保険を利用した節税スキームについての私の考え

2017年07月03日 | 相続税
主に野々市・金沢・白山で活動している「かわした税理士」のブログへようこそ!


保険を利用した節税スキームがあります。

これに対する私を考えをまとめました。


そのスキームとは、

親A→(現金暦年贈与)→子B→(保険料支払い)→C保険会社

保険契約は、契約者:子B、被保険者:親A、保険受取人:子B、というのが一般的でしょう。

これにより、

1.生前に財産が移転でき、親Aの相続時の相続税の節税になる。

2.親Aが相続の時、受け取った保険金を所得税一時所得という優遇された税額計算が可能。

というメリットがあります。

現金暦年贈与を110万円以内におさえれば、贈与税もかからずに済みます。


しかし、やり方によっては税務当局から否認される可能性があります。

イ.「親A→子B→C保険」が否認され、実質「親A→C保険」とされるケース。

実質保険料負担者が親A、生前贈与自体が否認され、保険金は相続税の対象となってしまいます。

ロ.「親A→子B」の暦年贈与が否認され、最初の年に「連年贈与(定期贈与)」があったとされるケース。

例えば、年間110万円の贈与で10年間であれば、最初の年に1100万円をもらう権利の贈与があったとされます。


このようなスキームに対して、昭和58年9月に国税庁長官が各国税局長あてに発信した事務連絡があります。

長文なので最後に記載しておきます。


「この事務連絡があるから、もう大丈夫。」と思ったら大間違いです。

最後の記載にあるとおり「贈与事実の心証がえられたものは、これを認めることとする。」とあります。

つまり、贈与事実の心証がえられないものは、上記イ・ロとされる可能性があります。


「贈与事実の心証」・・・きわめてグレーな言い回しです。

税務当局の解釈によって、どのように判断されてもおかしくありません。

実際、この事務連絡が出た後にも、国税不服審判所において是認・否認の両方の裁決が発生しているようです。


言えることは、この事務連絡は決してこのスキームの「無条件な免罪符」ではないということです。


「贈与事実の心証」えらるようにしないといけないのはもちろんですが、

この事務連絡は昭和58年という30年以上前のもので、今の時代に相応しくないとされる可能性もあります。

そして、あくまで事務連絡であり、法律ではないのです。


このスキームには慎重の上に慎重を期する必要があると思います。


最後に、この考えは私独自の見解です。

それぞれの立場でそれぞれの見解があると思います。

ご了承お願い致します。



===以下 昭和58年9月事務連絡===

国税庁の事務連絡(昭和58年9月)
(1)被相続人の死亡又は生命保険契約の満期により保険金等を取得した場合若しくは保険事故は発生していないが保険料の負担者が死亡した場合において、当該生命保険又は当該生命保険に関する権利の課税に当たっては、それぞれの保険料の負担者からそれらを相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして、相続税又は贈与税を課税することとしている。
(注) 生命保険金を受け取った者が保険料を負担している場合には、所得税(一時所得又は雑所得)が課税される。
(2) 生命保険契約の締結に当たっては、生計を維持している父親等が契約者となり被保険者は父親等、受取人は子供等として、その保険料の支払いは父親等が負担しているというのが通例である。
このような場合には、保険料の支払いについて、父親等と子供達との間に贈与関係は生じないとして、相続税法の規定に基づき、保険事故発生時を課税時期としてとらえ、保険金を受け取った子供等に対して相続税又は贈与税を課税することとしている。
(3)ところが、最近、保険料支払い能力のない子供等を契約者及び受取人として生命保険契約を父親等が締結し、その支払保険料については、父親等が子供等に現金を贈与し、その現金を保険料の支払いに充てるという事例が見受けられるようになった。
(4)この場合の支払保険料の負担者の判定については、過去の保険料の支払資金は父親等から贈与を受けた現金を充てていた旨、子供等(納税者)から主張があった場合は、事実関係を検討の上、例えば、①毎年の贈与契約書、②過去の贈与税の申告書、③所得税の確定申告等における生命保険料控除の状況、④その他贈与の事実が認定できるものなどから贈与事実の心証が得られたものは、これを認めることとする。

=== 以上 ===