付け焼き刃の覚え書き

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「英雄その後のセカンドライフ」 芝村裕吏

2024-05-02 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「ハムを粗末にするものは自分がハムにされても文句は言えない」
 オークの言い伝え。

 海軍提督シレンツィオ・アガタは「アルバの宝剣」と謳われる、不世出の英雄である。しかし、あまりに活躍しすぎたので、戦場が落ち着くと貴族に任じられて艦隊から引き離されてしまった。
 しかし、武装商船で生まれ育った男がいきなり領地貴族に成れるわけではない。海の生き方と陸の生き方は違うから、まず2年間ルース王国の士官学校に留学しろということになった。15歳ばかりの学校に31歳が送り込まれるのだ。
 ところがどこで誰が間違えたのか、彼がエルフの国を経由して送り込まれたのは海辺の士官学校ではなく、山中の幼年学校であった。下は8歳、上は14歳の幼年学校に送り届けられた31歳。
 ところがエルフの校長は何の問題もないと言い切った。人間の31歳はエルフ換算で8歳だからなんの問題もないのだと、さすが1000歳になるエルフ。だが、エルフには人間の名前も顔も区別できないのかもしれないが、シレンツィオこそ最もエルフを殺した男、「ニアアルバの悪鬼」なのだが……。

 戦争で誰よりもエルフを殺した伝説の天才海軍提督が、何の間違いかエルフの国の幼年学校でエルフの8歳児(人間の年齢に換算して32歳とか33歳)に交じって勉強する羽目になり、気がつけば羽妖精(ピクシー)にまとわりつかれながらエルフの少年少女相手に飯を作っている話。人生の終わりが見えた「伝説」と呼ばれる人物の、微笑みから始まる再出発の物語という語り出しだけれど、イントラシア妖精空軍とか大軍師ガーディとかが別の国の話として言及されているので、だいたい時代とか世界とかはそのあたりらしい。
 外野では誰がそんなところに英雄を送り込んだのかと国の内外に波及する責任問題になったりしているし、異次元とかから謎の敵の襲撃とかあるのだけれど、気がつけば商人国家の政治とかエルフの国との戦争の話とかどこかにいっちゃって、ひたすら悪オヤジが蘊蓄たれながら食材集めて料理している話になっていてビックリ。巻末にはレシピも載っているけれど、これがイタリア料理なので、なるほど商人=貴族による合議体国家アルバとは、最盛期ヴェネツィアあたりのイメージで間違いないのねと納得。
 ちょい悪おっさんから美幼女までしっかり描いてくれるしずまさんは素晴らしいと思いました。

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