付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

私的年間ベスト2023

2023-12-31 | ランキング・カテゴリー
 今年も「小説家になろう」等、ウェブ小説が初出の作品を中心に豊作。
 ただ、勘違いしちゃいけないのは、いわゆる「なろう小説」というのは、「現代ダンジョンで配信している凄腕冒険者だが、なぜか人気がまったくなかったのだが、人気の美人配信者を助けたことから再評価されて人気爆発する」現代ファンタジーとか、「マイクの切り忘れから隠していたプライベートが露見して人気爆発」する配信者ものとか、「なんか誰かに酷いことをされたらしい主人公が、その相手を延々と追い詰めて復讐するシーンが続く」悪役令嬢ものとか、そういう人気の定番パターンに沿って書かれた小説……という意味ではないのです。誰でも、自由に書きたいものを書けるプラットフォームに投稿された作品群というだけなので、そこには前期のお約束パターンものも多いけれど、そうでないものもいくらでもあって、探す気があればいろいろ掘り出し物はあるのです。


ゆるコワ!』 谷尾銀
 暇を持て余した女子高生2人がオカルト研究会を立ち上げたものの、部室を手にいれ維持するには活動報告をしないといけない。そこであちこちの心霊スポットを探索し、調査結果を会報にまとめることにしたのだが……。
 連作短編形式のJKオカルトハントものですが、特にスゴい霊能力があるわけでなし、深淵を覗いたオカルト知識があるわけでもないので、なんかあそこに行くと祟られるらしいよ>行ったら普通に祟られたという身も蓋もない顛末を、あまり深く考えない無敵の女子高生モードで突っ走るだけなので、雰囲気的には小野不由美の『ゴーストハント』というより諸星大二郎の『栞と紙魚子』の方が近いかも。

凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ』 しば犬部隊
 南海の孤島に突如出現したバベルの大穴というダンジョンに挑む世界各国のトップ探索者たち。その中でトップレベルの異能持ちの中のさらにトップ、アメリカを代表する指定探索者アレタ・アシュフィールドのチームには、平凡な日本人アジヤマ・タダヒトが補助として加わっていた。彼を“アメリカ52番目の星”にまとわりつくクズと罵倒する外野の者たちは知らない。アジヤマがアレタに寄生しているのではない。アジヤマを監視し保護するために世界トップクラスの探索者たちがパーティを組んでいるのだ……。
 凡人探索者が現代ダンジョンに挑んでいくうちに、その奥底に潜む大いなる存在をぶちかましていくことになる、血しぶき舞い散るバトル小説。どいつもこいつも裏の顔が2枚か3枚あり、良い人も悪い人もガンガン不条理に死んでいくことになります。

太っちょ貴族は迷宮でワルツを踊る』 風見鶏
 食う寝るだけの貴族の三男、ミトロフ・ド・バンサンカイは冒険者にでもなれと実家を追い出されてしまうが、食費稼ぎでミトロフが足を踏み入れた迷宮は、常に死と隣り合わせの世界。そこで偶然に出会ったエルフ族の少女グラシエとミトロフは共闘することにしたのだが……。
 褒められるべきところで褒められず、叱られて育った少年の再生譚です。太っちょ悪役が転生によって改心して痩せる話はそこそこありますが、転生ものじゃないし、なかなかすぐには痩せもしません。少年がこんな風に育ってしまった過程とそこからの立ち直りをきちんと、過不足なく面白く読ませちゃうテンポの良さ。あと、風呂。サービスシーンの場所ではなく、これがないと冒険稼業は出来ないという冒険者再生の場としての風呂なのです。

私の心はおじさんである』嶋野夕陽
 友人も恋人もいない孤独な毎日を過ごしていた43歳のサラリーマン、山岸遥は気がつけば異世界にいた。死んだ覚えも何もないのだが、その身体は見事なプロポーションのダークエルフの美女になっていたのだ。
 その能力はまさにチートな、肉弾戦も強い、魔力無尽蔵の魔法使い。けれども、臆病でお人好しで対人関係が苦手なおじさんの心が足枷になって、異世界の片隅で冒険者になって日雇い暮らしで生きていこう……くらいのつもりになっていたのだが……。

 鋼の肉体に圧倒的な魔法力を持ちながらもウジウジしていた最強美少女ダークエルフ(心はおじさん)が、同期で冒険者登録した少年少女たちに誘われるままパーティを組み、自分の世界を広げていく物語です。

