CDショップ(+α)のおススメCD日記

何と、あまり聞いたことのないCDコメントの共同作業、つまりクロスレビューです。(不定期更新)

STEP7月のオススメ盤

2004年07月31日 | 音楽

珍しく東から西に進んだ台風は四国から九州に上陸のようです。
災害の起きないことを願いつつも、個人的にはもう少し雨が欲しかったところです。
ここ三日間は晴れたり曇ったりで突然のにわか雨が数回といった天候でしたが、当地の降水量はごく僅かでした。水害で困っている地域には降るのに皮肉なものです。



さて7月も今日でお終い、ギリギリですが今月のオススメを!
5月19日発売だった大隅寿男トリオの「リジョイス」です。
大病から復活されたベテラン・ドラマーのリーダー作ですが、なにしろメンバーが素晴らしい。ピアノが私の贔屓中の贔屓である石井彰、ベースが二人、御大古野光昭と岡安芳明トリオで当地にはすっかりお馴染みの金子健が5曲ずつ、そしてトランペットのドミニク・ファリナッチが2曲に参加しています。
CDの帯にある「生きる喜びを全身で表現した最高傑作」という惹句の通り、躍動感に満ちたドラムが本当に楽しそうです。いつも翳りのある音を出している石井彰のピアノもちょっと明るい音色に聞こえます。石井の演奏するジャズ・スタンダードが聴きたいと思っていた私にとって、これはもう願ったり適ったりでした。
二人のベースの比較ですが、強いて言えばベテランらしく深く穏やかな古野、力強くクッキリとしたベースラインの金子といったところでしょうか。とてもブラインドで当てる自信などありませんが...
バラード2曲に参加したファリナッチのマイルドな音色も曲想にぴったりとマッチしてアルバムの完成度を高めています。
とにかく変な癖など皆無で取っつきやすいので万人にお勧め出来る一枚です。



リジョイス/大隅寿男
(M&I MYCJ 30265 税込¥2,800) 



STEP片桐俊英




appleJam 四月のおすすめ盤を聴く

2004年07月26日 | 音楽

猛暑が続いています。それも関東南部の暑さが酷いようです。
ここ館山は銚子と並んで一番涼しいところなのに、35度が
連続で記録されました。しかも雨がほとんど降らず、農作物への
影響も心配されます。我が家の田んぼもひび割れが出来ています。
それでも新潟や福井の水害を思えば、この程度は我慢しましょう。



さて気がついてみれば7月も残り少なくなってきました。
まだコメントしていないCDが溜まる一方なので、なんとか
一枚ずつでも簡単な感想を述べていきます。



Thais Clark & Her Palm Curt Serenaders / That Old Feeling



このタイースという人のことは全く知りませんでしたが、なんと
良い声の持ち主なのでしょう。歌手の場合、上手い下手の以前に
その声が好みかどうかが最大のポイントです。
白岩さんの「持ち前の張りのある声にぐっときます」のお言葉通り、
力むことなく歌っているのに十分な声量と迫力があります。
バックも本当に楽しいニューオーリンズ・スタイルで、年配の
ジャズ好きな方なら踊り出してしまいそうです。
普段シリアスなジャズしか聴かない人も、たまには原点に帰り
この「オールド・フィーリング」を楽しんでみたら如何でしょう。



STEP片桐俊英




工藤さんの7月のお薦め盤を聴きました。(bb白岩)

2004年07月25日 | 音楽

これを聴いたとき真っ先に浮かんだのが、エジプトやチュニジア辺りを拠点としている米国人ジャズマンが土地のネイティヴ達とその土地に伝承される民族楽器を使ってパフォーマンスしていたジャズでした。Rounder系列の新興レーベルから出ていたのをかつて店でも扱ったことがあるのですが、その時の盤とアプローチがよく似ています。(その時扱った盤を思い出せないのが情けないですが)いずれにしましても、この手の音が欧州圏で比較的ニーズがあることは資料にも触れてありました。ですので工藤さんが紹介されているようにそれらタイトルの中には相当ヒットする盤があって、特にフランスでそういった音を継続的に出しているレーベルがあることも読んだ記憶があります。日本でも日本の古楽器を使ったジャズが盛んになってきましたけど、その手の音はターゲットをヨーロッパに定めればブレイクする可能性が高いかも、などと余計なことまで考えてしまいました。



