付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「異世界転生…されてねぇ!3」 タンサン

2023-07-31 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「特殊な力を持つ人間にはそれに見合った行動や責任が求められるようになってくる」
 幸助の父も力を借りたい人に頼まれて危険な目に遭ったり大きな責任を背負ったこともあるらしい。そんな父からの助言は、
「困った時は周りに頼れ」
 お前が助けた人がお前を助けてくれるだろうと。

 平凡な高校生であろうと思っていても、力を持つ者はやはり超常の力を持つ者に察知されやすい。結城幸助のような迂闊な少年ならなおさらだ。世の中には異能者とか陰陽師とか魔術師とか……意外と超常の能力者が行き交っていて、各勢力毎の抗争やらなにやらあるらしい。
 そんな幸助が学園のアイドル、花園リサから声をかけられて、彼女の母親が経営するキャバクラのボディガードを務めることになるのだが……。

 北の歓楽街、すすきの異能バトル篇。
 異世界転生するはずが、手違いでチート能力を備えた状態で生き返った主人公の『異世界転生…されてねぇ!』がついに3巻。コミック版が好調なのか続刊が出たのはいいけど、2巻が出て4年。登場人物も増え、さまざまな組織が跋扈して対立構造も複雑化してるのに、あらすじも登場人物紹介もないという、読者の記憶力を試してくるスタイル。
 異能組織ディヴァインは札幌の裏社会を支配して戦力と情報網の確保を目指していたところに、偶然にも健全な高校生のはずの結城幸助が巻き込まれて支離滅裂となり、一方、ロンドンを拠点とする魔術協会、黄昏と夜明け団では盗まれた精霊がいつの間にか幸助の手元にあって対策に奔走し、陰陽師の間でも家同士の対立があって勢力争いをしてるけれどそろそろ百鬼夜行の発生が……というあたり。
 せめてキャラ紹介を。

【異世界転生…されてねぇ!3】【タンサン】【夕薙】【PASH! ブックス】【転生失敗から始まった、チート高校生のバトルファンタジー】【スクールライフ&超常バトル】
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「佐々木とピーちゃん7」 ぶんころり

2023-07-30 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
「(老舗の百貨店で)親父のワイシャツから嫁のアクセサリー、子供の玩具に至るまで買い物を楽しみ、昼食は上層階のレストラン街。最後は最上階の遊園地で遊んで、最後は地下の食料品売り場で夕食の材料を買って帰る。これが買い物の王道というものじゃ!」
 買い物なんて通販で十分という星崎に、二人静が正しい(昭和までの)家族のライフスタイルを教授した。

 宇宙からやってきた機械生命文明の基本方針は「有機生命体の文明など滅ぼしてしまえ」というものであったが、その先遣隊こと十二式と交渉することになった佐々木たちの口先三寸で保留となったものの、代わりに佐々木たちと十二式が同居することになってしまった。
「私ハ貴方たちとの間に、家族関係と家庭ノ営みを求める」
 JK星崎はもちろん二人静から悪魔アバドンまで巻き込んで、地球など簡単に滅ぼせる十二式との家族ゲームが始まった……。

 いつものように異世界に行っては諸事を片づけつつ、パレードが有名な東京のテーマパークに行ったり、三宅島でのデスゲームに乱入したりと、あれやこれや大騒ぎの回。機械生命体こと十二式がさっさと地球にも家族ゲームにも飽きて帰ってくれないかなあと画策する二人静の策謀の結果やいかに!?

【佐々木とピーちゃん7】【 疑似家族、結成! ~温かな家庭を夢見る末娘と、てんでバラバラな家人たち~】【ぶんころり】【カントク】【MF文庫J】【カクヨム】【世界最強の文鳥×平凡な中年のクロスオーバーエンタメ】【ストッキング】【鳥の足】【三宅島】
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「石投げ令嬢」 みねバイヤーン