バスタード・ソードマン』 ジェームズ・リッチマン
 地方都市レゴールでギルドマンをしているモングレルは、仲が悪いハルペリア人とサングレール人のハーフで、生まれた村は幼い頃の戦争で滅んで両親も死んでいる。そんなモングレルは実はスゴいギフトも持っている転生者だが、目立ってもろくなことはないとほどほどに戦って、ほどほどに遊び、上げられるランクも上げずに生きている。へたに名が売れて、敵対国家とのハーフが貴族の目に留まっても良いことはないのだ……。
 基本的にスタンピードや魔王の出現みたいな大事件は起きず、国家間の陰謀とか貴族の面倒ごとには巻き込まれないようスローライフしている、珍武器マニアなおっさんギルドマン日記です。

魔女と傭兵』 超法規的かえる
 その大陸には、もはや生き残っている魔女は多くない。超常の力を振るう魔女は人々から恐怖の象徴として恐れられており、普段はアンタッチャブルだが、ときおり威信を高めようとか名声を得ようとか魔女討伐を言い出す王や領主が出現してしまう。魔女シアーシャは、魔女討伐軍唯一の生き残りである傭兵のジグに誰にも追われない場所まで連れて行って欲しいと依頼したのだが……。
 それで別の大陸に渡ったら、そこはモンスターが跋扈していて、とても人間同士争っている暇などない世界だったというバディもののヒロイック・ファンタジーです。

冒険者ギルドが十二歳からしか入れなかったので、サバよみました。』 KAME
 知り合いの行商人に頼んで辺境の農村から町へ単身で稼ぎに出た9歳の少年キリだが、文字が読めたのが幸い。行商人に働き口を紹介してもらうどころか奴隷商に売り飛ばされそうだと気がついて、キリは逃げ出し、冒険者で食っていこうと覚悟を決めたのだが、冒険者ギルドは12歳からしか加入できなかった……。
 いきなりスキルに覚醒して無双するとか、意思を持つアイテムやモンスターに助けられちゃうとか、前世記憶で一攫千金とかとかならない、田舎から出てきた普通の少年の成長譚。薬草採取を続け、ゴブリン1匹に出くわしても命の危機という地味な成長譚だけれど、だからこそ語り口が面白くて最後まで楽しめます。

帝国第11前線基地魔導図書館、ただいま開館中』 佐伯庸介
 最前線こそ娯楽は必要。さもなくば兵の士気は下がりっぱなしだ。そして、読書こそもっともコストパフォーマンスに優れた娯楽なのだとの皇女の肝いりで、最前線基地の1つに蔵書3万冊という図書館が設けられたのだが、そこに司書として赴任したカリアにはもう1つ極秘の仕事が与えられていた……。……。
 眼鏡で八重歯で巨乳にソバカスで口が悪い魔導司書が、戦争という現実に立ち向かう英雄譚。書架の整理、貸し出し業務、延滞図書の回収、傷んだ本の修復、リクエストに応えての本の取り寄せ、レファレンスまで、図書館の仕事がそのまま最前線で起きるさまざまなエピソードと絡み合います。

貧乏騎士に嫁入りしたはずが!』 宮前葵
 侯爵令嬢といっても11番目ともなると教育に金もかけられなくなってくる。そこでそれならいっそと田舎で奔放に育てられたラルフシーヌは、成人のお披露目の際に見初められた貧乏騎士セルミアーネと結婚。ところが王太子の病死や戦死やらで王位継承権が繰り上がり、気がつけばセルミアーネが王太子に繰り上げられていた……。
 後に「規格外皇妃」と呼ばれることになるラルフシーヌの半生記。スラップスティックかと思いきや、野人令嬢が何万もの人々の生命財産に責任を持つ怖さを自覚するあたり、きちんと公私にメリハリついてます。

サムライ転移』 四辻いそら
 戦国時代も末期。武者修行の旅に出ていた黒須三兄弟の末っ子、元親は気がつけば見知らぬ森に迷い込んでいた。そこで彼が出会ったのは土気色の肌をした小男たち。そいつらはこちらの話も聞かず、棍棒を振りかざして襲ってきたのだが……。
 戦国末期に武者修行の旅を続けていた武芸者が、気がついたら異世界に紛れ込んでいたという、異世界転移ソードキルみたいな物語。一度刀を抜いたら殺すか殺されるかの世界に生きていた彼には、もっぱらモンスターくらいしか相手にしていない冒険者はぬるすぎますが、かといって人間を相手にする傭兵でも武芸十八般を身につけ、戦国の世で殺し合い続け腕を磨いていた元親の相手になる者はさほど多くないのです。恐るべし、戦国日本!!


