ジャン・アレチボルトの冒険

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乃木坂46「気づいたら片想い」初動45万8千枚を読む(2) ~ 握手会人気の格差拡大と「終わりの始まり」

2014-04-17 16:00:00 | 芸能
最初に、昨日の記事に載せたものの再掲ですが、基本的なデータとして、乃木坂46の歴代シングルについて、初動売り上げの推移表と、それを一般流通CDと特定流通CDの売り上げに分割した推移表を示しておきます。

(表1) 乃木坂46のシングルCDに関する、発売第1週のオリコン調べ売り上げ枚数、いわゆる「初動」の推移

凡例
シングル番号 : 初動枚数 (発売第1週のオリコン順位, 現在の累計枚数) 発売日「タイトル」

1枚目 : 13.6万枚 (2位, 21.3万枚) 2012/02/22「ぐるぐるカーテン」
2枚目 : 15.6万枚 (1位, 22.4万枚) 2012/05/02「おいでシャンプー」
3枚目 : 18.7万枚 (1位, 24.4万枚) 2012/08/22「走れ!Bicycle」
4枚目 : 23.3万枚 (1位, 31.0万枚) 2012/12/19「制服のマネキン」
5枚目 : 24.2万枚 (1位, 31.1万枚) 2013/03/13「君の名は希望」
6枚目 : 33.7万枚 (1位, 45.7万枚) 2013/07/03「ガールズルール」
7枚目 : 39.5万枚 (1位, 51.3万枚) 2013/11/27「バレッタ」
8枚目 : 45.8万枚 (1位, 48.3万枚) 2014/04/02「気づいたら片想い」

(表2) 一般流通CD特定流通CDの売り上げ推移

凡例
シングル番号 : サウンドスキャン第1週売り上げ枚数 [初動(SS/OC)比] 初動(OC-SS)差「タイトル」

# 「サウンドスキャン第1週売り上げ枚数」は、全タイプの一般流通CDについて合計したもの。
TOP20に初回限定盤しかランクインしていないときは、それらの合計枚数の4%を通常盤売り上げ、4.5%をアニメ盤売り上げと推測して、全タイプの合計を求めている
#「SS」はサウンドスキャン、「OC」はオリコン
# 初動(SS/OC)比は、サウンドスキャン第1週をオリコン初動で割ったもの。数値が小さいほど、CDセールスの個別握手会依存が高いことを示す
# 初動(OC-SS)差は、オリコン初動からサウンドスキャン第1週を引いたもの。店頭販売していない「特定流通」CDの売り上げ枚数に等しく、多くの場合、個別握手会によるCDセールスと見なすことが出来る

1枚目 : 8.3万枚 [61.2%] 5.3万枚「ぐるぐるカーテン」
2枚目 : 7.3万枚 [47.2%] 8.2万枚「おいでシャンプー」
3枚目 : 6.1万枚 [32.6%] 12.6万枚「走れ!Bicycle」
4枚目 : 6.6万枚 [28.3%] 16.7万枚「制服のマネキン」
5枚目 : 7.2万枚 [29.6%] 17.0万枚「君の名は希望」
6枚目 : 9.7万枚 [28.9%] 24.0万枚「ガールズルール」
7枚目 : 9.0万枚 [22.8%] 30.5万枚「バレッタ」
8枚目 : 11.8万枚 [25.7%] 34.0万枚「気づいたら片想い」

「気づいたら片想い」の前作「バレッタ」からの伸び
一般流通CD分 => +2.7万枚
特定流通CD分 => +3.5万枚
合計 +6.3万枚


では、ここからが今日の記事本文です。

昨日の記事『乃木坂46「気づいたら片想い」初動45万8千枚を読む(1) ~ SKE48ファン参入の可能性と「コップの中の嵐」』では、「気づいたら片想い」一般流通CDの第1週売り上げが、前作から2万7千枚伸びたことを考えましたが、今日は、特定流通CDが3万5千枚伸びた点を見てみます。

