付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

私的年間ベスト2020

2020-12-31 | ランキング・カテゴリー
 シンクタンクのサブカルチャー調査でライトノベルファンが年間に消費する金額が1万2千円とかいう話を聞くと「それ、1週間の金額ですか?」と言いたくなります。月1冊買うか買わないかでマニアとかオタクとか、どこからデータをピックアップしてるんでしょうか?
 それはともかく、選んで買って読んでいるつもりでも当たり外れとか好き嫌いはあるもので、大昔に読んでも場面の1つ1つが脳裏に浮かび、決めゼリフがするりと出てくる作品もあれば、自分がブログにあらすじや感想をメモしているのに読んだことすら覚えていないものもあり……不思議だなあ。この話、本当に読んだのかなあ?
 そんな記憶の残滓にまた1冊。

『転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております』 森下りんご
 ここ数年やたらに多いTS転生で、定番の殖産・内政チートものなんだけれど、キャラが面白く、テンポが良いのですね。お約束の部分は途中過程を大きく端折ってジャンプ。起業編や諸国漫遊編は最初からなかった。気がついたらマリア様が見てた……。
 主人公の目的と立ち位置が最初にしっかり決まっていると、あちこちぶっ飛んでも話がぶれないという見本ですね。この場合は「男×男は無理!」ということなんですが、最初からトップスピードでぶっ飛んでいきます。

『城主と蜘蛛娘の戦国ダンジョン』 朽木外記
 光と闇の戦いの最前線に遅滞戦闘用の陣地としてポンと捨て置かれた迷宮を、なんとか無事に完成させて人間・エルフ・ドワーフ連合軍から守り抜かんとするダンジョンコアの化身こと拠点精霊のおっさんの奮闘記。ひとことでいうと「迷宮は完成するまでが面白い」。
 戦国小説を彷彿とさせる古めかしい登場人物たちの語り口で古い言葉と新しい軍事用語が入り交じって語られ、ひたすら真面目に迷宮の建設と防衛が行われているのに何故か読後感はユーモラスです。

『魔王殺しの《死に狂い》』 草薙刃
 戦国ダンジョンと同様「まぜるなキケン」な時代小説+ファンタジーな剣豪もの。
 魔王討伐の勇者パーティーに大陸の東のはずれの島国から送り込まれたサムライが勇者からクビを宣告されてしまうが、勇者たちの旅を、なんでわざわざ遠回りしなくちゃいけないのだ?「とりあえず、魔王城でも落としてみるか」と単身まっすぐ殴り込んで勝手に魔王を討伐してしまったサムライの物語。
 大陸の文明国からは辺境の蛮族と侮られがちな小さな島国「八洲」だけれど、その実態は魔王をあっさり倒したユキムラを上回るサムライがごろごろいるのだ。舐められたら殺す!のサムライがファンタジー世界を闊歩して、魔王やら不死の王やら邪竜らと斬った張ったするサムライ・ファンタジー。

『亡びの国の征服者』 不手折家
 ニートだった青年は、川に落ちた少女を救って死に、見知らぬ世界に、耳の少しとがった民の息子ユーリとして転生した。田舎の牧場の跡継ぎになるのだと思っていたユーリだったが、父親の実家の事情から都の騎士院へと進学することになる。
 異世界転生して前世知識と思い切りの良い判断でのし上がっていく立身出世譚だけれど、タイトルにあるようにやがて国は亡び、主人公は魔王と呼ばれるようになって世界征服に乗り出すことになります……というか、平和な生活のためには自分が魔王になってでも攻める気満々、こちらを滅ぼす気ありありな周辺諸国をすべて平らげるしかないし、やるなら徹底的にやらないとこっちは後がないんだ!……という最終決戦。序盤から上げては落とす、緩急自在の展開と主人公を取り巻くキャラクターが魅力です。 

