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乃木坂46「気づいたら片想い」初動45万8千枚を読む(1) ~ SKE48ファン参入の可能性と「コップの中の嵐」

2014-04-16 17:30:00 | 芸能
4月2日(水)に発売された8枚目シングル「気づいたら片想い」のオリコン初動は45万8千枚で、前作「バレッタ」を6万3千枚も上回るCDセールスとなりました。

乃木坂の風 30Mar14 ~「気づいたら片想い」個別第7次後分析、初動予想は40万8千枚も前作割れの危険あり』で書いたように、初動を40万8千枚と予想していたので、5万枚も低く見積もっていたことになります。

予想が外れることには慣れてますが(笑)、では乃木坂のCDセールスに一体何が起こって、枚数を読み切れなかったのか、その辺を分析したいと思います。


右肩上がりを続ける乃木坂46のオリコン売り上げと個別握手会人気

まずは、乃木坂の歴代シングルについて、初動売り上げの推移を見てみましょう。

(表1) 乃木坂46のシングルCDに関する、発売第1週のオリコン調べ売り上げ枚数、いわゆる「初動」の推移

凡例
シングル番号 : 初動枚数 (発売第1週のオリコン順位, 現在の累計枚数) 発売日「タイトル」

1枚目 : 13.6万枚 (2位, 21.3万枚) 2012/02/22「ぐるぐるカーテン」
2枚目 : 15.6万枚 (1位, 22.4万枚) 2012/05/02「おいでシャンプー」
3枚目 : 18.7万枚 (1位, 24.4万枚) 2012/08/22「走れ!Bicycle」
4枚目 : 23.3万枚 (1位, 31.0万枚) 2012/12/19「制服のマネキン」
5枚目 : 24.2万枚 (1位, 31.1万枚) 2013/03/13「君の名は希望」
6枚目 : 33.7万枚 (1位, 45.7万枚) 2013/07/03「ガールズルール」
7枚目 : 39.5万枚 (1位, 51.3万枚) 2013/11/27「バレッタ」
8枚目 : 45.8万枚 (1位, 48.3万枚) 2014/04/02「気づいたら片想い」

今回のシングルも含めて、乃木坂46は、これまで一度も、オリコン初動が前作を下回ったことがなく、累計でも、発売後ある程度時間が経過した時点で比較して、前作割れを起こしているケースはないと思います。

オリコン調べの売り上げ枚数が、デビュー以来、ずっと右肩上がりであることは、乃木坂46がトップアイドルであり、AKB48式アイドルの中で、もっとも好調なグループと見なされる根拠になっています。

しかし、オリコンのCDセールスを、初回限定盤などの一般流通CDの売り上げと、個別握手会券が付いた特定流通CDの売り上げに分割してみると、少し違った景色が見えてきます。

(表2) 一般流通CD特定流通CDの売り上げ推移

凡例
シングル番号 : サウンドスキャン第1週売り上げ枚数 [初動(SS/OC)比] 初動(OC-SS)差「タイトル」

# 「サウンドスキャン第1週売り上げ枚数」は、全タイプの一般流通CDについて合計したもの。
TOP20に初回限定盤しかランクインしていないときは、それらの合計枚数の4%を通常盤売り上げ、4.5%をアニメ盤売り上げと推測して、全タイプの合計を求めている
#「SS」はサウンドスキャン、「OC」はオリコン
# 初動(SS/OC)比は、サウンドスキャン第1週をオリコン初動で割ったもの。数値が小さいほど、CDセールスの個別握手会依存が高いことを示す
# 初動(OC-SS)差は、オリコン初動からサウンドスキャン第1週を引いたもの。店頭販売していない「特定流通」CDの売り上げ枚数に等しく、多くの場合、個別握手会によるCDセールスと見なすことが出来る

1枚目 : 8.3万枚 [61.2%] 5.3万枚「ぐるぐるカーテン」
2枚目 : 7.3万枚 [47.2%] 8.2万枚「おいでシャンプー」
3枚目 : 6.1万枚 [32.6%] 12.6万枚「走れ!Bicycle」
4枚目 : 6.6万枚 [28.3%] 16.7万枚「制服のマネキン」
5枚目 : 7.2万枚 [29.6%] 17.0万枚「君の名は希望」
6枚目 : 9.7万枚 [28.9%] 24.0万枚「ガールズルール」
7枚目 : 9.0万枚 [22.8%] 30.5万枚「バレッタ」
8枚目 : 11.8万枚 [25.7%] 34.0万枚「気づいたら片想い」