まず、特定流通CDの特典である個別握手会の内容を、歴代シングルと比べてみましょう。

なお、今日の記事で新たに載せる表には、昨日の記事からの通し番号を付けています。

(表7) 特定流通CDの売り上げと特典サービスの内容

凡例
シングル番号「タイトル」
特定流通CDの第1週売り上げ枚数 (今作特定流通CD第1週売り上げから前作のそれを引いた枚数)
個別握手会の日数と場所
総部数(今作総部数から前作のそれを引いた部数)
100部あたりの売り上げ枚数 [個別1日あたりの売り上げ枚数]

# 特定流通CDの第1売り上げは、オリコン初動から一般流通CDの第1週売り上げを引いた初動(OC-SS)差として計算している。この際、一般流通CDのセールスは、(表2)と同じく、サウンドスキャンTOP20から通常盤などの売り上げ枚数を推測加算して求めた

1枚目「ぐるぐるカーテン」
5.3万枚
個別3日(関東{東京1}名古屋1大阪1)
総部数300部
1.9万枚/百部 [1.9万枚/日]

2枚目「おいでシャンプー」
8.2万枚(+2.9万枚)
個別2日(関東{幕張2})+個別ミニ4日(札幌1名古屋1大阪1福岡1)
総部数300部 (+0部)
2.8万枚/百部 [1.4万枚/日]

3枚目「走れ!Bicycle」
12.6万枚(+4.4万枚)
個別4日(関東{幕張1横浜1}名古屋1大阪1)
総部数330部 (+30部)
3.9万枚/百部 [3.2万枚/日]

4枚目「制服のマネキン」
16.7万枚(+4.1万枚)
個別5日(関東{幕張1横浜2}名古屋1京都1)
総部数430部 (+100部)
4.0万枚/百部 [3.4万枚/日]

5枚目「君の名は希望」
17.0万枚(+0.3万枚)
個別5日(関東{幕張1東京1横浜1}名古屋1京都1)
総部数437部 (+7部)
4.0万枚/百部 [3.5万枚/日]

6枚目「ガールズルール」
24.0万枚(+6.9万枚)
個別6日(関東{幕張1東京1横浜2}名古屋1京都1)
総部数630部 (+193部)
3.9万枚/百部 [4.1万枚/日]

7枚目「バレッタ」
30.5万枚(+6.5万枚)
個別6日(関東{幕張3横浜1}名古屋1京都1)
総部数664部 (+34部)
4.7万枚/百部 [5.2万枚/日]

8枚目「気づいたら片想い」
34.0万枚(+3.5万枚)
個別6日(関東{幕張1横浜3}名古屋1京都1)
総部数759部 (+95部)
4.5万枚/百部 [5.7万枚/日]

HKT48の「桜、みんなで食べた」は、特定流通CDの特典として「船上パーティ」の抽選応募券を入れていますが、乃木坂46の場合は、すべてのシングルで個別握手会だけが特典となっています。

乃木坂の特定流通CD売り上げが右肩上がりを続けてきたのは、個別握手会の総部数を増やし続けたことと、それにも関わらず、100部あたりの売り上げ枚数が、前作を下回ったことがほとんどないことによって実現されてきました。

乃木坂46を変えた6枚目「ガールズルール」の個別握手会

デビュー曲「ぐるぐるカーテン」から3枚目「走れ!Bicycle」まで、総部数は300部ほどに固定されていますが、100部あたりのセールスはシングルごとに伸びて、発売第1週4万枚というレベルに達します。

これは個別を支えるコアファンの数が順調に増えたことを示していると思われます。

4枚目「制服のマネキン」では、関東、名古屋、京都という会場設定となり、現在に続く基本的なスタイルが確立しますが、このとき前作から100部という大幅な部数積み上げが行われます。

しかし、100部あたりの売り上げ枚数は4万枚を維持して、個別によるCDセールスは10万台後半に入っていきます。

5枚目「君の名は希望」では、総部数はほとんど変わらず、100部あたりも4万枚をキープ。

そして、6枚目「ガールズルール」で、個別日数が1日増やされ関東会場が4日となり、それに伴って、193部という乃木坂史上最大の総部数積み上げが行われます。

この個別握手会で、秋元真夏、生田絵梨花、桜井玲香、若月佑美、深川麻衣が完売部数を前作から大きく伸ばし、白石麻衣、西野七瀬、松村沙友理 、橋本奈々未のトップ4に肉薄、乃木坂の分厚い握手会スター群がほぼ完成します。