 あと望むなら、もっと作品内容に合わせた挿絵を描けるイラストレイターを起用してもらえると、嬉しいな。スペースオペラなら主人公たちの活躍の場となる宇宙船の姿を一度は見たいし、ヒロイックファンタジーならモンスターなど敵と戦う活劇シーンとか。そういうイラストもない本なら最初からなしでも良いよ。あと、本文の描写とイラストは整合させようね。胸が小さいのを気にしているヒロインのイラストがスイカみたいな胸になっているのを見た時は、憤死するかと思いました……。
 だいたい、イラストが良い話は本文も面白いのですけど、本文が面白いのにイラストがダメだとションボリです。売る気があるのかと。
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★ファンタジー今昔

2023-12-31 | 雑談・覚え書き
 今でこそ剣と魔法のファンタジーはあたりまえですが、70年代あたりまでは『桃太郎』とか『かぐや姫』みたいなファンタジーとメルヘンとおとぎ話でひとくくりにされていて、それにせいぜいギリシア神話とか児童文学系作品あたりがくっついていた程度でしたが、今ではいつの間にかファンタジーと言えば剣と魔法の冒険と認識されるようになっていたのでした。

太陽の王子・ホルスの大冒険』 東映動画(1968)
 アイヌ伝承をモチーフに、少年ホルスが旅の途中で出会った岩の巨人や村人たちと力を合わせて悪魔グルンワルドと戦う冒険マンガ映画。朝ドラ『なつぞら』のモチーフにもなってます。
 和田慎二がグルンワルドの妹ヒルダの大ファンだというのは有名。美少女キャラの代名詞で、(ファンジンや雑誌の投稿を見る限り)クラリス登場までそのトップ独走状態でした。ヒルダの声を担当したのが市原悦子だけれど、『家政婦は見た!』でしか市原悦子を知らない世代はびっくり。

『王家の紋章』細川智栄子あんど芙〜みん (1976)
 財閥令嬢キャロル・リードは王家の呪いによって太古のエジプトへとタイムスリップしてしまう。その金髪碧眼の美貌から少年王メンフィスに見初められるのだが、彼女の真価は何よりも現代科学と歴史の知識にあった……。
 現代人が過去にタイムスリップして現代知識で成り上がる現在のウェブ系ファンタジーの原典ともいうべき少女マンガ。実は未だ連載中で新刊が出る最長不倒作品。これを読んでいると、水のろ過技術とか鉄剣の製法は義務教育と思い込むようになります。

『ヤーケウッソ物語』 中山星香(1977)
 『指輪物語』に傾倒し、ハイファンタジーを描きたくてたまらないけれど、そんなものは世に受け入れられない時代だったので、スラップスティック・コメディにファンタジー要素をちりばめながらの下準備を続けた作者のデビュー作。その経緯が分かるのは、あれこれ描き続けたロマンチック・コメディのコミックにエッセイマンガの形で「三剣物語という構想がある」などと毎回書き綴っていたから。

『ピグマリオ』 和田慎二(1978)
 妖女メデューサによって母ガラティアを石に変えられてしまっていた東方の小国ルーンの王子クルトは、メデューサを倒して母を救うべく遙か西への旅に出たのだが……。
 少女マンガ誌で始まった少年が主役のファンタジー。まだヒロイックファンタジーというジャンルに馴染みがなく第一部で打ち切られたものの、82年に再開されて長期人気作品に。

『クリスタル★ドラゴン』 あしべゆうほ(1981)
 緑の原の一族の少女・アリアンロッドは皆殺しにされた一族の仇を取るために、族長の娘ヘンルーダとともに旅に出た。やがて、強大な力を得る「竜の杖」を手に入れるが、そのまま水晶竜の夢の中に入り込んでしまう……。
 『悪魔(デイモス)の花嫁』で一世風靡していた作者によるケルト神話系をモチーフに、黒髪の美少女の探索の旅を描く大河ロマン。友人のおだったさんが揃えていて読ませてもらっていました。これも息は長く、最新刊は2020年。

『妖精国の騎士』 中山星香(1986)
 ハイファンタジーが描きたい作者も80年頃からロマンスやロマンチック・コメディの体裁で舞台設定がファンタジー世界の物語を送り出し始め、『エルブラントの青い瞳』や『花冠の竜の国』などを発表。86年にはついに本格的ファンタジー『妖精国の騎士』が始まります。

ロードス島戦記(1986)
 パソコン雑誌でのテーブルトークRPG『Dungeons & Dragons』の誌上リプレイから始まった、呪われた島ロードスを舞台に、田舎の若者パーンがエルフやドワーフなどを仲間にしながら続ける旅で繰り広げられる冒険譚。エルフの耳が細長く、女性は胸が薄いという概念はここで固定されました。
 TRPGから誌上リプレイ、書籍化、パソコンゲーム化、アニメ化と、その展開がそのままファンタジー普及の歴史みたいなものですが、一般にまで広まるには小説『ハリー・ポッター』や映画『ロード・オブ・ザ・リング』の大ヒットを待つしかありません。

