うどん 熊五郎のブログ

日替わりメニューの紹介や店での出来事など徒然なるままにつづりたいと思います。

連載65

2012年11月19日 | 学習室
熊五郎と12名の仲間達

 その年の高校入試も終わり一息つける時期に思わぬプレゼントを貰った。結婚した娘夫婦が銀婚式の記念にと伊豆一泊旅行をプレゼントしてくれたのである。伊豆と言えば新婚旅行で行った思い出の地でもある。プランも総て娘夫婦が立て、熊五郎達はプランに従って楽しめばよいことになっていた。しかも当日の夕食には娘夫婦からの特別料理も出され、ご満悦の二人であった。しかし、好事魔多しとはよく言ったものである。二十数年ぶりに新婚旅行の地を踏み、楽しかった伊豆の旅も終わり帰路についた。ところが下田駅に着いてみると構内は人であふれている。何事かと思い駅員に尋ねると東北地方で起こった地震の影響でダイヤが大幅に乱れて見通しが立たないとのこと。プランニングされた列車ではいつ帰れるか解らない状態になってしまったのである。仕方なく、乗れる列車で帰ることになった。娘に知らせたくても電話が通じない。業を煮やした妻は
「ねえ、貴方。メールなら大丈夫でしょう。送ってやって。きっと心配してるだろうから。」
「そうだな。メールなら届くだろう。」
そういいながらやっと覚えたばかりのメールを不器用に打ち始めた。たった五行程度の文面なのだが要領がつかめないで悪戦苦闘している。それを見て
「全く。貴方ったらメール打つのが遅いんだから。」
「だったら自分でやれば。」
多少険悪ムードが漂う中、妻はさらりと言ってのけた。
「私、メールの仕方知らないもの。」
一事が万事こんな夫婦関係なのである。二時間程で列車はやっと都内に入った。
「もう大丈夫だろう。電話掛けてくる。」
そういって熊五郎は席を立って連絡通路で携帯電話を取り出した。しかし、いくら自宅に掛けても
「ただいま、電話が大変混み合っております。恐れ入りますが後ほどお掛け直し下さい。」
と言うメッセージが流れてくるだけである。諦めて熊五郎は自席に戻り
「駄目だったよ。いくら掛けても通じない。」
「そうなの。仕方ないわね。また後で掛ければいいじゃない。」
十五分程経って掛け直してみたが同じである。
「やっぱり駄目だ。『ただいま、電話が大変混み合っております。恐れ入りますが後ほどお掛け直して下さい。』って聞こえるだけだった。」
すると妻から思いもかけない言葉が飛びだした。
「誰が言ってるのよ、そんなこと。」
「??????????」
「ねえ、誰?」
「誰って言っても解んねえよ。」
「だって聞いたんでしょ。」
「聞いたって言っても相手解んねえよ。NTTから流れてくるんだから。」
「何で? 相手の人、名を名乗ってくれないの?」
妻は状況把握が出来ないらしい。
「名乗ってくれないって言っても当たり前だろう。テープが返事する訳ねえよ。」
二人の会話を聞いている斜め前のご婦人は笑いをこらえている。こんな珍道中はいつものことである。それでも七時過ぎには娘と連絡が取れ、無事帰宅することが出来た。136
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