*『リンゴが腐るまで』著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。19回目の紹介
『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-
著者 笹子美奈子
----------------
**『リンゴが腐るまで』著書の紹介
第2章 原発と生計
汚染水タンクの森
(前回からの続き)
その後、バスは双葉町側にある5、6号機にやってきた。こちらは海抜13メートルで、津波で浸水したものの、1~4号機に比べるとその影響はあまり見られない。線量は4マイクロシーベルトと、1~3号機付近と比べると2桁以上低い。車窓越しに6号機の非常用ディーゼル発電機が入っている建物が見えてきた。(中略)
津波の影響だけでなく、地震による影響も構内で見て取れた。5,6号機の送電鉄塔は津波でなく地震で倒れた。鉄塔の脇にある盛り土部分が崩れ、鉄塔そのものが倒れてしまったのだ。その結果、5、6号機は外部電源を喪失した可能性がある。倒れた送電鉄塔はそのまま残されており、足元の土が大きくえぐられていた。
バスは海抜35メートルの高台に戻ってきた。東日本大震災当日、構内にいた東電社員約750人の大半が働いていた事務本館は、地震の揺れで天井の化粧板が落ち、水素爆発で窓ガラスが割れて放射性物質が入り込み、現在も一部を除き使用できない。
2007年の新潟県中越沖地震の教訓で、緊急時の対策室として使用するため、地震に強い設計で建てられた免震重要棟が設置された。福島第一原発の免震重要棟は東日本大震災の約半年前に完成し、現場の指揮はここで執られた。地上2階建て、地下の部分にはゴム等を利用した免震装置が入り、震度7クラスの地震でも十分耐えられる設計になっている発電機も備わり、震災時、パソコンなどの事務機器や通信系統を動かすのに十分な程度の電気を供給した。
免震重要棟の脇には原発事故当時、原子炉の注水に使用した消防自動車が置かれていた。付近の線量は15マイクロシーベルト。
バスは最後に、使用済み核燃料を保管する乾式キャスク置き場の脇を通った。原発事故前はグラウンドだった場所だ。使用済み燃料はいったんプールで水中保管され、発熱量が少なくなった後、キャスクと呼ばれる容器に入れて乾式保管する。キャスクはコンクリート製の倉庫に保管される。もともとグラウンドだった場所に、50基のキャスクを置くスペースを整備しているところだという。
かつてグラウンドや林だった場所は使用済み燃料や汚染水、放射性廃棄物の保管場所として使用されているが、広い1F構内の敷地もすでにこうした廃棄物置き場で手狭になっている。いずれ限界を迎え、増え続ける廃棄物を構内に保管し続けられなくなる。だが、1F構外に保管場所を確保するのは容易ではない。
※次回は、「第2章 原発と生計「一次下請け企業」」
2016/7/14(木)22:00に投稿予定です。