「気づいたら片想い」の前作「バレッタ」からの伸び
一般流通CD分 => +2.7万枚
特定流通CD分 => +3.5万枚
合計 +6.3万枚

上表の数字についてちょっと説明しておきます。

サウンドスキャンは、毎週、20位以内にランクインしたCDを、タイプを分ける形で売り上げ枚数と共に載せています。

乃木坂のシングルは、発売第1週において、3タイプの初回限定盤だけがランクインして、売り上げ枚数が判明するのだけど、通常盤やアニメ盤など、それ以外の一般流通CDの売り上げは分からないというケースがほとんどです。

そのため、これまでは3タイプ初回限定盤の売り上げ枚数を合計した数字を、一般流通CDのセールスに「ほぼ等しい」として話を進めてきました。

しかし、「気づいたら片想い」では、通常盤もランクインして、第1週売り上げが4千5百枚であることが判明していて、11.8万枚という数字は、一般流通CDの正確なセールスと言えます。

一方、前作「バレッタ」では、通常盤とアニメ盤が出されましたが、両者ともランクインしなかったため、初回限定盤の売り上げだけを合計した8万3千枚を、一般流通CDの第1週セールスとして扱ってきました。

しかし、今作11.8万枚から前作8.3万枚を引いて、一般流通CDの変動を求めると、通常盤が入った今作の数字から、通常盤とアニメ盤の入っていない前作を引くことになり、誤差が大きくなります。

そこで、上表では、初回限定盤の売り上げ合計枚数から、通常盤やアニメ盤の売り上げ枚数を推測して足し、一般流通CDセールスを求めていて、これまで載せてきた数字とは、少し違っています。

通常盤に関しては、「気づいたら片想い」のケースから、初回限定盤合計の4%としました。

また、日経トレンディのある記事に、「バレッタ」の一般流通CDセールスは9.0万枚と書かれており、おそらくメディア側がサウンドスキャンから得た情報だと思われるので、通常盤とアニメ盤の合計は7千枚となり、通常盤とアニメ盤のセールスは、初回限定盤合計の8.5%であることが分かります。

これらの比率をもとに、(表2)では、乃木坂46の歴代シングルについて、一般流通CDのセールスを求め、さらに、オリコン枚数からそれを引いて、特定流通CDのセールスを出しています。


乃木坂46のCDセールス、実は、右肩上がりであるのは、特定流通CDのセールスだけで、初回限定盤などの一般流通CDのセールスは、シングルごとに、上がったり下がったりしています。

つまり、乃木坂のオリコン売り上げが、順調に伸びてきたのは、個別握手会での売り上げが、常に前作を上回ってきたことが原動力ということになります。

そして、「気づいたら片想い」でも、個別によるCDセールスは、前作「バレッタ」から3万5千枚ほど伸びています。

さらに、一般流通CDの売り上げも2万7千枚伸び、これらを併せて、オリコンの数字が6万3千枚、前作を上回ったわけです。

この結果、個別握手会への依存度を表す初動(SS/OC)比は、26%程度まで回復して、まだ高い水準とは言えませんが、前作に比べると外向きのCDセールスという雰囲気が出てきました。


実際、ダウンロード数は、iTunes Storeのランキングにおいて、発売翌日4月3日(木)深夜の時点で、「気づいたら片想い」が7位、「ロマンスのスタート」が30位にランクイン。

しかも、シングル収録全6曲がすべて200位以内に入っていて、発売第1週のランキングには勢いがありました。

ちょうど1週間後の4月10日(木)深夜では、「気づいたら片想い」が30位、「ロマンスのスタート」が172位とダウンして、ランクインはこの2曲だけでした。

しかし、11日(金)に「ミュージックステーション」に初出演したことで、再び盛り返したのだと思います、4月14日(月)夜の時点で、「気づいたら片想い」は15位、「気づいたら片想い with 松井玲奈ver.」が36位に入っています。

一方、有線ランキングは、発売1週前に「気づいたら片想い」が102位に登場、「ガールズルール」以来、ほぼ10ヶ月ぶりのランクインとなりました。

そして、次の発売1週目で63位に浮上。

乃木坂のシングル表題曲では、現在のところ、歴代3位の最高順位です。

今回、表題曲のCMタイアップはないものの、乃木坂がMステ初出演を果たすなど、運営も一般知名度の向上には力を入れているようで、有線ランキングも、さらに上がって、歴代最高を更新する可能性があります。