『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』 之貫紀 
 世界に突如としてダンジョンが現れて3年。たまたま、偶然から、出会い頭に経験値を稼いでしまった芳村は、無責任な上司に見切りをつけてダンジョン・エクスプローラとして生計を立てることにした……というところから始まる現代ダンジョン攻略譚。いきなり強くなってダンジョン攻略という話は多いのだけれど、この話の面白いところはなんでも「なんとなく」では済ませないところ。どうして、出てくるモンスターが地球の神話伝説や創作物まんまなの? どうして、モンスターを倒すとドロップアイテムが出てくるの? ダンジョンができて、モンスターからアイテムがポップするようになった社会の政治とか経済とか軍事とか文化とかどうなっちゃうの?というあたりまで丹念に、そして面白おかしく読ませちゃうのです。なんとなく神様が日本のゲームをパクりましたとか、ダンジョンにモンスターが出てくるのに日常生活はそれ以前とは変わりませんとか、おかしいよね?とツッコみたくなる人を納得させる作品です。

『ホラー女優が天才子役に転生しました』 鉄箱
 ホラー女優が自動車事故で死に、お金持ち夫婦の一人娘として転生。一般的知名度はなかったけれど共演者やスタッフなどに高く評価された演技力を駆使して天才美少女子役としてハリウッドデビューをめざす演劇小説。
 物語そのものは彼女を取り巻く人々の悩みや葛藤を演技を通じて昇華させていく正統派の話なんだけれど、特撮なしでホラー映画の恐怖シーンを演じられる女優の変態的な演技力そのまま受け継いだ主人公とのギャップが楽しく、若干の百合テイスト。

『俺は星間国家の悪徳領主!』 三嶋与夢
 周囲の者に裏切られ続けて死んだ男が、星間国家で領主の息子として転生。もう人に利用されるだけの人生はごめんだ、今度の人生は弱い者を踏みにじり贅沢三昧で生きてやるんだと悪徳領主としての道を邁進するものの、根が小市民。自分では好き放題に生きているつもりが周囲からは真面目、質実剛健、有能と本人の希望と正反対の評価をされていく立身出世譚。
 この壮大さとバカバカしさが同居する世界こそ、まさにスペースオペラの正当な後継者です。

『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す』 Schuld
 TRPGにおいてルールを隅々まで読み込んで、その裏を読み、最適解を導き出し、あくまでルールで認められた範囲内で強力なキャラクターを作るプレイヤーをデータ・マンチキンとかパワープレイヤーなどと呼称するわけですが、そのマンチが異世界に転生したところから始まる異世界冒険譚。
 効率的にキャラクターを育てていこうというのは異世界転生ものの定石ですが、ストーリーそのものに個性があり、展開が巧く、合間合間にはさまるコラムやIF展開がセッションぽくて面白いのです。

『オールラウンダーズ!!』 サエトミユウ
 前世の記憶を取り戻した5歳児が、ネグレクトをはねつけ、肉弾戦でも魔法戦でもS級冒険者と互角以上に渡り合う能力を身につけ、不思議な魔導具を開発したり、酒や料理で他人をうならせながら、好き勝手に冒険していく異世界転生譚。
 人づきあいが苦手で不器用なベテラン冒険者のおっさんと、人嫌いで不信感の塊に育った幼女との二人三脚のバディ小説です。会話のかけあいとストーリー展開がどちらもテンポ良く、一気に読めます。

『ボクは再生数、ボクは死』 石川博品
 ビジネスから教育、レジャーまでVRを利用するのが普通になった時代、FPSゲームにのめり込んだ男が、TS百合にはまり、ネカマの動画配信者としての稼ぎを風俗嬢につぎ込んでいくという、VRTS百合バイオレンス小説。動画再生数を伸ばすために、次第に過激な方向に走り始め、血を血で洗う抗争劇の真っ只中でカメラを止めるな!という話で、結論は「戦いは数だよ!」に。そして、あれだけ凄惨な殺し合いをした後に平然とオフ会をしちゃうあたりが、虚実の切り分けができるベテランぽいっというより、こいつら「壊れてるよね」という感じになっちゃいます。