その結果、常軌を逸した超大型増部だったにも関わらず、100部あたりのセールスは4万枚を維持して、個別による売り上げ枚数は、前作から7万枚も伸びて、特定流通CDのセールスは20万台に突入します。

特定流通CDに関して7万枚の伸びは、歴代シングルで断然のトップですが、「ガールズルール」は一般流通CDについても、(表3)に示したように、前作から2万6千枚と歴代最高レベルの伸びを見せています。

こういったCDセールスからみて、不動のセンターだった生駒里奈が2列目に下がり、白石麻衣が新センターとなった6枚目シングルで、新規ファンが増えたのは間違いないでしょう。

ただ、その多くは、おそらくAKB48グループのファンだった人たちと考えられます。

「制服のマネキン」「君の名は希望」に代表される、アーティスト指向の「乃木坂らしい」楽曲から、AKB流アイドルソングに近い「ガールズルール」になったことで、AKBファンが乃木坂世界に入りやすくなり、センター交代という話題性と相俟って、新規ファンの呼び込みに成功したのだと思います。

ショッキングな人事異動で注目を集め、メッセージ性の薄いアイドルソングで敷居を低くして、万人受けを狙う。

「ガールズルール」は、乃木坂46がCDセールスを大幅に伸ばし、ファンを増やしたシングルですが、その一方で、現在の生駒里奈チームB「兼任」につながる、乃木坂「48」化の第一歩だったとも言えるでしょう。


実際、7枚目「バレッタ」では、二期生の堀未央奈がセンターに大抜擢され、「ショッキングな人事異動」が加速していきます。

一方、それ以外の選抜メンバー、とくに1列目2列目は、個別での売り上げ順にメンバーが並べられ、握手会主義による人選が行われました。

「バレッタ」は、総部数の積み上げは34部と小幅ですが、個別による売り上げは6万5千枚も伸びて、「ガールズルール」に次ぐ上げ幅を記録します。

おそらく、徹底した握手会主義が、メンバーやファンに対して強烈なメッセージとなり、「推し」の立場を有利にするために、特定流通CDを大量に買うファンが多数出現したのだと思います。

こういったファンの熱意は、それまで100部あたり4万枚を保持してきた売り上げ効率を、4万7千枚まで押し上げます。

しかし、「バレッタ」は、一般流通CDのセールスが前作割れを起こしたことからも、新規ファンが増えたとは思えないので、100部あたり4万7千枚という数字は、既存ファンが無理に無理を重ねたと見るべきで、諸手を挙げて喜べる売り上げアップではありません。

さらに、残念なお知らせがあって、次の「気づいたら片想い」8th選抜では、すでに誕生している握手会スターが1列目2列目を占め、3列目は個別での成績と無関係に選ばれたため、担当部数の少ないメンバーは、ファンが「バレッタ」個別で頑張って売り上げを伸ばしても、多くの場合、選抜入りにつながりませんでした。

30部全完売の秋元真夏が3列目に入ったように、8th選抜の選考では、握手会主義が事実上放棄されました。

そして、選抜落ちが今後ともまずあり得ない10人ほどのメンバーと、握手会人気とは別基準で選ばれる代わりに、その地位が極めて流動的な5人ほどのメンバーという構成になっています。

まあ、個別握手会で一度人気が出て一定のファン層を獲得すれば、そのメンバーの売り上げは簡単には下がらないので、握手会人気の順にメンバーを並べていれば、やがて16人全員がほぼ同じ顔ぶれになるのは当然であって、握手会主義が選抜メンバーの固定に向かうのは自然な話です。

従って、もし、人事的ダイナミズムが欲しければ、どこかで握手会主義を緩和するしかないわけで、それが8th選抜で顕著になったということだと思います。


「気づいたら片想い」個別は、応募次数と応募期間がポイント

こういった流れの中、「気づいたら片想い」個別の応募が行われます。

総部数は前作から95部積み上げられ、これは「ガールズルール」「制服のマネキン」に次ぐ、歴代3位の増部数です。

大型増部にも関わらず、100部あたりの売り上げ4万5千枚を達成、個別による売り上げを前作から3万5千枚伸ばし、第1週累計は、過去最高の34万枚となりました。

しかし、「気づいたら片想い」の個別第1週売り上げは、このように数字上では前作を越えていますが、中味を調べると、握手会人気は、むしろ、前作を下回っていて、勢いを失っている可能性が濃厚です。