2023-07-29 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 王都から遠く離れたゴンザーラ領は、決して豊かな土地ではない。冬でもなければ領主一族だって靴を履かないし、武器といったら石だ。石は何処にでも転がっていてタダだ。人呼んで『石の民』。
 そんな領地から、大枚はたいて領主の娘ミュリエル・ゴンザーラが王都の学園に進学したのは、貧乏領地の未来をかけて理想の婿を探すため。ゴンザーラ男爵は出発前のミリーにしかと申しつけた。
「金も大事だが、技術はさらに重要だ。毎朝、毎晩、復唱しろ。医学、法律、測量、土木などの知識を持つ健康な婿をつかまえる。持参金は多いにこしたことはない」
 たいした顔ではなく、薄っぺらい身体で色気のないミリーだが、彼女の婿取りに領地に運命が託されたのだ。
 しかし「あの子はヤバい」の噂はアッという間に広まった。うかうかしていると、石で気絶させられて領地に拉致されてしまうぞと……。

 辺境の貧乏領地から婿捜しに都に出てきた男爵令嬢が、初めての夜会で王子が婚約破棄をしようとする瞬間に出くわし、王子様、ご乱心!とガラス玉を投げつけ昏倒させてうやむやにするところからの『石投げ令嬢』。
 令嬢ものは数が一気に増えたので、お約束を守りつつもキャラ立てが大事ですが、こちらは蛮族系。投石でイノシシや野牛すら倒し、お金がないので領主から領民まで裸足が当たり前という土地から来た少女。そこに何でも出来る美形で、なにかをやろうと思ったら硬軟裏表フルに活かして達成してしまう王弟殿下とばっちり。
 1巻は婚約破棄ものの初っぱなからお約束粉砕から始まり、棚ぼたメリーハッピーターンへと続きます。ウェブではそこから主役交代での諸国漫遊篇やら古今東西の昔話から童話までのパターン粉砕即決シリーズとなりますので、そこまで書籍で読みたいなー。あと、ヒロインの父親以上にキャラが立ったイローナのパッパが最高です。

【石投げ令嬢~婚約破棄してる王子を気絶させたら、王弟殿下が婿入りすることになった~】【みねバイヤーン】【村上ゆいち】【GAノベル】【溺愛恋愛小説】【小説家になろう】
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「BA‐BAHその他」 橋本治

2023-07-28 | その他フィクション
 『桃尻娘』で一世風靡した著者の短編集で2006年刊行。
 こういう話をいちばん読んでたのは中学時代かな。「オール読み物」とか「小説新潮」で読んだような、誰かの日常とか時代の1ページを切りとって映し出したみたいな、山とかオチとか序破急とかあるようでなさそうな、なさそうであったりする「ありふれた日常」をスケッチした話の数々。その「ありふれている」のが現代なら、渋谷を徘徊する若い娘が援交するとか男と別れるとか別れないとかダベりあう話だとか、どこにでもありそうな食堂の娘の一代記、あるいは男が嫁の愚痴を言い続ける話になります。それが未来なら、男がいなくなって何千年と経った世界の日々の話。過去なら朝廷の役職者の栄枯盛衰の俯瞰図となります。
 その「ありふれた日常」スケッチの合間に、ホラーの導入部を思わせるシュールな怪異譚やら小さな認識のズレがもたらす奇妙奇天烈な幻想譚が混ざります。
 援交する少女達の日常スケッチ「関寺小町」も、ヤクザの組長がファーストガンダムの本放送を子供の付き合いで視ているうちに自分の人生と重ね合わせてしまう「組長のはまったガンダム」も、その時代を誰の視点から切り取ったスケッチなのかというだけの違いなんです。

【BA‐BAHその他】【橋本治】【タダジュン】【筑摩書房】【ミステリアスな最新短篇小説集】【世にも不思議なハシモト・ワールド】【関寺小町】【処女の惑星】【逮捕】【ぼくとムク犬】【他人の愛情】【裏庭(バックヤード)】【孤帝記】【海】【組長のはまったガンダム】【さらば!赤い彗星のシャア―組長のはまったガンダム(後篇)】【ありふれた娘】【火宅】【バベルの塔】【BA‐BAH】
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「花物語」 橋本治