ダウンロードにしても、有線にしても、新曲キャンペーンにお金と労力を掛ければ、少なくとも短期間はランキングが上がって、好成績を残すことが出来るはずで、基本、資金力と「やる気」の問題だと思います。

そして、「バレッタ」に比べると、「気づいたら片想い」は、遥かに、運営の「やる気」を感じさせます。

まあ、「バレッタ」の有線ランキングは完全圏外だったので、前作を越えなければ話にならないんですが(笑)。

一方、前作との相対評価ではなく、絶対評価となると、「気づいたら片想い」が一般層に受けているという雰囲気になるには、ある程度長期間、せめて数週間は上位に留まることが必要で、これは「やる気」だけでは難しいですが、今のところ、ダウンロードに関しては、順位が上がっても落ちが速く、そういうヒット感は出ていません。

また、有線はランクイン2週目なので、これからの動向次第というところです。

しかし、とにかくランキングに名前が載らなければ、話が始まらないし、載ればそれ自体が楽曲とグループの宣伝になるので、まずは順調な展開と言っていいんじゃないでしょうか。


さて、話をCDセールスに戻して、「気づいたら片想い」の一般流通CDと特定流通CDの伸びである2万7千枚と3万5千万枚は、どのように達成されたのか考えてみます。

まずは、一般流通CDのセールスから。

「気づいたら片想い」一般流通CDの売り上げアップは過去最高のレベル

店頭で購入出来る一般流通CDは、その売り上げ枚数やランキングが、ダイレクトに楽曲や歌手の人気を反映するというイメージが流布していますが、これはやや誤解を含んでいると思います。

AKB48グループと乃木坂46では、一般流通CDにも様々な特典が付いており、とくに初回限定盤に入っている全国握手会参加券は、ファンにとって重要な意味を持っています。

全国握手会は、個別握手会と違って、一つのレーンに複数のメンバーがいて、次々と流れるように握手していくシステムで、話せる時間は短いですが、間違いなく握手会です。

また、全国握手会では、ミニライブが行われることが多く、参加券を持っていれば観覧することが出来て、これも全国握手会の人気を高めています。

もちろん、参加券の枚数が多ければ、何度も握手が可能で、違うレーンに行って別のメンバーに会うのも良し、同じレーンをループするも良し、より多くの握手を楽しむことが出来ます。

そのため、全国握手会券を目当てに初回限定盤を一人で何枚も買うファンは少なくない筈で、こういった特典サービスを目的とする購買行動が、一般流通CDのセールスを大きく押し上げているのは間違いないと思います。


ただ、全国握手会は、個別握手会ほど、ファンとメンバーの関係性が濃くないので、コアファンは購入枚数を調整しやすく、新規ファンは入っていきやすく、結果として、個別による売り上げに比べて、さまざまな因子によって、左右される傾向があります。

全国握手会が、どの会場で、どういう日程で開催され、どういう内容なのかが一番大きな因子だと思われますが、それ以外にも、収録されている楽曲やMVの出来はどうか、どの程度広告宣伝を仕掛けたか、グループに何か注目を集めるような出来事が起こったか、などなど、一般流通CDの売り上げに影響を与えるだろう因子は多岐に渡ります。

このように、全国握手会の人気以外に、楽曲やグループへの関心度なども絡んでくる余地があるため、一般流通CDの売り上げが良好なヒット指標であるという印象を、多くの人に与えるのかもしれません。

しかし、AKB48グループや乃木坂46の場合、一般流通CDであっても、売り上げ動向の大半は、特典の内容で決まっていると考えられます。

そこで、乃木坂46の歴代シングルについて、一般流通CDの第1週売り上げと特典の中味を見てみましょう。

(表3) 一般流通CDの第1週売り上げ推移と初回限定盤などに付けられた特典サービスの内容

凡例
シングル番号「タイトル」
SS第1週の売り上げ枚数(前作のSS第1週と比べた伸び分)
特典サービス内容

#「SS」はサウンドスキャン
# SS第1週売り上げは、全タイプの一般流通CDについて合計したもの。
TOP20に初回限定盤しかランクインしていないときは、それらの合計枚数の4%を通常盤売り上げ、4.5%をアニメ盤売り上げとして推測して、全タイプの合計を求めている
# (括弧)内の数字は、前作を下回っていれば赤色で表示
#「全国」「全国ミニ」はそれぞれ「全国握手会」「全国ミニ握手会」
#「抽選」は、CD購入後に応募抽選で、個別握手会のように抽選後購入とは本質的に異なるシステムという意味