『地球さんはレベルアップしました!』 浦之瀬開
 現代社会にダンジョンが出現し、たまたま最初のダンジョン創成に巻き込まれた少女が、人より少しだけ強くなって生還。みんなを引っ張ってダンジョンに挑む……という、ある意味定番の話なんだけれど、まずダンジョンが出現した理由を「地球さんはレベルアップしました!」ですべて説明したことにして、その上でダンジョンものでありがちなPKとか犯罪的なあれこれを地球さんが用意したカルマシステムが排除してしまうもので、緊迫していてもどこかほのぼのとして雰囲気でまとめてしまいます。命懸けではあっても、あくまでダンジョンとの勝負であり、PKとか政府の思惑とか裏のごちゃごちゃした枝葉は無視して良いのです。
 こうなると、単なるルーチンで強くなって、主人公がみんなに認められていくというありきたりな話になりがちですが、そこを主人公の性格と言動でひっくり返します。
 これはダンジョンが出現するようになった世界で、より強くなろう、強くなってみんなを護ろうと頑張る話であると同時に、これからの世界は力がないと危険だとみんなの自覚を促し、感化し、みんなで強くなろうと頑張る話。自分が強くなった秘訣を隠匿して一人勝ちを目指す話じゃないというところが、まさに良きジュブナイル百合小説なのです。


 以上、今年発売のお薦め11選。とりあえず筆頭は『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』、それから『城主と蜘蛛娘の戦国ダンジョン』、『ボクは再生数、ボクは死』あたりが続きます。一般的な売れ筋ではなく、いわゆるSFとかファンタジーとか時代小説とか、山田風太郎とかホーガンとかさんざん読みふけってきた大人(年寄り)向けのセレクションです。

 最近は、検索アピール対策とかあれやこれやで内容概要や序盤展開をまとめたタイトルが目立ちますが、結果として「似たり寄ったりの話ばかりと最初から分かっちゃってると読む気が失せるなあ」と息子が言ってます。確かに内容まとめたものに、あまり個性が見られませんね。もう、「追放」とか「今さら遅い」とか「ハーレム」とか「成り上がり」とか、タイトルにするのはやめませんか? 読めばそれなりに工夫していて個性もあるけど、タイトルで読む気が失せるので、そこをあえて「とりあえず序盤だけでも読んでみよう」と行動に移すにはなかなかエネルギーが必要なのです。
 あと、なんとかかんとかオンライン……みたいなサブタイトルをつけるのはやめましょう。検索していてもアルファベットの長い羅列が途中で表示窓からはみ出してしまって認識できないのです。毎日何十本とウェブ小説を読んでいると、タイトル不明の更新表示が出てくるのはストレスなのです。

 ああ、今年ももう終わり。早いなあ。新型コロナ対策で右往左往しているうちに1年終わっちゃいました。
 来年は明るい年になりますように。
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「本好きの下剋上25」 香月美夜

2020-12-30 | 本屋・図書館・愛書家
 エーレンフェストでの粛正は終わった。
 これでとりあえずは他領の介入や暗躍に歯止めがかかったと思われたが、反面でエーレンフェスト内での勢力図が大きく塗り代わり、領主は台頭してきたライゼガング系貴族の押さえつけに苦労することになる。
 それは貴族院からに帰還したローゼマインも無関係ではない。なにしろライゼガング系貴族の主張は、ヴェローニカの影響が大きく、言動に問題の多い長子ヴィルフリートよりもローゼマインの方が次期領主にふさわしいというものだったからだ……。

 焦って背伸びするヴィルフリートが地雷を踏みつつドンドン泥沼にはまっていく傍らで、ローゼマインが着々と将来を見据えて布石を打っていく回ですが、領主になりたいヴィルフリートに対して、あくまで「本を読みたい」が目的のローゼマインとはかみ合わないのがポイントで、それゆえに空回り感も大きくなります。

【本好きの下剋上25】【司書になるためには手段を選んでいられません】【第五部 女神の化身Ⅳ】【香月美夜】【椎名優】【TOブックス】【ビブリア・ファンタジー】【しいなゆう】【四コマ漫画】【春を寿ぐ宴】【神殿見学会】【国境門】
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「異世界転生して生産スキルのカンスト目指します! 1」 渡琉兎

2020-12-29 | 異世界転生
 余暇は趣味のゲームに費やすという28歳の会社員、大杉政策は仕事帰りに自動車事故で死んだ。そうして気がついたら異世界の草原の真ん中で、子供の姿で佇んでいた。
 世界最大の生産クラン『神の槌』に拾われた大杉は、ゲームキャラと同じジンという名を名乗り、彼が好きだったゲームと同様の生産が出来るということで『神の槌』のお世話になることとなったのだが、ジンに宿った能力“英雄の器”は、作った武器が一級品になるというスキル。いかにもチートなスキルだが、彼にとってはスキル向上と技能アップという生産職プレイの楽しみを奪われたも同然だった……。