ハリー・ポッターと賢者の石(1999)
 現代にも魔法使いは存在していて、一般人の知らないところで勢力を保っているのだという、1990年代のイギリスを舞台にした物語で、海外でのヒット後の99年に日本語版が刊行。魔法使いの少年ハリー・ポッターの学校生活にさまざまな不思議な事件や危険な陰謀が舞い込んでくるが、それはいずれもハリーの両親を殺害した強大な闇の魔法使いヴォルデモート復活のための布石であった……という話。

ロード・オブ・ザ・リング(2001)
 人間、ホビット、エルフ、ドワーフなどが住む中つ国(Middle-earth)を舞台に、世界に混沌をもたらし支配しようとする冥王サウロンを滅ぼすために必要な、全てを統べる「一つの指輪」を破壊するための冒険の物語。もはや現代ファンタジーの原点というべき『指輪物語』をピーター・ジャクソンが映画化したもの。
 この大ヒットで、ファンタジーの基本フォーマットが一般大衆に定着したような気がします。


 このあたりから、ウェブ小説が次第に活発になり、ゲームやコミックから逆流するような感じで転生ものやらダンジョン攻略ものなどが増え始めるのですが……。
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「淡海乃海 水面が揺れる時 十五」 イスラーフィール

2023-12-30 | 戦国転生・歴史改変
「人を気遣うとは人に関心を持つ事なのだ。人に関心を持つ者だけが人を纏める力を持つ。そして人を纏められる者だけが大きくなれるのだ」
 児玉元良は相国が周囲の者に気遣えることは重要なことなのだと、今ひとつ理解していなかった息子・小次郎を叱責する。

 ついに朽木基綱は九州平定に動き出した。動かす兵は15万。龍造寺でさえ、その1/3も動員できないだろう。基綱はこれを最期に龍造寺も大友も潰す覚悟だ。
 彼は既にその目を日本統一の先に向けている。重税が続いて経済が崩壊しつつあり、国が倒れようとしている明が、交易でその銀を吸い上げている日本に矛先を向ける可能性。あるいは明が亡びるのに乗じて極東進出を画策する南蛮勢力が、その足がかりとして日本に攻め寄せる可能性。いずれも十分にあり得る話であった……。

 物語の中心は、九州平定で主に龍造寺との最終決戦と、それに加わった毛利家中の思惑から戦後始末まで。それから徳川のその後とか、初陣したい子供たちの話とか、あちこちで検討される婚姻外交のあれこれ等々。表紙の基綱像がまさに魔王みたいです。

【淡海乃海 水面が揺れる時 十五~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【幸せ】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】【小説家になろう】【日本水軍】
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「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた8」 七斗七

2023-12-29 | アイドル・声優・芸能
 記憶喪失設定のVTuber、五期生のダガーが配信企画を上手くこなせず落ち込んでいるのを見かけた淡雪は、ここは先輩らしく励ましてやりましょうとストゼロをこっそり渡してやったのだが、それが予想もしない波紋を呼んだ。
 自分ももらっていないのに!というやつはおいといて、先輩からもらったスト○○を呑みながら配信していたダガーが、酔っ払ったはずみに記憶を取り戻してしまったのだ。
 記憶喪失という唯一のアイデンティティーを失ったダガーは……。

 意味がわからないかもしれないけれど、そういう話の回です。
 あとはバレンタインデー企画とか。

【VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた8】【七斗七】【塩かずのこ】【ファンタジア文庫】【衝撃のVTuberコメディ】【ななとなな】【ハーメルン】【カクヨム】
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「インベーダー・サマー」 菊地秀行

2023-12-28 | 破滅SF・侵略・新世界
「10年以上、おれは青い山と空を見ながら暮らしていた。で、ようやくこのごろわかってきたのさ。おれたちは、万古不易のものがあるからこそ、世の中を変えようと意気込んでいたんじゃないかなって」
 人間の心など山脈ひとつに及ばない尻軽女だとかつての革命の闘士、夕笛日報の大友記者。

 北アルプスを望む信州の夕笛市、その夏の日。幽霊屋敷と呼ばれている住宅街の一軒家に不思議な美少女、東やよいが住み着くようになって町は変わっていった。
 男子生徒の描く風景画の空はこの世のものではない色彩を帯び、校長のあいさつの言葉が奇怪な言葉に変わり、他の男性教師や男子生徒の言葉も変貌していく。そして、それに合わせて周囲の風景も少しずつ変化していった。
 自分たちの存在が不確かなものとなり、血と肉と記憶があやふやになっていく者が増えていく中、同じ男性でも日本剣道界の至宝とも呼ばれる片桐学だけは不思議と影響を受けていなかった……。

 美しい少女への愛慕が引き起こす、静かなる侵略の顛末。
 菊地秀行が『妖神グルメ』や『風の名はアムネジア』など、伝奇ホラーからポストアポカリプスまでさまざまなタイプの作品を書きまくっていた時期の代表作。結局「魔界都市」とか「闇ガード」などの伝奇バイオレンスアクションが主流となるわけですが、このあたりの静かに迫る恐怖とノスタルジーとロマンスの融合というのも面白いのですよ。