1枚目「ぐるぐるカーテン」
8.3万枚
全国3日(関東{東京1}名古屋1大阪1)
全国ミニ4日

2枚目「おいでシャンプー」
7.3万枚 (前作から-1.0万枚)
全国3日(関東{東京1}名古屋1大阪1)
全国ミニ5日

3枚目「走れ!Bicycle」
6.1万枚 (前作から-1.3万枚)
全国2日(関東{幕張1}名古屋1)
抽選「似顔絵会」1日

4枚目「制服のマネキン」
6.6万枚 (前作から+0.5万枚)
全国2日(関東{幕張1}京都1)

5枚目「君の名は希望」
7.2万枚 (前作から+0.6万枚)
全国3日(関東{幕張1}名古屋1京都1)
抽選「録音会」1日

6枚目「ガールズルール」
9.7万枚 (前作から+2.6万枚)
全国3日(関東{幕張1}名古屋1京都1)
抽選「お茶会」1日

7枚目「バレッタ」
9.0万枚 (前作から-0.7万枚)
全国3日(関東{横浜1}名古屋1京都1)
抽選「お茶会」1日

8枚目「気づいたら片想い」
11.8万枚 (前作から+2.7万枚)
全国3日(関東{幕張1}名古屋1京都1)
抽選「お茶会」1日
抽選アンダーライブ2日
@05/03渋谷3公演 (応募締切04/07、招待人数1000人*3公演)
締切は4/10に「04/16」へと変更され「2次応募」が開始
@05/17名古屋1公演 (応募締切04/18、招待人数5000人)
二期生ミニトーク&ミニ握手会3日(のべ6会場)

デビューシングル「ぐるぐるカーテン」で8万3千枚を記録した後、一般流通CDの売り上げは、2枚目「おいでシャンプー」、3枚目「走れ!Bicycle」と進むにつれ落ちていきます。

「AKB48の公式ライバル」という触れ込みで注目を集めたものの、CDデビューから日が経つにつれて、徐々に乃木坂への関心が薄れて、それが一般流通CDの売り上げを下げていった可能性があります。

それでも、新人グループが6万枚を越えるセールスを出せたのは、全国握手会というイベントを、初回限定盤に特典として付けたからだと思います。

落ち込み続けたCDセールスは、4枚目「制服のマネキン」で初めて反発します。

5枚目「君の名は希望」では、関東、名古屋、京都での全3日の全国握手会に、「録音会」や「お茶会」などの抽選応募形式によるスペシャルイベントが加わった、現在のパターンが完成。

そして、6枚目「ガールズルール」で、前作を2万6千枚上回る、大きなセールス増が起こります。

考えられる原因ですが、やはり、センターが生駒里奈から白石麻衣に変わったことで、乃木坂46に再び注目が集まり、AKB48グループのファンで乃木坂に関心を寄せる人が出てきて、シングルCDを買ってくれたんじゃないでしょうか。

実際、幕張メッセで行われた「ガールズルール」の全国握手会は大盛況だったそうで、ファンの人数そのものが増えた可能性が高いです。

このように、4枚目「制服のマネキン」、5枚目「君の名は希望」、6枚目「ガールズルール」と、連続して前作を上回り、良い流れになってきたのですが(笑)、7枚目「バレッタ」では、7千枚ダウンの前作割れとなってしまいます。

7th選抜において、個別握手会の売り上げに従って選抜メンバーを決める「握手会主義」が明確に打ち出され、「バレッタ」では、コアファンが「推し」の立場を良くするために、資金を個別握手会に集中させた節があって、その影響で初回限定盤のセールスが鈍った気がします。

5枚目「君の名は希望」から7枚目「バレッタ」の3作は、初回限定盤の特典がほぼ同じなので、一般流通CDの売り上げ変動は、センター交代や握手会主義の徹底など、特典イベント以外に、その原因を求めることになります。


8枚目「気づいたら片想い」では、前作「バレッタ」から2万7千枚もセールスがアップして、「ガールズルール」での2万6千枚と並んで、歴代最高の売り上げ増となりました。