と、前置きが長くなってしまいました。



Morton's Foot/Rahib Abou-Khalil(Oud)(Enja)



これをジャズと捉えるかワールド・ミュージックと捉えるかが
人によって意見が割れそうに思いますけど、多分パフォーマー
自身はジャズのフィールドでイメージを組み立てているのかなと
感じました。#9のような変拍子の渦の中チューバがうねるような
タイプの曲、もしもこの時代にミンガスが健在だったら同様の
アプローチをミンガス流儀で披露してくれたかななどと想像を
膨らませてしまいます。日本だったら地底レコードが出してきそ
うなそんな音ですよね。



アコーディオンが活躍する曲で感じるのはミュゼット(ミュゼ?)
の影響で、イタリア風の名前を持つこのルチアーノ・ヴィオン
ディーンというアコ奏者はきっとパリでミュゼットを学んだか
好んでいる人なのかなと感じました。それにしても、このアコ
ーディオンとチューバのデュオは斬新な響きがします。



たまにこういう音を聴くと如何に広い惑星に住んでいるのかを
実感します。SFっぽくに聞こえてしまうのはその手の映画の
サントラの影響かも知れませんけど(笑)。



bb白岩 appleJam




STEP 6月のお薦めを聴きました。

2004年07月19日 | 音楽

日本のジャズを売るのがどれくらい大変かは、かつて私がテイトムセンというチェーン店勤務だった時代に、その子会社のT-FRIEDSからいくつか日本のジャズを制作販売したとき、その営業担当の者からそんな話を聞く機会が多くてしみじみと感じていました。当時は自分自身はテイトの新宿の店に居て(記憶が少し交錯しているかも?)そういう立地の店ではそれなりに売れるのですが、レーベルとして他社の沢山の店にまで販路を拡大するのは実際大変だったかと思います。



それはさておきまして、その時そのT-FRIENDSから峰厚介氏のユニット FOUR SOUNDS を2枚出したことがあったものですからそれが間接的なものであってもかなり身近に感じる存在の方ではあります。そんな頃をちょっと思い出しつつ聴いてみました。



ランデヴー/峰厚介ミーツ渋谷毅&林栄一
(ビデオアーツ VAGM 1003 税込¥3,000)



冒頭から歌心溢れる峰の堂々たるテナーに大満足の感触、
さらにそれに絡むように早々に登場する林栄一のアルト
の、息づかいまで伝わってきそうなリアルさに思わず
ぞくぞくっとしてしまいます。その両者を有機的に
結びつけるような感じでゆったりとした波動を伝えつつ
微妙なうねりを生む渋谷のピアノ。



もうこの一曲だけでこのアルバムの素晴らしさが伝わる
8分間ですが、作品の最後までこのクォリティが持続、
リズム隊抜きのトリオであることを全く意識させない
その濃密なコラボレーションは圧巻と言えます。



耳には静を感じさせながらも聴く者の鼓動を高鳴らせずには
おかない素晴らしいパフォーマンスの連続、なんとも言葉に
出来ない高揚感に包まれてしまいました。



bb白岩 appleJam




appleJam 7月のおもしろ盤を聴いてみました(工藤)

2004年07月19日 | 音楽

私も今月のオススメ盤を選ぶときは絶対にヒットしそうなものよりは冒険で出してみるものの方が多いわけですけれど、このアルバムも、ドラムスではなくて打ち込みサウンドなので、賛否両論あろうかと思います。でもジャズやフュージョンでは、ちょっと前の時代にさかのぼりますが、ラップやヒップポップ方面に走ったミュージシャンってけっこう多いんですよね。打ち込みもまたしかり。