【インベーダー・サマー】【菊地秀行】【天野喜孝】【ソノラマ文庫】【当代きってのストーリーテラーがリリカルに謳い上げる、あるひと夏の侵略】【初源的人間】【金髪のジェニー】
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「稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ2」 嵐華子

2023-12-27 | 異世界転生
「だって貴女、可愛らしいわ。馬鹿な子ほど可愛いと言うじゃない?」
 確かにシエナは愚かで自己中心的で嫉妬深く、何かとラビアンジュを敵視し憎み、時には命に関わる嫌がらせをしてきても、ついつい彼女はこの愚劣な義妹を祖母目線で見てしまうのだ。

 転生を繰り返した天才魔法師ラビアンジェは【無才無能】として平穏な日常を堪能していた。前々世の魔術も、前世の科学知識も、今世でもあいかわらず彼女に懐き倒している聖獣の力もあえてないものとしている。無才無能だから、特に何かしなくてもいいのだ。できないんだから(と本人は主張している)。
 しかし、箱庭事件の元凶である義妹シエナへの周囲の学生たちからの風当たりはきつくなっており、シエナはラビアンジェへの報復を考えるようになっていた。もちろん逆恨みである……。

 わたし、無才無能なのよーと言いつつ、バカにされても気にしなく、その実、別名でデザイナーとして活躍していたり、人気のベストセラー作家だったりするし、いざとなったら世界中の聖獣が助けに来てくれる主人公が、ふりかかる火の粉を片手で払いのけながらスローライフを楽しむ物語。
 ウェブ小説の「ざまぁ展開」ものは、最初の5分で水戸黄門の印籠が出るとか、お奉行様が諸肌脱ぐような展開が増えて、なんか最初に主人公にヒドいことしたらしい仇役が延々と裁きを受けるだけみたいな話が長短問わず増えた気がします。ここまで来ると一種のSM小説ですね。愛の名の下にふるう鞭ではなく、正義の名の下に棍棒ふるってるんですが。
 この話にそんな歪な正義を感じないのは、主人公がもう過去のことは関係ないよと勝手に水に流し、これからのことはそのつどやり返すから問題ないよというサバサバ感があるからのような気がします。そもそも、相手がどんなヒドいことをしたと思っても、本人がなんにも苦にしていないという、まさに横綱相撲。

【稀代の悪女、三度目の人生で{無才無能}を楽しむ2】【嵐華子】【八美☆わん】【カドカワブックス】【中身がお婆ちゃんな天才魔法師的スローライフ】【カクヨム】【小説家になろう】【幽霊騒ぎ】【ハリセン白刃取り】【チャンバラハリセン祭り】
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「レッドスーツ」 ジョン・スコルジー

2023-12-26 | 宇宙・スペースオペラ
「おまえは現実だ。しかし、虚構のテレビドラマがわれわれの現実を侵食しねじ曲げているのだ」
 そして何よりの問題は、そのドラマがあまりできが良くないことなのだとジェンキンズは告げた。

 紆余曲折あって3年遅れでアカデミーに入学したアンドルー・ダールは、卒業後、新任少尉として銀河連邦艦隊の旗艦イントレピッド号に配属された。
 当初は銀河連邦の主力艦に配属され、未知なる宇宙への冒険の旅が始まると期待していたダールや同期のマイア・デュバル、ジミー・ハンスンだが、彼らは間もなく艦内が奇妙なことになっていると気づいた。
 既知の怪物の襲撃や伝染病など、特定の士官と同行する任務でのクルーの死亡率が異常に高いのに、艦長たち上級士官はまるで死なず、一般乗員は艦長や副長らに呼び止められて任務を言いつけられないよう持ち場から離れたがらない。そして、通常の手順では解決できないトラブルが起きたときには、謎の装置「ボックス」を持ち出して適当にボタンを押して放置していると、そのうちに適当な解決策が出力されてくるのだが、その出力画面も上級士官以外には無意味な記号の羅列にしか見えないのだ……。

 ゲーム世界転生・ラノベ転生ではないけれど、なぜか古の人気テレビ番組『スタートレック』……ならいいのだけれど、そのパクりの(シナリオの出来が悪すぎる)番組が、この世界のリアルに影響を及ぼしていて……そんな大昔の話がどうして!?というところからの若干のメタ的描写が混じりつつの右往左往。タイトルは『レッドスーツ』ですが、原題はレッドシャツ、つまりSFドラマ「宇宙大作戦」で何かあると真っ先に死んでしまうポジのセクションが赤服なんですね。
 艦長や副長あたりと絡むと事件に巻き込まれて死ぬ確率が高くなるので(上級士官3人が同行したら確実)、上級士官との接触を避けようとするローワー・デッキのクルーたちの奮闘劇ですが、できることなら用事を言いつけられないよう船底に隠れていたいけど全員は隠れられないだろう?と主人公が覚悟を決めて理不尽に立ち向かいます。