2023-07-27 | その他フィクション
「お花だけがきれいなんじゃない。きれいだと思わなくちゃ、どんなものでも、ぜったいにきれいには見えないんだよ」

 「花物語」というタイトルの本は、牧野富太郎の植物記から吉屋信子の少女小説、西尾維新の伝奇ジュブナイルといろいろありますが、これは1992年に雑誌『Myojo』に連載され、1995年に単行本化したものを2009年にフルカラーで文庫化した、橋本治とさべあのまによるイラスト小説。サクラ草から沈丁花まで、さまざまな花を題材にした15の物語が収録されていますが、登場人物は新入学児童から20代女性、主に雑誌の購読者層である小中学生が主人公で、それぞれの人生の転機となった気持ちを切り替えた瞬間にオーバーラップする花の姿が描かれます。巻末の橋本治とさべあのまの対談によれば、「教科書に載るような小説」をテーマにしたのだとか。
 ティーンエイジャーを対象とした雑誌に掲載された、マンガ家によるイラストがたっぷりついた小説ですが、これを「ライトノベル」に区分して良いのか迷いますが(認められない人も多そうだけれど)、それを言い出すとどこかにライトノベル審査会みたいなものを作って年配の文学者やら天下りの(誰が決めたか分からない)委員の判定待ちみたいになっちゃうので、原点に還って「マンガ家のイラストが付いた小説だからヨシっ!」と割り切るのがいちばん合理的です。

【花物語】【橋本治】【さべあのま】【ポプラ文庫】【サクラ草】【紫陽花】【プール】【夏休み】【夜】【秋のヒマワリ】【夕焼け】【コスモス】【夕焼け】【将来】【大掃除】【お年玉】【白い梅】【沈丁花】【旅立ち】
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「ちったい俺の巻き込まれ異世界生活4」 ぬー

2023-07-26 | 異世界転生
「考えることを放棄したものは時にひどくやっかいなものだ」
 大精霊は長いため息をついた。

 海洋国アマテの王子であるスサナを通じて黒い液体の調味料、醤油と白米を手に入れたケータは焼き魚から唐揚げまでさまざまな料理に使って好評を得て、そのまま貿易交渉へと話は広がっていく。
 一方その頃、力を全て失って下界に放逐された元ダ女神は女学生フレイルとして学園に潜り込み、キャベンディッシュ王子と元生徒会長を侍らせて周囲のひんしゅくを買うという、どこかで見たような光景を繰り返していた……。

 ケータがマジックバッグの製造でお小遣い稼ぎをしながら、呪われた魔道具の解呪リサイクルしている回。
 あのアンネローゼ姫は、結局、ダイエットのため諸国漫遊の巡察に出ることになります。

【ちったい俺の巻き込まれ異世界生活4】【ぬー】【こよいみつき】【ツギクルブックス】【ゆるゆると自由気ままな生活を満喫する幼児の異世界ファンタジー】【もふもふした幼児が大活躍の異世界転生ファンタジー】【小説家になろう】【ピコピコハンマー】【呪いのアイテム】【二股女劇場】【親子鑑定】
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★SNSといっしょ

2023-07-25 | 雑談・覚え書き
 現代を舞台にしたゲームものとか配信者ものだと匿名掲示板とかTwitterとかなんとかチャンネルとかSNS的なツールが状況説明の手段になったり主人公へのツッコミ役になったりしますが、それを一歩進めてSNSに投稿したり閲覧している人たちもメインキャラクターとして物語を大きく左右するタイプの話もあります。
 いわゆる「電車男」ものです。

『電車男』 中野独人(2004)
 電車内で若い女性を暴れる酔っ払いから救った青年だが、アキバ系オタクの彼には知り合った女性をデートに誘うスキルがない。思いあまって助けを求めたのは、同じようにモテない男たちが集うインターネットの掲示板だった……。
 彼女との距離を一歩一歩縮めていこうとする、後に「電車男」と呼ばれるようになる男と、彼に出来る限りのアドヴァイスを与えながら掲示板から見守る同士たちの物語。電子掲示板「2ちゃんねる」への実際の書き込みを基にした純愛ストーリー。 

小さな国の救世主』 鷹見一幸(2006)
 右も左もわからない中央アジアの国セリカスタンで内戦に巻き込まれ、パスポートと財布を奪われて草原に放り出された高校生、天山龍也はキンリの里の姫巫女リューカとその護衛である女戦士サラサに助けられたことから反体制派と行動を共にすることになる。そして気がつけば、天才軍師と祭り上げられてしまったのだが、彼はただ、インターネットを通じて掲示板などからアイデアを借りられるだけなのだ……。 

10年ごしの引きニートを辞めて外出したら』 坂東太郎(2015)
 無職で引きこもり歴10年の北条雄二は、両親の死をきっかけに引きこもり脱却を決意し、家の外に出るが、そこは見覚えのない世界。ファンタジー生物が闊歩する異世界の密林だった。
 なぜか繋がるライフラインとネットを頼りに、ユージは愛犬コタローとともに生きていく覚悟を決めるのだが……。