 見た目は子供、中身は大人な異世界転生者の物語だけれど、あまり中身が大人っぽくないなという感想。うん、生産クランに入って人間関係を構築するあたりは手慣れているように見えたけれど、友人の命がかかっている状況で、助けを申し出た相手の言い方が気にくわないと、勝算もないのに逆らうあたり大人の対応じゃないよね。生前の職場の人間関係を見ても人づきあいは悪そうだから、そういう大人ではあったのでしょうけどね。

【異世界転生して生産スキルのカンスト目指します! 1】【渡琉兎】【椎名優】【ドラゴンノベルス】【カクヨム
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「ロメリア戦記2」 有山リョウ

2020-12-28 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 あれから3年。ロメリア達の戦いは続いているが、各地で転戦を続けるロメリア騎士団は次第に規模を増し、辺境を中心に初稿の勢力をまとめ上げ、魔王軍残党の一掃まで目前となっていた。まさに王国に対して、強大な対抗勢力となるほどに。
 その頃、王国には新たな魔王軍襲来の急報が入り、南と東に現れた魔王軍に対処するため、国王となったアンリが南へ、王妃となった聖女エリザベートが東へ向かうのだが……。

 ダンスや貴族のマナー教育よりも政治学や戦術論などの方が得意だった少女が、役立たずと言われながら誰よりも危機感を持って行動し、人間側勢力の最後の希望となる話。
 物語では魔王を倒したらめでたしめでたしなんだけれど、それで終わらないのが普通なのです。そして、めでたしめでたしで終わらないという当たり前をちゃんと認識していた少女が、あとはなんとでもなると高をくくっていた勇者や聖女の尻ぬぐいをしちゃうわけです。
 とりあえず戦いはまだ完全には決着付いていないけれど、物語的には一山越えました。3巻が出るのか出ないのか。出るなら流れ的に10年後とかになるのでしょうか?

【ロメリア戦記2~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~】【はりす/有山リョウ】【コダマ】【ガガガブックス】【小説家になろう
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「ロメリア戦記」 有山リョウ

2020-12-27 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 魔族の侵攻の前に劣勢に追い込まれた王国は、少数精鋭を敵地深くに送り込むことで形勢逆転を狙った。その大博打は当たり、アンリ王子、聖女エリザベート、帰らずの森の賢者エカテリーナ、東方の女剣士呂姫、そして王子の婚約者であるロメリアのパーティーは見事に魔王討伐に成功した。たちまち次の魔王の座を巡って内紛が始まり、侵攻どころでなくなる魔王軍。
 しかし、帰国を前にアンリ王子はロメリア伯爵令嬢との婚約を破棄し、パーティーから追放した。戦いに何の貢献もしなかった女を勇者の数に入れたくはないし、なにより聖女との婚姻の邪魔になったからだ。
 特に反論するでもなく王子たちと分かれたロメリアだったが、彼女にはそんな王子の相手をするより先にやらなければならないことがあった。魔王は倒れ、本拠地は混乱しているけれど、祖国にはいまだ無視できない数の魔王軍の大軍勢が侵攻したままなのだ。ロメリアは自領に戻り、独自の軍隊を編成し資金を集めていく。0からの出発だが、彼女の軍は少しずつ形になっていく。なぜなら、ロメリアには仲間に幸運を授ける『恩寵』と呼ばれる奇跡の力があるのだ。王子は知らないことではあったが、彼女もあえて話す価値があるとは思っていなかった……。

 作品紹介には「王子から婚約破棄されて人生のどん底に突き落とされる」とか書いてあるけど、このロメリアって全然落ちてないよね。むしろ、足かせが外れて空に舞い上がっている感じです。情報収集とか移動経路の確保とかの重要性も理解できず、やるべきことの優先順位もつけられない王子と分かれるやいなや、自分たちを助けるために死んでいった者たちのためにも次の行動へと動き出します。
 ウェブの方は1巻相当分まで。書籍化の方がかなり先行しています。

【ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~】【はりす/有山リョウ】【コダマ】【ガガガブックス】【小説家になろう
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「俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていた 1」 わるいおとこ

