CDショップ(+α)のおススメCD日記

何と、あまり聞いたことのないCDコメントの共同作業、つまりクロスレビューです。(不定期更新)

4月のおススメ盤(工藤)

2014年04月15日 | 音楽
今回はECMレーベルから。これは、’08年の録音とはいえ、ポール・ブレイの録音としてはいちばん新しいアルバムです。前作の’07年録音「About Time/Paul Bley(P)」(Justin Time)が、ちょっと手クセの演奏が気になったりして、もう歳かなと感じる部分もあったのですが、ここでは、最初がコード進行的なサウンドだったのでやはり、と思いかけたにしろ、その後は彼のマイペースで順調な演奏で安心しました。往年の鋭さは少し薄れたにしても、まだまだスゴい演奏をしていたと思います。ECMクォリティは維持できていると思います。


Play Blue/Paul Bley(P)(ECM 2372)(輸入盤) - Recorded August 2008. - 1. Far North 2. Way Down South Suite 3. Flame 4. Longer 5. Pent-Up House

(14/04/12)1-4曲目がポール・ブレイの曲で、5曲目がソニー・ロリンズの曲。オスロ・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ。鋭利で研ぎ澄まされた部分も多いけれど、丸くなってきた部分も少し。1曲目は17分もの曲で、構成力はけっこうあり、最初からしばらくの間はコード進行がはっきりと分かる演奏なので、柔らかい演奏に変わってきたのかな、との印象も。そして途中、突然のフリー的な演奏に突入しつつ、コード的な演奏と行きつ戻りつは健在。2曲目も15分台。硬質な面と優しい面を併せ持つようなサウンド。静かにはじまり盛り上がっていきます。牧歌的なバラードからフリー的な演奏に行ったりいろいろ変化する3曲目、ゆったり陰影のあるところからやはり変化していく4曲目、人の曲もあくまでも自分流に料理していく5曲目。

ジャズCDの個人ページ(工藤)

appleJam 4月のお宝盤

2014年04月01日 | 音楽
フィンガーピッカーvsフラットピッカーの洗練されたギターデュオ
Louis Stewart & Martin Taylor Acoustick Guitar Duets
1996 German Jardis JRCD-9613

Louis Stewart - guitar
Martin Taylor - guitar

ジャズ批評誌編纂によるジャズの参考書、「Jazzギター」p.238に掲載のあります村上智一氏の解説によりますと、このルイ・スチュアートは15才まではピアノを弾いていた少年だったのが、ある日ジャズ・ギタリスト レス・ポールの演奏を聴いたのがきっかけでギターに転身したとのこと。
その後もラジオから流れるバーニー・ケッセルに相当の影響を受けつつ、祖国アイルランドを訪れる米国ジャズメンと多くの実戦経験を積んでいったそうです。
そしてさらにドラマチックだと思うのは、このJardisというレーベルのオーナー、ハイナー・フランツ氏は自らもセンスの良いギタリストですが、79年に友人から聞かされた Louis Stewartの"Out On His Own"がきっかでその後自社レーベルを立ち上げたというのが起業の経緯にあるようです。
本気で気に入ってしまった音を自国に供給すべく自らレコード会社を作るなんて、なんて素晴らしい話だと感じ入ってしまった次第です。
代理店資料によれば当レーベルはギタリストのリーダー作以外は出さないという超こだわりのレーベルとしても知られるそう。
なるほど、目から鱗のこのこの解説で見えてきたのがレーベルの方向性、ジャズ・スタンダードをリズム隊無しの全くのギターデュオでそれも二人ともアコースティックギターで挑戦している点でこの作品の価値は決まったと思いました。
加えてその相棒がギター職人的な名手マーティン・テイラーだとはこれ以上ない最適な人選だったと感じます。
ジャズというカテゴリーを超えてすべてのギター愛好家がこのアルバムから得るものがとても大きそうな一枚です。

bb白岩(appleJam)