 書籍版での掲示板勢の扱いは小さくなっているけれど、ウェブ版では異世界冒険と扱いはほぼ互角。異世界で空から襲ってくる魔物に立ち向かうのも冒険なら、他人との接触が怖くて引きこもっていたような人間が夜中に家を出て買い物に出られるようになるのも冒険。そういう人間が全国から集まって、なにか大きなイベントを仕掛けるところまでいけば大冒険。さらに、そういう活動を通じて同性や異性の友人ができたら、完璧なサクセスストーリーというもので、この異世界と現代の交錯するさまが、実に面白くて爽快なのです。

異世界魔女の配信生活 ~いなくなった師匠が残していったものは地球に繋がる通信魔法でした。師匠の真似をして配信してお菓子をもらいます~』 
 精霊の森に済んでいる小さな魔女が師匠から教えられていたのは配信魔法。異世界人である師匠の故郷に声と映像を届ける不思議な魔法なのだ。師匠が旅に出たまま音信不通となっていたが、小さな魔女は地球の人々に配信で魔法を見せて、投げ菓子という不思議な仕組みでお菓子をもらったりして暮らしていたのだが、彼女はついにその地球の座標を突き止めることに成功した……。
 小さな魔女が師匠を探して異世界を旅したり、カレーライス食べたさに地球にまで転移してきて、視聴者の皆さんと一緒にあっちこっちに遊びに行くお話。


 パソコンやスマホの向こうにいるのは本当にAIではなく人間なのか疑っちゃう時代になりましたが、逆に言えばパソコンの向こうで突拍子もない物語が展開していたとしても、もしかしたらそれは本当に起きている事件かもしれない。何が本当で何がウソか分からない時代の物語です。
 これをパソコンの向こうの人の視点から描いたのが上記の作品で、パソコンのこちら側から見たのが『Team root-T』とかの仮想現実ゲームなのですね。これって、はまると面白くて恐ろしいのですよ。虚実の見極めがつかなくならないよう要注意です。


 
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「俺は星間国家の悪徳領主!7」 三嶋与夢

2023-07-24 | 宇宙・スペースオペラ
 連合王国の侵攻を退け、派閥を大きく拡大したリアムだったが、突如出現した魔法陣に吸い込まれ、見知らぬ世界に連れ出されていた。魔王ゴリウスによって滅びかけた国が行った勇者召喚に巻き込まれてしまったのだ。だが、リアムと同時に召喚されていた勇者カナミとは、前世で彼を捨てた妻についていった娘の香菜美だった。
 生まれ変わって姿形も変わったリアムと、成長して幼少時の面影もなくなった女子高生カナミは、互いに肉親だと気がつかないまま魔王退治に赴くのだが、帝国内の敵対勢力はその隙にリアム陣営、バンフィールド領の切り崩しに動き出していた……。

 毒親の言いなりになっていた女子高生が自立するまで。
 勇者として魔王と戦っちゃう回ですが、いつものように紆余曲折ありながらリアムは悪徳領主として行動しているけれど、領民たちからは感謝され、好意的な貴族や部下たちから感心され、敵対勢力は歯ぎしりして悔しがることになります。そして部下の騎士たちは忠誠心は篤いもののあいかわらず頭のネジが外れていて、結果的にいちばん真面な人間が割を食うことになります。そしてロゼッタのための近衛艦隊編成が始まります。

【俺は星間国家の悪徳領主!7】【三嶋与夢】【高峰ナダレ】【オーバーラップ文庫】【勘違い領地経営譚】【小説家になろう】【メイドロボ】
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「本好きの下剋上32」 香月美夜

2023-07-23 | 本屋・図書館・愛書家
「この非常時に君は本当に馬鹿ではないか?」
「……フェルディナンド様こそ、この非常時に今更わかりきったことを言わないでくださいませ」