2020-12-26 | VRMMO・ゲーム世界
 異世界を舞台にした戦略ゲームでランキング1位となった男に届いたのは、「特典」があります!というゲームの運営からのメッセージ。そして、気がつくとゲームの中の世界に転生させられてしまっていた。しかも、ゲーム知識から分かったのは、自分は悪徳領主エルヒン・エイントリアンになっていたということ。そして、ゲームの流れでは明日にも他国の軍隊がエルヒンの領地に攻め入ってきて、それで死んでしまうところからのプロローグだということ。
 エルヒンは自分の身を守るため、彼だけが持つレベルアップシステムとゲーム知識で軍備を整えようとするのだが、圧政と重税下の悪徳領主の軍隊がまともに動けるはずもなく……。

 残酷で無能であっという間に死んでしまう悪徳領主に転生させられてしまった主人公が、ゲームの歴史知識とシステムの優位性をうまく活かして最強になろうと画策する話。レベルとシステムの恩恵を活かして勢力拡大を図る一方、今の主君である国王には忠誠を誓ってしっかり働いてみせないとまだ潰されそうだし、今に見ていろ、そのうち俺が天下を取ってやる!と異世界転生に戸惑う暇もなく、ひたすらポイント稼ぎとレベル調整に専念しながら天下取りに邁進するゲームフリークの出世譚。

【俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていた 1】【わるいおとこ】【raken】【ファミ通文庫】【本格派戦略ファンタジー】【小説家になろう
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「望まぬ不死の冒険者[8]」 丘野優

2020-12-25 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 都市マルトでのレントたちと屍鬼との戦いは終わらない。なにしろ数が多い上に人間に擬態して味方に混ざっている敵も少なくないのだ。
 そこでレントは街に潜む小鼠たちの力を借りて、金級冒険者のニヴや聖女のミュリアスと共に屍鬼を作り出した吸血鬼が潜んでいるであろう《新月の迷宮》向かう。そこで吸血鬼の集団と戦い撃破するレントだったが、それもまた囮だったのだ……。

 今までいろいろ頼りになっていたラトゥール家の使用人、イザーク・ハルトの正体が明らかになり、そこからいろいろ裏の世界の事情が判明するのと同時に、レントがあらたに窮地に陥った友人の運命を背負わされる回です。話はきれいにまとまり、カラーイラストは見事に名場面をピンポイントで具象化していて、1冊しっかり堪能させてもらいました。

【望まぬ不死の冒険者[8]】【丘野優】【じゃいあん】【オーバーラップ】【人外転生ファンタジー】
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「きょうの鍋界」 やなせじゃこう

2020-12-24 | 食・料理
 1か月ばかり病院に住んでまして、最初の1週間はメシも食えないほどぐったりしていて、ただ寝るだけの生活だったんだけれど、残り3週間はそこそこ回復した状態で検査漬けの日々。それで暇したんですよ。1時間おきに1日採血してようが、24時間心電図をつけてようが、2時間おきに採尿しようが、それ以外は食って寝るだけなので、時間が余るんですよ。さすがに体力落ちていて1日10時間か12時間睡眠でしたが、まだ8時間くらいは余裕があるわけで、仕事のメールの返事とか作業の指示をしたら、ただぼおっとテレビを眺めるだけの毎日。
 そこで、暇に飽かせてスマホやパソコンの画像データを整理し始めたら、出るわ出るわ、10年分くらいの写真が5~6千枚くらい。これをぼちぼち整理していると、けっこう鍋パーティーの写真が出てくるのです。ああ、これ鍋会のアルバムができるな。でも、今年は鍋会は中止にしたもんな……許すまじ新型コロナウィルス。そして、その感染が始まった時に見て見ぬ振りして警告した医師を留置してまで世界中に蔓延させた……いやいや。

