CDショップ(+α)のおススメCD日記

何と、あまり聞いたことのないCDコメントの共同作業、つまりクロスレビューです。(不定期更新)

appleJam12月のトレジャーディスクを聴く(工藤)

2009年12月30日 | 音楽
いよいよ’09年も終わろうとしています。もっと早くこれを聴いてアップしたかったのですが、年末が忙しくて今日になってしまいました。仕事もそうですが家もあわただしく、毎年このまま正月も過ぎていく気がしています。さて、今回のアルバム、どんな感じでしょうか。アルバムジャケットだけみると、わあ、黒くてコテコテの演奏が詰まっていそう、と思うのですが。


Rise Up !/Lonnie Smith(2009 USA Palmetto Records PM-2138) - Dr.Lonnie Smith(Org, Vo), Donald Harrison(As), Peter Bernstain(G), Herlin Riley(Ds), Additional Musicians: Jo Lawry(Vo), James Shipp(Per), Matt Baltsaris(G) - 1. A Matterapat 2. Come Together 3. Pilgrimage 4. Dapper Dan 5. And The World Go Round 6. People Make The World Go Round 7. Tyrone 8. Sweet Dreams 9. Voodoo Doll

9曲中5曲がロニー・スミスの作曲で、「カム・トゲザー」などの曲も入っています。彼のアルバムは最近ではCriss Crossから出ていて、それはピーター・バーンスタインとビリー・ドラモンドとのトリオでした。内容は良かったのですが、今頃’93年録音を出してきたので、どうしてかな、と思ったものでした。こちらのアルバムは’08年5月の録音と書いてありますので、今でも彼は健在なんだな、と安心しました。昔はオルガンジャズってあまり得意ではなかったですけど、だんだん好きになりつつあります。

このアルバムではドナルド・ハリソンのサックスが入っていることと、非4ビート路線の曲ばかり集めているところに特色があります。ビートが引き締まっているファンク曲も多く、オルガンのベース・ペダルのユルさを引き締めています。曲ごとにいろいろな曲調がありますし、アレンジも入っていて2曲目のカム・トゲザーも意表をついたアレンジ(ヴォーカルも意表をついてます)、6曲目の曲が昔CTIのアルバムで聴いたことのある曲(すいません、ミュージシャンを失念!)で、懐かしさもあるとともに、やっぱり意表をついたアレンジ。

と思ったら、3曲目の出だしが牧歌的な明るいバラードでそのまま盛り上がっていく曲もあったりして、なかなかオルガンジャズにしては洗練されたイメージの曲が多いです。5曲目のコーラス(?)かな?、曲に厚みが出てきていいし。いい意味で、ジャケ写のイメージとは違っていました。また、8曲目のマイナーな曲調もなかなか個性的。

このアルバム、ネットの友人が発売時に聴いていたのですが、発売時には気がつかず。今回聴いて良かったでした。

ジャズCDの個人ページ(工藤)


工藤さんの12月のオススメ盤を聴く(bb白岩)

2009年12月20日 | 音楽
The Monterey Quartet: Live At The 2007 Monterey Jazz Festival
(Monterey Jazz Festival Records)

Dave Holland(B)
Gonzalo Rubalcaba(P)
Chris Potter(Ts)
Eric Harland(Ds)

Recorded September 22, 2007.
1. Treachery
2. Minotaur
3. Otra Mirada
4. Step To It
5. Maiden
6. 50
7. Veil Of Tears
8. Spoken Introduction
9. Ask Me Why

モンタレーの50周年記念の録音では私もテレンス・ブランチャード盤がお気に入りでここにupしましたけど、今回の工藤さんのオススメ盤はまずクリス・ポッターの凄さにいきなりKOされてしまいました。最初のクリポタの必殺パンチは冒頭1. Treacheryでのゴンサロ・ルバルカバに続くソロ、その火を噴くような熱いソロ・ワークは真冬でかじかんでいた身体が一気に沸点に達する感じ。というかこの曲でのルバルカバのモーダルなソロもかなりクールです。途中如何にも変則ビート・チューンらしいカットの同一ポジション連打のソロが、これだけの手練れでもくねった波に乗るのは大変なんだと感じさせます。いやはやほんとにこれは凄い盤です!続く2. Minotaurはいきなりのアフリカン・リズムで、イントロに登場するチャーミングなスネア?とそれに続くタムと耳にはティンバレスにも聞こえるパーカッション群が場のムードを一気にモザンビーク辺りに塗り替える気分。(行ったことはないけど) 同じ#2.でシーンが変わったあとに登場するホランドのベースとピアノの妖しげな絡みも実にアメイジング!もとよりここでのクリポタもツボにはまりまくりです。個人的なお気に入りは5. Maiden で、ド頭のベースソロだけでも値千金の中、中盤に展開するルバルカバのイマジネイティヴかつ知的な深みのあるソロがなんとも美的。一瞬の緩急をつけた短いフレーズのソロを紡いでいく姿にはまさにうっとり、惚れ惚れします。ということでこの盤は頭の先からつま先まで丸ごと全部気に入りました。全体を覆う適度な緊張感も最高です。

bb白岩(appleJam)


appleJam12月のトレジャーディスク(bb白岩)