 フェルディナンドとローゼマインは、エグランティーヌを伴ってユルゲンシュミットの礎と向かった。

 ランツェナーヴェの侵入は撃退され、中央騎士団の反乱は鎮圧された。しかし、ここまで事態を悪化させたツェントの責任は問われるべきだし、グルトリスハイトを与えられる次のツェントも決めねばならない。それをおこなうのは、他ならぬ女神の化身ローゼマインだが、もはや微塵の遠慮もなく王族に言いたい放題。その一方ですごく甘くなる面もあり、フェルディナンドも舵取りに四苦八苦。
 英知の女神メスティオノーラに助力を求めた代償に、心の内に入り込んでいる記憶の一部が絶たれているのだ。今のマインには、ルネッサンスの称号を与えた職人達の記憶がない……。

 29巻で本編完結かなと思っていたら、もう32巻。いよいよ「第5部完結目前」のアナウンスが。ウェブでは読み続けていたけれど、記憶にあるよりクライマックスが長かったです。でも、白の塔に幽閉されても1日2食に本1冊付き!を破格の好待遇だと考えているローゼマインは相変わらずでちょっと安心。もっとも、エグランティーヌに言わせればローゼマインは(本のことに関しては)自己中心的で周囲の者のことを考えもしない怖い為政者という評価みたいですが、それこそこの作品における神の有り様ですね。だからこそ、下町の家族や仲間の存在が重要なのですが。
 さて、TO通販の同梱SS「別れの女神に祈りを」は、ウェブではその意図が見えにくかったアドルフィーネ視点。だいたい、庶民育ちで(本のこと以外は)深く考えないローゼマイン以外の視点から見る話は重いのです。

【本好きの下剋上32~司書になるためには手段を選んでいられません~】【第五部 女神の化身XI】【閑話 継承の儀式】【始まりの庭と誓い】【新しいアウブのすげぇ魔術】【香月美夜】【椎名優】【TOブックス】【ビブリア・ファンタジー】【しいなゆう】【ゆるっとふわっと日常家族】【小説家になろう】【全図書館制覇は人類の夢】【抜き打ち試験】
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「おでん屋春子婆さんの偏屈異世界珍道中2」 紺染幸

2023-07-22 | 異世界転移・召喚
「『何もない』ほど尊いことはない」
 やがて女王補佐官に任命されるトマス=フォン=ザントライユの言葉。

 アステール王国の女王エリーザベトの治世は長く、概ね平穏、良き統治であったと言って良い。しかし、その晩年は、最後の年は大きな災禍が連続して押し寄せることとなった。
 長くただ1人の番人が押さえ続けていた地獄の門が開き始める中、50年前に流行した死病が再び蔓延の兆しを見せ始め、それと同じくして北の大国ロクレツァの狂えるカンダハル王がアステールへの宣戦布告なき侵略を開始したのだ……。

 お稲荷さんの都合で知らない世界に飛ばされるようになってしまった、おでん屋の春子婆さんの物語……とはいえ、春子婆さんの出番そのものはほとんどなし。幼い少女が父王や兄の死によって即位し、国政を舵取りし、国を護り、老いて後継者へと引き継ぐまでの群像劇なのです。「珍道中」とあるけど、実質的にアステール王国年代記です。
 異世界アステールでいろいろ悩み苦しみ疲れた人たちがターニングポイントに到達したとき、どこからともなくやってくる謎の存在が春子婆さんなのです。つまり、『クイン氏の事件簿』のハーリー・クィン氏みたいな存在ですね。影響力はあっても自ら働きかけはしないのです。アスタールの人々には密かに神の使いであるフーリィと思われているようですが、フーリィは狐の姿をしているのです。婆さんは、ただおでんを食わせるだけ。 
 そして、1巻ではてんでに行き交い、さまざまな生き方をしていた老若男女の人生がこの2巻で交錯し、それぞれの積み上げてきたものが組み合わさって国難に挑むこととなります。ウェブでの第一章「女王エリーザベト治世下」はこれにて完結。

【おでん屋春子婆さんの偏屈異世界珍道中2】【紺染幸】【あまな】【ブレイブ文庫/一二三書房】【偏屈婆さんが行く、ぽかぽかおでん群像劇】【ゆで卵を食べる順番】【糸こんにゃく】
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「未プレイの乙女ゲームに転生した平凡令嬢は聖なる刺繍の糸を刺す」 西根羽南

2023-07-21 | 異世界転生
「悪いことや嫌なことなんて、生きていれば沢山あります。何の危険もないものなんて存在しません。大切なものなら、自分も守る努力をしたらいかがですか」
 エルナはグラナート王子につい説教してしまう。