 ともかく、そんなわけで暇に飽かせて鍋パーティーこと鍋会の写真集「きょうの鍋界」を作り、原稿だけ作ったらなかなか出来が良かったのでついつい印刷に回してしまった結果がこの本。イベントに出すわけでもなんでもないのに、暇だと本を作っちゃうんだよね-。
 始まりは1988年。
 通称「鍋会」は、日本最初のネットゲームとともに生まれました。そもそも「ネットゲームとはなんぞや?」という話は省略。まあ、今でいうテーブルトークRPGのオンラインセッションを郵便を使ってアクションをかけあう遊びくらいに思ってもらえば良いです。詳しくは『メイルゲーム雑記録』に詳しいです。
 そのネットゲームは1000人ほどのプレイヤーが日本全国に散らばってプレイしていたのですが、いちいち速くて往復4日はかかる郵便を使うのも話が進まないし、かといって今のような無料電話もメールもありませんし……そもそもインターネットは海外の大学や軍が試験してたような段階です。電話代で月数万円かかるなら、人間が現地に飛んで顔を合わせた方が速い!となるのに時間はかかりませんでした。
 ある日のこと。大学から自宅に帰ると母親が「お友達みえてるわよ」と告げてきましたが、心あたりがありません。
 部屋をおそるおそるのぞき込んでみれば、見知らぬ学生らしき数人がカードゲームに興じているではありませんか。名作タンクバトルカードゲーム「タンクハンター」でした。
 彼らこそ郵便物の住所を手がかりに東京から普通電車を乗り継いで名古屋郊外の田舎町まできた、ネットゲームのプレイヤーたちだったのです。それも対立する陣営の……。
 こちらも負けじと愛知・岐阜に点在するプレイヤーを召喚し、対決することとなりました。とはいえ、ゲームはゲーム、リアルはリアル。懇親会と今後の最終決戦のステージに向けたエールの交換みたいなものです。

 しかし、困りました。
 今でこそ飲食店はそこそこありますが、当時は田んぼのど真ん中の田舎町。晩ごはんを食べる場所がないのです。しかも。緊急召集をかけているので、最終的に何人になるか分かりません。
 こうなったら、選択肢は「おうちでお鍋」しかありません。
 自家用車で片道10分ほどのスーパーマーケットまで買い出しに。飲み物も含めて、5人分で買い物かご1つ分と目星をつけて、肉や野菜などを3かご分購入しました。
 自宅の居間で、最終的に12人ほどが集まって、鍋や寿司の盛り合わせを食べながらの大騒ぎ。ゲームをして、ゲームの話をして、ごろごろ雑魚寝して翌日、彼らは帰っていきました。「また、会おうぜ!」といいつつ……。

 再会したのは、その翌週でした。
 以来、月に1回や2回は顔を会わせるようになりました。互いに東京や大阪とも行き来しつつ、噂を聞きつけた北海道、九州、四国のプレイヤーなどとも合流し、女性プレイヤーも交えながら、名古屋に集まったときは我が家で宴会……というのが、恒例となってぃったのです。

 そのきっかけとなった最初のネットゲームは1年で終わりましたが、その後も毎年秋口になると「キノコの美味しい季節になりましたね」を合い言葉に、年1回か2回は集まるようになり、それが30年以上続くことになろうとは、誰も予想はしなかったのです。
 そんな鍋会とか、鍋だけでは足りないと追加されたクリスマス会とか新年会で提供された料理とかの写真を中心に構成されたのが「きょうの鍋界」。1とあるけど、2を期待するならまた30年先だからね?>心当たり

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「異世界で上前はねて生きていく(3)」 岸若まみず

2020-12-23 | 異世界転生
「理想郷というのは、たとえ内実がそうでなかったとしても人を狂わせるものなのだ」
 父ブレットは息子サワディに対して、今の立場が不安定で危険なものだと認識しろと教えた。

 とりあえず異世界の商家の三男として転生したサワディの人生は順風満帆にも見えた。元軍人の奥さんとの間にも子供が出来たし、いろいろあって准教授に昇格もした。
 あくまで平民ではあるけれど、准教授ともなると貴族に準じた扱いを受けるようになり、報酬も上がってくる。その給料だけでシェンカー商会の稼ぎくらいにはなるものだから、彼のビジネスを「みみっちい稼ぎ方」と揶揄されたのにも納得するサワディだったが、もともと今の生活に不満はない。彼にとっては儲けが倍に増えたことより、味噌や醤油が手に入る算段がついた方が嬉しいのだ……。

 奴隷たちから見た今の生活とかを中心に描かれる3巻。
 ゆるふわですべて上手くいっているようでありながら、先祖の因縁がふりかかりそうな周囲の思惑とか、メタ的に考えてどう考えても将来的に失敗しそうな超巨大造魔の建造計画とか、ナイショの地下製造施設とか、不安になりそうな伏線は着々と積み重なっていきます。