【レッドスーツ】【ジョン・スコルジー】【工藤稜】【ハヤカワ文庫SF】【宇宙冒険ユーモアSF】【生け贄効果】【イントレビット号航宙記】
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「地獄の門(下)」 ビル・シャット&J・R・フィンチ

2023-12-25 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「アラモ砦を思い出すんだ」

 ナチス親衛隊の捕虜となってノストロモ基地に拘束されたマックレディは、ヴォルフ大佐から密林に棲み着いている生物の駆除への協力を依頼された。しかし、それは生きた生物の体内でしか繁殖できない致死性細菌を確保するためだった。
 完成した細菌兵器は打ち上げ台のロケット爆撃機、シルヴァーバードに搭載され、今まさにパイロットとしてハンナ・ライチュが乗り込もうとしていたのだが……。

 とりあえず上巻の雰囲気ままに下巻は突っ走ります。まさに動物学者版インディー・ジョーンズ。エピローグ後に「真偽の確認」という一節があって、登場した人物や事件やアイテム等について「これは真実」「これはモデルがいる」等あれこれ書き綴っているのだけれど、ここらがむしろ本編より面白いかも。ハンナ・ライチュあたり、本編でのさらっとした描写より、こちらの略伝の方がスリリングです。
 「科学と歴史とアクション」の融合が売りで、主人公のマックレディ大尉とこの話で行動を共にすることになる動物行動学者ヤンニのコンビは「The R. J. MacCready Novels」として既刊3作が刊行されていますが、残り2作は未訳。大プリニウスの書とイエティが絡むチベット編「The Himalayan Codex」、地中海の孤島を舞台にファティマの預言書が事件を巻き起こす「The Darwin Strain」とか、ちょっと面白そうじゃありませんか? シリーズの推薦文をジェームス・キャメロンが書いているので、映像化の話が出たらワンチャンあるかも。
 ただ、満州の731部隊から送り込まれた日本人研究者、キモノに木製のサンダルはやめて欲しかったなー。日本人への認識は60年代の『007は二度死ぬ』とか『素晴らしきヒコーキ野郎』あたりから変わってないのかしら?

【地獄の門(下)】【ビル・シャット&J・R・フィンチ】【坂野公一】【竹書房文庫】【アメリカ軍×ナチス&日本軍×吸血蝙蝠】【チュパカブラ】【神経伝達物質】【731部隊】【ハンナ・ライチュ】【オイゲン・ゼンガー】【デスモドゥス・ドラクラエ】【ヴァンデリア・キローサ】【内部共生生物】【レオニダス飛行中隊】【コルスン包囲戦】
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「最後のユニコーン」 ピーター・S・ビーグル

2023-12-24 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「ユニコーンを捕らえるためには、黄金の馬銜など必要ない。それはおとぎ話の作り事だ。心を純潔に保つだけで良いのだ」
 美しい1頭のユニコーンがライラックの森にたったひとりで住んでいた。もともとユニコーンはひとつの土地にひとりぼっちで住む習性だったのだが、そのため自分が最後のユニコーンになっていたことをなかなか知ることはなかった。
 狩人たちの会話から、ただひとり生き残ったユニコーンであることを知った彼女は、本当に自分しかいなくなったのか、ちょっと見に行ってみようと森から離れたのだが……。

 仲間を探すために旅に出た、この世でもっとも美しい生き物ユニコーンが、恐ろしい魔物や魔法使いに出会ったり、傷ついた人間に出会ったりする探索行の顛末。
 新版のイラストは天野喜孝。巧くて綺麗だけれど少し妖艶すぎて、ちょっとイメージが違うかな。

【最後のユニコーン】【ピーター・S・ビーグル】【Frank & Jeff Lavaty】【ハヤカワ文庫FT】【モダン・ファンタジイの最高傑作】【赤い牡牛】【竪琴弾き】
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「一夢庵風流記」 隆慶一郎

2023-12-23 | 時代・歴史・武侠小説
 戦国時代末期、前田家の跡取りとして養子に迎え入れられながら、叔父の利家が家督を継いだことで慶次郎は前田家というしがらみから解き放たれた。
 彼は死ぬも生きるも運まかせと朱柄の槍を振り回して単騎で戦場に斬り込む無類のいくさ人であり、茶の湯を好む当代一流の風流人でもあったが、なによりも「天下のかぶき者」として知られていた。世に彼を縛るものは何もない……。