2009年12月13日 | 音楽
あっという間に2009年も残り少なくなってしまいました。全く師走という感じがしないのは今年も同じ、それでもクリスマスはやってきてそして除夜の鐘とともに年が明けるんですよね。とにかく健康でありさえすればOKかなという、今年はそんな気持ちです。そんな12月のappleJamのお薦め盤は、渋い方のハモンドB3サウンド。普段はファンキーなオルガンが好きな自分ですが、ロニー・スミスの強烈な個性はそういった日常感覚を気持ちよくぶっ飛ばしてくれる気がします。


漆黒の闇に見る一条の薄明かり、そんな妖しくも美しい匠同士の競演!
Lonnie Smith / Rise Up !
2009 USA Palmetto Records PM-2138

Dr.Lonnie Smith - hammond b3,vocal
Donald Harrison - alt sax
Peter Bernstain - guitar
Herlin Riley - drums

リーダーのロニー・スミスはもとより共演者全員のカッコ良さが特筆の一作。常以上にタール状の音塊として耳に届くオルガン・サウンドは、あたかも闇深い地底から響くかのようです。その鬼のように渋いオルガンに加えてドナルド・ハリソンのアルト・サックスもまた格別。さらにはピーター・バーンスタインのギターがここでは半端でないノリをしているのも特筆。#1.A Matterapat、チャーミングなリフを伴ったイントロ・・・ううう、これはまた60年代のブルーノートそのまんまです。ドナルドはドナルドでもルー・ドナルドソンのアルトと間違えてしまいそうですが、それを言うとピーターのギターもまるで別人ギタリストかと思う瞬間が有ります。続く#2.Come Together は地底ソングっぽい重心の低さが印象的で、オルガンのリフがまた新鮮。締めくくりの#9.VooDooDoll で演出する超常感は、光というものがそこに存在せずにただただ空間だけが拡がっているという、そんなイメージを私は感じてしまいます。加えて四人が放つガス状の雲海がじわじわと足下からわき出す感覚があってそれもナイスです。普段の環境で聴くよりかは、地下の穴蔵的ジャズ・バーで聴きたいアルバム。

appleJam(bb白岩)


12月のおススメ盤(工藤)

2009年12月05日 | 音楽
夏ごろに発売されてからもう時間が経ってしまいましたが、実はこのアルバム、私的’09年のベスト3に入れました。こういう現代ジャズは好き嫌いがあるのですが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのクリス・ポッターと名の知られた共演者のライヴなので、悪かろうはずはありません。と言うよりも、このあたりというラインを軽々とクリアしてしまって、その上を行っているようなサウンドが好きです。

豪華なメンバーのライヴですけど、曲調などを考えると、臨時かつ変則編成のデイヴ・ホランド・クァルテットと考えていいようですね。このバンドも現代ジャズの側面のうち、特に「変拍子」が強調されています。私もそれほどリズムに強い方ではないので、どこが何拍子とかまでは理解できないですけど、一般の人には不思議なビート感として理解されるんではないかと思います。演奏する方はかなり大変だと思うのですが、元々デイヴ・ホランドのバンドは変拍子が多かったので、そこで鍛えられたか、それに強い人選だったか。もちろん演奏内容は最高です。個人的今年のベスト3に入るかどうか、ですね。


The Monterey Quartet: Live At The 2007 Monterey Jazz Festival/Dave Holland(B)/Gonzalo Rubalcaba(P)/Chris Potter(Ts)/Eric Harland(Ds)(Monterey Jazz Festival Records) - Recorded September 22, 2007. - 1. Treachery 2. Minotaur 3. Otra Mirada 4. Step To It 5. Maiden 6. 50 7. Veil Of Tears 8. Spoken Introduction 9. Ask Me Why

(09/11/01)8曲目にあたる部分は曲ではないですが、他の8曲は2曲ずつメンバーの作曲。ライヴだし、さすがにこのメンバーの演奏はエキサイティング。まさにオール・スターでの演奏です。変拍子が多く、聴く方にとってはカウントしきれないような変拍子も、軽くクリアしてライヴで自然に演奏してしまうあたり、このメンバーのレベルの高さを証明しています。ちなみにゴンサロ・ルバルカバ以外は、在籍時期は違えどデイヴ・ホランド・クインテットに参加した面々。こういう演奏は得意なはずです。ドラムスのエリック・ハーランドのプッシュには定評があり、時々あおりまくっています。でも3、5曲目のようなバラードはしっとりとしていて、それでいてスゴいフレーズもあって一筋縄ではいかなそうで、なかなかです。意外に聴きやすいです。

ジャズCDの個人ページ(工藤)