【異世界で上前はねて生きていく3】【再生魔法使いのゆるふわ人材派遣生活】【岸若まみず】【三弥カズトモ】【Mノベルス】【異世界ゆるふわファンタジー】【病院】【託児所】【味噌】【醤油】【リュウゾウジ】【商隊】
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「くまクマ熊ベアー16」 くまなの

2020-12-22 | VRMMO・ゲーム世界
「ユナちゃん、また新しい女の子を増やしたの?」

 従業員旅行を終えてクリモニアに帰ってきたユナは、以前手に入れた謎の鉱石"クマモナイト"のことを思い出したが、もとよりクマモナイトなんて鉱石のことを誰も知っているはずもない。
 こういうことならドワーフに聞くしかないと、フィナと一緒にドワーフの街へ出発することになったユナだが、途中で立ち寄ったエルフの村でルイミンも旅の一行に加わった……。

 今回もふんわり、ちょろっと緊迫感、のんびりお仕事な16巻です。

【くまクマ熊ベアー16】【くまなの】【029】【PASH!ブックス】【主婦と生活社】【異世界クマっ娘ゆるかわ冒険物語】【小説家になろう】



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「八男って、それはないでしょう!21」 Y.A

2020-12-21 | 異世界転生
 南方探索の過程で見つけたアキツシマ島は、ミズホと1万年前にケンカ別れした係累が住み、日本の戦国時代さながらに五十を超える領主たちが水利権を巡って争い続けている。
 この戦いについつい介入し、あげくに王国から「領内の海域にある島なのだから責任を持って統一と統治をせよ」と言われてしまうヴェルだったが、彼はいまだに一夫多妻に馴染めない。というか、なにかことある毎に妻や愛妾を増やして解決しようというのに納得できないのだ……。

「あまり増やさないでくださいね」
「わかっています。先生は優しいですし、お立場もありますから」
「奥さんが沢山いても仕方がないですよね」

 なにか物わかりの良いことを言っている教え子のアグネス、ベッテイ、シンディらも、いつの間にか当然のように側室候補になっている。

 とはいえ、この3人の教え子は珍しく、ヴェンデリンの人柄を褒めるのだ。他の妻たちは徹頭徹尾、地位とか能力とか財力しか見てないのに。

【八男って、それはないでしょう!21】【Y.A】【藤ちょこ】【MFブックス】【姫武将】【秋津洲】【中古農機具】【田植え】
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「転生したらスライムだった件(17)」 伏瀬

2020-12-20 | 異世界転生
 ジュラ・テンペスト連邦国の財務大臣となったミョルマイルが世界経済の表と裏で暗躍していく「ミョルマイルの野望」、愛するルドラの魂の断片を求めて数多の世界を渡り歩くヴェルグリンドの遍歴「遠い記憶」、皇帝マサユキの下で軍務大臣を務めることになったカリギュリオ軍団長の過去と未来を語る「激動の日々」、魔王ギィに仕えるメイドのレインこと〈原初の青〉ブルーから見た魔王達の宴の変遷と世界の成り立ち「青い悪魔のひとり言」、ベスターの懐古と懺悔と責任回避「べスターの相談」の中短編が5編。
 脇役1人1人に物語がある転スラには、こういう形の作品集が似合います。必要です。

【転生したらスライムだった件(17)】【伏瀬】【みっつばー】【GCノベルズ】【モンスター転生ファンタジー】【小説家になろう】
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「北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた3」 ジュピタースタジオ

2020-12-19 | 異世界転移・召喚
「どんなに反対があろうとも、やらねばならぬ事なれば、説得を惜しまず、正式に手続きを取り、多くの者の支持を取り付け、公式にやらねばならぬ。それが政なのだ」
 国王は、周囲が王にふさわしいか常に見ているからこそ、いい加減なことはできないし、邪魔な相手を暗殺で排除するなんてしてはいけないのだという。できるかできないかではない。敵対する者を消して解決しようとするのが愚策と言うだけだ。

 中島も異世界での生活にも慣れてきて、ハンターとしての経験も積んできた。ハトの駆除ばかりでなく、連続暗殺事件も解決したし、ゾンビの群や不死身の魔女とも戦った。
 でも、それは彼が強くなったからではない。今でも敵に先手を取られたらあっさり死んでしまうだろう。強いのは銃。彼にできるのは常に臆病でいて、必ず相手の先手をとるよう心がけるだけなのだ……。