特典をみると、3日間の全国握手会と抽選応募の「お茶会」に加えて、抽選応募のアンダーダライブと二期生のトークショー&ミニ握手会が付いて、大幅に項目が増えました。

ただ、3日間6会場で行われた二期生イベントは、1会場に500人集まったとしても、全部でのべ3千人ほどなので、2万7千枚のセールス増を説明するには十分ではありません。

一方、アンダーライブは2日間4公演が予定されていて、全公演で定員に達すれば、のべ8千人となります。

抽選申し込みには最低3枚の初回限定盤を買う必要があるので、2万4千枚以上のセールスが見込めて、今回のセールス増を説明するには十分な枚数と言えます。

しかし、アンダーメンバーが公式ブログに書いているように、ライブ定員には「まだまだ余裕がある」ようで、運営が急遽、締め切り日を延長したことから、応募数はかなり少ないと考えるのが妥当で、セールスを2万7千枚も押し上げたとは、ちょっと思えません。


申し込む人が少数だったのは、アンダーの魅力やライブの価値がどうこうという問題ではなく、5千円近くする全国握手会券3枚が露と消える可能性のある抽選応募というやり方が、消費者にとってあまりにも不利なので、手を出す人がなかなか出てこないのだと思います。

実際、SKE48も、初回限定盤の特典に、全国各地を巡る6日間のZeppライブを抽選応募形式で付けていますが、かえって売り上げは前作より下がっています。

まあ、当たり前です。

本来ならチケットを発行するべきなんですが、せめて応募期間中に、その時点での抽選倍率を知らせるくらいしないと、人を集めるのは難しいでしょう。

たちが悪い上に、効果もない、こういう商売を平気でやろうとする今の運営を見ていると、乃木坂メンバーの今後が心配になってきます。


乃木坂ファンが個別握手会から全国握手会へ戻った可能性

さて、特典サービスの効果では説明がつかないとなると、「バレッタ」一般流通CDのセール増は、何によって引き起こされたのでしょう。

二つほど可能性があると考えています。

一つは、乃木坂のコアファンが、個別握手会では、本当に握手したい分だけCDを買って、残りを初回限定盤に振り向けた可能性です。

前作「バレッタ」では、「推し」の個別売り上げを少しでも伸ばそうと、実際の握手とは関係なく、大量にCDを購入したファンが多かった気がします。

しかし、「気づいたら片想い」の8th選抜では、1列目2列目のほとんどを、担当28部以上の常連メンバーが占め、担当部数の少ないメンバーは、個別の売り上げを伸ばしても、なかなか選抜入り出来ないことが明らかになった。

そのため、コアファンが、「推し」の完売部数を積み上げるために、CDを買うという発想をしなくなり、現実の握手だけを考えた枚数を買って、余裕が出来た分を、全国握手会に振り向けた。

そういう可能性です。


「気づいたら片想い」個別握手会第9次終了後の完売状況から、シミュレーションによって各メンバーの売り上げ枚数を計算して、順位を付けると、[1] 白石麻衣、西野七瀬、松村沙友理、秋元真夏、[5] 橋本奈々未、深川麻衣、[7] 桜井玲香、[8] 若月佑美、[9] 衛藤美彩、[10] 生田絵梨花の10人がトップに入っています。

この10人は、他のメンバーと比べて個別握手会人気が突出していて、乃木坂の握手会スターと言っていいでしょう。

乃木坂46を、トップ10メンバーと、それ以外の1期メンバー、さらに2期メンバーの三つに分けると、各グループの個別握手会での成績は以下のようになります。

(表4) 乃木坂46を三つのグループに分けたときの、各グループの個別握手会での売り上げ比率

凡例
シングル番号個別第9次終了後「タイトル」
そのグループの推定売り上げ枚数の総売り上げ枚数に対する比(推定売り上げ枚数)、完売部数の総完売部数に対する比、担当部数の総担当部数に対する比、人数の総人数に対する比:グループ名

# 売り上げ枚数、完売部数、担当部数は、すべて個別握手会における成績
# 各グループの売り上げ枚数は、シミュレーション計算によって求めた
# 比率はすべて%表示で、小数点以下1桁を四捨五入したもの
# 枚数は万枚単位で、小数点以下2桁目を四捨五入したもの
#「1期10」は、白石麻衣、西野七瀬、松村沙友理、秋元真夏、橋本奈々未、深川麻衣、桜井玲香、若月佑美、衛藤美彩、生田絵梨花の10人のグループ
#「1期10以外」は、1期メンバーでかつ「1期10」ではない人のグループ
#「2期」は二期生で、選抜、アンダー入りしているメンバーも含んだグループ

