CDショップ(+α)のおススメCD日記

何と、あまり聞いたことのないCDコメントの共同作業、つまりクロスレビューです。(不定期更新)

appleJam6月のおもしろ盤を聴く(工藤)

2006年06月27日 | 音楽
自主制作盤で、しかも無名なミュージシャンですが、アメリカは層が厚いですね。確かに昔聴いたことのあるようなサウンドもあるかもしれないですけれど、ピアニストを中心にこのトリオは今っぽい部分も披露しています。やっぱり有名な曲が多いのがいいですね。目立たないかもしれないけど気楽に聴けるアルバムかも。


Songs I Like to Play/Lenny Robionson(Ds, Marimba) (2005 USA Self Released) - Andrew Adair(P), Gavin Fallow(B), Bob Butta(P on 4) - 1. Close Your Eyes 2. I Didn't Know What Love Was 3. From This Moment On 4. Easy To Remember 5. Little B's Poem 6. Goobye Porkpie Hat 7. The Turnaround

前半4曲がスタンダードで後半3曲がジャズメン・オリジナルという構成。スゴく懐かしい、’50年代のようなおおらかなピアノトリオのサウンドが1曲目に展開しています。白岩さんがおっしゃるように、最初の音で昔に引き戻されるような気がします。確かにウィントン・ケリーの影響もあるかな、といった感じ。ただ、次に場面は変わって、テーマの一部に5拍子も取り入れて今っぽい不思議な浮遊感を取り入れつつもオーソドックスな世界が基盤にあるような、ラストの方の変拍子ドラム・ソロが迫力の2曲目、今っぽくバリバリとアップテンポでピアノもドラムスも前進していく3曲目、この曲だけピアニストが交替して、しっとりとしてやや華やかな雰囲気のバラードを聴かせる4曲目、出だしの激しいドラム・ソロからモーダルなピアノに展開しつつもあまり重たい感じではない5曲目、出だしとラストだけドラムスからマリンバに替えて渋めに聴かせるややスローな4ビートの6曲目、オーネット・コールマン作ですが比較的オーソドックスかなと思えるサウンドの7曲目。

ジャズCDの個人ページ 工藤


工藤さんの6月のオススメ盤(bb白岩)

2006年06月14日 | 音楽
鬼警部アイアンサイド ~ 子供時代毎週楽しみに見ていた米国の刑事ドラマですけど、そのテーマを作曲・演奏していたのがクインシー・ジョーンズでした。今回のデイヴィッド・マシューズのビッグ・バンドが冒頭にこれを持ってきたのもその動機が判る気がします。日本で言えば「太陽にほえろ」とか「西部警察」並の人気番組だった故に多くの人々の琴線をふるわせるはずです。それはさておき、そういった米国の中産階級向けのTVドラマには今も昔もひとつの共通項があります。それは出演者に黒人や他の有色人種の割合が圧倒的に少ないということ。古くは「バットマン」や「スパイ大作戦」なんかでも大抵の場合申し訳程度に一人、二人の黒人が出演しますがほとんどの場合その程度です。で、見ている側はそのことに全く疑問を感じません。

って、いきなりなんでそんなことを書き出したかといいますと、このマシューズのビッグバンドは、見事に全員が白人ばかりだった(あるいはそのように見える)ので、あれまーと感じたことが引き金でした。もちろん全員が白人で何も文句はないのですが、演奏している曲目は結構黒人の作曲家のものが多いかなどと余計なことまで考える始末。本編の演奏の内容が面白いだけになんかその偏りが最後まで気になりました。


スイング、スイング、スイング/マンハッタン・ジャズ・オーケストラ(Videoarts)
お馴染みの大スタンダードが強烈に、一見スインギーに炸裂する瞬間ビッグバンドの醍醐味も同時に炸裂しているかのように感じます。そんな中に隠し味的にマシューズのオリジナルが挟まっている点も結構ニクイ構成。耳にはマンハッタン・ジャズ・クインテットがそのまま大編成になった音として届きます。マシューズのこの音作りはその「MJQ」の昔から非常にサクサクとした切り口が特徴で、結果として一部のジャズ・ファンからはシュガーコーティング・ジャズとして割と軽んじられてきた経緯があります。実は白状しますと私も彼らの音が苦手なのですが、その原因はあまりにも音がハキハキしすぎていて何処をどう切っても定規で正確に寸法が測れてしまう点にあるのではないかと感じます。せめてここに黒人のミュージシャンが何人か入っていれば(独断と偏見で書いています)もう少しそこに人間らしい「呼吸」とか音楽的な深みも生まれてくるのではと感じます。とはいえ、もしもマシューズ自身がそうはなりたくなくて、意図的にこういった音を追求しているのだとしたら、結果的にはそこには黒人の居場所は無いかも知れません。なぜなら黒人って、体質的に定規では測定できないアフタービート ~ 少し遅れ気味に後乗りでスイングする感じ、(タメが効いていると言ったりする感覚的なもの)を好むと思うのでこのような機械的なリズムの中にいるとアレルギーを起こして逃げ出したくなるように感じるからです。

あとがき
う~ん、今月も少し発言に毒が混じってしまいました。恐らく100%殺菌処理済みって感じで、本来その曲が持つ味わいが漂白されてしまった白すぎるジャズを聴いてしまったためと思います。すみません。。。。

bb白岩(appleJam)