 公務員兼ハンターの青年が異世界に召喚されて、北海道では想像もできなかった怪物を相手にハンティングをする物語の最終巻。やった! 完結したよ! このまま他の「北海道のハンター」シリーズ、『北海道に魔物が出たので地元ハンターが出動してみた』あたりも書籍化してくれないかしら。

【北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた3】【ジュピタースタジオ】【夕薙】【ガガガブックス】【頼れるエルフ嫁と送る異世界ライフ】【実銃ウンチク&狩猟知識満載】
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「食い詰め傭兵の幻想奇譚15」 まいん

2020-12-18 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 またどこかの王国が滅んだらしい。最近よく国が滅ぶなあと思っていたが、どうやら滅んだのはロンバート王国らしい。つい2,3日前までユスティニア帝国軍と戦っていたのに、さすがにちょっと早すぎる。
 そこになにやら怪奇な話があったらしいのだが、そんなことより新米冒険者のロレンにとっては所属していた傭兵団壊滅の真相の方が重要だ。
 今は帝国の将軍になっている傭兵団のユーリ団長は語る。あれは時の運で負けたのではない。傭兵団を壊滅させるために、わざと負け戦に臨んだのだと。それは謎の男マグナがロレンの近くに姿を現したから。ただマグナの目からロレンを隠すための戦いだったのだ……。

 彼のためなら邪魔な相手は皆殺しにして、死体も綺麗に消してしまおうと言い張り、実際にそれが1人でも可能なかわいい女の子たちが周囲を固めてる新米傭兵の冒険譚。今回もノリノリの1話完結。エピソードが毎回きれいに(大惨事付きで)まとまり、読みやすいですよね。

【食い詰め傭兵の幻想奇譚15】【まいん】【peroshi】【ホビージャパン】【王道ファンタジー】【新米冒険者に転職した、凄腕の元傭兵の冒険譚】【小説家になろう】【超巨大空中戦艦】
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「ひとりぼっちの異世界攻略5」 五示正司

2020-12-17 | 異世界転移・召喚
「このお話は無駄に長いけれど無駄を削ると何も残らないという糖質ゼロの綿飴みたいなお話で、書籍化では無駄を最低限にと、それはもう削りに削り詰めに詰めて校正して、頁数ギリギリにまで削っているんですが……」
 作者あとがきより。
 まったくウェブ連載は読んでも読んでも最新話に追いつかんのです。

 遙は甲冑委員長やスライムを護衛に付け、クラスメイトたちのレベルアップを図る。迷宮をクリアし続けないと魔物で世界があふれてしまう世界で生きて行くには強くなるしかなく、そして彼は誰一人死なせるつもりはないのだ。
 しかし、学級委員長たちのレベルは上がっても思うほど強くはならない。それは彼女たちの戦い方が誰かを守るための剣になっているから。彼女たちは魔物を倒すために戦っているのではなく、自分たちのために傷つき続けている遙を守る力になりたくて戦っているのだ。バカの柿崎たちもいう。「なんであんな体で平気な顔が出来るのだろう」と。彼らには遙の腕がもがれたのも、お腹を抉られたのも、体中が貫かれたのも分かるのだ。その痛さや苦しさも想像できる。ただ、再生してきれいな体になっているだけだって。
 だから、みんな笑って破産するのだ……。

 お大尽様相手のボッタクリとか弱肉強食の食事風景とかエンドレスな言葉遊びとか、ふざけてばかりのようで、その裏で人間の弱さ強さとか、自己中心的な言動と自己犠牲的な生き方の対比とかしっかりやっているので作品としてのバランスが意外に良いのです。
 絵的にも美少女たちのポートレイトを1つ1つイラストに加えながら、その合間に墓標のシーンとかモンスターとの戦いも落としていないのでイラスト的にもバランスが良いのです。それで登場人物紹介も、ちゃんとアップグレードされてるんだよ。
 誰よりも好き勝手に生きているようで、誰よりも他人のためだけに生きている、壊れた道化師みたいな幸せの大災厄の冒険譚。もうみんな諦めて幸せになっちまいな。

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