7枚目個別第9次終了後「バレッタ」
枚数49%(19.4万枚)、完売部数69%、担当部数43%、人数24%:1期10
枚数37%(14.6万枚)、完売部数24%、担当部数40%、人数48%:1期10以外
枚数14%(05.6万枚)、完売部数07%、担当部数17%、人数29%:2期

8枚目個別第9次終了後「気づいたら片想い」
枚数57%(19.5万枚)、完売部数88%、担当部数39%、人数23%:1期10
枚数32%(11.0万枚)、完売部数10%、担当部数43%、人数47%:1期10以外
枚数12%(04.1万枚)、完売部数02%、担当部数18%、人数30%:2期

「バレッタ」第9次後では、総売り上げ枚数の49%をトップ10が、37%をそれ以外の1期が担っていて、前者は後者の1.3倍ほどの売り上げを出していました。

一方、「気づいたら片想い」第9次後では、総売り上げ枚数の57%をトップ10が、32%をそれ以外の1期が担っており、前者と後者の比は1.8倍に達しています。

人数的には、トップ10はそれ以外の1期の半分しかいないので、1.3倍でも小さくない差ですが、「気づいたら片想い」第9次後では1.8倍と、さらに顕著に差が開いたことになります。

また、完売部数を比べると、「バレッタ」では、総完売部数の69%をトップ10、24%をそれ以外の1期が出したのに対して、「気づいたら片想い」では、なんと88%と10%となっていて、歴然たる差が見て取れます。

つまり、「バレッタ」個別では、トップ10だけでなく、それ以外の1期もかなり枚数を売り、完売部数も稼いでいて、両者の差は極端に大きくはなかったのだけど、「気づいたら片想い」個別では、完売部数が10倍近くに達するなど、明確な人気格差が発生しています。

ちなみに、9次終了後の個別による推定売り上げ枚数は、トップ10が7枚目19万4千枚、8枚目19万5千枚と、ほぼ変わらないのに対して、トップ10以外の1期は、7枚目14万6千枚、8枚目11万枚と、はっきりと売り上げ枚数を減らしています。

これらのデータから、「バレッタ」で、トップ10以外のメンバーの握手会券をたくさん買っていたファンが、「気づいたら片想い」では、それほど買わなくなり、結果として、安定した人気を誇るトップ10のCDセールス寄与率が大幅に上昇したことが分かります。

「握手会主義」の中、「推し」の立場を有利にしようと、「バレッタ」個別で、熱心にCDを買っていたファンが、「気づいたら片想い」個別では、冷静になって、握手する分だけCDを買う、本来の消費行動に戻ったというシナリオが見えてきます。

そして、個別への出費が抑えられ、余裕が出来た分を、初回限定盤の購入に回すことは十分にあり得るでしょう。

いわば、個別から全国へ、お金の揺り戻しが起こったのかもしれません。

これが「気づいたら片想い」の一般流通CDセールスを押し上げた可能性の一つです。

ところで、(表4)を見ると、総売り上げ枚数に占める二期生の割合は、「バレッタ」14%、「気づいたら片想い」12%とさほど変わらず、一方、推定売り上げ枚数は、7枚目5万6千枚、8枚目4万1千枚とやや下がっています。

これは、二期生の握手会人気がなかなか上がってこないため、低い水準で安定していると見るべきで、早急に二期生のプロモーションを強化しないと、1期内格差に加えて、1期2期格差という問題も同時に深刻化していく可能性が濃厚になってきています。


AKB48グループのファンが初回限定盤CDを買った可能性

もう一つの可能性は、AKB48や「支店」のファンが乃木坂46に興味を持ち、初回限定盤などを買った可能性です。

以下のように、3月中旬から4月初めに掛けての3週間で、AKB48グループの三つの「支店」と乃木坂46が、連続してシングルCDをリリースしました。

(表5) 「支店」と乃木坂46の連続CDリリースと第1週売り上げの前作からの伸び

凡例
発売日「タイトル」グループ名_シングル番号
オリコン初動の前作からの伸び[一般流通CD第1週売り上げの前作からの伸び特定流通CD第1週売り上げの前作からの伸び]

# 枚数は万枚単位で、少数点以下2桁目を四捨五入した数字を示している
# 一般流通CDに関しては、乃木坂46以外のグループでは、サウンドスキャンTOP20にランクインしたものだけを合計した数字を示していて、通常盤枚数の推測加算などは行っていない