Darren Barrett / The Attack of Wren(2004 German Nagel Heyer 2046)



ドラムスの代わりに打ち込みサウンドで、ベースはエレキベースのサウンドなのでちょっと面食らいましたけれど、いわゆるポップスの世界ではこれが当たり前なわけで。その小気味良いリズムの上を気持ちよくホーンを吹く(時にエレクトリックなエフェクターがかかっているような音)と、外に発散するゴキゲンなサウンドに仕上がります。全曲Darren Barrettの作曲。こういう場合、メロディで勝負するか、ロック(ポップ)的なノリで聴かせるか、なので、どの曲もメロディの印象は強めです。そんな中で4、8曲目あたりがソフトなバラードで聴かせてくれます。打ち込みながらもリズムは曲によって変わり、変化に富んでいます。4ビートファンよりもファンクとかポップスが好きな人向けか。



ジャズCDの個人ページ 工藤




STEP 6月のオススメアルバムを聴いてみました(工藤)

2004年07月11日 | 音楽

片桐さんのオススメは日本のミュージシャンのものが多いのですが、やっぱり私たちも日本人なのだから、日本の良いジャズを聴く、という姿勢も大事かと思います。とは言いつつも私はけっこう洋モノ派なんですけれど。日本のジャズはあまり売れないために、レコード会社として日本人をあまり扱わなくなる例(クラウンやキングなど)も少なくなく、少々残念ではあります。



ランデヴー/峰厚介ミーツ渋谷毅&林栄一
(ビデオアーツ VAGM 1003 税込¥3,000)



ここではメンバーのオリジナルと、スタンダードやジャズメン・オリジナルと半々くらいの登場なのですが、テナーサックス、アルトサックス、ピアノという構成なのでしっとり感の高いバラードが多いです。フレーズにしても落ち着いてメロディを歌いこんでいる感じで、聴いていてホッとしてしまいます。やはりベテランならではの安心感。2曲目は2人のサックスのみの曲で、それぞれ勝手に吹いているように見えてコラボレーションを形成しています。3曲目のオリジナルも切なさがにじみ出るバラード。4曲目の「オレオ」は2人のサックスのみですが、アルバムでは例外的に、かなり元気に吹きまくり。7-8曲目もやや陽気な展開なのがアクセントか。ミステリアスで思索的な雰囲気を持つ9曲目のバラードは何と10分超。10曲目はピアノのみでゆったりと。やっぱりこの3人ならではの独特なサウンドでせまってきますが、その安定感もなかなか。やや静かな場面が多いですけれど、それだけにとどまらないアルバムです。



ジャズCDの個人ページ 工藤




大変遅くなりましたが工藤さんの5月のおすすめ盤を聴きました

2004年07月08日 | 音楽

今年の梅雨は最初の数日こそ梅雨らしい天気でしたが、その後はほとんど雨が降らず農作物にも深刻な影響が出始めています。
なんだかここ数年は異常気象が当たり前という変な現象が定着してしまったようです。これもひとえに自然破壊のなせる業なのか?
まあ地球にとって人類が一番のストレス源なのは事実でしょう。



相変わらずCDの売れ行きは絶不調ながら、やらねばならない仕事の量は増えることはあっても減ることは無い毎日です。
先日必要に迫られ安~い板を買ってCDラックを作りました。
なにせ聴きたいCDがあっても雪崩が怖くて取り出せなかったり、どこの山に埋もれてしまったのか所在不明だったりと、悲惨な状況だったのがかなり改善されました。