 学園の入学式で子爵令嬢エルナは、自分が乙女ゲーム「虹色パラダイス」の世界に転生した転生者だと気づいた。しかし、彼女はゲームそのものは未プレイだ。それでなぜ分かるかというと、髪の毛が虹色のヒロインなんて出てくるのは「虹色パラダイス」以外に考えられないからだ。当然、役に立つ情報は持っていない。友人がプレイしていて話をしたのを聞いた記憶があるだけだが、「今日の講義の課題、やってきた?」「学食のサンマーメン」とか雑談ばかり思い出してしまう。
 平凡な子爵令嬢なので、当たらず障らずモブとして生きようとするのだが、いつの間にかヒロインらしき美少女が親友になり、メイン攻略対象らしき美貌の王子に「名前を呼んでほしい」と追いかけられるはめに陥っていた……。

 ふと手に取った妻にも好評。未プレイの乙女ゲームに転生した少女の学園生活。
 ゲーム世界に転生した話も増えましたが、ゲーム知識で無双ばかりの中に「ゲーム世界と分かったけど使える知識がない」パターンが散見されるようになり、今は「ゲーム世界なのにゲーム知識がないなら、ただの異世界転生と何が違う?」というポイントで差別化している段階……かな。
 いろいろ張られた伏線からタイトルまで回収しつつ、きれいに全1巻。さらにお母さんの若かりし頃の話が読みたいです。

【未プレイの乙女ゲームに転生した平凡令嬢は聖なる刺繍の糸を刺す】【西根羽南】【小田すずか】【ダッシュエックス文庫】【刺繍好きの平凡令嬢×美しすぎる鈍感王子の焦れ焦れラブファンタジー】【誘拐】【刺繍】【聖女】
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「薬屋のひとりごと13」 日向夏

2023-07-20 | ミステリー・推理小説
 一年ぶりに中央に帰ってきた猫猫たちは、また以前の仕事や生活に戻りつつあった。
 しかし、官僚の中には玉葉后の息子が東宮にふさわしくないと他の皇族を立てようと考える者たちがおり、さまざまな権謀術数が乱れ飛んでいた……。

 猫猫と壬氏の関係が進みそうで進まず、皇位継承が絡むことでますます距離が開きそうですが、何よりの問題は猫猫自身に恋愛や結婚や出世に憧れとか希望がまったくないことなのです。

【薬屋のひとりごと13】【日向夏】【しのとうこ】【ヒーロー文庫】【見目麗しい中世の痛快ミステリー】【小説家になろう】【ウェブ小説】
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「私の心はおじさんである」 嶋野夕陽

2023-07-19 | 異世界転生
 友人も恋人もいない孤独な毎日を過ごしていた43歳のサラリーマン、山岸遥は気がつけば異世界にいた。死んだ覚えも何もないのだが、その身体は見事なプロポーションのダークエルフの美女になっていたのだ。
 その能力はまさにチートな、肉弾戦も強い、魔力無尽蔵の魔法使い。けれども、臆病でお人好しで対人関係が苦手なおじさんの心が足枷になって、異世界の片隅で冒険者になって日雇い暮らしで生きていこう……くらいのつもりになっていたのだが……。

 力の加減が出来なくて練習試合でも相手を殺しかねない最強美少女ダークエルフ(心はおじさん)の冒険譚。鋼の肉体に圧倒的な魔法力を持ちながらもウジウジしていたハルカが、同期で冒険者登録した少年少女たちに誘われるままパーティを組み、自分の世界を広げていく物語です。
 ウェブでも読んでいたけれど、書籍を読んでいたら思わず続きが読みたくなり、駆け足で最新話まで。まとめ読みしたら、また面白かったよ。赤ん坊を拾ったあたりから一気に面白くなりましたが、話がパターンにはまらずに愉しく読めます。
 レギュラーメンバーの顔ぶれが多彩なのも特色。肉体言語に走りがちな少年と金勘定が最優先の少女の幼馴染みコンビに、ドワーフの息子で物静かで小柄な獣人の少年を軸に、なんでもできるけどなんにもしないハルカが巧く絡み合います。ここからさらに一癖も二癖もある仲間が増えてきますので、続きがますます楽しみになります。
 あ、この話は『ロードス島戦記』以来の由緒正しき「エルフは肌が白くて美人でスリム、ダークエルフは肌が褐色でグラマラス」な作品です。