以下の表で、何が起こったのか説明します。

(表7) 個別握手会応募受付の次数と推定売り上げ枚数の推移

凡例
[個別握手会の応募受付次数] その応募での積み上げ完売部数 {その時点での推定累計売り上げ枚数} (受付時期、応募最終日から初動集計締め切り日までの日数)

# 積み上げ完売部数が赤色の数字で示されているものは、その全部がオリコン初動に算入されたことを、ピンク色の数字は、その一部が算入された可能性が高いことを示す
# 売り上げ枚数は万枚単位で、小数点以下2桁目を四捨五入したもの
# オレンジ色は予想日程
#「-60d」は、集計締め切り日の60日前という意味

7枚目「バレッタ」
発売日 2013年11月27日(水)
オリコン初動集計締め切り 2013年12月1日(日)
特定流通CD第1週売り上げ(=初動個別分) 30.5万枚

[01次] 0 (2013/10/08~10/09, -53d)
[02次] +49 (2013/10/16~10/18, -44d)
[03次] +84 {19.2万枚} (2013/10/25~10/28, -34d)
[04次] +75 {27.5万枚} (2013/11/06~11/08, -23d)
[05次] +64 {32.7万枚} (2013/11/15~11/18, -13d)
[06次] +47 {35.7万枚} (2013/11/26~11/28, -3d)
[07次] +19 {36.6万枚} (2013/12/05~12/06, +5d)
[08次] +20 {37.8万枚} (2013/12/13~12/16, +15d)
[09次] +40 {39.6万枚} (2013/12/25~12/26, +25d)
[10次] +28 {40.8万枚} (2014/01/07~01/09, +39d)
[11次] +29 {42.0万枚} (2014/01/17~01/20, +50d)
[12次] +6 {42.2万枚} (2014/01/28~01/30, +60d)
[13次] +4 {42.4万枚} (2014/02/07~02/10, +71d)

8枚目「気づいたら片想い」
発売日 2014年4月2日(水)
オリコン初動集計締め切り 2014年4月6日(日)
特定流通CD第1週売り上げ(=初動個別分) 34.0万枚

[01次] 0 (2014/02/04~02/05, -60d)
[02次] +35 (2014/02/12~02/13, -52d)
[03次] +47 {13.0万枚} (2014/02/19~02/20, -45d)
[04次] +62 {20.8万枚} (2014/02/26~02/27, -38d)
[05次] +67 {27.7万枚} (2014/03/05~03/06, -31d)
[06次] +52 {31.7万枚} (2014/03/12~03/13, -24d)
[07次] +18 {33.0万枚} (2014/03/19~03/20, -17d)
[08次] +16 {34.2万枚} (2014/03/27~03/28, -9d)
[09次] +3 {34.6万枚} (2014/04/03~04/04, -2d)
[10次] +?? (2014/04/10~04/11, +5d)
[11次] +?? (2014/04/17~04/18, +12d)
[12次] +?? (2014/04/24~04/25, +19d)
[13次] +?? (2014/05/01~05/02, +26d)

「バレッタ」個別の応募は、オリコン初動の集計締め切り日の53日前から始まり、ほぼ10日の間隔で受付が行われました。

そして、第5次応募の一部までが、初動に算入された可能性が高い。

オリコンデイリーの動きから、第5次分は1万枚ほどカウントされなかった節があるので、結局、第5次終了後での累計売り上げは、初動個別分である30万5千枚に1万枚を加えた31万5千枚あたりと考えられます。

上表から、「バレッタ」の第5次終了後での累計売り上げは、シミュレーションによると32万7千枚と推定されています。

つまり、実際の値である31万5千枚より1万2千枚ほど多く見積もっていることになり、この表で示された「バレッタ」の個別売り上げ推定値には、それくらいの誤差があることになります。