6月のオススメ盤(工藤)

2006年06月06日 | 音楽
今回は売れセンねらいかと思われるアルバムの紹介ですが、なかなかどうして、聴かせてくれます。

デヴィッド・マシューズ率いるマンハッタン・ジャズ・オーケストラもメンバーが少しずつ入れ替わりながら、最初のアルバムを出したのが’89年で、もう17年断続的に続いていることになりますね。基本的にはレコーディングとたまにあるツアーで集まるだけでしょうけれど、よくこのバンド、続いていると思います。このバンド、バカにしている人も多いと思いますが、ことオーケストラに関しては、けっこうインパクトがあります。通常のビッグバンドと違い、フレンチホルンやチューバなども加えているし、アレンジがかなりシャープで現代的。テーマなどをユニゾンでやって分かりやすくしているのも、多くのファンを集めていると思います。各メンバーのソロ、ぶち切れているのもあって、それを聴くのも楽しみ。


スイング、スイング、スイング/マンハッタン・ジャズ・オーケストラ(Videoarts)
Swing, Swing, Swing/Manhattan Jazz Orchestra(Videoarts) - Recorded February 22 and 23, 2006. David Matthews(Leader, P), Walter White(Tp), Randy brecker(Tp on 3, 5, 7), Ryan Kisor(Tp on 3, 5, 7), Scott Wendholt(Tp), Lew Soloff(Tp), Jim Phugh(Tb), John Fedchock(Tb), Larry Farrell(Tb), Dave Taylor(Btb), John Clark(French Horn), Fred Griffin(French Horn), Tony Price(Tuba), Chris Hunter(As, Fl), Aaron Heick(Ss, Ts), Scott Robinson(Bcl, Bs), Chip Jackson(B), Terry Silverlight(Ds) - 1. Ironside 2. Swing, Swing, Swing 3. Junpin' At The Woodside 4. Moonlight Serenade 5. Take The A Train 6. Al No Corrida 7. Manteca 8. Stompin' At The Savoy

2曲目がデヴィッド・マシューズ作曲。分かりやすさとギル・エヴァンスゆずりのバンド編成は健在。それぞれのソロにも注目。クインシー・ジョーンズ作の昔よくTVで聴いていたテーマをファンクなリズムとシャープなアレンジで聴かせてくれる1曲目、往年のビッグ・バンドを思い浮かべる曲調のオリジナルであえて勝負に出た2曲目、カウント・ベイシー作をアップテンポで現代的に料理している3曲目、グレン・ミラーの有名作を意表をつくようなアレンジで綾織り系のテーマで攻めてみる4曲目、これまた有名な「A列車で行こう」を正攻法で勝負をして盛り上がる5曲目、「愛のコリーダ」もゴキゲンなファンクの曲になる6曲目、「マンテカ」もカラフルなアレンジになる7曲目、テーマ部分は原曲に近いけれど現代的な仕上がりの8曲目。(06年5月24日発売)

ジャズCDの個人ページ 工藤


appleJam6月のおもしろ盤(bb白岩)

2006年06月04日 | 音楽
無名のジャズマンたちの自主制作盤には、時に非常に実験的で過去に類を見ない楽器の組み合わせを試みたものや、大胆な音作りへのアプローチを見せるものと同時に、時には今回のこの盤のように既に多くのジャズファンに愛されてきた既知の音をあたかも再現するかのよう取り組みをしているものもあって、その振幅幅が大きいのも楽しみのひとつです。あるいは彼ら自身はそんなつもりはなく、そのように聞こえてしまった私の方がいけないという可能性もあることを前提に今月はこのレニー・ロビンソンの盤について書きたくなりました。


ウイントン・ケリー生き写しのピアノも快演、
ハードバピッシュでまさにゴキゲンなピアノ・トリオ
Lenny Robionson / Songs I Like to Play (2005 USA Self Released)

冒頭 ピアノ鍵盤三つの打撃音、その三つの音が出た瞬間に
即死します。そのまんまウイントン・ケリーといいますか、その後
の展開も含めてこれは確信犯的なVee-Jay時代のケリー再現プ
ロジェクトかと思ってしまうくらい似ています。特筆はコロコロした
極上サウンドのピアノ、それをまさに快感といってよいくらい洗練
されたリズム隊がサポートしています。実際のリーダーはドラム
ですがここでは完璧に名脇役に徹しています。まろやかにしかし
逞しく唸るベースも出色、つまりはすべてがゴキゲンなのです。

以下はあとがきです。

Philly Joe Jonesを思わせるリーダーでドラマーのレニーと、同じくWynton Kellyを思わせるピアノのアンドリュー・アデイアー、さらにPaul Chambersぽく感じるベースのゲヴィン・ファーロウの三者と、それぞれが実際にもそのような役割を意識して演じたのかはともかく、結果としてVee-Jay時代のケリー・トリオに私には聞こえました。もちろんアルバム全部がそのものという訳ではなくて、時にはっとするほど自らを自己主張している曲もありますので、次に一体この3人がどんな音をぶつけてくるのかも楽しみだぞと感じています。

bb白岩(appleJam)