 乱世を風に舞う花びらのように、美しくも自由奔放に生きた前田慶次郎の一代記。
 少年ジャンプでの原哲夫のコミカライズで一気に名前が広がり、この集英社文庫も表紙イラストは原哲夫です。カッコいいよね。でも、Amazonで検索すると、コミック『花の慶次』か新潮文庫版しかかかってこないので、グーグル検索にかけないと見つかりません。この小説だかコミックがきっかけとなったのか、戦国転生ものでは何かと便利に使われるキャラクターです。オールマイティー札。出世欲はなさそうなのに文武両道。興味の赴くままに風のごとくの流浪雲。なので、戦国もので主人公の隣に置きやすいのですね。

【一夢庵風流記】【隆慶一郎】【原哲夫】【集英社文庫】
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「地獄の門(上)」 ビル・シャット&J・R・フィンチ

2023-12-22 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「宇宙はわれわれが想像する以上に奇妙な場所であるだけではない。われわれが想像しうるよりも、はるかに奇妙な場所なのだ」
 ホールデンの言葉をエディントンが語り直した。

 枢軸陣営の終焉が見えてきた1944年。アマゾンの奥地、シングー川の上流で日本軍の伊400潜水艦が座礁しているのが発見された。
 乗員の姿は既になく、艦載機を格納できる倉庫に荷は何も残っていない。最新兵器である伊号を使い捨てにしてまで、日本軍は何のために、何を南米にまで送り込んだのか? 連合軍が送りこんだレンジャー部隊は間もなく消息を絶ち、新たに動物学者でもあるマックレディ陸軍大尉が派遣されることとなった。向かう先は凶悪な原住民シャヴァンテ族もいるらしい密林の奥地。しかし、奥地にはチュパカブラと呼ばれる怪物が出没すると噂され、家畜が殺されるばかりでなく、全滅する村さえあった。
 その頃、「地獄の門」と呼ばれる地に到達したナチスドイツと日本の連合部隊は、密かに有人ロケット計画を進めていたのだが……。

 『城塞~ザ・キープ』とか『凶鳥〈フッケバイン〉』とかと同じく、敗戦間近なナチスドイツが怪異と遭遇し、それに連合軍の部隊が巻き込まれるミリタリーホラーっぽい上巻。『城塞』同様、尻すぼみに話の流れが変わらないかドキドキしながら読み進めます。
 いろいろ人種差別的な非道を押し進めるナチスドイツですが、アメリカだって似たように人種差別が悪化していて、マックレディもそのために家族を失っています。どっちもどっちという状況ですが、そこに満州から引き上げてきた日本軍が加わって天秤が大きく揺らぎます。ダメだ、こりゃ……。

【地獄の門(上)】【ビル・シャット&J・R・フィンチ】【坂野公一】【竹書房文庫】【チュパカブラ】【神経伝達物質】【731部隊】【ハンナ・ライチュ】【ヘリコプター】【オイゲン・ゼンガー】【アイザック・アシモフ】【ペーネ・ミュンデ】【デスモドゥス・ドラクラエ】
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「極めて傲慢たる悪役貴族の所業2」 黒雪ゆきは

2023-12-21 | 異世界転生
 寮内で婚約者であるアリス・ルーン・ロンズテールとついつい行き着くとこまでいってしまったルーク・ウィザリア・ギルバートだったが、それ以外はすべて予定通り。手練れの教師にも圧勝し、ロイドとも剣を交えながら修練を続ける日々は、すべて破滅エンドを叩き潰すためだ。そして、また序列戦を挑んできた上級生のポルポンも完膚なきまでに打倒したのだが、ルークはうかつにも知らなかったけれどポルポンはこの王国の第二王子だった。
 王位に近づくために強くなりたいとルークに魔法指南を乞うポルポンだが、ルークにその気はない。何度頼まれても断り続けていたルークだが、ミアが横からとんでもないことを言い出した……。

「王子様も、ルークの『駒』になればいいと思う」
 一点の曇りもない目でミア・クライン・レノックスは、ポルポン・レヴィ・ディーネ・ミレスティアに提案した。

 ファンタジー小説の悪役貴族に転生した少年の冒険譚。水面下で進むミレスティア王国失墜のための工作に、望む望まぬに関わらず巻き込まれていきますが、災害指定モンスター氷竜の襲撃が始まります。

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「化け物になろうオンライン」 蒼井茜

2023-12-20 | VRMMO・ゲーム世界
『食事とはそもそも命を奪うこと、そして奪った命を糧に今を生きること、今を生きて明日につなげることだ』
 だぜからフィリアは理屈をこね回すだけのヴィーガンみたいな連中が嫌いだ。