2014/03/12(水)「桜、みんなで食べた」HKT48_3枚目
+0.8万枚[-1.2万枚+2.0万枚]

2014/03/19(水)「未来とは?」SKE48_14枚目
-5.1万枚[-2.9万枚-2.2万枚]

2014/03/26(水)「高嶺の林檎」NMB48_9枚目
+3.2万枚[-0.2万枚+3.4万枚]

2014/04/02(水)「気づいたら片想い」乃木坂46_8枚目
+6.3万枚[+2.7万枚+3.5万]

こういったスケジュールは、乃木坂46の新曲発売が、「支店」による新曲ラッシュの延長線上にあり、それぞれのグループのファンに、違うグループのシングルCDを意識させる効果があったと思います。

そのため、「支店」のファンがCD購入計画を立てるとき、「気づいたら片想い」も買おうという気分は、通常よりも強くなった可能性があります。

第1週売り上げの前作からの伸びを見ると、SKE48がオリコン初動を大きく減らしていて、一般流通CDも、特定流通CDも、ともに売り上げが落ちたことが分かります。

これはSKE48のファンがグループを離れつつあることを示唆しています。

次の表は、前作「賛成カワイイ!」と今作「未来とは?」の売り上げ推移と特典サービスを示しています。

(表6) SKE48の前作と今作に関するオリコン累計売り上げとCDに添付された特典の内容

# 「OC」はオリコン
# オリコンの数字は累計枚数を表し、万枚単位で小数点以下2桁目を四捨五入したもの
# 「全国」は全国握手会、「個別」は個別握手会
# 青色は一般流通CDの特典、オレンジ色は特定流通CDの特典であることを示している

13枚目「賛成カワイイ!」2013/11/20(水)発売
OC第1週 : 44.9万枚
OC第2週 : 48.3万枚
OC第3週 : 49.6万枚
OC第4週 : 52.7万枚

全国6日(関東2、名古屋2、岡山1、?1)

個別6日(関東3、名古屋2、大阪1)
発売 = 53日 => 最初の個別 = 35日 => 最終個別(第6回)

14枚目「未来とは?」2014/03/19(水)発売
OC第1週 : 39.8万枚
OC第2週 : 45.4万枚
OC第3週 : 46.1万枚
OC第4週 : 46.6万枚

全国3日(関東1、名古屋1、?1)

抽選Zeppライブ6日(札幌1東京2名古屋1大阪1福岡1)
応募期間 03/18~03/24

個別7日(関東2、名古屋3、大阪2)
発売 = 2日 => 最初の個別 = 71日 => 最終個別(第7回)

「未来とは?」は、発売2週目に入って、売り上げに勢いが出たものの、前作「賛成カワイイ!」には届かず、4週目で、6万枚ほど低いCDセールスになっています。

実は、「未来とは?」の特典サービスには、オリコン初動を上げる仕掛けが見て取れます。

初回限定盤の特典は、前作で6日間だった全国握手会が、3日間に減らされ、その代わり、抽選応募形式の全国Zeppライブツアーが6日間付けられていますが、その応募締め切り日は、シングル発売日のたった5日後に設定されていて、ファンに初回限定盤の早期購入を促す意図が感じられます。

さらに、個別握手会は、「賛成カワイイ!」の場合、発売から53日も経過して最初の個別が行われたのに対して、「未来とは?」では、発売2日後に最初の個別が設定されていて、ファンが早い段階で特定流通CDを買う気持ちになるような日程になっています。

つまり、一般流通CDも特定流通CDも、早期にCDを買わせるような特典サービスを付けて、オリコン初動を上げるべく仕掛けたのに、結局、初動は思うように上がらなかったことになります。

「未来とは?」初回限定盤の特典を、抽選応募形式のライブにせず、「賛成カワイイ!」と同じく、6日間の全国握手会にしていれば、あるいは、一般流通CDの売り上げが維持された可能性もあって、運営の「悪手」で初動を減らした部分があるかもしれません。

しかし、スケジュール的に個別握手会を買い易くしたにも関わらず、特定流通CDの売り上げも下がっているので、やはり、ファンが離れていると考えるのが妥当じゃないでしょうか。