【私の心はおじさんである】【嶋野夕陽】【NAJI 柳田】【PASH!ブックス】【歪だけど王道な冒険の物語】【小説家になろう】【カクヨム】【TS転生】

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「現代ダンジョンライフの続きは異世界オープンワールドで!2」 しば犬部隊

2023-07-18 | 異世界転移・召喚
「俺は俺のやりたいようにやる。そうだ。俺の、俺達の冒険でがきんちょを見捨てるなんてダセえ真似出来る訳がねえんだ」
 現代ダンジョンで死んだ強欲探索者、遠山鳴人は損得勘定も謎のヒントもすべて無視する。

 強欲冒険者の遠山鳴人は蒐集竜アリスと「友達」となった。それはそれだけで誰もが信じられぬことなのだが、トオヤマナルヒトのやることすべてが彼の思惑を超えて最悪の方向に転がり出していくのだ。
 裏の世界に君臨する“カラス”なる組織と対立してしまうし、再会した元勇者パーティの塔級冒険者ウェンフィルバーナとはなぜか見知らぬ間柄として帝国の護り竜アリス・ドラル・フレアテイルを巻き込んでの殺し合いとなる。果てはこの世界における一大勢力である天使教会の最高戦力、第一騎士ストル・プーラから断罪されてしまう……。

 異世界に放り出されて一度は奴隷に落ちてしまった遠山が望むのは、友人であるリザドニアンのラザールと小さなパン屋を営むことだけなのだけれど、世界の全てがそれを否定し、彼はそれに正面から立ち向かいます。奇々怪々な術を使う教会騎士を相手に強欲冒険者が知恵比べやら殺し合いやらの大暴れ。とりあえず糸目の大主教が寿命を3年使ってまで五体投地するところまで。
 遠山が巻き起こす/巻き込まれた事件の数々には、領主もギルドマスターも真っ青。それでも常人に出来る範囲のベストを尽くそうと、震えながら立ち向かう2人には「がんばって!」としかいえません。
 今回も絶好調です!

【現代ダンジョンライフの続きは異世界オープンワールドで!2】【しば犬部隊】【ひろせ】【オーバーラップ文庫】【強欲冒険者はメインクエスト(BADエンド)をぶちのめし、冒険者とパン屋をやりつつ、現代オタク知識を活用して欲望のままに冒険都市で成り上がります】【竜の寵愛を受ける強欲冒険者の、異世界ファンタジー活劇】【小説家になろう】
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「極めて傲慢たる悪役貴族の所業」 黒雪ゆきは

2023-07-17 | 異世界転生
 ギルバート侯爵家嫡男であるルーク・ウィザリア・ギルバートは、まさに貴族そのものというべき傲岸不遜さで才能に溺れていた。
 そのルークが突如として剣の修行に励みだした。魔法重視の貴族にとって剣術など児戯に過ぎないはずだが、そこで瞬く間に頭角を現し、ついで希少で貴重、光魔法と双璧となる闇魔法に覚醒。
 アスラン魔法学園に入学する時点で、既に魔法でも剣技でもトップクラスの技量となっていたが、まだまだルークは鍛錬の手を緩めない。この学園には彼が名前も覚えていないライトノベルの主人公が入学しているはずなのだ。そう、ルークは破滅エンド確定の悪役キャラの役割を与えられた転生者だったのだ……。

 ひとことでいうと、SとMはあざなえる縄のごとし。光源氏計画によって加虐と被虐、両極をぐるんぐるんと行ったり来たりする伯爵令嬢アリスの性癖のゆがみっぷりがポイント。
 才能に溺れて努力しなかったやられ役が努力をし始めたらどうなるのか? それによる影響は何処まで連鎖していくのか……という悪役転生譚です。運命に抗い、現代日本的なイイ人になろうとしても、強制力が働いて巧く話せない、動けないという条件下で、いかに努力を積み重ね、足場を積み上げていくかという物語。
 登場人物に口が悪い人が多いのだけれど、年齢性別に関係なくヤンキー的に乱暴な言葉が多い気がしました。そんないい歳してティーンエイジャーのチンピラ口調ではイカンだろ?……みたいな。

【極めて傲慢たる悪役貴族の所業】【黒雪ゆきは】【魚デニム】【角川スニーカー文庫】【悪役転生×最強無双】【ハーメルン】【カクヨム
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