 グルメ記事などを書いているフリーライターの伊皿木刹那は、ゲテモノ食いで有名で、リアルでつき合いのある人間からは底なしの胃袋で怖れられている。そんな彼女がエントリーすることにしたのは、人間もプレイできるけど基本はいろいろ属性を詰め込んだモンスターになるVRゲーム『化け物になろうオンライン』だ。彼女にとって「人間性は犬に食わせろ」というMMO、高性能の味覚エンジンで未知の味を楽しむための場なのだ。
 吸血鬼から人魚まであれこれ因子を詰め込んだキャラメイクの結果、彼女のキャラであるフィリアは直射日光で即死、聖水がちょろっとかかったら即死等々の弱点てんこ盛りになってしまったのだが、そこは世界中を飛び回ってクマとも白兵戦を繰り広げたリアル技量で乗り越えて、ドラゴンの踊り食いをしたり、堕ちた英雄の生き血を吸ったりと、死に戻りを繰り返しながらも思う存分食いまくっていく……。

 VRMMOを始めた、暴食さんことフィリアが、味覚まで再現されたゲームでモンスターからプレイヤーまで食う気満々でプレイしていく顛末。そして、ただのんきにプレイしながらプレイ動画を配信していくだけでなく、そのゲームが世界に及ばさんとする変革の謎にも挑んでいくことになります。
 冒頭で「人口調味料」の単語が二連続登場。化学調味料とはいわないけど、人工調味料じゃね?と思いつつ、話が話だけにソイレントグリーンみたいな何かかと思って読んでたけど、どうも校正もれっぽい……。

【化け物になろうオンライン~本日のメインディッシュは勇者一行です~】【蒼井茜】【茨乃】【アース・スターノベル】【人間性を犬に食わせろ】【小説家になろう】【化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~】【仮想遺伝子シミュレーター】【心臓】【はらわた】【唐揚げ】【公安】
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「若隠居のススメ2」 JUN

2023-12-19 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 現代日本と異世界を適当に行ったり来たりしながら冒険している麻生史緒と周川幹彦の2人。あいかわらず気ままな生活を送っているものの、異世界では武術大会で活躍してしまって七大冒険者に選出されてしまったし、日本政府にも腕を見込まれて南の島のダンジョンで猛威を振るうモンスターを退治すべく国際チームに参加することになったり、彼らの評価は自然と高まっていた。
 しかし、その間にもダンジョンから漏れ出る魔素が増大し、ダンジョンの外でも魔法が使えるようになっていた。もともとダンジョンが出現したのは、魔素の濃度が濃くなった世界がそれを放出するために魔素の少ない世界に接続したためらしい……。

 高学歴高収入のイケメン2人に寄ってくる女はみんな財産目当てのクズばかり。仕事を辞めて隠居してやろうと思ったところにダンジョン出現……という『若隠居のススメ』も2巻。辺境の地でキノコ狩りしたり、雪山ダンジョンでかまくら作りしたりと連作短編っぽい構成で、冒険者暮らしの二拠点生活にキリがついて完結かと思いきや、3巻の刊行予定が出てました。
 めでたい!

【若隠居のススメ2~ペットと家庭菜園で気ままなのんびり生活。の、はず】【JUN】【LINO】【TOブックス】【仲良し若隠居コンビのまったり冒険譚】【小説家になろう】【カクヨム】【世界樹】【フェンリル】【迷宮攻略】【舞刀のミキヒコ】【魔王フミオ】【神獣】
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「男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと 3」 端桜了

2023-12-18 | 異世界転生
 豪華客船で魔人アルスハリヤと差し違えて爆死したはずのヒイロだったが、気がついたら生き返っていた。アルスハリヤと一体化することで2人とも生き残ってしまったのだ。
 これからどうしようと悩んでいたヒイロだったが、学園の寮長であるちびっこミュールが実姉クリスから理不尽に蔑まれる場面に出くわしてしまう。天才魔法士であるクリスにはダメダメなミュールが許せなかったのだが、その徹底的に人を見下し傷つけることさえ躊躇しないクリスをヒイロは許せず、なにがなんでも姉妹百合の尊さを教えてやると意気込むのだが……。

 状況はさらに混沌としていきますが、周囲からの好意をあえて無視してでも、あるべき美しい百合のために先手先手を打ってストーリー展開を捻曲げようとし、そのためにさらなる困難に直面することとなります。とりあえずは、これといって取り柄のない寮長を旗頭に、やる気のない寮生をまとめ上げて、精強な他寮との戦いに勝つための策を打とうとします。
 そもそも矛盾の塊みたいな主人公が妖魔合体して、さらに矛盾そのものとなってしまった、それからの物語です。

【男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと3~百合の間に挟まる男として転生してしまいました~】【端桜了】【hai】【MF文庫J】【絶対に百合にはなり得ない新感覚の学園バトル&ラブコメ】【百合ゲー世界に、百合の間に挟まる男として転生してしまいました】【小説家になろう】【絶対百合壊すウーマン】
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