一方、「気づいたら片想い」は、集計締め切り日の60日前、つまり、「バレッタ」より1週間早く、個別の応募受付が始まり、第8次応募分までが、数千枚程度を除いて、ほぼ全部算入されたと思われます。

「気づいたら片想い」の初動個別分は34万枚で、第8次終了後での累計売り上げ推定値は34万2千枚なので、今作では、シミュレーション計算がかなり正確な数字を出していることになります。


さて、もし「バレッタ」が第8次応募までを初動に算入出来ていたとしたら、上表から37万8千枚となり、1万2千枚ほどの誤差を考慮しても、「気づいたら片想い」の初動個別分34万枚を上回ることになります。

逆に、「気づいたら片想い」が第5次応募までしか初動に算入出来なかったとすれば、上表から27万7千枚となって、「バレッタ」の初動個別分30万5千枚を下回ります。

つまり、締め切り日までの応募回数が多いために、「気づいたら片想い」は、「バレッタ」よりも、初動個別分が大きくなったと見ることが出来ます。

もちろん、同じ第5次や第8次と言っても、受付時期と発売日との時間関係が7枚目と8枚目では異なるので、単純に比較することは出来ません。

しかし、例えば、「バレッタ」個別の応募を1週間早めて、「気づいたら片想い」と同じく、発売日の60日前から開始すれば、10日間隔の同じペースで進んでも第6次の35万7千枚まで初動に流し込める筈で、推定値の誤差を考えても、「気づいたら片想い」初動個別分34万枚とほぼ同じになります。

さらに、受付間隔を7日にして、応募次数を増やせば、「バレッタ」の勢いを考えると、「気づいたら片想い」を上回る初動個別分を達成出来たと思います。

応募開始が1週間早かったこと、さらに、受付間隔が短く応募次数が多かったこと、これらの効果によって、「気づいたら片想い」は「バレッタ」を3万5千枚上回る初動個別分となったのであって、こういう「操作」がなければ、むしろ売り上げ枚数を減らしていた可能性が高かったでしょう。

結局、「気づいたら片想い」は、応募期間と応募次数を操作して、コアファンの資金を初動締め切り前に集中的に吸い上げたということです。


実際、「気づいたら片想い」個別は、こうしたピークを前倒しするやり方によって、発売日前に売れ行きが失速を始めていて、第9次応募終了後の完売部数は、第8次からなんと3部しか積み上げられないという異例の事態となっています。

たった3部の積み上げというのは、私が知っている限り最低の数字ですが、第9次応募は、「気づいたら片想い」発売の翌日から翌々日という、新曲キャンペーンが最高潮に達している時期に行われています。

しかも、応募可能な個別はのべ5会場も残っていて、4会場分は最新データが表示された完売表での3部というのは、応募期間や応募次数の操作云々を越えて、「乃木坂46に一体何が起こっているんだ?」と聞き返したくなるような数字です。

完売部数積み上げのおそらくは最低記録が、シングル発売直後に出てしまったことから考えても、「気づいたら片想い」は、個別握手会の人気が、今のところ、かなり厳しい状況に陥っていると言わざるを得ません。

一方、初回限定盤の売り上げは明らかに好調で、おそらくAKB48グループのファンも新規に参入していると思われるので、こういった人たちを、いかに個別に呼び込むか、とくに、握手会スターとの格差が広がっているアンダーメンバーや二期生の人気をどうやって上げていくか、その辺が、今後のポイントになっていくと思います。


初動予想はなぜ外れたのか

ところで、発売前に予想した「気づいたら片想い」初動40万8千枚は、実際の45万8千枚と比べて5万枚少なかったのですが、どこが拙かったのかを考えみます。

まず、(表7)で示したように、個別握手会による売り上げは、シミュレーション計算によって、第8次応募終了後の累計を34万2千枚とはじき出していて、実際の値である34万枚に極めて近い数字となっています。

しかし、残念ながら、第8次後の完売表が判明したのは、第9次応募が始まった4月3日(木)で、予想記事を投稿した3月30日(日)の段階では、第7次後の完売状況しか分かっていませんでした(笑)。