SKE48は、メンバーの卒業が相次いでいる上に、今回の「組閣」で、かなり引っ掻き回されたようで、そういったことが原因で、ファンを減らしているのかもしれません。

実は、この離れたファンが、乃木坂46に流れた可能性があります。

SKE48のファンにとって、乃木坂は、単に新曲発売日が近接していたというだけでなく、松井玲奈が「兼任」メンバーとなったことで、強く意識させられるグループだと思います。

また、「未来とは?」で、全国握手会が3日減らされ、しかも、関東と名古屋が1日づつ削られている。

乃木坂46の全国握手会は、関東と名古屋が1日づつあるので、SKE48のファンが、この際、一度乃木坂を見ておくかという気持ちで、「気づいたら片想い」の初回限定盤を購入しても不思議ではありません。

しかも、松井玲奈の乃木坂デビューが、全国握手会のミニライブで行われるという噂は、早くから流れていて、実際、その通りになったわけですが、SKE48のファンに、乃木坂の初回限定盤を買うモチベーションを与えたかもしれません。

全国握手会券というのは、1枚1600円ほどで、メンバーと握手出来る上に、ライブを観ることも出来、さらには、新曲の発表や松井玲奈の登場など、何かしらのサプライズも期待出来て、ファンからすると、かなりお得なチケットだと思います。

「未来とは?」で、全国握手会が3日間に減らされたのは、SKE48のファンにとって、運営が考える以上に、不満の募る変更だったのかもしれません。

このようにAKB48や「支店」、とりわけSKE48のファンで、乃木坂46に関心を持つ人が増え、8枚目初回限定盤のCDセールスを押し上げたというのが、もう一つの可能性です。


「バレッタ」で個別に集中した乃木坂のコアファンが、「気づいたら片想い」では、再び全国握手会にお金を使った可能性と併せて、二つのことが、今作一般流通CDの売り上げを前作より2万7千枚アップさせた原因として考えられます。

ただ、4月13日(日)、幕張メッセでの全国握手会は、会場がギュウギュウになるほどの盛況ぶりだったそうで、従来と同じ人数のファンが、より多くの枚数、初回限定盤を買ったというより、購入者の人数そのものが増えていると考える方が自然です。

5月17日(土)に、SKE48の地元名古屋で行われる乃木坂の全国握手会に、通常よりずっと多い人が来場するとなると、SKE48のファンが乃木坂に興味を持ち始めている可能性が高くなってきます。

相次ぐメンバーの卒業や「組閣」によるアイデンティティの崩壊で、AKB48グループから離れようとするファンは、これからも増え続けると思いますが、あるいは、乃木坂46は、その防波堤となって、ファンを吸収していくことを、AKBの運営から、期待されているのかもしれません。

しかし、(表5)で、一般流通CDの前作からの増分を、四つのグループ全部で足すとマイナスになって、乃木坂を含めても、CDセールスは伸びていません。

結局、乃木坂ファンが個別から全国へ、あるいは、SKE48ファンが乃木坂46へと、グループ内で人が行き来している可能性は大きいですが、「気づいたら片想い」のダウンロードランキングを見ても、一般層から新規ファンを獲得しているという兆候はありません。

そして、一般層からの新規獲得が感じられないということが、乃木坂46を含んだAKB48グループの「大崩壊」の静かな予兆に見えると言ったら、言い過ぎでしょうか(笑)。


しかし、「兼任」「移籍」「新曲ラッシュ」「卒業」「スキャンダル」「総選挙」といった一連の出来事を眺めていると、次のようなイメージが頭に浮かんできます。

コップの中で何度も嵐が起きて、水面が波打ち、水位の高い所と低い所が一時的に出現する。

しかし、嵐の度にコップから水がこぼれてしまって、全体の水量は下がり続けている。

嵐を収めて、新しく水を注がないと、やがてはコップから水がなくなってしまう。

それでも、コップの中にいて、嵐を起こし続けている人たちは、嵐を起こすことを止めない。

そんなイメージです。

まあ、刑事ドラマによくある「想像力が逞し過ぎる」ってことなんでしょうか(笑)。


ここまでは一般流通CDのセールス分析で、次に特定流通CDの話をしたいのですが、文章が長くなったので、記事を分けて、明日、『乃木坂46「気づいたら片想い」初動45万8千枚を読む(2)』として投稿することにします。


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オリコン

サウンドスキャン

有線ランキング

AKB48Gと乃木坂46のCD売り上げなどをまとめたサイト


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# 記事中の青字部分は、テレビ番組、公式サイト、書籍、歌の歌詞などに、掲載されたものを、そのまま抜粋引用したことを表しています


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