で、舞台になるスウェーデンから遠くアルジェリアで起こった。4人の尼僧殺し、そしてそこには5番目の女がいた。

それから23年後に連続して起きる殺人犯罪。それは、イースタ警察の刑事にとっては思いも及ばないほど、猟奇的で計画的なものだった。

まず、引退しているが自転車販売で財を成した男が自宅裏の濠で竹で串刺しにされて殺される。
続いて花屋の男が姿を消し3週間後に森の中で痩せ衰えて発見される、彼は木に縛り付けられた上で絞殺されていた。
次に、湖で袋にいらられた男が溺れ死んだのが発見された。

どれも男性か複数犯だろうと思われ、ヴァランダー刑事は、捜査が混乱した中で、将来の見通しがつかず、手がかりも動機もわからずに苦しんでいた。

秋の初めの9月は、冷たい雨の多い季節だった、連続犯罪に市民の中から自警団を作るものが現れ、過激な行動はマスコミにとっても警察批判の的になり警察内部でも次第に焦りが出てくる。

犯人の女性は、完璧に進んでいく殺人に自信を持っていた。
だが、姿を見られ、少しずつ捜査の手が近づいてくるのを感じ始める。

ヴァランダーという刑事は、あまり格好がよくない。
見かけは二前目らしいが、捜査方法ではいつもおろおろと悩んでいる。
反面、警官としては鋭い指揮官ではあるが、いつも何かしら間違ってはいないか恐怖まで感じている。
父の事を悔やみ、早く事件が解決して恋人と一戸建ての家にすみ黒い犬を飼いたいと思っている。
事件で疲れた頭を、そんな風に想像することで慰めている。
捜査官としては、周りに信頼され、手がかりをつなぐヒントを見つけるのも早い。
だが人間的な弱いところをいつも引きずっている。面白い。

今回も、「目くらましの道」のように最初から犯人がわかる仕組みになっている。
その夏の事件から半年後にこれは起きている。

イースタ署の警官は、非常に優秀で粘り強い。手ががりを求めて飛行機や電車や車で動き回り、なじみの薄いスェーデンという国を案内してくれる

読み始めは、人の名前か、土地の呼び名かが頭に入らず、名前も苗字のところでとまるようなこともあった。北欧の言葉は難しいのだろう。

日本語は三大難解言語だそうだけれど、その中のアラビア語や中国語よりスゥーデン語はやさしいのだろうか、名前だけでもこんなに覚えにくいのに。面白い本を読ませてもらって、岩手出身の訳者にお礼を言いたい(笑)
ほかの国の言葉と比べることはできないが。
読書

29作目 「5番目の女」ヘニング・マンケル ★5

30作目 「傷痕の街」生島次郎 ’90 文庫復刊

     ハードボイルドの基礎と言う本を読んでみた。最近本を読んでもミステリかハードボイルドか、
     いったいどんなジャンルなのかわからなくなってしまった。
     分からなくても面白ければいいいのだけど、一度は考えてみてもいいかなと思って。
     先駆だと言うこの本の背景は、昭和36年。文章の言葉になんだか少し郷愁を覚える部分
     がある。    
     ストーリーは300ページに満たないが面白かった。
     戦後復興途中の横浜も、山下公園も、そうだったのかと思いながら楽しんだ。筆者は30そこそこ
     なのにさすがに完成されている、ただ筆に若さも感じた。

     解説で仲秀宏さんは
     ハードボイルドの要件を

     1.深い現実認識
     2.状況と向き合おうとする意思
     3.探偵(ヒーロー)の内実の普遍性 
      
     としている。★3.5

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