そして、第7次応募終了後の推定枚数は33万枚で、前作でのシミュレーション計算に誤差があったことから、この値も5千枚ほど高く見積もっていると考え、32万5千枚という数字を出していました。

日程から考えて、第8次応募分が初動に流れ込む可能性はあったのですが、完売表がなく、シミュレーションによる推定値すら出せないので、結局、初動個別分の予想として、32万5千枚を採用しました。

実際の初動個別分は34万枚なので、ここで1万5千枚の誤差です。

個別第8次応募分を無視したのは、一般流通CDの売り上げ予想が、かなり振れ幅が大きくなるだろうからという気持ちもあったからで、見事にその通りになってしまいました。

一般流通CDの第1週予想は、前作の初回限定盤合計と同じ8万3千枚として、いくら伸びても10万枚までだろうと考えていましたが、蓋を開けると、なんと11万8千枚という遥かに高い枚数でした。

結局、一般流通CDの予想値8万3千枚は、実値より3万5千枚も少なく、特定流通CDの1万5千枚の誤差と併せて、5万枚の差が出てしまったわけです。

個別握手会の売り上げ予想は、まだ良いのですが、初回限定盤の売り上げは、毎度のことですが、読み切れませんね(笑)。


メンバー間の人気格差と「終わりの始まり」

乃木坂46の握手会人気、「気づいたら片想い」個別を見ていると、上で述べたように、正直、頭打ちの感が強いです。

一番の原因は、握手会スターとそれ以外のメンバーの人気格差が、これまで経験したことがないほど広がっていることです。

こういった大きな格差は、AKB48グループではごく普通のことで、少数のメンバーが早々と全完売を出す一方、残りのメンバーは完売表が真っ白というのはよく見かける構図です。

「気づいたら片想い」個別でも、似たような現象が起こり始めていて、乃木坂が「組閣」に巻き込まれたことによって、握手会人気の構造も、AKB48型になりつつあるのではないかという懸念があります。

AKB48グループで大きなメンバー間格差が存在しているのは、「組閣」のような人事シャッフルに原因があると思います。

「センター交代」「大抜擢」「兼任」「移籍」「総選挙」などを常時行うと、その度に注目は集めますが、腰を据えて長くグループやメンバーを応援したいファンが離れていき、人事シャッフルを好むファンの比率が高くなっていきます。

そして、刺激的な人事異動を好むファンも、グループに動きがなくなると飽きて、すぐ他に目が移るので、次々に人が入れ替わるファン層の流動化が起こってしまいます。

すでに人気を確立して、多くのファンを持っているメンバーは、新たなファンの獲得も容易なので、さほど困りませんが、まだ知名度の低いメンバーは、長くコツコツと自分を応援してくれる少数のファンが頼りなので、不安定なファン層では、人気を伸ばすことが非常に難しくなり、メンバー間に極端な人気格差が発生するのだと思います。

とくにAKB48は、少数のトップスターに人気が集中して、若手が育たず、そのため大島優子など大物が卒業する度に、グループの人気が低下する現象に苦しめられています。

度重なる人事シャッフルのために、AKB48生え抜きで知名度の低いメンバーを、じっくり応援するようなファンが少なくなっているんじゃないでしょうか。


かつては、「組閣」や「総選挙」といったAKB48グループの人事シャッフルに一切参加しないことが、乃木坂46の独自性でした。

この独自性のお陰で、AKB48の人気が低迷を始める中、乃木坂は長期に渡ってグループを応援してくれる安定したファン層を獲得して、何人ものメンバーをゼロから育てることに成功してきました。

乃木坂46は、選抜とアンダーのシャッフルはあるものの、あくまでグループ内での人事異動だったので、比較的落ち着いてグループやメンバーを応援するファンが集まり、少なくとも1期に関しては、AKB48グループで見られる極端な人気格差は発生しませんでした。

そして、こういった環境が、多くの握手会スターを生み出し、加えて、アンダーであっても、かなりの売り上げを出すメンバーが何人も存在するという、層の厚い握手会人気を作り上げ、右肩上がりのCDセールスを実現してきました。

つまり乃木坂の強さはメンバー層の厚さにあり、それを支えてきたのが、「組閣」のような人事シャッフルを好まず、乃木坂だけを応援してくれる安定したファン層だったと思います。