The Triangle/Arild Andersen
 トライアングルというタイトル通り、わりとオーソドックスな美しいピアノ・トリオでした。近ごろ良く聴いている石井彰などewe製作のピアノ・トリオ作品とかなり似た雰囲気で、力強さを内包した夢幻的なサウンドが私の好みにピッタリきました。北欧のミュージシャンらしく温度感が低く硬質な楽器音がECM録音とマッチしています。
...今調べたらピアノのヴァシウス・ツブロポリウスはアテネ出身と書いてありました。クラシック系の出身ということで粒立ちの良い音が弾けるのでしょう。ドラムのジョン・マーシャルは「ソフトマシーン」で叩いていたってことは、ベースでリーダーのアリルド・アンデルセンだけが北欧ノルウェイなんですね...
それはともかくとして、このカチッと引き締まったトリオ演奏は多くの音楽ファンに聴いてもらいたいと思いました。



STEP片桐俊英




appleJam 7月のおもしろ盤

2004年07月04日 | 音楽

今回の参院選は早々に期日前投票に行ってきました。投票したい候補者が既に決まっていたので迷うことなくでしたが、果たして今回の選挙の投票率は前回をさらに下回るのか、あるいはある種の反動でぐ~んと上がるのか、予測不可ですね。それはともかく今度の選挙が突破口になって何かが変わり始めることを期待しています。



それはさておきまして、今回のおもしろ盤のこのダーレン・バレットは実は前作までのモーガンやハバードの流れを汲むネオバップ路線の方が断然カッコいいのですが、バレット自身に惚れこんでおりますので、今回のややしょぼい音もあえてオススメに選んでしまいました。そんなん有り??



Darren Barrett / The Attack of Wren(2004 German Nagel Heyer 2046)



事前に届いていた資料で覚悟はしていたつもりでしたが、
その余りの変貌ぶりに、これはほんとにあのダーレン・
バレットか?と我が耳を疑いました。硬派のメインスト
リーム路線から一気にフュージョン~ディスコ~クラブ
ジャズ路線への転換です。思わず You've Changed と口
走ってしまいました。ジャズファンとしてこれを否定す
るのは容易ですし、ばっさり斬られる一枚かも知れない
と感じつつも、私は彼の才能がこのスタンスで留まるこ
とを良しとしないと信じます。故に大好きなバレットの
心変わりを今は肯定的に受け入れ今後を見守ることにし
ます。彼に注目して欲しいという気持ちからあえてこれ
をオススメ盤に選びました。



Darren Barrett - tp,fh,evi
Walter Smith - ts
Myron Walden - as
Joseph Omicil - as
Tony Barrett - g
Collin Barrett - b
Jeremia Landess - b
Wren - all Other Instruments



bb白岩 appleJam




Step 5月?のオススメを聴く

2004年07月02日 | 音楽

ブルースを核としてその周辺もどん欲に網にかけていくような店をやっていながらも、実は可能な限りジャズを聴く時間を楽しむようにしています。その理由はやはりインタープレイの楽しさにおいてはジャズの右に出る音楽はないかなぁというのが最大の理由でもあります。



そんな気分で聴くとき、この石井彰の一枚は多いにその気持ちを満足させてくれました。最近聴いたピアノトリオでも出色の一枚になりました。



エンブレイス/石井彰(P)トリオ(ewe)



ピアノのサウンドを聴いて、まず最初に色や温度はあるけど
形はない空間、が浮かび上がってくる音ともうひとつ、
空間という概念よりはダイナミックな躍動感といった
エネルギーを感じる音があるのですけど、この石井彰の
場合は冒頭一発目から空間が浮かび上がってきました。



自分が微生物になって水の中を浮遊している感覚、
あるいはなんとなく無重力状態の中をふわふわ浮いている
感覚です。そんな中響く鋭角的でパーカッシブなドラムが
多角形的な立体絵図を描く感じ、これでベースがドラムと
同じくらい絡んできたらもっとスリリングかなと思いつつ
全体のバランスをキープすべくボトムを支えているのです
からこれは狙い通りの展開なのでしょう。



もっとも好きになった曲は4ビートを土台にしつつも
多彩な展開を見せる#4。モンクが変形した#7も好みです。
#4のような曲を洒落たバーで生で聴いたら朝までそこで
飲んでいそうです(笑)。



bb白岩 appleJam