ところが、乃木坂46が「組閣」に巻き込まれ、「総選挙」にも参加して、「48」化の流れが加速していくと、乃木坂でも、ファン層の流動化、不安定化が進み、新たなスターを生み出す力が失われ、トップメンバーとそれ以外のメンバーの人気格差が広がって、グループ全体の人気がじわじわと落ちていく、今のAKB48と同じ道を歩む危険が大きい。

こうなると安定したCDセールスは難しくなり、AKB48と同じように、新しい自前のスターを育てるよりは、絶えざる人事シャッフルによって、「支店」のスターを呼び寄せ、それによって注目を集め続けるしか道がなくなってしまい、いよいよ「終わりの始まり」が始まってしまいます。

例えば、松井玲奈の参加によって、乃木坂が注目を集め、色んなセールスが一気に伸びるのであれば、時間を掛けて渡辺みり愛を育てようなんて雰囲気は吹き飛んでしまうでしょう。

しかし、注目を集めるのは、人事異動の直後だけで、実際、SKE48は松井玲奈や松井珠理奈といった人気メンバーがいるにも関わらず、CDセールスを落とし続けています。

長い目でみれば、まだ知名度は低いけど逸材が揃っている、みり愛、琴子、京花、あーちゃんの二期生をしっかり育てて、白石麻衣や橋本奈々未が卒業しても十分やっていけるよう、地盤を固めた方が、乃木坂にとって大きなプラスになると思います。

もう一度、乃木坂がAKB48と距離を置き、サプライズ優先の人事異動イベントとは無縁の環境の中で、かつて若月佑美や深川麻衣を乃木坂ファンが育てたように、今のアンダーメンバーや二期生をじっくり育てることが出来れば、「終わりの始まり」を避けることが出来る可能性があります。

しかし、「48」化の道を選んだ乃木坂にとって、もう後戻りは出来ないのかもしれません。


AKB48グループの人事シャッフルには参加しない。

その独自性の放棄が乃木坂46に何をもたらすのか。

「気づいたら片想い」のCDセールスに関するデータは、その代償が決して小さいものではないことを、静かに示唆している気がします。

(表4) 乃木坂46を三つのグループに分けたときの、各グループの個別握手会での売り上げ比率

凡例
シングル番号個別第9次終了後「タイトル」
そのグループの推定売り上げ枚数の総売り上げ枚数に対する比(推定売り上げ枚数)、完売部数の総完売部数に対する比、担当部数の総担当部数に対する比、人数の総人数に対する比:グループ名

# 売り上げ枚数、完売部数、担当部数は、すべて個別握手会における成績
# 各グループの売り上げ枚数は、シミュレーション計算によって求めた
# 比率はすべて%表示で、小数点以下1桁を四捨五入したもの
# 枚数は万枚単位で、小数点以下2桁目を四捨五入したもの
#「1期10」は、白石麻衣、西野七瀬、松村沙友理、秋元真夏、橋本奈々未、深川麻衣、桜井玲香、若月佑美、衛藤美彩、生田絵梨花の10人のグループ
#「1期10以外」は、1期メンバーでかつ「1期10」ではない人のグループ
#「2期」は二期生で、選抜、アンダー入りしているメンバーも含んだグループ

7枚目個別第9次終了後「バレッタ」
枚数49%(19.4万枚)、完売部数69%、担当部数43%、人数24%:1期10
枚数37%(14.6万枚)、完売部数24%、担当部数40%、人数48%:1期10以外
枚数14%(05.6万枚)、完売部数07%、担当部数17%、人数29%:2期

8枚目個別第9次終了後「気づいたら片想い」
枚数57%(19.5万枚)、完売部数88%、担当部数39%、人数23%:1期10
枚数32%(11.0万枚)、完売部数10%、担当部数43%、人数47%:1期10以外
枚数12%(04.1万枚)、完売部数02%、担当部数18%、人数30%:2期

この表は、昨日の記事に載せたものを再掲しています。


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# 記事中の青字部分は、テレビ番組、公式サイト、書籍、歌の歌詞などに、掲載されたものを、そのまま抜粋引用したことを表しています

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